他の者達が巨大化したバーンに驚く中、ハドラーちゃんだけは別の意味で驚いていた。
「似てる!」
「は?……何に?」
ロカの疑問にハドラーちゃんは素直に答えた。
「鬼岩城だよ。まるでバーンの今の姿を鬼岩城のデザインモチーフにしているかの様な―――」
「ほぼ正解とだけ言っておこう」
ハドラーちゃんの眉がピクッと動いた。
「正解だと?」
「鬼岩城は余の果たせぬ夢を具現化した巨大なる玩具……の筈であった……」
ハドラーちゃんはちょっと引いた。
「果たせぬ夢?太陽の光を魔界にまで届かせるのは、実現出来ぬ夢だと?」
ハドラーちゃんの勘違いに対してクスッと笑うバーン。
「そうではない。邪魔な地上界の完全消滅は必ず果たす。ただ、この姿でそれを成し遂げるのは無理だと思っていた」
「……大抵の雑魚はここまで辿り着けないからか?」
「いや……それだけではない。白状するとな、1度こうなると2度とかつての姿には戻れん」
バーンの予想外の言葉に一同が驚く。
「魔力の源たる自分自身が行えば2度とは元に戻れないであろう事もな」
だが、ここでハドラーちゃんは矛盾にぶち当たる。
「では、どうやってその姿を鬼岩城のデザインモチーフにするのだ?」
バーンは段々イライラしてきた。
「余の勝手な想像だ。だが、もうその事はどうでも良い。敗北よりは良い……敗北よりは!大魔王バーンの名だけは守り通す事が出来る!」
フレイザード2号は、そんなバーンの勝利への執念が理解出来なかった。
「その為に使ったのか…!自ら封じた力を、勝利の為だけに!」
が、バーンはあっけらかんと答えた。
「フハハハハハ!それもまた良し!三界を支配する恐怖の魔獣となって畏れられ続けるのもまた一興よ!」
「遂に本性が出たなバーン!」
バランの皮肉は無視された。
「ハドラー!200万年後から来た超魔生物!お前にさえ勝てれば!お前に勝つ事が!今の余の全てなのだァァァ!」
アバンは、改めて人間と大魔王バーンは絶対に相容れないと確信した。
「愚かなり大魔王バーン!貴様は自ら他者との繋がりを絶った!そして、貴様は思い知るだろう……孤独が持つ力の限界を!」
しかし、アバンの啖呵はバーンに一蹴された。
「その言葉、今の余に勝ってから言え……最凶の魔獣が勝つか、それとも貴様が言う繋がりとやらが勝つか……勝負だあぁーーーーー!」
鬼眼王バーンの巨体による怪力は手を振っただけで相手をぶっ飛ばし、残るはハドラーちゃんとバランとフレイザード2号だけとなった。
「は!聞いて呆れるわ!残りはたったの3人か?やはり量は質の敵ではない!」
だが、フレイザード2号は不敵な微笑みを浮かべた。
「そう言うけどお前……その姿で天地魔闘の構え出来んのかよ?」
そう言うフレイザード2号は、既に
「食らいな……
確かに、今のバーンは強力な呪文や暗黒闘気による技を駆使していた本来の肉体と違い、原始的な殴る蹴るの打撃が中心だが……
「フェニックスウイング!」
「そっちはできるんかぁーい!」
跳ね返された
「無駄だ!」
肩当から無数の誘導性能付きの光弾を放ってフレイザード2号の体力を削った。
「ちょ!?……これじゃあ炎と氷の黄金比を生み出す暇が無い!」
そして……フレイザード2号は無数の光弾の中に埋もれ、倒れたアバン達の許へと落下した。
「ちくしょおぉーーーーー!ぎゃ!?」
「ぬおぉーーーーー!」
その隙にバーンの腹に真魔剛竜剣を突き刺そうとするバランであったが、対するバーンは唯一の弱点である腹部の鬼眼から破壊光線を発射する。
「ぬおぉーーーーー!?」
それでも怯まないバランであったが、バーンは腹部の鬼眼を硬質の瞬膜(瞼)で覆い保護。バランのの全力が込められた真魔剛竜剣に亀裂を入れる。
「なにいぃーーーーー!?」
その驚きがバランの致命的な隙となり、バーンの巨体による怪力は手を振っただけでバランをまるでギャグマンガの如くぶっ飛ばした。
そして……バーンの残る敵はハドラーちゃんだけとなった。
「ふっ。どうだ?所詮、質を怠り量に頼る愚者の力はこの程度。そうとは思わぬか?ハドラー」
対するハドラーちゃんは頭をポリポリと掻いた。
「……本当は、アバンの言い分を全否定したくなかったんだよなぁー。俺はアバンを底知れぬものを持つ人間族の異能者と認め、種族に拘らず優秀な能力を持つ人材を部下としてに集める懐の広さに嫉妬し、俺の死に場所はアバンの腕の中でも構わないとさえ想った」
「だからどうした?」
アバンがバーンに軽蔑されている気がしたハドラーちゃんがムカついた。
「だから……もう手遅れかもしれんが、今の貴様を全否定したくなってきた。貴様ではなくアバンだからこそ、誰もが喜んでつき従うと。信じるに値しない者に、部下は身を投げ出さないと!」
ハドラーちゃんは右腕に覇者の剣を生やし、超魔爆炎覇の構えをとる。
「そんなハッタリが通じる相手か」
