訳ありはどこにでもいる。簡単な話。   作:諸喰梟夜

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大筋にはあまり関係なかったりする。切り捨てていい訳ではないけど


11. 幕間【仄】

 

【仄】

 

 マンションのエントランスを出ると、親友はもうそこにいた。

「雫!おはよう!」

「ふぁ………おはよ」

 挨拶は返ってきたけど、雫は大きなあくびをして目をこすっている。

「珍しいね雫…眠れなかったの?」

「ちょっと調べものが白熱しちゃって…」

 

 雫もそんなことあるんだなぁ…とぼんやり思っていた私はその時、走ってくる足音に気がつかなかった。あ、ほのか後ろ!という雫の声に反応するが早いか、突然ドンッ!と後ろからぶつかられ、私はよろけて倒れそうになった。

「ひゃあ!?……っわ、え?」

 …けど、想子(サイオン)光が一瞬見えたあとにぐんっと引っ張られる感覚があって、気がつくと元通りまっすぐ立っている自分がいた。雫も目を丸くして固まっていた。

 

「完全に俺の不注意だったごめん!大丈夫?」

「あ、はい!大丈夫です!」

 声をかけてきたのは第一高校の制服を着た、同じくらいの背丈で前髪の長い男子だった。大丈夫と告げると相手は「ならよかった、じゃ!」と言って、カバンを持ち直して走り去った。

「あ、ちょっと!……行っちゃった」

「…」

「…あれ?…雫…?」

 

 想子光があったということは魔法を使われたんだろう。あの一瞬ですごいな…と思っていたけど、隣で雫が完全に固まっていることに気がついた。

「…すご…」

「え?」

「…さっきの男子、CAD使ってなかったんだよ」

 

 

 ❁ ❁ ❁ ❁ ❁

 

 

「…ってことがあって」

 朝、廊下で合流したエイミィと識に、私と雫はこの話をした。

「えっと…倒れるところを引っ張りあげるってことは」

「たぶんベクトル反転。あと減速も入れてるはず」

「それをとっさで、かぁ…すごい早業じゃん」

「得意分野だけどそんなとっさにできる気がしないわー」

 

 二人ともはーっと感嘆の声をあげている。その気持ちは私と雫も同じ。

 CAD…普段私はアシスタンスと呼んでいるけれど、これは魔法の発動を簡略化・高速化するためのもの。つまり魔法は生身でも使えないことはないけど、使うときに比べて使用者への負担は大きいし、発動までの時間も長くなる…本来は。

 だけど、名前のわからない彼が使ったベクトル操作は本当に一瞬だった。…もしかしたら、アシスタンスありの私よりも早いかも。

「上級生?」

「それはわからないけど…」

「制服もカバンもまっさらで新品っぽかった。…あと私、たぶん会ったことあると思う」

「えっ!?ちょっと雫、聞いてないよ!?」

 

 まさかの爆弾に思わず大きな声が出てしまった。当の雫は腕組みして難しい顔。

「いや、私もさっき思い出したから…中学のとき、どこかのお屋敷にお邪魔したときに見た顔…まあ前髪が長いから、顔と呼ぶのはちょっと微妙だけど」

「っ、…?」

「…識?どうかした?」

 なんだか「前髪が長い」のあたりで識が挙動不審になった。気になって声をかけると、頬に手を当てて考え込む様子。

「うーーーん…ちょっと心当たりがあるというかないというか…」

「どっちなの」

「該当しそうなやつは知ってるけど………にしては親切すぎるから違うかなーって」

「親切さで判断するの…?」

「まあ他人様の喧嘩を笑顔で眺めてるタイプだよね」

「「うわ」」

 おどけた様子で語る識に、雫とエイミィの声が重なった。いや、「うわ」はやめなよ…。

 

「ところで、そろそろチャイム鳴っちゃうと思うよ」

「あー…確かに。じゃあまたあとでね」

「放課後、屋上に集合ね~」

 エイミィの言葉にうん!と返すのとほぼ同時に予鈴が鳴ったので、いそいそと教室に入る。今朝の話はそこでおしまいで、また話題に上ることはなかった。

 

 

 

 

 





・ほのか
今回の語り手。【ほ】はなんかなぁと思って勝手に漢字変換
当事者①。引っ張りあげられた。

・雫
当事者②。傍らで見てた。
雫がほのかのおうち行くんだろうか…?と書いてから思ったけどまあ……たまには…あるんじゃない……!?
ちなみに"どこかのお屋敷"の家の子も既に登場済

・エイミィ
聞き手①。
そういえば小柄って聞いてたけど優等生のほうだとよくわかんないな…(とても今更


・識
聞き手②。
なお、心当たりは合っている



・男子
残念ながらその他人様の喧嘩を笑顔で眺める彼である
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