原作を知らないただのチート転生者が仲間を死なせないために頑張る話   作:蘭 ノイ

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27話 英雄

 

 

(ノア視点)

 

 

「ねえ、乃亜(ノア)聞いてよ!面白い本を見つけたんだ!」

 

「なんだよ理人(リヒト)、病室なんだから静かにしろよな。」

 

 おれは真っ白な部屋の中でゲームをしながら、彼の方を見向きもせずに注意する。

 

「まったく乃亜(ノア)はつれないなー。

 こんなに興味深い本が見つかったというのに!」

 

「興味深い本?

 お前がいっつも面白い面白いって勧めてくるのは歴史書ばっかじゃないか。」

 

 俺はようやく顔をあげて、そいつの持っている本を一瞥する。

 今俺の病室にノックもせずにズカズカと入ってきたのは、理人(リヒト)。幼馴染だ。

 

 俺は幼い頃から気管支系の病気にかかっていて、さらに生まれつきのアルビノであることから、ずっと入院生活だった。

 そんなつまらない人生を少しでも明るくしてくれたのは、紛れもなくこの騒がしい幼馴染だった。照れくさくて本人にはそんなことは言えないが。

 

 ただ、こいつの趣味は俺には理解できない。

 

 理人(リヒト)は歴史オタクだ。

 

 最近は、昔の、それも今住んでいる国ではない場所の歴史にハマっているらしかった。

 昔から、勧めてくる本は難しくて厚い、歴史書ばかり。彼があまりに勧めてくるので1回読んでみたが、どこが面白いのか俺にはさっぱり分からなかった。

 

「まあまあ、今回の本は歴史書だけど、内容が凄く面白いんだ!

 この前のは難しい単語も多かったけど、今回のなら、絵もあるし、楽しく読めると思うんだよ。」

 

「そう言って前回も厚い本を押し付けてきたよな?」

 

 こいつは一度決めたら相手がうんと言うまで引き下がらない奴だ。

 この本も、俺は読む気はないけど、このままずっとこの問答を続けるくらいだったら借りておくとするか。

 

 理人(リヒト)は本を差し出したまま、こっちを見ている。

 俺はハァとため息をついて、仕方なく受け取った。

 

 彼なりに、俺のつまらない人生を彩る、面白いことを提案しているつもりなのだろう。

 彼の優しさは、遠慮なく受け取っておくに越したことはない。

 

「ちなみに、どんな話なんだ?」

 

「これはね、最近話題になってる、()()についての歴史書だよ。」

 

()()?」

 

 はて、何の事だろうか。病室にはテレビはあるけれど、生憎俺はテレビは見ない主義の人間だった。

 

「もう、最近の流行りくらいは分かっておけよ。

 『地ならし』についてだよ。」

 

 『地ならし』?

 その言葉は何か聞き覚えがあって、どこか昔のことのようにも思えた。

 

「遥か昔の時代、人を食べる巨人というのがいたらしいんだけど、その頂点に立つ、始祖の巨人と進撃の巨人を持つ者が起こした惨劇と呼ばれているね。」

 

 始祖の巨人と進撃の巨人?どこかで聞いたことがあるような気もしたが、理人(リヒト)の言っている事はやはり俺には分からなかった。

 

「なんだよ、それ?」

 

「まあまあ、最後まで聞いてよ。

 そいつが『地ならし』を起こすと、たちまち今まで見た事もないような巨大な巨人が何体も出てきて、世界を踏み荒らしたんだ。

 そして、文明も、人類も滅んだ。

 

 それから何万年という時を経て、俺たちの祖先、その『地ならし』を逃れた生き残りが文明を蘇らせたのが、今、俺たちが暮らしているこの世界なのは分かるよね?」

 

 分かるよね?と言われても…。

 そんな非現実的な事が実際の歴史だって言うのか?

 

「これは学校の歴史の分野で習うことだ。

 そして、『地ならし』という悲劇を止めた者として語り継がれているのが、アルミン・アルレルト、ミカサ・アッカーマン率いるパラディ島という島の英雄達だ。」

 

 ミカサ、アルミン…。

 

「で、僕が持ってきたのは、そのパラディ島に関する歴史書なんだ!

 これはパラディ島の面白い歴史を事実に基づいて書いていてね。まず、その『地ならし』というのを行ったのは、英雄達と同じく、パラディ島の出身者で、しかも英雄の幼馴染だったらしいんだ!

