訳ありはどこにでもいる。簡単な話。   作:諸喰梟夜

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二日目、2095/04/04、昼休みまで


3:【識】毎度思うけど強すぎでは?

【識】

 

 翌日、早めに教室に来て自席を見つけ、さっそく端末を起動して規則等を読み込み、受講登録だけ済ませておいた。

 

「っし、これで終わりーっと」

「わ、早いね…」

「おわっふ、びっくりした、いつの間に」

「いや、今来たところだよ。来るのもだいぶ早いよね」

 そう言いながら後ろの席についたこの子は(さくら)(こう)()(あか)()。昨日のホームルームでできた友人その一。

 そこへ、えいやーっ!とか言いながら赤髪の少女が紅葉に抱きついた。まあ元気……この子が友人その二、(あけ)()(えい)()。イギリス人とのクォーターで本名はもっと長い。エイミィって呼んで!とご希望なので沿うことにしている。

 ちなみにエイミィは小柄なので、女子の中では長身な私との身長差がやばい。今は私が座ってるから気にならないけどな。

 二人して空々しい笑い声を交わしているのを見たときは何してんだ…と思ったけど、結果的にはいい友達ができてよかったと思う。

 

「わ、シキはっや…もう受講登録までやったの?」

「やっぱり時間に余裕があるに越したことはない、って私は思うんだよ」

「なるほど…」

「私たちはまだ入学したばっかり、早いうちに多く知っておくのは悪いことじゃないっしょ?」

 そうだねぇ、と言いつつ紅葉もポケットからIDカードを取り出したので、「それじゃ、またあとで!」とエイミィは自席へ戻っていった。けどすぐ他の生徒に囲まれている。しゅごいにんきもの…確かにあの人柄に心引かれるものがあるのはわかる。にしてもちょっと大変そうだ。

 

「さーてっと私も絡みに行くか~」

 隣の列の一番前。そこが螢の席だ。見ると螢も受講登録を行っている。

「ほたるんほたるーん♪」

「あんたもか貴様」

「二人称ぶれてるのウケるんだけど」

「ウケるのは試験と感銘ぐらいにしなさい…。で、何?」

「大したことじゃないっちゃ大したことじゃないけど、お昼一緒に食べようってさ」

「ええ、いいわよそれくらい…というか元からそのつもりだったし」

「わーい」

 ハイタッチをスルーされたところで予鈴が鳴った。

 

 

 

 ❁ ❁ ❁ ❁ ❁

 

 

 

 オリエンテーションはすぐに終わり、専門授業の見学も済ませ(わあっと言う声の上がる方にはだいたい総代さんの姿があったね。さす総)、昼休憩のため解散!となったところで、エイミィと行動を共にしていたらしい紅葉が声をかけてきた。

「識、お昼一緒にどう?」

「あーごめんね、先約があるんだよ」

「そっかー…!それ、あたしたちも相席していい?」

 おや?断ったはずなんだけどエイミィはもう一歩近寄ってきた。ぐいぐい来るね…そんなにご一緒したいかい?ここが幻人君なら「なんの意味がw」とかってばっさり切り捨てそうだよ。

 まあ私はやらないけど。そもそも断る理由ないからさ。ただちょっと懸念事項はひとつ。

 

「んー…まあいいけど…その、確認だけど一科生とか二科生とか気にしますかい?」

「まあ…特には」

「ね」

「…ならいいよ」

 結局押し切られる形になった。螢を呼んで、エイミィと紅葉もついてくる旨を伝えると「識がいいならいいでしょ」とのこと。うーんストイックというかいいかげんというか。いいかげんはむしろ私だと思ってるけどなぁ。

 

 

 

 ❁ ❁ ❁ ❁ ❁

 

 

 

 でさ、まさか食堂でウザ絡みされるとは思わなかったよね。うん。

 

 食堂のテーブル席に集まったのは8人。いつものメンツである私、螢、幻人君、衛君、庸介君に、私についてきた紅葉とエイミィ、それと庸介君もクラスメイトを一人連れてきていた。北蒼朔(きたそうさく)君という小柄な男子…いやほんと小柄。中一と言われてもうなずけるぞ。

 …なのだが、問題は無駄に目敏いのが近くの席にいたことだった。ここはあくまで食事の場なんだけどなぁ…なるほどなるほど、わざわざ席を立って絡みに来るあたりよっぽど暇なんだとお見受けした。

 

「ちょっんぐ!?」

「気にしないで~こっちの問題だから、紅葉もね」

 隣でエイミィが何か言いかけたけどすぐさま口を塞いで、その向こうで心配そうにしている紅葉にも釘を刺しておいた。二人は今日たまたま居合わせただけなのだから関係ない。正直むしろ参戦された方がややこしい。

 入りたくなる気持ちはわかるけどさ?今目の前ではウザ絡みしてきた一科生君(ここは敬意()を込めてMr.選民思想君と呼ばせていただこう☆)と幻人君がおしゃべり()している。こういうときはやっぱり妙に弁が立つ彼だ。幻人君が相手し出してからほたるんはまったく意に介さなくなった。毎度思うけど強すぎでは?

