漂流傭兵小噺~なんで右も左もケモ耳ばっかなんだ、いやそんなことよりまずはカネだ龍門幣だ!~   作:ラジオ・K

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PSO2のBGMを聴きながら書きました。
途中、ミスって下書きが消えました。

泣きながら再び書き直しました。


断じてストーキングではない。断じてな。

 中々鮮烈な出会いより2時間が経過した。

 俺はというと。

 

「それで、あなた。いつまでつけてくる(ストーキングする)つもりですの?

「いや、行く当てもないからとりあえず()()()の後についていけばいいかなーと、思っ」

「そのカジキ呼ばわりするの、やめてもらえるかしら。非常に不愉快ですわ」

「じゃぁ何て呼べばいいんだ? 流石に『お前』とかだと不便だろ」

「そうですわね……」

 

 彼女(カジキ)は立ち止まって、暫し考えようとして──突如走り出す!

 まるで俺を置いていくように。

 その速度、優に50キロは出ている様に見える。本当に()()か?

 って、そんな感想を抱いている場合じゃない!

 急いで追いかけないと!

 何しろ、このワケわからん世界で掴めた今んとこ唯一の繋がり(出会い)なのだから──

 

 

 

 

 

 30分後。

 突然始まった逃走劇(追いかけっこ)彼女(カジキ)の諦めにより、自然収束した。

 流石に疲れたのか、吐く息は少し荒い。まぁ、俺も同じだが。

 

ヴイーヴル(ワイバーン)クランタ()セラト(サイ)でもないあなたがどうして、そんなに速く走れると、いうのですの……?」

「さっきから知らない言葉ばっか飛び出してくるな。……それはともかく、俺もわからん。何となく、体が覚えているって感じだ」

 

 その言葉にやや納得していなさそうな彼女(カジキ)

 やがて何かをあきらめたように頭を左右に振る。

 

「はぁ、もう、いいですわ。これ以上は時間の無駄でしょうし。それに……」

「それに……?」

「あなた、それなりに腕が立つようですし、今回の()()()()調()()に臨時助手として同行させてもよいでしょう」

 俺の体をしげしげと観察しながら、彼女(カジキ)はそう答えた。

 

「ってことは一緒に」

「ついてきてもよい、ということですわ」

「おお、ありがとう! えっと──」

 

 先程の会話から、カジキ呼ばわりするのはいけないらしいから、新しい代案を必死に脳内で探していると。

 

「これからはグレイディーア、と呼んで下さる?」

「!」

 

 名前を教えてくれた、ということは俺と知り合いから友達へとステップアップ──

 

「違いますわよ?」

 

 ……アンタ、心が読めるのか? はっ、まさかグレイディーアは超能力者──

 

「違いますわよ?」

 

 …………はい、すみません調子に乗っていましたごめんなさい許してくださいというか置いていかないで──

 

 

 

 

 

「それで、グレイディーアは何処に向かっているんだ?」

「あなたも看板を見たのでなくて? あの廃墟都市、サルヴィエントですわ」

「ああ、サルヴィエントって都市の名前だったのか。でも、どうして?」

「ここ最近、この周囲の稼働都市で人々が次々と失踪しているという情報が入り、()()()()()()()()()()から調査の依頼が入ったのですわ」

「なんで製薬会社?」

「この世界(テラ)は揉め事が多いからですわ」

「それって民間軍事会社(PMC)の役目では?」

 

 何というか、地球とは大分違う世界の様だな……これが俗に言う異世界転生というやつだろうか。

 

 暫くして。

 

 

「着きましたわ」

「え? でもここって警備用の詰め所か何かなんじゃ──」

 

 そう。今俺達がいるのは都市の入り口ではなく。

 その少し前にある小ぶりな建物。恐らく警備員か何かが待機している用だと思われる。

 多分ここで()()()()()か何かをしていたんだろう。まあ、この建物以外は軒並崩壊しているから、元は何だったのか、判別ができない。

 

 聞くに堪えない音と共にドアを開け、中に入る。

 中は……想像通り、まともに機能しそうなものなんて残っていないように見えるが……?

 

「臭いますわ」

「えっ? 何が」

「深い、(ふか)い場所からの、不快な潮の臭いが。陸人にはわからないでしょうね──そこですわ

 

 と、グレイディーアは背中に格納していた(もり)のような大剣を取り出し、地面のある一点を突く!

 崩れ、露わになる隠された入口! それはさながら、秘密基地の様だ。

 迷いなく進むグレイディーア。

 その長身を追って暫くすると、明らかに稼働している実験施設にたどり着いた。

 じめっとしていて、深い緑色の霧のせいで、視界が悪い。

 

 やがて眼が慣れていくと、現れるのは広々とした廊下。その壁一列に並ぶ用途不明の機器と、人間大のカプセル。

 中には人が!

 近づいて見てみると、それはこの世界に来て直ぐに襲い掛かってきた連中そっくりの見た目だ。

 というかよく見たらイヌ耳やらネコ耳やら、色んな()()()がついている。

 

「なんだ、こいつらは」

「見てわかりませんの? これが失踪した人々の末路ですわ。奴らの実験体とされたようね……漬けられているのは、液化源石(オリジニウム)のようね」

 

 グレイディーアは自分の発した言葉に目を細め、嫌悪感むき出しの表情をする。

 察するにその源石(オリジニウム)というのはとんでもなくヤバい代物らしいな。

 

「……!! どうやら、ここの主はわたしたちを歓迎してないようですわね」

 

 その言葉が言い終わらないうちにカプセルがヒビ割れ、パリン! という音と共に中の実験体(人間だったもの)が這い出て来る。

 

「41」 「53」 「67」 「25」 「18」「18」「18」 「5」 「1」 「89」 「76」……

 

 あの時と同じ、皆、それぞれ特定の数字を細々と呟きながら、こっちへ突っ込んでくる!

 

 話も通じなさそうだし、どうも()しかないようだな!

 俺は虚空より刀を召喚して──

 

 

 

 

 

 

 戦闘自体はあっさりと終わった。

 敵は大して強くなく、刀を一度振るえば、直ぐに倒せたからだ。

 しかし、何か後味が悪い。まるで無抵抗の人を虐殺してしまったような。

 

「グレイディーア、こいつらが言ってた数字、何なんだ?」

「もうお判りではなくて? 察するに彼らの()()ではなくて?」

 

 ということは……なんてことだ。あの中には、子供も、いたのか。

 誰だが知らねぇが、何ていうことをしやがる!

 自然と頭に昇る怒り。

 

「恐らくこの惨状を引き起こした主、あの扉の先にいるのでしょうね」

 

 グレイディーアが指し示す先、広々とした廊下の先には、両開きの扉が。

 冷静そうに見えて、かなり頭にきていたのだろう。

 

 手に持っていた大剣で殴りつけるという、古今東西でトップクラスの荒っぽいやり方でグレイディーアは扉を開ける(破壊する)

 そして室内に足を踏み入れ、その足は、直ぐに止まる。

 

「──なぜ、なぜ、あなたがそこに、いるの──」

「グレイディーア?」

 

 彼女の様子がおかしい。どうしてそんな、呆然自失とした声を。

 俺も室内に入り様子を見ると。

 

 

 そこには。

 巨大な培養槽に、漬けられた。

 修道服に身を包む白髪の、女性の姿が。

 

 グレイディーアの口が、短い音を紡ぐ。

 

 

 サメ、と。

 

 




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