 彼が何を思って『地ならし』という悲劇を決行したのかについても考察されているし、興味深いんだよ。」

 

 理人(リヒト)の口は止まらなそうだ。彼は1度話し出すと止まらない悪い癖がある。オタクの早口みたいなもんだ。特に、彼の好きな歴史分野ではいつもの1.25倍速くらいで話し出す。

 

 しかし、パラディ島、か。何か既視感があるのは何故だろうか?

 俺はこの国から出たこともないし、病気のせいで飛行機に乗ったこともないのに。ましてやパラディ島という所に行ったこともない。

 

「もういいよ。十分分かったから。」

 

 俺は苦笑いでオタクトークが止まらない理人(リヒト)の話を遮る。

 

「面白そうでしょ?」

 

「ああ…読んでみるよ。」

 

「お、やっと読む気になったか!

 返すのは何時でもいいからね。」

 

 この既視感の正体を探りたくなったから、俺はその日からその本を読み進めていった。

 

 

 

 

 ハッと目を覚ますと、まだ外は暗いようだった。

 

 これは、最近見なかった『記憶』の夢だと思うが、これでエレンを説得する理由については、少し分かったような気もする。

 

 今見たのは恐らく、前世の記憶だ。

 

 理人(リヒト)は前世の幼馴染で、前世でも親友だった。

 彼の優しいところは変わらなかったんだな、と思う。

 ウォール・マリア奪還作戦の時、彼を殺したのは、俺だ。

 このことが妨げになって、今日まで前世の記憶を見ることが叶わなかったのだろう、と推測する。

 

 今日見れたのは、きっと俺の中で彼のことについて少し、整理がついたからだと思った。

 

 前世の記憶と合わせて、二ファの1回目の記憶も見ることが出来た。

 それは前世の記憶と被るところがあって、色々な不思議に思っていたことが、繋がった感じがした。

 

 

 俺の前世は、きっと、今生きている世界の数万年後の世界だったんだ。

 

 

 前世の記憶で見た『地ならし』を起こしたのは、きっとエレンだ。

 そして、その悲劇を止めたのは、俺の幼馴染であるアルミンとミカサたち、恐らく今の同期。

 

 

 

 エレンに『地ならし』なんて惨劇を起こさせてはならない。彼を大量殺戮者なんかにさせてはならない。

 

 彼の最近の悩んでいる様子や、暗い様子は、ヒストリアから勲章の授与を受けた時から始まっていた。

 あの時に未来に起こること、いや、彼自身が起こさなくてはならない使命を見て、まだ今は葛藤があるんだろう。

 

 彼の持つ進撃の巨人の能力は、彼が後々起こす悲劇。『地ならし』の未来を指し示し、そこに向かって進撃する能力だったのだ。

 けれども、『地ならし』を起こすことが最善だとは俺は考えない。

 

 幼い頃から親友として色々なことを一緒にしてきて、俺が沈んでいる時には助けてくれた、今世での相棒のように感じている彼を、未来の歴史書に残ってしまうような悪役にはさせたくない。

 

 

 俺は、エレンを説得することに決めた。

 

 

 

 

 俺は、早速次の日の夜、俺の部屋へエレンを呼び出して、バルコニーに座るように促した。

 

 エレンは素直に座って不思議そうにこちらを見ていた。

 

「話って、なんだよ?」

 

 俺は話があると彼を呼び出した。意味の無い世間話をする気はない。

 単刀直入に話そうと決めていた。

 

 

「エレン、本当にお前は、あれが最善だと思うのか?」

 

 

「あれ…って、なんの事だ?」

 

「お前がやろうとしてることは分かってる。『地ならし』でパラディ島(ここ)以外の奴ら、全員殺すんだろ?

 海に行った時も、そんなこと言ってたよな。」

 

 エレンは一瞬肝を潰したような顔をしていたが、俺の能力のことを思い出したらしかった。

 

「……ああ、そのことか。

 お前だってわかってんだろ?あれ以外に俺らが、世界中に恨まれずに助かる未来はねえよ。」

 

()()()?」

 

 エレンの顔を伺うが、表情からは何を思っているのか分からない。

 

「ああ。神様がいるってんなら、教えて欲しいね。そんな方法があるなら。」

 

 彼は空を仰ぎ見る。星や月が綺麗に見える今日のこの状況は、図らずとも訓練兵時代にエレンと2人で話した時の状況に似ていた。

 

「違うよ、エレン。大量虐殺をして、それを止めることで、アルミンたち同期が英雄になって、世界中から感謝されたとして、()()()同期はそれで喜ぶと思うの?

