訳ありはどこにでもいる。簡単な話。   作:諸喰梟夜

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引き続き衝撃に備える姿勢(訳:自衛)をよろしくお願いします

実のところ、オリ編はまだ〆方を模索中だったりするのでゆっったり更新になります



23.彼女たちの事件(後)【雫】

 

【雫】

 

「いや~ひどい目に遭いました!^^」

「ひどい目に遭ったテンションじゃないよ識」

 

 横転したワゴン車から元気よく出てきた識は、その場で何かしてから悠々と戻ってきた。後ろから何か話し声がすると思って振り向くと螢が電話を切ったところ。

「とりあえず連絡は済ませたから、三人とも気にしなくていいわ」

「いやっ……いや、これを気にしないではハードル高くない!?」

「そうです!せめて説明はしてください!」

「私も、はいそうですかとは退けない」

 螢も識も何でもないことのように流そうとしてるけど、私たちが納得できるわけがない。三人で詰め寄ると二人はお互いに顔を見合わせる。

 

「……任せた!」

「断る。たまには識がやりなさい」

「えー…めんど」

「別に幻人みたいな壊滅的な説明力じゃないでしょあんたは」

「むー…しょうがないなぁ。まあ簡潔に言うと今、私が狙われてました。以上」

「「…いや簡潔すぎる(わ)よ!?」」

 ほのかと深雪のツッコミに対して、識はお腹を抱えて笑って…あきれた様子の螢に背中を強めに叩かれて「痛っ!」と悲鳴をあげた。今すごい音鳴ったけど大丈夫?

 

「世間一般には笑い事じゃないんだから真面目にやれ」

「はーい…厳密に言うと、狙われてるのは幻人君なんだけどね。ちょっと実家と色々あって。会ったでしょ?高塔幻人。襲われたときに」

「高塔くん?」

 そう言われて思い出した。少女探偵団が窮地に陥ったあのとき、深雪と一緒に来ていた二人。高塔くんは飄々とした態度の、前髪が長いのが特徴的なほうだった。…私はどちらかといえば、近くにいた月田くんの方が印象に残ってるけど。かなり背高かったし。たぶん達也さんと同じくらい。

「識あんたトラブルに巻き込まれ過ぎじゃない?襲われたときって何?」

「少女探偵団」

「だいたい察した。自業自得ね」

「「うぐ…っ」」

「待って螢、それはそっちの二人にも…う効いてるな」

「いや大丈夫…続けて、今は識の話だから」

 

 歯に衣着せぬ螢の言葉は耳に痛い…けど今はその話をしてるんじゃないから、続けるよう促しておいた。

「やっべ☆そうだった。それで、普段幻人君と一緒にいる私たちも狙われることがあるってわけ。特に私はなんか気が合うからガールフレンドとかだと思われてるのかもね」

「それで大丈夫なの?二人とも」

 不安げな深雪の問いかけに、識と螢は一度顔を見合わせ…また私たちの方に向き直った。識はいつも通りの笑顔で、螢は目を細め、凛とした表情で。

「心配することないよ、さっきの見たでしょ?」

「大丈夫じゃなきゃ一緒に居続けたりしないわよ。私はそこまで向こう見ずじゃないもの」

「それに私に関しちゃたぶん人質目的だろうし。この程度なんてことないよ」

「…そっか」

 

 

 今度は白いワゴン車が来て、少し離れた場所に停まった。とっさにCADを構えたら識に「いや、あのナンバーは知ってる」と制止された。降りてきたのはスーツ姿で青い帽子をかぶった男性。

「あれ、今回は(まなぶ)さん」

「うん。兄さんは忙しくてね」

「まあ次期当主ですもんねぇ」

「そういうこと。螢さんも久しぶり。お友だちと一緒だったかぁ……災難だったね」

 

 さらに別のセダンもやって来て、そこや白いワゴン車からぞろぞろと出てきた人が現場の処理を進めていくのをよそに、識と螢はその男性と話し込んでいる。…というか、

「私、あの人知ってる」

「えっ雫?そうなの?」

「深瀬学さん。百家支流の深瀬家の人。私も面と向かって話したことはないけど」

「深瀬…向こうの仲良しメンバーにいたよね、確か。ひょっとして雫のお家も?」

「うん。ビジネスパートナーになってる所のひとつ」

「そうなのね…」

「君たちは大丈夫かい?怪我とか」

「あ、はい!」

「問題ないです」

 

 話してたら学さんがこっちに来ていた。そして私を見て『おや?』という顔をしている。自然と背筋が伸びた。

「君は確か、北山さんのところの」

「はい、北山雫です」

「識が何か迷惑かけてないかい?」

「…たぶん、大丈夫です」

 軽く戸惑いつつ返事すると、学さんは「そうかぁ~」と…何を聞かれるかと少々身構えていたので、ちょっと拍子抜けしてしまった。

「迷惑かけてるの前提だなんて心外だなぁ」

「あんたは自省してからもの言え」

「はにゃ?」

「可愛くない」

「あの…よくあるんですか?二人が襲われることって」

 

 安定のやり取りを始めた螢と識は、横転した黒ワゴン車の近くにいた人に呼ばれて離れていく。そこで、不安そうな様子のほのかが学さんに質問をぶつけていた。

「まあ…特に識は、ひと月に数回くらいかな」

「そんな…そんなこと、私たち全然…」

「それはそうだろうね…本人としても巻き込む人を増やしたくはないだろうし、それに識は心配されるのが苦手だから」

「苦手って…」

 

―――私はまだ、倒れるわけにはいかないんだよね!

