漂流傭兵小噺~なんで右も左もケモ耳ばっかなんだ、いやそんなことよりまずはカネだ龍門幣だ!~   作:ラジオ・K

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新章、というよりイベリア編後半がスタート。
さて、誰を出しましょうかね?


始まりのイベリア編・下
ここはどこ? 俺は追い剝ぎ(見た目)だ!


 イベリアのとある荒野にて。

 

 

「兄貴、こっちの略奪はもう終わりましたぜ!」

「おう。奴ら(感染者)の死体は、ちゃんと()()しただろうな?」

「もちろんでさぁ!」

「よし。死体から発せられる粉塵(ふんじん)、吸い込んでないだろうな?」

「へい。言いつけの通り、口を布などで覆いながら作業いたしやした」

 

 その返答に男は満足そうに頷く。男の視線の先には略奪品が満載された荷車が。全てイベリア本国より強制退去させられた感染者のものである。品を譲るように「説得」した時についたのであろう色()せた血が、どのような行為をしたのかを静かに物語っていた。

 

 彼らはこの後、荒野にある「難民」キャンプに物品を高値で売りつけに行くのだ。

 源石(オリジニウム)に頼って文明を発展させたテラ世界。その源石(オリジニウム)が原因となり発病する鉱石病(オリパシー)鉱石病(オリパシー)を患った者達は「感染者」と呼ばれ、死ぬまで不当な扱いを受ける。例えば、公共の安全とかを理由に都市から追い出されたり。

 その末路は、ほとんどがこんな感じで死んでいく。その死に違いがあるとすれば悪意なき獣、自然環境、天災か。それとも悪意ある暴力か。

 

 男は知っている。源石(オリジニウム)がある限り、()()の供給が絶たれることはないだろうと。だってもうこの稼業を10年も続けてきたのだから──

 

 時に、不幸とは唐突に降りかかるものである。

 

 EEEEYHAAAAAA…………

 

「ん? なんだ、この声……上から?」

 

 そう、例えばこんな感じで。

 

 

 

 

 

 

 

 不幸より15分後。

 

 

 あーいててて。まさか突然空に放り出されるとはなぁ。グレイディーアが言っていた「ロドス・アイランド」とかいう場所に連れていくとかいう話、嘘であるとは感じられなかった。……まさかこの大空と大地が、そのロドスというわけではあるまい。

 となると考えられるのはキューブとかいう装置の誤作動か。にしたって予告なしに全裸で放り出すことはねぇだろ。俺はター●ネーターかっつーの。いやになっちまうぜ全く。幸いにも真下にあった荷車のおかげでかすり傷程度で済んだからよかったものを。

 

 俺はそう誰に説明することもなくボヤきながら、追い剝ぎどもの衣服をかっぱらう。誰も見ていないとはいえ、流石に全裸はヤバいからな。表現規制的に。ん? 俺は何を言っているんだ?

 暫くかっぱらった服を警察の押収物陳列のように並べ、その中から丁度よさそうなものを調達。早速着る──そうだ。その前に確認しないと。荷車の中にある鏡を取り出し、自分の姿を確認する。

 

「へー、これがアヌーラとかいう種族の特徴なのか」

 

 何とも言えぬ特徴的な、瞳。ちっとわかりにくいが瞳孔がナナメ? になっている気がする。そしてうなじに現れた、茶色の鱗。字面の割にすべすべしていてすこしくすぐったい。敏感なのだろうか。そして手から粘液とかが出せるようになった。常時垂れ流し、ではなく自分の意志でできるようだ。

 なるほど。言われてみればカエルっぽいかもしれん。とにかくこれで正体不明の人物から一歩脱却できたかもしれん。やったぜ。

 

 最終的に俺が選んだのは色褪せ、ボロボロになった軍服っぽいジャケット&パンツ(ズボン)に、黒のバンダナで頭を巻き、ゴーグルをセット。立派な追い剝ぎ(見た目は)の完成である。

 さて、見知らぬ新天地へと行きますか!