 エレンは1回だって、同期が何をしたいのか、何を望んでいるのか、聞いたことはある?

 大量虐殺なんかしても、それは、アイツらの望んだことなのかよ。」

 

「アイツらがしたいかしたくないかは関係ない。アイツらが生きても後ろ指さされないために、やるんだ。」

 

 エレンが仲間を思う気持ちは本当のようだが、今はそれが悪い方向に向かっているように思えてならなかった。

 

「お前の、守りたい同期ってやつに、自意識過剰じゃなけりゃ、俺も入ってるはずだが、少なくとも俺は、それで自分だけ幸福に生きることはできないだろう。 

 だって、俺達も、エレンに幸せになって欲しいんだよ。それが、あんな結末で、全世界から恨まれる最期なんて、絶対に、許せない!」

 

「お前だって、分かるだろ?自分のことはどうだっていい。仲間が助かれば、それでいいって。

 お前って、そうやってなりふり構わず突っ込んでく奴だったじゃねえか。」

 

 エレンが言っているのは、トロスト区襲撃の時までの俺だ。

 

「それ、いつの話だよ。俺は、とっくに自己犠牲の精神なんて捨ててるよ。…俺が死んだら、悲しむ奴がいるんだ。それなのに、そいつを置いて、自分だけ満足して逝くなんて、ずるいだろ?

 それに…もう今はいないけど、俺の幸せを願って死んでいった奴がいるんだ。あいつ自身は幸せになれなかったってのに、人の幸せばっか願う、優しいやつだったんだ。そいつのためにも、生きていかなきゃならない、って思ってる。」

 

「それでも……俺なんか居なくても、お前はともかく、あいつらはいつか人並みの幸福を手に入れるよ。」

 

「それは、自分たちのために、大量虐殺された人達の命を背負いながら?

 そもそもエレンは考えが甘すぎるよ。自分が突然悪に染ったように見せて、世界の敵になったからって、今までのエレンが消えるわけじゃない。

 いつかは分からないけど、いつか、アルミンかジャンか、それとも勘の効くサシャ辺りが、お前の本当の真意に気づくよ。俺がアイツらに話さないとしてもね。

 その時、お前によって殺められた命に、そいつらが心痛まないとでも?

 そもそも、お前がこれからやろうとしてることは、大量殺人。あの日、シガンシナ区を襲った、ライナーやベルトルトと同じことをしようとしてんだぞ?」

 

「もちろん、それは分かってる。けど、アイツらのためなら、他の奴らが犠牲になっても良いと俺は思ってるよ。」

 

 ああ、こいつはそういう奴だった。こいつは、自分の目的のためなら他人の何かが犠牲になってもそれを貫き通すんだ。

 

「お前は、昔からそういう奴だよな。他の方法を示せば、納得するのか?」

 

「他の方法が、あるのか?」

 

「あるよ。そもそも、お前の起こした大量虐殺の結末は、もう既に辿った道のりだ。

 

 ……俺は、転生者なんだ。前はループをしていたって話したことがあったよな?…転生者でもあるんだ。

 前世は…お前が大量虐殺をした後の世界だった。 

 

 俺は、小さい頃……シガンシナ区襲撃の前までは、兵士なんかには絶対にならない、って言ってただろ?」

 

「ああ。そうだったな。」

 

「俺の世界では、兵士なんて当たり前じゃなかったんだ。確かに、戦う職種はあったけれども、それは、殺し合いをするためじゃなかった。

 だから、俺の反応は、俺の前の世界じゃ当たり前なんだ。お前らからしたら、信じられない世界だろうけど。

 この、戦争だらけの世界も、いつかは戦争から、別の、平和的な方法に纏まる。

 

 俺の世界で唱えられていた、学術。何だか分かるか?

 『地ならしのなかった世界で起きること』なんて本が流行った時期があってな。お前の大量虐殺が無かったら、俺たちの文明は1歩も、2歩も進んでいた、とか、戦争の時代が200年早く終わっていた、とかがあったんだ。

 お前が大量虐殺をすることで、人類は一丸になる。そんなことは、無かったんだよ。人類は半分以下になっても、昔の文明や技術を巡って、争っていた。

 共通の敵ができたら、人類は一丸となるだろう。そんなことは、まやかしだったんだよ。

 確かに、パラディ島の、アルミンを筆頭とした、元調査兵団の連中は軒並み、英雄として教科書に載ってた。

 けどさ、そんなことが、本当に彼らの幸福なのか?