無数の誘導性能付きの光弾がハドラーちゃんを襲うが、ハドラーちゃんは超魔生物としての肉体の再生能力を使って無視した。
「うおぉー!」
今度はアバン達を1発KOした巨体パンチがハドラーちゃんを襲うが、ハドラーちゃんの突進は止まらない。
「がっ!?……ぬおぉー!」
ならばと腹部の鬼眼から破壊光線を発射するが、ハドラーちゃんが目を閉じただけであった。
「うおぉー!」
だが、真魔剛竜剣にヒビを入れるほど頑丈な硬質の瞼がバーンの腹部の鬼眼を覆ってしまう。
「それがどうしたあぁーーーーー!」
それでも、ハドラーちゃんは覇者の剣をバーンの腹部の鬼眼に突き刺した。
真魔剛竜剣にヒビを入れるほど頑丈な硬質の瞼が相手。本来なら、ハドラーちゃんの覇者の剣なんか簡単にへし折ってしまう筈だ。
だが、ハドラーちゃんは覇者の剣に自身の命を糧とする事で形成される『生命の剣』を上乗せする事でそれを防いだ。
「だぁあぁーーーーー!」
そして遂に……ハドラーちゃんの一撃が、バーンの腹部の鬼眼に届いた。
「これが……200万年分進化した超魔生物の力か……」
「いや……違う」
ハドラーちゃんはそう思いたかった。
どんなに強大な力を持とうが、たった1人では魔王に成れない。
多くの魔を従えて初めてその者は魔王になる。
前の時間軸のハドラーが分かっているフリして気付かなかった事だった。
ガンガディアやバルトスが言ったハドラーの安否を案じるが故の言葉を自分勝手に無下にしたからだ。
だが、前の時間軸で何度もアバン達やダイ達と戦った事でその事実を思い出させてくれた。
だから、今のハドラーちゃんは解る!
ガンガディアの想い。バルトスの想い。親衛騎団の想いが。
「見損なったぜ……バーン!てめえは残酷だけど孤独じゃなかった。今までも何度か会話したが、そん時にゃ魔王の威厳みたいなものがまだあったぜ……!それがこんな誰も近付けない暴力に頼るとはよ……とうとう落ちるとこまで堕ちたな!」
「近付けない?ふっ、皮肉か?」
「違う!バーン……今の貴様に、誰が自由を投げ捨てて従う?誰が命を賭けて護る!?今のお前は勝利の為にその姿になったのではない……大魔王の椅子を捨てて孤独に成り下がる為にその姿になったのだあぁーーーーー!」
ハドラーちゃんは今まで自分に従ってくれた者達への想いを覇者の剣に籠め、バーンの腹部の鬼眼を突き破ろうとする。
「多くの魔を従えるからこそ魔王であり、魔王は1人にして成らず!それが、魔王と孤独の差だ!超魔……爆炎覇あぁーーーーー!」
「ぐおぉーーーーー!?」
ハドラーちゃんは漸く、大魔王バーンを倒した!
「魔王と孤独の差……だと?」
バーンは理解出来なかった。彼は常に弱肉強食の世界に生き、『力こそ正義』と言う信念に縛られてきた実力主義者だったからだ。
故に、全知と全力をもって弱肉強食の世界の頂点に立てば、自ずと全てが自分に従うとばかり思っていた。
だが、ハドラーちゃんはそれを否定した。
「そうだ。今の貴様の後ろに誰がいる?」
「後ろだと……」
物理的に見れば、バーンの腹部の鬼眼を命賭けで突き破ったハドラーちゃんしかいない。だが、精神的に視れば……
「……誰も……いないか……」
バーンはここで漸く、自分の敗因を理解した。
バーンは強過ぎた。そして、万能過ぎた。
だからこそ、誰もが気軽にバーンに近付く事を困難にしてしまった。
それは本当に王のするべき事なのか?
いや、違う。
誰もが気軽に従い、誰もが気軽に護る。
それが王だ。多くを従え慕わせる王が目指すべき姿だ。
でも、バーンは劣化した魔界の環境への恨みから、魔物と魔族を魔界に押し込めた神を憎み、自分が神に成り替わろうとした時点で、バーンの王道は魔を従えるとは程遠い『邪道』へと堕ちたのだ。
そして、バーンがその事に気付くのが、致命的に遅かった……
腹部の鬼眼を失ったバーンが石化・爆散。鬼眼王の肉体は砕け散り、瓦礫と共に隕石となって地上に振り注ぎ、バーンは上半身のみが石化した状態で自ら求めた太陽を背に宇宙空間へと消えていった。 こうして地上の存亡と太陽の恵みを賭けた死闘は、大魔王の敗北という形で幕を閉じたのだった。
「さらばだ。魔界の……いや、孤独だった神よ」
そのまま太陽に焼かれると言う皮肉な最期を迎えたバーンを見届けたハドラーちゃんが呟く様に言った。
「帰るか。俺の……大切な部下共の許へ」
やっと全てを終わらせたハドラーちゃんは、帰る事にした。
自分に従ってくれる……ありがたい『仲間』の許へ。
テレビアニメ版ハドラーの追悼を目的として執筆を始めましたが、次第に展開が迷走し、長編となってしまった同人小説でございます。
こちらも来月をもちまして、今度こそ完結を迎える運びとなりました。
これまで長きにわたり、私の勝手気ままなお願いに快くお付き合いいただきました事、深く御礼申し上げます。