漂流傭兵小噺~なんで右も左もケモ耳ばっかなんだ、いやそんなことよりまずはカネだ龍門幣だ!~ 作:ラジオ・K
2人が
その激しい戦闘の振動は上にも響き、設置されている培養槽内の液体を揺さぶり、波紋を起こす。
中に漬けられている修道服に身を包む女性が、微かに身じろぎをした。
そして当然、部屋内にはそれ以外にも多くの備品が満ちており──その中のある棚から、あるビンが転がり出る。
コロコロコロ……
やがてビンは、まるで導かれるように落とし穴へと転がり落ち、ホヤの
ばちゃん!
意識が朦朧としていた俺の元に突如として降りかかった液体。その刺激により俺は意識を完全に取り戻す!
「うっ……一体何が……おお?」
俺は不思議な感覚に包まれる。
絶え間ない2本の
その様子をホヤの口から伸びる多種多様な生物の顔やら
……舐めやがって……! 舌だけに、とでも言うつもりか!
その時、ふと思う。
ということは、こいつら……まさか。俺の頭にこの状況を打破するアイディアが、閃いた!
俺は大声で叫ぶ!
「グレイディーアッ! 今から俺が決定的な
何故か、確信があった。彼女ならきっと、できるのだろうと。
俺は無意識の内に発動していた
3秒後。
舌の内部、根本まで転がり落ちた
醜い音と共に舌の根元が吹き飛ぶ。俺を咥えていた口は即座にその機能を停止。俺は解放された。
*言葉になっていないホヤの呻き声!*
怒りのまま、ホヤはグレイディーアに向けていた舌、2本をこちらへの攻撃に回す!
そうだ。それを待っていたんだ! てめぇ、
「逃げる前に私の許可は取ったのかしら?ねぇ、獲物さん。──渇水の荒波掌握」
グレイディーアが持つ
「!?!?!?」
俺はそれを確認するや否や、全身に力を籠め、跳躍。奴の真上へ! そして──見えたぜ。ホヤの本来の口、入水管と出水管が。奴はその後の未来を悟ったのか、慌ててその身を奥へと引き返そうとする。だが、そう問屋は
「おもちゃで遊ぶのもここまで。──渇水の乱渦狂舞」
グレイディーアが持つ剣から更に放たれた大量の水。それがホヤの足元から巨大な渦を作り出し、
そして俺は虚空から
「ちょっと強火の蒸し焼きが、てめぇにはお似合いだぜ!」
そして──ホヤの口2つにそれぞれ命中し、内部から大爆発を起こす! 断末魔をあげることも叶わず、粉砕されたのだった。
…………あー、蒸し焼きにはならんかったか。残念だ。
ちと火力が高すぎたようだ。
「大丈夫か、グレイディーア?」
「その言葉、そっくりそのまま返させていただきますわ。あなたこそ、こうやって私が支えてないと今にも倒れてしまいそうではありませんこと?」
「その言葉、そっくりそのまま返させてもらおうか。グレイディーアこそ、俺が支えてないと今にも倒れそうじゃないか」
そう軽口を叩き合い、やがて微かな笑い声が響く。
俺とグレイディーアはホヤの
たどり着いたのは、培養槽の、横。そこに出入り口があったらしい。それよりも気になったのは。
「グレイディーア、あんた負傷してたんだな。俺と出会ったときから」
「どうして、そう……思いますの……?」
「半分勘だ。胴体をしきりに気にしていたようだったからな。落っこちた時に。こうして密着すると、呼吸の乱れがよくわかる。あの
「ふっ……」
「そうかい」
俺はとりあえず、部屋の中にあった手術台? のような器具にグレイディーアを寝かせる。傍に「石棺」って書かれているから多分本来の用途ではないだろうが。次は……何か包帯とか欲しいな。そう思って辺りを見回すと。
「わたしの事なら、大丈夫……ほっとけば勝手に塞がりますわ」
「いや、そんなわけにもいかんだろう。何か探してくるから、グレイディーア?」
「…………」
疲れ果てて眠っちまったか。だが、その呼吸は落ち着きつつある。勝手に治るって本当のことか……? ゲームの世界でよくある
結論から言うと、医療品らしきものはなかった。用途不明の器具ばかりである。
ただ、あの時顔にぶっかけられた液体が入っていると思わしきビンを多数見つけたので全て回収する。ゲームで言うところのバフアイテムかも知れんし。どうやって全て回収したのかって? ……実は回収するか、と思った瞬間ビンは全て消え失せ、自分の
まるでMMORPGのアイテムボックスだ、と苦笑する。人の事、言えねーじゃんか全く。
培養槽の横には巨大な円状の電動のこぎり? のような武器が置いてあった。これと培養槽の中に漬けられていた女性を回収(たたき割った)。寝ているグレイディーアの場所まで持っていき、横にさせる。
胸が少し上下しているあたり、ちゃんと生きているようだ。そういえば培養槽のネームタグに「スペクター」とあったな。彼女の名前だろうか。その姿は何故かサメを連想させた。グレイディーアが言っていた「サメ」というのは……あだ名とか?