 細い路地で襲撃されたあの時、識がキャスト・ジャミングに抵抗しながら叫んでいた言葉。あのときは識が倒れずにいられることにただただ驚いたし、それができるから"まだ倒れるわけにはいかない"んだと、そういう意味だと思ってたけど。…それに、助けが来たときの第一声。

―――はぁ…遅刻だぞーまったく…

 少なくともあんな、紙みたいな真っ白な顔色で言うことじゃなかった。…それを言うなら、初めて会ったときだって。

 

「…識って…すごく強いんだと思ってたけど」

「端から見ればそうでしょうね。実際強くはあるけど」

「ぅわぁ螢!?」

「…螢、ひとこと言ってから入ってきてほしい」

 離れていった学さんと入れ替わるように、いつのまにか螢が戻ってきていた。

「以後気を付けるわ…話を戻すけど、あいつは平気を装うのがちょっと上手いだけよ」

「ちょっと…なの?」

 首をかしげる深雪。…深雪みたいな美人のこれは破壊力すごいな、と私は(たぶんほのかも)思ったけど、螢はやっぱり眉ひとつ動かさない。

「私たちは別に問題ないけどまあ、心の片隅にでも留めておいて」

「何々?なんの話?」

「あんたが自省しないって話」

 戻ってきた識はえーっ?とか言って螢に絡んでいる。…それがあまりにもいつも通りすぎて、先ほど誘拐されたばかりだということをうっかり忘れてしまいそうだった。

 

 

❁ ❁ ❁ ❁ ❁

 

「…やっぱり、不安なものは不安だよ」

「私も…」

 振り向いてももう現場は見えない場所まで来ているけれど、どうしても後ろ髪を引かれる心地で足が止まってしまう。

 

 あのあと、いつのまにか警察車両も来ていて、私たちもいくつか質問をされた。…当事者にしては妙に少なかったけど。

 そして数分後、現場がある程度片付いてきた頃合 、申し訳なさそうな顔をした識から『あーっと…とりあえず今日はここで解散にしていい?もともと帰るところだったし、このまんまここにいても危ないかもしんないし』と提案を受けた。…気になることはたくさんあったけど、実際識の言う通り。なので私たちは一足先に現場をあとにしたわけで。

 

「…深雪?」

 ふと、難しい顔をしている深雪に気づいて声をかけると、彼女はハッとしたような顔でこちらを見て、また眉を下げた。

「いえ…識も、それに螢も、妙に手慣れていると思ったもので」

「識はよく襲撃されるって言ってたけど…螢も全然心配してなかったよね」

「…住んでる世界が違う、って思った」

「わかる…」

 意図せずとも遠い目になってしまう。…けど、降りた沈黙が気まずくなってきて、ふと気になったことを確認することにした。

「…そういえば、さ…黒いワゴンから戻ってくるとき、識が何かしてたけど」

「…なんか、『軽くどついて眠らせた』って言ってたね…」

「直接触れてないなら…空気弾かしら?」

「振動系は論外って言ってたけど…他はけっこうできてるよね、識」

「あと、『スナイパーにはベクトル変換で返品した』って」

「そんなのいつの間に…?」

「そもそも、スナイパーを特定したのは?」

「遠くの音を拾うスキルを持ってるから、それだと思う」

「……対処ができすぎじゃない?」

「そう…だね……あのさ、深雪」

 …そういえば、深雪に大切なことを伝えていなかった。

「私、まだ話してなかったと思う。あとこれはほのかも見てなかったかも」

「えっ?」

「何?」

「私たちとエイミィが襲われたあのとき…深雪が来るちょっと前まで、識はキャスト・ジャミングに抵抗してた…抵抗できてたんだよ」

「っ!?…それは」

「対処できる…ってことは、さ」

「…経験済み、でしょうね」

 そういえば、覆面の男たちが現れたときにも識は「やっぱりか…」とつぶやいていた。…本人が大丈夫って言うなら、そう…なんだろうけど、だからって黙っていられるわけがない。…でも。

「…私たちにできること…あるのかな…?」

 ほのかがぽつりとこぼした言葉に、私は何も返せなかった。…ただ、深雪は何かを決心したような表情を浮かべていたけれど。

 

 

 

 

 





・雫
識も螢も対応ができすぎてて呆然とした。住んでる世界が違う…
そしてここで新情報、深瀬は北山家のビジネスパートナーのひとつ。11話で出た"どこかのお屋敷"は深瀬家でした^^

・識
すでに普段通りのテンション。※誘拐されかけました
そして犯人をしれっと軽くどついて眠らせる系女子。狙撃返品は収束系の障壁+ベクトル変換を使いました。なので銃が爆裂してるかも、と深瀬の人に伝えてある。オリキャラ随一の推しがチート気味になっていく…
心配されるのは苦手。なるべく自分(たち)だけで解決して余裕の笑顔で済ませたい。なおいかに苦手かはこれから遺憾なく発揮()される模様
 
・螢
連絡先は深瀬だった。前回からお察しだが識のことはまったく心配してない
容赦:なし
識が平気を装うことはある程度周知しておきたい

・ほのか
状況に全然ついていけていない。放っておけないけど…できることあるのかな…

・深瀬学
深瀬家当主の次男坊。報せを受けてやってきた
実は在学中は二科生だった一高OB

・深雪
次回は彼女のターンです


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