そもそも平行してるもの多いし…
【幻】
「
一般に放課後と呼ばれる時間になった直後。激しいハウリングを伴った突然の放送に思わずぶはっと吹き出してしまった。変なものを見る目を向けてきた隣席の女子と正面に座るゆっきーにごめん、と軽く謝っておく。反対側のマモはこちらには無反応だったので放置。
放送の主は"学内の差別撤廃を目指す有志同盟"を名乗り、……あとはよく聞き取れなかった。クラスでも血気盛んな面々がやいのやいの抗議してたから。
「こんなとこから何言っても届かんて。元気なのはいいけどエネルギーの無駄無駄ぁー」
「まあそんなこと言ってもな…おっと」
ゆっきーが端末の画面を見ておもむろに立ち上がる。
「ん?ひょっとしてフキンノヨジ?」
「長音が全っ然足りてねえ。放送室が不法占拠されてるとのことで呼び出しだ」
「あらま非公式。まあそりゃそうか」
小走りに教室を出ていくゆっきーを見送ると、こちらもちゃっちゃと荷物を整理することにした。
「帰ろうぜマモ~ここにいてもしゃーないわ」
「そうだねぇ」
まだぎゃいぎゃい騒いでる暇人もいる教室をあとにする。と、シキとばったり遭遇した。
「Heyお姉ちゃん今帰り?」
「言い方よ。まあその通り、なんだけどほたるんがもう新しい友達と一緒に行っちゃいました~というわけで」
「こういう変な騒ぎ嫌いそうやもんねぇ…とりまヨースケ拾いに行こうぜ」
…ヨースケで思い出したけど、これ敵意を向けられてるだけの一科生より巻き込まれる二科生の方がよっぽど迷惑だよなぁ。行動を起こしてるのはその行動力だけが取り柄な一部だろうし。忘れられがちだけどサイレント・マジョリティーはどこにでもいる。簡単な話。
廊下の人口密度が上がってきたし、さっさと降りますか。
❁ ❁ ❁ ❁ ❁
翌日、第一高校は面白いことになっていた。
なんでも、昨日放送室を乗っ取っていた…なんか安直で長い名前だった同盟とやらは、明日の放課後に生徒会と公開討論会を執り行うらしい。そんでその公開討論会に向けて、彼らは仲間を増やそうと、授業の合間を縫って精力的に
「はぁぁぁぁぁぁ…ウッッッッッッッザ」
「どうやらごきげんななめのようだ」
「どうやらもようだも何もご機嫌斜めじゃい」
昼食の席にて、いち早く食堂の角の一番奥まった場所の席を確保したヨースケは壁にもたれ掛かってゲッソリしていた。
なにぶん、同盟(笑)がターゲットとするのはその主張の内容もあって二科生。それゆえここまで半端なく絡まれてきたらしい。部活動勧誘週間の喧騒が思い出されるけど、活動団体は一つだけなんだよなぁ。それでここまでの大騒ぎとは…さすがは天下の第一高校*1。
ちなみにいつも通りの五人で行動してたら、ヨースケを指して「その二科生を解放しなさい」とか言われたのが俺は未だにツボだったりする。なかなか良質な腹筋の運動ですよこれは[要出典]。
現在このテーブルにはそのいつもの五人とゆっきー、さらにB組からの新メンバー・峯琥ノ葉(コノちゃんと呼ばせてもらうことにした)がいる。ほわほわした雰囲気をまとう彼女は、困ったようにヨースケに声をかけていた。
「なんというか…お疲れ様?」
「あのな……まだ昼やねん」
「よーすけなら正論突きつけて殴り飛ばすくらいできるでしょ」
「ほたるんはそのすぐに手が出るのをなんとかしようね…」
「正論も毎回やるとなったら現実的やないな…」
向こうが激昂して暴力沙汰になる可能性はあるけど、それに目を瞑れば正論突きつけはありかも?とか思いつつ。口にしたら「「「「目を瞑るな」」」」と斉唱された。解せぬ。
「お前には解せんやろな…」
「まあまあ、そこんとこはうちのゆっきーになんとかしてもらうから」
「おいこら、聞いてねーし決まってねーぞ急に呼び出しといて雑すぎんだろ」
「でも引き受けるじゃん」
「…まあ特にデメリットもねえしな。教室までは無理だが」
「^^」
「なんの顔だそれは」
さてさて、この件はすんなり決まったのでよしとしよう。すると今度はゆっきーがそれで、と口を開いた。
「あんたら討論会は行くのか?」
「「「「「行かない」」」」」
「私も~」
「…そうか」
ものの見事に五人で声が揃った。ちなみに他四人およびコノちゃんはそれぞれ部活らしい。俺はフリーだけどまあ、終わるまでどっかで暇潰しかなーといったところ。
「どういう意図の質問か聞いて大丈夫そ?」
「風紀委員としての質問だよ。当日は警備とかで就くことになるだろうし」
「なーる」
会話が終わって、ヨースケとゆっきーがトレーを片付けに立った…ところで、ぽつりと零したのはほたるんだった。
「…明日何が起きるか楽しみって顔してるわよね、幻人」
「ん?」
「あん?…」
食器を整理していたシキが顔を上げ、テーブルに背を向けていた二人も足を止めて振り向いた。マモはマイペースに食事を続けている。やれやれ、と思いつつ識から回ってきたトマトを急いで飲み込んだ。
「やっぱりほっちゃんは口数少ない代わりにそういうところ気づくよねぇ」
「しれっと新しい呼び名作んないで」
「…討論会以外にも何か起きるってのか?」
ずいっと詰め寄ってくるゆっきーをかわすように、空いたヨースケの席へ移動。ひゅー怖い怖い。まあ秘密にしておく必要もないとはいえ大声で話すことは若干ためらわれる。なので手招きして顔を寄せ合う形にした。コノちゃんもこの際巻き込んでしまおう。
「一応オフレコな。同盟(笑)の連中みんな妙なリストバンドしてるだろ?」
「あのどっかの国旗にありそうなやつな」
「むしろあったような気もする。笑うのはやめたげようね」
「へいへい。あれな、俺よそで見たことあるんだわ」
「マジか?どこで」
「ま、ちょっとロクでもないとこだよ」
そこでパッと顔を離し、背もたれに身を預ける。他のメンツもばらばらに席に戻っていく。
「なんというか、大変そうだね」
「慣れるとそうでもないゾ^^」
「そういうの狂っとる言うんちゃうか…知ってたが」
「…衛は妙に落ち着いてるわね」
「もう同じ意見共有してたからね」
「そりゃまあマモには伝えといた方がいいっしょ、『深瀬』が動くかは知らんけど」
「いやー…動くったって現役生は僕と姉さんだけだからなぁ」
何はともあれ、明日何が起きるか楽しみだね*2。
・幻人
大抵のことは笑い事。くるとる
トリコロールカラーのリストバンドについて知ってはいる
・衛(マモ)
鋼のメンタル1号
・之晶(ゆっきー)
D組の苦労人
余程のことがなければ引き受けるくらいの行動力はある
女子苦手(対面や対話は落ち着かないレベル)は健在なので食堂でもそういう配置だった
┌───────┐壁
│琥 螢 衛 庸│
│□□□□□□□│
│ 識 幻 之│
└───────┘通路側
・識
相手によってはツッコミに回らざるを得なくなるタイプ
食の好き嫌いが多い
・庸介
ゲッソリ
・螢
勘がいい一面も持ってる。でもやっぱりすぐに手が出る
・琥ノ葉
なかまいりをはたした!
ほわほわした雰囲気はなかなか崩れない鋼のメンタル2号。