訳ありはどこにでもいる。簡単な話。   作:諸喰梟夜

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語り部のところは不本意ながらこうするしかなかった、とだけ書いておきます


19. 彼らのこと【エ】

 

【エ】

 

「!」

 剣道部の上級生と一旦間合いをとったとき右から気配。ちら、と見ると男子が三人……図書館に入るとき、達也くんが「二階の奥に三人いる」と言っていた。その三人だろう。

 一瞬警戒したけどエンブレムがあるからたぶん違う。それに今の状況わかってるの?と思うくらいのんびりしてる雰囲気で…

 

「チィッ…!」

 舌打ちが聞こえたと思ったら、さっきまで相対していた上級生が三人の方へ向かっていく。私たち側の援軍だと思われた?これは止めに入った方が―――

「あっ待て…っ!?」

 …って思ったんだけど。上級生は見えない壁に弾かれるみたいにして、あたしの目の前を横切る形で弾き飛ばされて尻餅をついていた。

 

「はいはいこっちは無関係やからな」

 一人目立って背の高い男子がそう告げる。…若干気勢を削がれた感じはあるけど、ここは乗っからせてもらおう。

「そうそう、あんたの相手はあたしよ!」

 

 

 相手を峰打ちで沈めるのは一瞬だった。まあ向こうには困惑の色があったし、正々堂々とは言えない勝ち方だったのが若干不満といえば不満だけど。

 振り向くともう三人の姿はそこにはない…と思いきや、さっきとは反対側の奥から一人増えて出てきた。…ん?そういえば見覚えのある顔…

 

「衛くん?」

「やあ千葉さん、大変そうだね」

 百家支流・深瀬家の衛くん。同い年で同級生なのは知ってたけどこんなところで学内ファーストコンタクトとは喜べない。声をかけると、いつも通りの穏やかな笑顔で右手を小さく挙げてくる。

「これを()()()()で済ませるあたり強いよね……状況わかってる?」

「まあなんとかなるんじゃない?じゃあ北くんも無事回収したし僕らはこれで」

「はいはーいっと」

 キタくん、というのは増えた一人のことか。さっきからは背の順ワーストが書き変わってる。けどさっきと同じ、相変わらずのんびりした雰囲気のまま四人は図書館を出ていく。…ん?一人スラックスに穴開いてるぞ?

 

 足音に振り向くと、階段を降りてくる壬生先輩と目が合った。

 

 

❁ ❁ ❁ ❁ ❁

 

 そういえば、特別閲覧室の前で脚を撃たれた生徒がいた。

 ブランシュのアジトに突入するメンバーを決めたタイミングで、壬生先輩がおそるおそるといったふうにそう伝えてきた。

「…でも、あなた以外には誰も運ばれてきていないわよ?」

「まだ現場に倒れている、のか?それとも…」

 思わず全員が視線を向けた先、安宿(あすか)先生の言葉に数人の顔がこわばった。けど実際に図書館に突入した達也くん、深雪さん、あたしの三人は思わず顔を見合わせる。

 

「ですが…私たちが着いたときには、もう誰もいませんでしたよね?」

 深雪がきょとんとして、再び達也くんに顔を向けつつ言う。達也くんは「ああ」とうなずいたけど、少し考え込むそぶりを見せて続けた。

「だが、確かにわずかな血痕だけは残っていた。場所からして、俺たちが倒した相手ではない他人と思われるものが」

「えっ、そうなの?」

 

 思わず達也くんの顔を見た。いやまあ、あたしはずっと階段の下にいたからそこまでは見てないんだけど。深雪さんも気づきませんでした、と目を丸くしている。しっかし脚を撃たれた…ふーむ……?

「…あ、あたし見たかも。その本人」

「何だって?」

「エリカ、本当?」

「違うかもだけど……遅れて避難してきた四人の男子がいてさ、一人だけスラックスの右脚に穴開いてるなって」

「そういえばオレも見たな、そいつ。でも普通に歩いてたぜ?」

「そだねぇ…全然なんともない感じの軽い足取りだったよ」

「あの状況で軽い足取り…ですか…」

 深雪さんはひきつった表情。そうだね、あたしもさすがに引いた。あとレオも見てたか。…にしても、どういうこと?

「治癒魔法ってそこまで早くないわよね?」

「あくまで応急処置ですからね…完治まではしないはずです」

 一同うーん…?と考え込む形になってしまった。一足先に保健室を出ていた十文字会頭は、廊下で誰かとなにやら話し込んでるらしい。

 

「……なんかもう、大丈夫そうだったなら大丈夫そうでよくねえか?それに急ぐんだろ?あちらさんが態勢を整える前に」

「根負け早すぎない?…と思ったけど、そうねぇ……四人とも本当にのんびりしてる感じだったし、これはもう後回しにしちゃってもいいかもね」

 …うん。若干不本意だけど、今回はレオに乗っかることにしよう。平然としてた当事者がここにいない以上、あたしたちが勝手に悩んでても意味がない。それよりも今は優先することがあるし。

「…そうだな」

 達也くんも深雪さんも、生徒会の面々もしぶしぶといった様子で承諾してくれた。保健室を出たら、そこには十文字会頭と、剣道部の桐原先輩の姿があった。

 

 あたしは、壬生先輩がその撃たれた生徒について"前髪が長い"って言ったとき、達也くんの顔色が少し変わったのが、まだちょっと気になってるけどね。

 

 

 

 

 





・エリカ
ここにおいて一番いい立ち位置と思って語り部にしたが難しい
場違いな雰囲気の三人(→四人)に内心困惑気味ではあった

・男子四名
衛→→安定のにこやか
幻人→安定のマイペース
庸介→空気を固めて上級生を弾き返した張本人
蒼朔→あとでちゃんと借りに来よう…って思ってる

・剣道部上級生
泣いていいと思う。


・@保健室
壬生先輩→思い出して不安になったが、
     軽い足取りと聞いて???ってなってる
レオ→見かけて少し気になった程度なので顔とかは見てない
先生・先輩方…重傷者のようで心配したけど、………?
深雪→軽い足取り……?
達也→血痕のことは後回しにしてあえて言わなかった。
   …まさか…な。
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