漂流傭兵小噺~なんで右も左もケモ耳ばっかなんだ、いやそんなことよりまずはカネだ龍門幣だ!~   作:ラジオ・K

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 皆様のご愛読に感謝を!


俺の名は?

「なるほど、そういった経緯でこちらにいらしたのですね、そして記憶がないから名前もないと」

「ああ」

 

 俺は目の前の女性、アズリウスにこれまでの顛末(てんまつ)を軽く話した。とはいえ、自分の本当の種族については伏せといた。俺自身もよくわからん問題だし、うまく説明できずに混乱すると思ったからだ。何より今の状態では説明できんしな。

 

「とすると、困りましたわね。せっかくのご縁ですし何か支援をしてあげたいのですけれど、住所はともかく名無しというのは難しいですわね」

「なるほど……って支援? 助けてくれるのか? 会ったばっかの俺に?」

「ええ。同族(アヌーラ)ということもありますけど、先の話を聞く限りあなたは相当腕が立つ、とお見受けしましたわ。その腕を買うという意味もありましてよ」

「俺はそんなに強いとは思わんが……あの蛸魚(タコたま)とか融魚(ゆうぎょ)とかいう連中だった単独では絶対に勝てなかった」

「ご謙遜を。ああいった連中はそもそも滅多に姿を現しませんし、対処の際は20~30人程の小隊で討伐するのが通常ですのよ。それに比べてたった2人で立て続けに2体も討伐するのは、とんでもないことですのよ?」

「な、なるほど」

 

 ぶっちゃけた話、融魚(ゆうぎょ)に関しては相方のグレイディーアがいなかったら絶対に勝てなかった。なので俺は思ったほど強くない──と続けそうになったが、話がこじれるので言わないでおく。

 

「話が逸れ(脱線し)ましたわね。さて、あなたの名前を決めませんと。何か、思いつくものはありまして?」

「そう言われると意外と難しいな……」

 

 2人分のドッソレス産コーヒー、プレインカプチーノの香ばしい(かお)りが満ちる中。こうして大喜利(おおぎり)大会、もといダメ出し大会が始まった。というのも、何故かことごとく俺の出したアイディアが却下されたからだ。

 

 

 

TAKE1

「見たまんまのカエル男というのは」

ヘタクソなパロディ。却下ですわね」

 

 

TAKE4

「カエルを英語でフロッグ、これをもじってフロック」

「却下ですわ。駆逐されますわよ?

 

 

TAKE5

「名無しそのものを指して、無名(むめい)!」

「却下ですわ。ツラヌキ筒で心臓皮膜ブチ抜かれますわよ?

 

 

TAKE8

「確か元の世界(地球)の小説で朝起きたら虫になっていたという話が……そうだカフカというの」

「却下ですわ。とっくにプレイアブル化(実装済み)ですもの。何かのミスで2人が鉢合わせたら書くのが大変と作者が言っていますわ」

 

 

TAKE13

「ならシンプルに……旅人というのは」

何が何でも却下ですわ。訴えられますわよ?

 

 

 こうして30分が過ぎて。

「どうして……どうして……」

 

 頭の中で現場ネコが泣きわめいているイメージが鮮烈に浮かぶ。……って何なんだこれは。

 

「おかしいですわね。何故か無性に却下しなくてはという謎の使命感が湧き上がって」

「お、おう。……そうだ! 俺の今の状態、『漂流』をイベリア語(ポルトガル語)っぽくして──『デリヴァ』というのは」

「…………謎の使命感が湧き上がってきませんわね。それならいいと思いますわよ?」

 

 

 こうして俺はデリヴァ、となった。改めてよろしくな!

 

 

 

 

 

 扉を開け、ホテルの一室へと足を踏み入れる。ここはアズリウスより紹介された宿だ。なんでもこの国はとある出来事以来、だいぶ閉鎖的になっているようで、ほとんどの宿は一見さんお断りらしい。彼女がいなかったら野宿するとこだった。

 

 部屋は2つ。1人用ベッドを中心とした居間と簡素なシャワールームだ。後者はトイレと一緒になっているタイプだな。一泊のお値段なんと2500龍門幣(ろんめんへい)! いや、相場がわからんから高いか安いか、見当もつかん。

 が……部屋の内装を見るにこの部屋が高い、というわけではないようだ。壁紙、剝がれかかっているし。ちなみにこの世界で流通している通貨というのがこの龍門幣(ろんめんへい)だ。俺のはもちろん、あの追い剝ぎ共から分捕ったやつだな。

 

 虚空より取り出し、早速数えてみよう! さてさて……いくらになるかな?