「
「起きていたのか! もう治っていたのか?」
「ええ。ようやく毒も抜けましたし、本来のわたしの回復レベルはこんなものですわ」
「そ、そうか」
流石異世界? とでも言えばいいのだろうか。
「時にあなた、どうして潮の香りがするのでしょう。ほんの僅かですけど」
「えっ?」
「それにその目。前と大分形状が違いますわよ? ……ちょっと、うなじを見せてくださるかしら?」
「お、おう」
「……あなた、アヌーラになってますわよ?」
「何て?」
「アヌーラ。カエルの特徴を併せ持つ
なん……だと? まさか、人間、辞めちったのか!? 一人で混乱する俺をよそにグレイディーアはうなじをつついたり、俺の顔を両手で挟み込んだりして観察している。っていうか服の中をまさぐらないでくれ!?
「会った時のあなたとは、あちこち変化している箇所がありますわね。何か心当たりがおあり?」
「もしかして、あれかも」
俺はさっき回収したビンを取り出して見せ、色々と説明をした。
「それは中々興味深いですわ。種族を変化させる薬品……ねぇ、あなた。記憶がないというけれど、行く当てもないのでしょう?」
「あ、ああそうだが」
「ではわたしの所属する組織──ロドス・アイランドというのだけど、そこに滞在する意志はなくて? きっと
「滞在先ができるってことか。そうだな、よくわかんないが、いいぜ。渡りに船ってやつだ」
「決まりですわね」
「で、どうやって行くんだ?」
「まさか死んだと思っていた
「これを使いましょう」と懐から取り出したのは、小さなキューブだ。5センチの、正方形……ルービックキューブみたいな見た目をしている。彼女曰く、これを使うと特定の場所に瞬間移動できるらしい。ファストトラベルかな?
そして急いで出立の準備をした。電ノコをグレイディーアは背中にしょい込み、さらにローレンティーナ……修道服の女性を横向きに抱える。お姫様抱っこってやつだな。
「では、わたしの腕をつかんでくださいませ。使用者に触れていれば、問題なく発動するはずですわ」
「お、おう。では……失礼。ところで、その、重くはないのか? そんなにたくさんの荷物」
「問題ありませんわ」
グレイディーアの腕は、服越しではあるがひんやりとしていて、同時に人の温かみも感じられた。
「
「ああ」
「では、行きますわよ」
そう言ってグレイディーアは手元のキューブを操作して──
視界が白く染まった。
感じる風圧。
閉じていた目を開けると……何故か空を舞っていた。全裸で。周囲は当然、誰もいない。
「あれ、あれ……あっれぇぇぇ!?」
そのまま、異世界にも当然のようにある重力の導きに従っていく。
俺、これからどうなるんすか!?
漂流傭兵小噺、始まりのイベリア編・上 終
次回に続く!
長くなってしまいました。
もちろん、物語は続きますのでご安心を!
これからも「漂流傭兵小噺」をよろしくお願いします!
感想などあれば遠慮なくどうぞ!
どの程度アークナイツ世界を描写すべきか、悩んでいるので、アンケートを作りました。
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あ、一番上は「全く読まない」の略です。修正できずすみません。
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