訳ありはどこにでもいる。簡単な話。   作:諸喰梟夜

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お待たせしすぎました(断言)。お手数お掛けしますが再びの衝撃に備える姿勢をお願い申し上げます。
タイトル分けてるけど実質前後編

2095/5/26(木)


27.【雪】それはあまりにも一方的な

 

【雪】

 

 深雪、エリカ、達也さんの三人が識たちを探していると話すと、ほのかと雫も三人に同行してくれることになりました。なんでも、居場所に心当たりがあるそうなので。

 

「何があったの?」

「…識が襲撃を受けてる件なんだけど…実は先週、識から"来月までには落ち着く"って言われたのよ」

「え!?私たち何も聞いてないよ!?」

「二人には控えてたみたいだし…私が話したってことは秘密でいいかしら」

「わかった…それで、今日は?」

「…D組とG組。ほかの三人が揃って()()()()()で休んでるのよ」

「それは…何かありそうだね」

「けど二人とも、ほんとにそこにいるの?」

「"何かあったらとりあえずそこ"らしいから、きっといるはず。―――ほら」

 …正門を出てすぐ右側。さっきまで門の陰になって見えなかったそこに、目的の二人の姿はありました。

 

「来るんじゃないかとは思ってたよ?まさかそんな大所帯になるとは思わなかったけど」

 言いながらこちらを向いた識も、ポケットに手を入れたままの螢も、見たところは普段通りですが…。

「D組の二人が"家の用事"で学校に来ていないと聞いたから、もしかしてと思ったのよ」

「それで二人に場所を聞いて、私たちのとこまで来たわけだ。…そんで、あなたが噂のお兄様?」

「ああ…噂の内容にもよるが。司波達也だ」

 

 やや固い表情で認めるお兄様。一方の識はそっかぁ、と軽くうなずいています。…初対面のはずなのですが、そういう風に見えないのは識がお兄様と同い年だと知っているからでしょうか?

「素敵なお兄様としても風紀委員としても噂はかねがね。…で、それからほのしずと…後ろのあなたははじめましてかな」

「千葉エリカよ。テニス部の」

 識の言葉に口を挟んだのは螢。…えっ?

「エリカ…知り合いだったのか?」

「あー…たまにテニス部にも顔出してくるからさ。あたしが剣道部に行くのと同じ感じで。…まさかこんな形でも会うとはね、螢」

 そう言ってエリカは挑戦的な笑みを浮かべますが、螢の態度は…表情すらも変わる気配がありませんでした。

「別にどんな形でも、会うときは会うでしょう」

「そっけないなあ」

「これがほたるんだよねぇ」

 

 ❁ ❁ ❁ ❁ ❁

 

 識の提案で移動したカフェ、テラス席の一角。

「一品くらいなら私払えるから注文していいよ、普段からぜーんぜん使ってないし」

 注文を聞かれた際に識はそう言いましたが、さすがに遠慮しておきました。…でも言われてみれば、以前のショッピングでも識はあまり物を買っていなかった記憶があります。

 

「さてと、それじゃあまず確認だけど、みんなどこまで把握してるのかな?」

 パチンと手を叩いて言った螢に、私たちは顔を見合わせ……先に口を開いたのは雫でした。

「私たちは本当に…識たちが襲われることがあるけど、深瀬家と連携して対処できてるってこと程度しか…そっちは?」

「…おおむね似たようなところだな。付け加えるなら、それらの事件が全て深瀬家の管轄とされていることか」

 

 …私とお兄様は、八雲先生を通して既に多くのことを知ってはいますが、軽々しく話せるようなことでもないのでまだ誰とも共有していません。…エリカは深瀬家が管轄としている件について、身内に警察官がいる彼女を通して確認をとるため巻き込んだ形ですが。