幸せかどうか、って他人に決められるようなものじゃないだろう。

 英雄になったからこそ、大変なこともあったり、命を狙われることもあったかもしれない。そういうことは考えなかったの?」

 

 エレンの目的は、自分という悪の根源を打ち払ったアルミン達を英雄として、世界にアピールすることで仲間達を守ることなのだろう。

 俺がそう言うと、今まで黙って聞いていたエレンは何を思っているのか分からない複雑そうな顔をこちらに向けて、怒鳴った。

 

「お前に何が分かるんだよ!俺だって、これ以外に方法が無いか、探した。けどな、見つからないんだ!何一つ。この、進撃の巨人が示すことが、最善だってことなんだよ!」

 

 風が俺とエレンの間を吹き抜ける。流石に冬の夜は寒い。

 エレンの気持ちも分かる。進撃の巨人を受け継いできたもの達はこの結末に向けて己の13年を費やしてきた訳だ。それを成し遂げるのにも、それをしないと決断するのにも、相応の覚悟と勇気がいる。

 それに、彼一人ではこの状況を打開する策は見つからないのは当然だろう。

 

「いいや、それはエレン、君一人でやろうとしているからだろう?

 二ファと俺が加われば、出来ることは3倍になる。

 例えば、王家の力を持つ巨人を利用して、パラディ島を守る、とか。」

 

 俺の例え話に、エレンは目を見開く。

 

「そんなことが、可能なのか?

 そもそも、王家の力を持つ巨人なんて、どうやって探すんだ?」

 

「エレン、君が最初に座標の力を使った時を思い出してよ。」

 

 エレンが最初に座標の力を使ったのは、エレン奪還作戦の時だ。

 あの時エレンと接触した巨人は、王家の血を引く者がなった無垢の巨人だった。

 

「母さんと、ハンネスさんを食った巨人か…しかし、その巨人は既に死んだはず。」

 

「そう、その巨人は死んだ。けれども、もう1人、王家の血を受け継ぐ巨人がいるだろう?」

 

「ジーク、か。しかし彼はこちらに友好的ではないと思うが…」

 

 ジークなら、二ファが連行して拘束しているはずだ。

 

「そうだね。だから、拘束しているよ。」

 

 

「そう、か。それなら…

 しかし、俺の力は誰に引き継ぐ?

 それに、始祖ユミルのことは?まさか、まだ巨人を作らせる訳じゃねえよな?」

 

 始祖ユミルというのは、座標で2000年間巨人を作り続けている少女のことだろう。

 

「まず、エレンの力は、エレンの寿命が尽きる最後の時、二ファが食うはずだ。そして、二ファは寿命が来てもすぐ、間を開けずに生まれ変わる。そして、転生した存在は、前の巨人の力を引き継ぐことが分かっている。

 これは、俺と二ファの、繰り返した経験によるものだけど。

 それに、始祖ユミルのことに関しては、まず新しい巨人は生み出させない。今いる巨人が最後だ。

 そして、地ならしの力で他国に牽制している間に工業化を進める。これに関しては最終決戦時に捕らえたマーレ兵の捕虜に技術協力をしてもらって、できるだけ他国に追いつくまでの期間を短くし、他国と渡り合えるだけの戦力を持った時、巨人の力は放棄するように宣言を行う。」

 

「同期達は、それで、助かるのか?

 幸せに、なるのか?」

 

「もちろん、そうだ。いや、幸せになるかは人次第だけれども、平穏な暮らしは手に入れられるだろう。

 

 思うに、俺とエレンって似てないか?俺も、お前も、最初は復讐が目的だったのに、いつからかそれは仲間のためになって、仲間のために自分を犠牲にすることも厭わない覚悟があった。

 俺だって、仲間に、そしてエレンにも幸せになって欲しくて、ここまで進んできたんだ。今更その目的を変えるつもりはないよ。」

 

 俺はテーブルに置いていた肘をそこから離して、エレンのことを真っ直ぐ見る。

 

「そう…か。

 進撃の巨人は、未来を見る力だ。これによると、俺は、大量虐殺をする未来しかなかった。

 これは、どういう事だと思う?」

 

「元々俺と二ファは、この世界にいるはずじゃない、部外者みたいなものだからね。未来は見えないのかもしれない。

 

 なあ、エレン、大量虐殺なんかするより、たとえ信じられなくても、全世界にパラディ島の悲劇を発信して、平和を伝えていくことが、これから俺たちが世界に認められていく為に必要なことだと、そう思わないか?」

 

