あまりにもお久し更新
すっかり他にお熱ですが 細々と進めてはいますよ…
【雪】
「…あら」
九校戦懇親会の会場で、ふと見覚えのある人物を見かけました。ウェイターの格好をして、他校の生徒と話しています。
「深雪?…ああ」
「どうかした?」
合流していた雫も同じほうを見て、納得した様子。ほのかは気づいていなかったけれど…
「んー?…あれ、庸介君接客なんだ?」
「あっ…!」
識が名前を出したことでわかったみたい。識や螢が名前を出していた月田庸介君。どうやらエリカたちと同じように、スタッフのアルバイトをしているよう…こうして姿を見るのは、ほのか達のもとへ駆けつけたあの路地裏以来のことです。
話している相手…紫がかったおさげ髪の方は、誰でしょう?あまり見覚えはありませんが…あの
「おーい庸介君やーい」
「識!?」
…まさか、識がためらいなく話しかけに行くとは……ほのかのちょっと待って、という制止も届きませんでした。月田君は記憶の通りの無愛想な顔で振り返り、向かいの八高生は…
「ようそんな躊躇なく突っ込んでくんなぁコミドーサン?」
「よそよそしい~
「せやねぇ、もうちょい落ち着きが欲しいかな。前も言うたけど」
「反省の色がないっちゅうことやな」
「私が染まらないばっかりに…」
「やかましい」
…平然と、いえ、自然と溶け込んでいますね…?というか、識の口から名前が出たということは…
「…知り合い?」
「私は八高二年の門馬
「なんだかんだよく集まるからねー深瀬の提携先」
「うちは遠いから本当たまにやけどね」
そう言って、門馬先輩は気さくな笑顔を見せました。…そういえば、たしか"月田流は皆伝をもらえば全国に散らばる"んでしたか…『門馬』も、その一つの例なのだそうです。
エイミィは「識って部活の先輩には礼儀正しいんだよ」と言っていたので、馴れ馴れしい様子に驚きましたが…なるほど。すでに何度も会っているから、なのですね。
「遠く北海道まで…」
「まあ、"皆伝を得たならば世に奉仕せよ"ってな感じの教えがあって、それで散らばるからな」
「庸介くんは東京やけど、私は瀬戸内からはるばる札幌やからね…もう気候違いすぎてなかなか慣れんかったよ」
「瀬戸内?」
「あー…地域区分としては?言うて海そんな近ないけど。ほな俺は仕事戻るな」
「あれ?もう行っちゃうの?」
「話すことはだいたい話したし、そろそろ戻らんと怒られそうやから」
月田君は一方的にそう告げると、テーブルに置いていたトレーを手に取って…ふと視線がぶつかりましたが、軽く会釈を返されただけ。そのまま足早に去っていきました。
「逃げられてもうたね、識」
「むう…残念」
「淡白…」
「庸介君はあれがデフォだよ。真面目クンで素っ気ないの」
不満そうに口を尖らせる識。そういえば、初めて月田君を見たときも…高塔君との丁々発止の会話こそあれど、私やほのか達にはとても淡白な対応でしたね…それでいて人見知りのするようでもなかったので、口調こそ軽いものの事務的な方、という印象がありました。
「あ、一応言っとくけど、二科制云々は特に関係ないからね。一人離れちゃって
「うん…まあ、そうだろうとは思ってた。初めて会ったときも、全然気にしてない感じだったし」
「面倒事かわすの上手いしねぇ庸介くん」
「最近は引きずられていったりしてるけどね」
「相手が悪いとそうなるやろな…あ、そうそう、識!私な、今回ピラーズ・ブレイクに出んねん。相性ええやろ?」
「あぁ、結界術と?」
「そう!私自身まだまだ皆伝には遠いけど、まあ修行の一環にもなるし。何事も経験よ」
「いいんですか?こんなところで言っちゃって…」
「別に遅かれ早かれわかるやん?せやから、そっちも教えて~いうわけやないよ。これは友達の友達のよしみってな感じで」
「はいはい!私クラウド・ボールに出ます!」
「お~識は得意やもんねぇ。全力かましてったれ☆」
「はーい!」
「かま…?」
…盛り上がる識と門馬先輩に、すっかり置き去りにされてしまっています。識、相手が螢の時…いえ、それ以上に元気そうですね……。心なしか、周囲の誰もが
この2人、あまり頻繁に会っているわけではないようでしたが…とてもそうとは思えません。…気を許せる身内の間柄、ということでしょうか―――少し、羨ましい気もします。
その後、他の八高生徒に呼ばれた門馬先輩とは別れ、識も「ちょっとお花摘んでくるね☆」と言い残して会場を出ていき*1、A組の3人だけになった折。
「…
――ふいにかけられた声のほうを見れば、第三高校の生徒の姿がありました。
❁ ❁ ❁ ❁ ❁
【雫】
「あーーもう!嫌な感じだった!!」
懇親会のあと、各自いったん部屋に戻ることになったんだけど……ほのかは二人部屋のベッドに腰かけるが早いか、我慢ならないとばかりに叫んだ。
ほのかが荒ぶっているのは、さっき懇親会の会場で出会った三高の選手が深雪に放った「
「あの人って、ああ見えてかなり有力な選手なんだよ。
端末を起動、ホログラムの画面を呼び出して、纏めていたページを表示。…彼女は師補十八家『一色』家の令嬢で、得意種目はリーブル・エペー*2。中学の頃から数々の大会で優勝をおさめていて、その移動魔法を使った剣さばきの鋭さから『
「上級生を押しのけて本戦に!?」
「そういうことだね。あとの二人も同じ一年だから、新人戦で一緒になることも多いと思う」