「そっかそっか~。じゃあ、何が聞きたい?」

「識、螢。あなたたちはいったい何に巻き込まれているの?」

 まっすぐ尋ねたのは雫。

「…犯罪組織の()()()()、ってとこかな…念の為言っとくけど、巻き込まれてるんじゃないよ。私たちはちゃんと参加してる。当事者として、ね」

「…犯罪組織の」

「悪あがき…?」

 ほのかと雫が顔を見合わせています。……事情を教わっている私でも、"悪あがき"という言い方には眉をひそめました。

「あーっと…ほたるんこれどっから話せばいいと思う?」

「知らないわよ、情報開示なんだから開示してけばいいだけでしょ、私たちが相手してるのは宗教団体にして反魔法団体としても知られる『星人(せいじん)(きょう)』。といっても、だいたいは27年前の残党よ」

 

「「「『星人教』っ!?」」…ちょ、ちょっと待ってそれ本気!?」

 …螢の口から出たのは、かつて反魔法を唱えてたびたびテロを起こし、27年前に解体された宗教団体の名前。一切の遠慮がないカミングアウトに対し、エリカがぐいぐい二人に迫っていきました。

 それはさすがに、と止めに入ろうかと思いましたが、螢は冷静にぐい、とエリカを押し止めてしまいます。

「事実に本気も何もないでしょう」

「こういうとき遠慮なくなるよねほたるん?これ以上はちょっとアレなとこあるんだけど?いっちゃう系?」

「行動力お化けのあんたに言われても何も響かないけど何か?それに割り込んででも止めないんなら、どうせ許可は下りてるんでしょ」

「そうだけどさぁ」

「許可…って?」

 

 またしても二人だけの会話に突入していましたが、雫が聞き返すとぱたりと会話をやめ、識が答えました。

「私たちの事情…幻人君が中心だから、詳しく話そうとしたら幻人君の許可が要る。…まあ割と簡単に下りるし、みんな言いふらしたりしないだろうから話すけど」

「あ、割と簡単に下りるんだ…?」

「まあ幻人君図太いし…それに、むしろ今回は向こうからOK来たんだけどね」

「え?」

「それって…?」

「さあ~?正直幻人君が何を考えてるかは私たちにもさっぱり。…さてと、みんなの覚悟が決まったところで本題に戻らせてもらうね」

 

 それはあまりにも一方的な言葉でしたが、異を唱える声は誰からも挙がりません。平然と話を続ける識は、そこで顔の前に人差し指を立てて示しました。

「星人教が狙ってるのは他でもない幻人君。…どうしてだと思う?」

「どうしてって…」

「…こういうこと言うのもあれだけど…何か、恨みを買うようなことでも?」

「あっはっは、言うねえ雫~。幻人君ならやりかねないのはよくわかるよ。…でも、そうじゃない。端的に言うなら、幻人君が()()()だからだよ」

「忌み子?……って、まさか」

 首をかしげたほのかと雫の後ろで、エリカが顔色を変えたのを見て、識はぱちんと指を鳴らしました。

 

「お、わかっちゃった?たぶんそのまさか。…あそこは幻人君の実家なんだ」

 

 識の語りに耳を傾けつつ、私は八雲先生から教えられたときのことを思い出していました。

 

 

 

 

 





・深雪
識とのやり取りを兄に話したあと、意を決して本人を直撃することに決めた
幻人君の出自は八雲先生から先に聞いている。次回

・識
セッティングはしたけど後の事はあんまり考えてなかった。あくまでも行動力の化身だからね仕方ないね
何でも軽妙に語れてしまう厄介(?)なタイプ
意外と物欲に乏しい

・螢
容赦はログアウト中。だって古御堂識とかいう名前の行動力お化けが発端だもの
ここはすぐ二人の会話になるな………百合になる予定はない。念の為

・エリカ
こんなところに興味本位でついてくるべきではないと思う。本気か?
螢とは知り合い…というか、魔法なしでも強いのでお気に入りではある

・達也
深雪から報告は受けていた。立場的には今回も付き添いに近い
幻人君の出自は八雲先生から先に聞いている

・ほのか・雫  
そこはかとない巻き添え感があるけど彼女たちも気になる側


・『星人教』
"純然たる人間"を教義の中核としており、そこに含まれない筆頭として挙がるのが魔法師。設定自体はは元からあって他意はないんですよ念の為

・幻人
重大なカミングアウトを他人に任せる思考回路。俺たちにできないことを平然とやってのける。そこにシビれ(ry 
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