 俺は、今日1番訴えたかった部分をエレンに告げた。

 彼はまだ悩んでいる様子だ。けれど、エレンの気持ちがこちらに少し傾いてくれているのは確かだった。

 

 

「俺が言いたいことはそれだけだ。

 後は、お前の選択だよ。

 お前らの、物語だろう?」

 

 

 そうなんだろう?二ファ。

 元々は俺たちがいるはずのない世界。ここで皆を救けることを目標に頑張ってきたけど、最後の選択くらいは彼らに任せるべきだ。

 

 

 選んで、実行しなきゃ何も変わらない。あの時、まだシガンシナ区に巨人が来る前、エレンと話している会話を夢で見て、そう思ったんだ。

 

 あとは、エレンが、そしてパラディ島の皆が決めることだ。

 

 ただ話すだけ、言葉にするだけではない。実行するんだ。

 

 どうにかするために必死に考えて、非現実的でもやってみないと分からない。

 

 今、俺たちは最初の1歩を踏み出す。

 

 前世、いや、ずっと祈ってきた人類の願い。

 

 平和への第1歩だ。

 

 

 

 

 

 

 

(アルミン視点)

 

 

「聞いて下さいよ!ノアがまた、よく分からない賞を貰ってきたらしいですよ!」

 

 ベロンベロンに酔っ払ってるサシャが、ビールの入っているジョッキを机にドンッ!と打ち付けて話を切り出す。

 

「ああ、今回はなんちゃらデザイン賞みたいなやつだっけか?」

 

 コニーは適当なことを言っているけど、近からず遠からずって感じだ。

 

「ユニークアイデア賞だね。」

 

 ノアが今回貰ったのは、確か『パラディ島を豊かにしよう!キャンペーン』で、生活を豊かにするアイデアを募集していた中での賞だったはず。

 

「そんなのはどうでもいいんだよ。

 俺たち最近、暇すぎやしねえか?」

 

 ジャンが言うことには頷ける。マーレとの戦いがあった、ウォール・マリア奪還作戦。あれから何年か経って、僕達はようやくお酒が飲める年齢になった。

 

 あれから色々あったけど、年々調査兵団の仕事は減ってきて、調査兵団とは別の業務なんかに回されることの方が多くなってきた。

 

「平和の証だよ。」

 

 確かに暇だが、兵団が暇なことはいいことだ。争いが無いってことなんだから。

 

 そんな話をしていると、僕達が飲んでいる個室に誰かが入ってきた。

 

「遅れてごめん。

 もう始まってる?」

 

「この店でお前らいっつも飲んでたんだな。」

 

「常連だってアルミンから聞いた。」

 

 ノアとエレンとミカサ、そして、

 

「あ、お久しぶり!

 今日は無礼講だからね。」

 

「女王サマー、こんな治安の悪いとこ、本当は入っちゃダメなんですよー(棒)」

 

 ヒストリアに、そのお付の人が板についてきたユミルが部屋に入ってきた。

 

「ええ、ヒストリア呼んでたんですか!それならそうと言ってくださいよー。」

 

 サシャが酔っ払った勢いでヒストリアに物理的に絡み出す。

 

「おい、サシャお前、ヒストリアに触るな!

 私のだぞ!汚れる!」

 

 ユミルがサシャを引っ張っているが、離れないようだった。

 

「あそこはいつも通りだね…。」

 

 ノアはもはや諦めた目であの状況を見ているみたいだけど…

 

「ヒストリアは正真正銘の女王様だぞ?あんなことして、サシャは不敬罪にならなきゃいいが…」

 

 エレンもため息を吐いてノアの隣でその様子を見ていた。

 

「そういえばエレンにノア、ミカサも久しぶり。最近は任務も違ったし、会うことは少なくなってきたから、会えて嬉しいよ。」

 

「久しぶり!」「おう、久しぶり。」「久しぶり。」

 

 このメンツが揃うと、シガンシナ区のことを懐かしく思い出してしまうものだ。

 

 ウォール・マリア奪還が完了してから数年。シガンシナ区も復興作業がほぼほぼ終わったような状態で、いつかはみんなでまた訪れようと話していたのだった。

 

「会ってすぐで悪いんだけど、あの話、どうする?」

 

「シガンシナ区に寄るって話のこと?」

 

「そうそう!僕は来月の前半に休みがあるんだけど…」

 

 うーん、とみんなで予定を話しながら、その日を決めた。

 