 

 

 

 

 3万。そう、3万龍門幣(ろんめんへい)である。このままだと12日しかもたない! まずいな、このままじゃ……いや、落ち着け俺。質素なベッドサイドテーブルにあったメモ帳を適当に破り、これからどう動くか、そのプランを(まと)める。

 

 

 ・最終目標

 グレイディーアが所属しているという、ロドス・アイランドなる組織に行く。その時の口ぶりから察するに、きっと雇って(?)くれるはず。

 

 ・そのために必要な事

 この国(イベリア)より出国する為の龍門幣(ろんめんへい)を稼ぐ。

 その間、宿に泊まれるぶんの龍門幣(ろんめんへい)を稼ぐ。当然のように食費も稼ぐ。もしくは外で狩る。

 

 

 

 こんなもんかな? 書いてて思った。やはりカネだ……全てはカネが解決するのだ! ベッドに寝そべりながらそんなしょうもない事を考える。少し前に立ち寄った村にあった地図によると今いるのがイベリアという国の、端っこ側。で、次に近いのが……このサルゴンって国のアカフラという地区らしいな。よし、とりあえずここを目標にしよう!

 

 目標を決めて、一安心したからか、一気に眠くなってきたぜ。

 ここは、からだの、おのぞ みのまま……ZZZzzz……

 

 

 

 

 ゲリラ的昼寝を敢行した結果、夕方を通り越して夜になった。

 

 俺は今、夜風に当たりながらそこらを散策していた。やっぱり屋根の下で眠るのはいい気分だぜ。安心感がまるで違う。それはともかく腹が減ったな。何か食う場所は……お、あそこにあるの、酒場か! 見た感じそこまで人が多いというわけでもなさそうだから、落ち着いて飲めそうだ。

 値段を見ると……うん、多分1品2品であれば何とかなりそうだ。それに明日はアズリウスが何か仕事──荒事系の──を探してくれるらしいし、まぁ何とかなるだろう。

 

 というわけで酒場に入り、ビールと蛸のオリーブ漬け、パエリアを頼む。これで1000龍門幣(ろんめんへい)。多分、安いのだろう。味も塩っ気がきいていて、ビールによく合う。海鮮のダシもイイ感じだ。

 ビールの味、故郷(地球)とあんま変わんないんだな。静かにそう感動していると。

 

「ますたぁ~ビールの、L!」

「いつものですね、()()()()()

 

 呂律が回っていない女が入ってきて、かなりの音量でやりとりしているのが聞こえた。どう聞いても酔っているな。ハシゴ(2件目)か? そう思っていると声の主はこちらへと近づき、遠慮なく腰を降ろす。手にはLサイズジョッキと小さな小皿。豆か何かのご様子。

 で、声こそ小さくなったが酒の勢いに身を任せて気炎を吐く。

 

「────! ~!! ──、──~、────」

 

 聞き取り辛いが、()()()()()()()の愚痴を吐き出しているらしい。曰く、せっかく気合い入れて任務に参加、誰も文句言えないような成果を挙げて「長官(先生)」に褒めてもらうんだ──と思っていたのにあの男のせいで全て台無し──恥をかいた──等々。

 ところで、その男って。ひょっとしなくても。と思ったタイミングでこちらを振り向く()()()。その顔があっという間に赤に染まる。信号機の速度を遥かに超えて。

 

 

「あ、えーと。どうも()()()()()()()()()。改めまして、恥をかかせた男、デリヴァと申します」

「…………こ」

「こ?」

「この男のせいでぇ!?」

AIEEEE!?

 

 とある業界の、アクションゲームの大ボスは、必ずといっていいほど()()()があるという。

 

 大ボス、見習い審問官・アイリーニ(酒乱のすがた)が、襲い掛かってきた!

 

 

 

 

 そして意識が暗転し、俺は──

 

「……うう、ここは、一体……?」

 

 見知らぬ天井だ。微かに消毒液の匂いがする。と、目の前に見知らぬ女性が現れた。片目を眼帯で覆った、紫の髪と瞳を持っている。その姿はどことなくクラゲを連想させた。

 

「ああ、落ち着いてください。焦ることはありませんよ」

 

 安心させるように女性は微笑む。

 

「あなたにお話が、あるのです」

 

 




 作者
 「頑張ってギャグシーンを書いてみたけどどうかな、グレイディーア!」

 グレイディーア
 「フッ……」

 作者
 「(´・ω・`)」

 読者の皆様、ごきげんよう。ギャグシーンが苦手な作者です。今回はパロディを詰めてみました。楽しんで頂けましたら幸いです。

 面白い、と感じてくれたら☆評価や感想をよろしくお願いします!

 ちなみにアンケートはあと数日したら打ち切ります。

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