 

 G組の二人は…庸介君は、隣のそーさく君を気遣いつつ平然と食事を続けていた。やっぱりか。庸介君はこういうの本当に気にしない。自分の家の古式魔法に誇りがあるから、現代魔法の出来はちっとも気にしてないんだよね。真面目だから勉強はしてるけど、で?という感じ。同じ古式魔法の家出身としては古式魔法師の鑑だと思う。

 しかし北君のほうはそういうわけではなく、まだ現代魔法界隈に足を踏み入れたばかりの一般家庭なのだという。…ほら~北君がみるみるうちに暗く沈んでくでしょうが。何?「一科生としての誇りはないのか」って?

「人としての成長には邪魔でしかないでしょう?」

「持つのはいいけど、オフにまで持ち込むのはナンセンスだよね」

「僕はそもそも誇れるような成績じゃないからさ」

「家の掃除機に吸わせちまったかなあ」

 …上から順に螢、私、衛君、幻人君である。衛君は何かあったようで卑屈に磨きがかかっている。そんで幻人君は字が違うな?はは、私もちょうどその同音異義は皮肉が効いてるなと思ってたところだよ。

 向こう(Mr.選民思想君)は数秒ほどポカンとしていたが、はたと我に返ると「ふざけるな!!」と怒鳴ってきた。いやぁいい顔だった。…エイミィ笑い声漏れてる、もうちょっと抑えて。

 

「ふざけてんのは君でしょーが。残念だけど、意気揚々と火種投げこんだところでここにそれが燃え上がる環境は整ってないんだわ。無駄に目敏いと思ったけど、ふたを開けてみればその程度だったね☆」

 あ、語尾に星がついた気がする。そろそろ鎮火した方がいいかな?*1と思ったところに、おいそこ!!と鋭い声が飛んできて肩が跳ねた。相手が舌打ちひとつ残してそそくさと去っていったので、そちらを見ると風紀委員の腕章をつけた人物…

「あ、姉さん」

「「「「えっ」」」」

 衛君の発言に、B組二人&G組二人で声が重なった。

 

 

「へぇ~お姉さんが風紀委員」

「うん、そうなんだ」

 衛君はエイミィの言葉にうなずいた。彼と同じ色のおさげ髪が印象的なこの風紀委員、名前は深瀬(かなで)さんといって、衛君のお姉さん。現在ひとつ上の新2年生。本人は幻人君に話しかけている。

「一科と二科でいざこざが絶えないとはいえ幻人君?きみ思いっきり喧嘩売ってたね?」

「いやーどうせなら向こうから昼休憩の時間ごっそり奪ってやろうと」

「…ね、あの二人距離近くない?」

 さっきの"おいそこ!!"と同一人物とは思えないな~と眺めていると横からエイミィがこっそりと尋ねてきた。目を向けている場所は同じ。ついでに紅葉も顔を寄せてきている。

 

「あ~…幻人君はちょっと、いろいろあって深瀬家に居候してたことがあるから。あそことは衛君だけじゃなくて家族ぐるみで仲がいいんだって」

「…なんだか複雑な事情があるのね」

「そうだね~複雑。少なくとも私が説明できる域は越えてる」

 

 そんなこんなで私たちは昼食を済ませた。そういえば遠くの方で何か騒いでたようだけど私たちは知らない。見てないし聴いてないしなんといっても関係ないし。北君も調子を取り戻したようでよかったよかった。

 

 

 

 

 

 

*1
敬意()を込めた辺りの自分のことは棚に上げた




・識
蹴り倒すほどヤバイやつには出くわさなかった。友達が二人できた
ちなみにエイミィのように"サクラ"と呼ばないのは、実の姉が"古御堂桜"のため。しかし現時点では登場予定がない

・紅葉・エイミィ
というわけで、はじめに関わる原作キャラはこちらのB組メンツとなりました

・幻人
何やらおしゃべり()慣れしてる怖いもの知らず(複雑な事情持ち)

・螢
つよい

・庸介
識の言う通り、家の古式魔法ができてる(実際かなりの腕前)から現代魔法の評価は気にしてない

・衛
地味さが発揮される回であった。()
入試成績、一科生最下位であったことをどこからか知っている

・北蒼朔
入力に手間取る名前はさておき、小柄で寡黙な読書家

・深瀬奏
深瀬家長女(上にまだ兄が二人いる)。風紀委員の枠を一人分拡大して投入した
おこるとこわい


・著者
脚注機能使えてテンション上がった

・誇りを掃除機に吸わせた
実のところ今回はこれを出すための流れと言ってもよかった()
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