 僕達が予定を立てている横では、ユミルとサシャでやっぱり何か一悶着があったらしく、大騒ぎだったが、毎度のことだ。

 見て見ぬふりをしておいた。

 

 

(ノア視点)

 

 そして、シガンシナ区に訪れる日になった。

 

 それぞれ空いている日は違ったけれど、休日をずらすことが叶って、幸い皆同じ日に行くことができた。

 

「ねえ、ここ、僕たちがよく大騒ぎを起こしてた、出店が並んでたとこだよね?」

 

「うん。確かにそうだと思う。」

 

 噴水があって、人がいて、店があって。

 この平和な景色を取り戻せたのは俺たちが命をかけて守ったものがあったからだ。

 

 そう改めて実感した。

 

「おーい、そこの兵士さんたち!何か買ってかないかい!?

 ……って、アルミンじゃないか!それに、エレン、ミカサ、ノアも。

 大きくなったねえ。」

 

 俺たちは出店のおばちゃんに呼び止められたけれど、どうやらそのおばちゃんは前もここで出店をやっていた果物屋のおばちゃんらしかった。

 

「噂で調査兵団に入ったっていうのは聞いてたけど、もしかして、あんた達がここを取り戻したのかい?」

 

 俺たちは顔を見合わせた。

 ちょっと照れくさいけど、皆で頷いた。

 

「そうかい、そうかい。

 本当に、ありがとうね。

 そんじゃリンゴ、持ってきな。」

 

 気前の良いおばちゃんは袋にリンゴを詰めてこちらに寄越した。

 

「え、いいんですか?

 せめて人数分はお金払いますよ!」

 

 アルミンが遠慮がちにそう言うが、おばちゃんは『いいよいいよ、この街を救った英雄だからね。』

 そう言って袋を押し付けて、客引きを再開していた。

 

 

「こんなに一杯…貰っちゃっていいのかな?」

 

「ああ、俺たちにそれだけ感謝してくれてるってことなんだよな。」

 

「くれたんだから、遠慮なく貰えばいい。」

 

 エレンとミカサがアルミンにそう言う。

 彼らはリンゴを頬張りながらあの場所は…と、懐かしんでこの街を歩いている。

 

 『英雄』か…。

 

 俺がエレンを説得して、同期たちを『世界の英雄』にしない選択を促した。

 

 この選択が良いのか悪いのかは今は分からない。けれど、あのことがあったから、今のパラディ島はこんなに平和なんだ。

 

 この場所から始まった、今世での俺の人生は、色々あったけど最終的にこの街で決着をつけた。

 

 あれからはもう、悪夢も見ていないし、二ファにも会わずじまいだったが、彼女は今もどこかで悠々と生きていることだろう。

 

 これからの事はもう、『記憶』には無い。けれど、自分の選択に責任を持って、向き合いたい。

 

 この選択がどんな結果でも受け入れて、俺は皆が、仲間が救われる道を、そして、自分が幸せになる道を探していくことしか出来ないのだから。

 

 





※長い長〜いあとがきです。読むのめんどくさいなと思ったら読まなくても大丈夫です。


 ここまで読んで下さった皆さん、本当にありがとうございます!
 この小説はこの話をもって完結となります。

 最後の展開や、終わり方については色々と言いたいことがある方もいるかもしれませんが、すいません、これが作者の限界でした…!! 矛盾点など沢山あるかもしれません…が、つつかないでやってください( . .)"

 そもそもこの小説は、作者が『進撃の巨人』のアニメ版にどハマりしまして、ハーメルン等を漁っていた時に、他の作品の二次創作より、『進撃の巨人』単独の二次創作って、少なくね?(※個人の感想です)と思って、衝動的に書き始めた作品です。というか、読み漁りすぎてハーメルンで『進撃の巨人』と検索して上の方に出てきた小説はほとんど読んでたので、新たに自分で作ってみようかなと思った次第です。なので、もしかしたら他作品の影響を受けている所もあるかもしれませんが、意図して取り入れたりはしていないので、もしそういう部分があったらすみません!
 また、漫画が買えなくてアニメ勢なので、漫画勢の方は変に思った箇所等あるかもしれません…。

 だんだん最初に書こうとしていたものから段々ズレていっていたのですが、こうして完結して、読者の皆さんもお気に入りや評価も頂いて、本当に嬉しい限りです!
 途中途中、更新中断してお待たせした件については本当にすいませんでした…!<(_ _)>

 今後は新しいものを書くか、はたまたこれが最初で最後になるか分かりませんが、本当に、ここまで読んでいただきありがとうございました!
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