訳ありはどこにでもいる。簡単な話。   作:諸喰梟夜

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※討論会とか諸々はない図書館スタートです。ご了承ください
オリ編を無事終わらせられるか不安になるけれど、わたしはげんきです。


17. 襲撃の一幕【衛】 / 【雫】

 

【衛】

 

 本日4月23日(土)、現在放課後。討論会を見に行ったメンバーが多いためロボ研を早く上がることになって、端末で手短に連絡をとると幻人は図書館にいるとのこと。

 

「なーんか空気がピリピリしてると思わん?」

 図書館前で合流すると、幻人は開口一番そう訊いてくる。

「さぁ……言われてみればそんな気もする」

「ま、あれだけ同士集めに東奔西走してた同盟の大一番をやってるわけだし。緊迫感はあって当然か…あ、ちなみにヨースケもソーサク君と来るってよ」

「美術部もかぁ」

「気になるわなぁ~言っちゃえば一科と二科のぶつかり合い?となれば少なくとも全校生徒の半数はいるっしょ」

 

 程なくして庸介と北くんも到着し、図書館に入ると一度解散する運びになった。北くんがあっという間にどこかへ姿を消し、庸介も探し物があると言って本棚の合間に消えていった。僕は何か目的があって来たわけではない手持ち無沙汰の身の上なので、足早に二階に上がっていく幻人についていくことにする。

「そういやずっと思ってたけどさ~ここの一階ってエントランス部分だけ張り出してるけど、あの上って出られるんかって」

「…見たところ無理そうだね」

「はーつっかえ……まあ特に安全柵とかもないし希望的観測だったけども」

 

 図書館に入ってすぐは吹き抜け。幻人が言うエントランス上のスペースは、階段を上ってすぐのここからよく見えるけど行くすべはなさそうだ。見たところ窓も開かないらしい。

「あ、隣は開きそう」

「いやー、さすがにそこまでして」

 窓に近づいたとき、外からすさまじい爆発音が響き渡った。

 

 

「なんやなんや?」

 階下から庸介の声。ほどなくして二階に上がってくる姿が見えた。

「やらかしたか…科学部」

「あったっけ?」

「いやなかったけど」

「ないんだ」

「ないんかい、あったか思ったわ」

 庸介ががくっと左肩を落とす。テレビで関西の芸人がやっていたコケ方をこんなところで見られるとは。

 

「息するように嘘つくのやめようね幻人」

「嘘つくように息してるんで大丈夫^^」

「どこが大丈夫やねん」

「せっかく幻の人なんて名前なんだしいいじゃん、名は体を表すんだぜ」

「それは傾向であって義務やない」

 下から「何事?」と声がして、庸介が「奥に引っ込んどいた方が安全なんちゃうか?」と返していた。どうやら北くんの声だったらしい。寡黙だから滅多に聞けない。…ん?

 窓の外、なにやら武装した集団が生徒と共に図書館にやって来ているのが見えた。庸介も見て「おぉ?」といぶかしげにしている。さらに横から幻人も顔を出した。

 

「何?司書増員?」

「あり得んやろこの状況で。格好も明らかにちゃうし」

「それはそう、でもなんかそういうベストセラーあったよね」

「あったあった、いいよねあれ」

「おい危機感仕事しろ」

 おっと、そうだこんな暢気な話をしてる場合じゃないか。…と思ったときにはもう幻人の姿がなかった。…一階に繋がる階段の方へ走っていく後ろ姿しか。

「あ」

「あー(諦め)」

 

 銃声と女子生徒の悲鳴が響いたその現場を、僕は思いのほか穏やかな気持ちで眺めていた。たぶん庸介も。

 

 

 ❁ ❁ ❁ ❁ ❁ ❁ ❁ ❁ ❁ ❁

 

 

【雫】

 

「なるべく跡が残らないようにはするけど」

 武装した男たちに取り囲まれた少女がそうつぶやいて、姿勢を低くした。私たちがいる場所からは少し離れているけど、声ははっきりと届いてきた。そして次の瞬間、

「…あたし不器用だから、失敗するかもねっっ!!」

 

 ―――何か衝撃音がした、と思った次の瞬間には、五人の襲撃者は地面に倒されていた。その真ん中で、少女は頭をかきながら深いため息をついている。

 私…いや、私たちは彼女を知ってる。部活動勧誘の期間中に出会った、識の親友。少女探偵団が発足したときに居合わせたけど、「あたしは参加しない」と言っていた。私は他の襲撃者がいないことを確認して、声をかけた。

 

「螢?」

「はぁ…なんだってこんなときに限ってコノハはいないのよ………ん?あぁ、A組の…北山さんに光井さん」

「雫でいい。螢はひとり?」

「…はぐれた、が適切ね。おかげで見ての通り面倒なことになってる」

 コスチュームにある文字列を見るに、クラウド・ボール部に入ったらしい。倒れている五人の男たちには目もくれず歩き出す螢に私たちもついていくことにした。…けど。

 

「面倒って…本当に一瞬だったけど、さっき…?」

 うん、私もほのかと同感。すると螢は足を止めて振り向いた。その手元にぽっ、と小さな明かりが灯った…小さな火だ。

 

「私の得意分野は振動系の加熱側…慣れてもけっこう加減が難しいのよ。さっきのは単純に、自分の体に使って強化しただけ」

「それってかなり消耗するんじゃ?」

「だから面倒なの……けど」

 

 もう一度歩き出した螢の足どりはさっきより速い。眉間に皺を寄せて、焦りが感じられる。

「けど?」

「うちの困ったさんがもっと面倒なことになってる気がするのよね…!」

「困ったさん…?」

「落ち着かない…けど、たぶんあたしが行っても意味がないし…」

「大丈夫なの?」

「…自慢じゃないけど、こういう勘はけっこう当たるのよ」

 





・衛
暢気。危機感も緊張感もどこかに落としてきて手元にない。
※彼はそれなりに規模のあるおうちの人間です。念の為

・幻人
マイペースが過ぎるぞ貴様…
謎の武装集団にちょっかいかけに行く謎(または恐怖)の思考回路をお持ちだった

・庸介
ツッコミ担当(粘り強くはなく、途中で諦めて溜め息つくタイプ)の苦労人

・蒼朔
北くんようやく喋った。一単語だけ。
読書に没頭するタイプで、余程のことがなければ…の余程のことが今回あったわけだが。

・壬生さん
!?

・なんかそういうベストセラー
語り継がれてるかリメイクか別作品かは想像に任せる

❁ ❁ ❁ ❁ ❁ ❁ ❁ ❁ ❁ ❁

・雫・ほのか
たまたま螢に出くわし、その身体能力の高さに驚いた

・螢
身体スペック高。小型かつ高性能。
勘冴えて悔しい人。
振動系の加熱側に適性が高い。今回の使用例は二次元でよく見るけど、これって実際どうなの課…?と思ったり。

・困ったさん
☑言及済み

・識
今回はお休み。また後でね~

・作者
今回の【雫】が短すぎて単独投稿できず、展開的にもこっちにねじ込んだ方がいいかなということでこう(再投稿に)なりました。迂闊。
オリ編の展開に懊悩を極めてOh,no!とか言ったりするけれどわたしはげんきです。

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