「ぃ…今から気が重いよぉ…」
端末であとの二人…
そんなとき、ピンポーン…という音がした。さっきこの部屋に入るときに見た、ドア横に備え付けられたチャイムを誰かが鳴らしたらしい。
誰だろう?と身を起こして応対に出ていくほのかを追って、出てみると……部屋の前には、小物入れを抱えたエイミィがいた。後ろにはスバルも。
「エイミィ?どうしたの、こんな時間に」
「ふっふ~二人とも、温泉に行くわよ!」
「お、温泉!?」
「こんなところがあったなんて…」
唐突なお誘いに手早く準備を済ませて、エイミィたちについていった私たちを待ち受けていたのは…広々とした大浴場だった。
壁も屋根もある屋内施設だけど、内装は自然のままの露天風呂を意識しているようで、視線避けも兼ねてか青葉を繁らせる植栽が並んでいた。…なかなか豪華な感じ。
この温泉施設、本来は軍用の施設だけれど、今回九校戦の会場とするに当たって私たちにも使用許可が下りたらしい。マナーとして着用が定められている入浴着は、白い浴衣のようなもの。
「しっかしほのか、発育がいいよねぇ…揉ませろ~っ!」
「ひゃあぁ!?ちょっ…や、やめてぇ~!し、雫!助けてぇ!」
…あ、ほのかがエイミィに襲われてる。背後からわしづかみにして、ぽよぽよって………揉まれているほのかは顔を真っ赤にして、私に助けを求めてきた。…けど。
「…いいんじゃない?」
「ナンデ!?」
「…ほのかは、揉むところがあるから」
…視線を落とせばそこにある絶壁。なんだかいたたまれなくなってしまったから、放っておくことにした。エイミィの楽しげな声とほのかの悲鳴に背を向けて、個室のサウナに……
「おーおーやってんねぇ」
「あ、識」
…引っ込もうとしたところで、ちょうど大浴場へ入ってきたばかりらしい識と鉢合わせした。シャワーブースから音がするからまだ誰か来るとは思ってたけどエイミィ、識にも声かけてたんだ。
「雫は先に上がる感じ?」
「ううん、サウナに入ろうと思って」
「あ~個室完備って書いてたね。じゃ、またあとで!かな?」
「そうだね、またあとで」
「ん!…あっエイミィ、私も揉んでいい?っていうか揉むね☆」
「ちょ、ちょっとぉ!?識!?」
短い会話を済ませて…背後でまた上がったほのかの悲鳴で、識がエイミィの同類らしいことを知った。まあ、どうでもいいけど。
個室サウナのすりガラスの扉を開けると、こぢんまりとした板張りの空間があって…むわっとあふれ出してくる、大浴場とは質の違う熱気に出迎えられた。
膝より少し高いくらいの段差に腰掛けながら……そういえば、識と深雪が相部屋だったっけ。だったら深雪も………来てそう。識って押しが強いし。エイミィの同類だし。そんな思考が脳裏をよぎった。
「…どうしたの?」
…はたして。そのあとサウナから出たら、深雪がいつの間にか来ていて……ほのかがなんだか張り切ってる様子で、深雪は困惑、他はみんな気まずそうな雰囲気。そんな妙な状況に首をかしげることになった。
・深雪
今回はすっかりリアクション担当
一色さんが話しかけたのは以下3人だけのタイミングだったけど 懇親会の中でこのタイミング少ないんじゃないか…?と思うなど
・雫
クール担当(九校戦には燃えてる)
・ほのか
パッション担当(?)
コノハも参加してたらこうなってた(別にいいよ~とか言ってそうだけど)
・識
原作で深雪の相部屋は滝川さんだけどネ
知り合い相手なら遠慮なく突っ込んでいく行動力お化け
・庸介
コミュニケーション最低限タイプ 昔から変わってないらしい
・美雨
気さくでほんわかなお姉さん。庸介に比べると方言抜け気味
・エイミィ
仲良しなのでもちろん識も呼んだ
温泉シーンは原作と『優等生』との折衷形です
【 】
「おおっ!そうじゃ、思い出したぞ!」
「っ…何?沓子」
「一高の選手にいた『古御堂』じゃよ。聞き覚えのある名前だったのでな」
「聞き覚え…私はないけれど、いったいどこで?」
「まあ『古御堂』に関しては仕方がないじゃろうな。しかし、『深瀬』ならどうじゃ?」
「『深瀬』…?」
「確か、百家傍流にそんな名前の家があったような」
「そう、栞の言うその『深瀬』じゃ。いくつかの家と提携して、一般から他の百家まで様々な依頼に対応する…そんな仕事をしておる。そして、その提携する家のひとつが『古御堂』じゃ」
「私…全く知らなかったわ」
《color:#a9a9a9》「まあまあ落ち込むでない愛梨、無理もない。
「つまり…十師族は例外?」
「それと師補十八家も、じゃな。なんでも"『七草』の下位互換のようなものだから"という理由で、『深瀬』は十師族との関わりを最小限にしておるそうじゃ」
「その口ぶりからして、沓子は会ったことがあるの?」
「桜という姉のほうにはな。識という妹がいる、とは雑談のさなか聞いておった。…となると、少々ユニークな魔法を見られるかもしれんの」
「ユニークな魔法?」
「姉が使うところを見ていたんじゃよ。『古御堂』独自の古式魔法をな。見ている分には実に美しかったぞ」
「なるほど…古式、ですか」
「長らく現代魔法側との関わりが浅かったというから、ちょっとしたサプライズにはなるじゃろうな!ま、どの競技に出るかはまだわからんがの」
「そう…まあ何が来ようと、私たちは万全の状態で挑むだけよ」