 

 

 

 

 

 で。肝心の現在位置=目的地となる都市、がわからんかったので。

 追い剝ぎ共が利用していたバイク、その痕跡(タイヤ跡)を辿ることにした。ひょっとしたら何か拠点、村とかあるかもしれないし。

 

 

 

 

 

 漂流開始より1日目。

 この日は特に収穫なし。近くから出てきた甲殻類っぽい獣を倒す。苦労して解体してみると、その肉、旨そう。追い剝ぎ共が残した略奪品でもって即席のテントを作り、一夜を明かす。獣の肉は茹でて、塩で味付け。エビとカニとイナゴの佃煮(つくだに)を掛け合わせたような、クリーミーなお味。ちと見てくれが酷いが、まあ、うまければそれでよいのだ。

 ちなみに塩? の見た目は黒みがかかった水晶のような、鉱物だ。透かすと黄色くも見え、◇のような模様が浮かぶ。地球にはないものだが……ここの特産品だろうか。とりあえずかじってみたらしょっぱかったので使用した。

 

 

 漂流開始より3日目。

 追い剝ぎ共のバイクを利用して速度を上げる。そのおかげか、小さな村に到着する。海沿いだった。そして……村は蛸魚(タコたま)の襲撃により壊滅していた。蛸魚(タコたま)共を倒してから辺りを捜索してみるも……生存者はおらず、食料も皆腐っており、収穫はないと思われた。しかし。

 地図があったぞ!

 これで街の場所がわかる! ええと……マルヴィエントというのか。情報によると、比較的大きな都市らしい。

 

 

 漂流開始より5日目。

 マルヴィエントまであと1日かと思われたが、問題発生。()()()()()()()()()()! な、何でや!? このままだと正体不明とか難癖つけられて街に入れんかもしれない。いや、街に検問所が必ずあるとは思えんが……楽観視しない方が良さそうだしなぁ。

 暫し頭を抱えたがまてよ、と思い例のビン、その中の液体を自分に振りかけてみる。すると……予想通り()()()()()()()()。ということはこの液体には効果時間があるのか。ちゃんと把握した方がよさそうだな。

 

 

 

 

 

 

 

 そして……ついにマルヴィエントにたどり着いた、のだが。問題発生! やっぱあったよ検問所! くらったよ足止め!

 

「えーと、つまり? 嬢ちゃんが言うその、通行許可証、というやつがないと入れんのか?」

「私は立派な成人女性です! というか仮に許可証があったとして、アナタのような明らかに怪しい者をこの街に入れるわけないでしょう?」

「そ、そんなぁ? 嬢ちゃん、俺ってそんなに怪しい?」

「私にはアイリーニという立派な名前があるんですけど?」

「そ、そうか」

「ところでアナタのその見た目……何となく指名手配犯のスニーキー・バンデッドに似ている……?」

「えっ」

 

 それってまさか漂流初日に倒したあの追い剝ぎのこと……? それが、指名手配犯。あ、これは……まずい!

 

「私は審問官。律法を犯したすべての過ちは……私たちが見つけ、解決する!」

 

 そう言うとアイリーニは腰に下げた剣を抜き、凄まじいスピードで攻撃を繰り出す!

 

 俺の異世界漂流史上最大のピンチ、到来!

 




補足。
・マルヴィエント=Mar Viento(スペイン語)、意味は海風。Google翻訳なので正確ではないかもしれません。
 ちなみにアークナイツのサイドストーリーイベント「潮汐の下」に登場するサルヴィエント=Sal Viento、はスペイン語で潮風という意味だそう。ソースはアークナイツ攻略wikiより。

 皆さん、彼女を、審問官アイリーニを知っていますか? 私の好きなキャラの1人なので登場させました。これを機にSS界隈で広まるといいな。
 言葉遣いはうまく再現できたか、自信ありませんが、彼女のご活躍をどうぞ見守っていただけたら嬉しいです。
 ところで、彼女の種族、どれでしょう? 私はリーべリだと思っているのですが。誰かご存知の方、いらっしゃいましたら感想欄で教えて欲しいです!


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