訳ありはどこにでもいる。簡単な話。   作:諸喰梟夜

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書きためは現在入学編をどう締めようか悩み中

2095/04/04、放課後のあれ、+α


4:【識】いい笑顔してんじゃないよ +α

【識】

 

 …国立魔法大学付属第一高校、こんなに穏やかじゃないもんなんだなぁ…と、正門の前の人だかりを見ながら私はすっかり感心してしまった。や、褒められたもんじゃないが。

 

 遡ること数分前。私はエイミィや紅葉とは教室で別れ、螢と連れだって校舎を出た。昨日はホームルーム前の時点で解散してしまったので、今日はいつものメンバーで帰ろうと思い立って。

 少し待っていると男子勢三人がそろってやってきた。北君も来るのかな?と思ったけど、彼は図書館に用があったらしい。それで五人肩を並べて歩いていると、前方に人混みを見つけ、言い争う声が聞こえてきて、思わず誰からともなく立ち止まった。そして今に至る。

 

「わぁ~修羅場~^^」

「笑顔で言うことちゃうぞ幻人ぉ」

 笑顔の幻人君と、白目の庸介君。螢は私の隣で「正門前で何を…」とつぶやきつつ騒ぎを半目で見つめている。全く同意件、右に同じ。…いや左か。そして衛君は興味なさげに端末に目を落としていた。地味にすごいな君。

 どうやら一科生と二科生のいざこざであるらしい。ほんと正門前で何してるんだい…よく見るとあれ総代司波さんじゃないか……どれどれ…何?「お兄さんと一緒に帰る」?

 

「どっすか?耳がいい人」

「認識がひどくないかい幻人君、まあその通りだからいいけど……総代さんは二科の面々と帰りたいけど、一科生がそれを許さないってさ」

「ほーん…ま、首突っ込んでも面白くなさそうだし、とりあえず横通れそうか見に行くわ」

「面白そうなら突っ込んだのね」

「ご名答~」

 歩き出した幻人君からの軽い返答に、ご名答じゃないわよ…と螢は眉間を押さえている。とりあえず幻人君は横を素通りしていくことにしたようだ。

 それにしてもこっそり順風耳(仮)*1使ってたけどやっぱりばれたか。

 

「幻人君の面白そうのラインいまいちわかんないんだけど私」

「ただの喧嘩に興味はございません以上!」

「あ、そ」

 なんかいつにもましてテンション高いな…と思ったそんな折、

あなたたちブルームが今の時点で一体どれだけ優れているというんですかっ!?

 前の集団からそんな女の子の声がした。なんか雑音の少ないタイミングだったのでよく響き渡った。

「ブドウの実に付着している白い粉は水分などが抜けるのを防いでくれるそうですが…」

「ツッコミに困るボケええ加減やめーや」

 幻人君?それたぶん伝わる人が少ないやつ。現に今私がわからない。螢も見るからにわかってない。衛君は…たぶんわかってると思うな。

 というか、差別語として横行しちまってるやつをネタにする精神……と思ったところで、何か固いものがぶつかり合う音が聞こえた。よく聞いてなかったけどさっきの言葉で一科生の誰かが激昂したか。幻人君もさすがに足を止めたが、

 

「修羅場が活性化してきたか…^^」

「めちゃくちゃいい笑顔してんじゃないよ…?」

 割とガチで引いた。おいおい、見る人が見たら何を言われるかわかったもんじゃないぞ……まあ今はみんなの視線があのいざこざに集まってるし、それに何か言われたとしても幻人君だしなぁ……そんなことを考える私をよそに、正門前の集団はそこから一気に騒がしくなった。

 

「ほんとに活性化したわ」

「…これでもただの喧嘩?」

「おうとも」

「そう…」

「へぇ…こんな部活あるんだ」

「衛お前無敵か…?」

 そんな目の前の騒ぎはしかし、「全員そこを動かないで!」という声により一瞬で水を打ったように静かになった。私たちもちゃんと固まっ…いや衛君(いまはつよい)にぶつかられた。

 生徒会長と風紀委員長のお出ましのようだ。そりゃまあこんな騒ぎになったら来るんじゃないかとは思ったよ、これはいよいよ大騒ぎになるかな…と、私は端末に没頭してる衛君の肩を引っつかんで止めながら思った。…んだけど、

 

「すみません、悪ふざけが過ぎました」

と、誰か男子が場を納めていた。そしてそのまま特におとがめなしで済んだようだ。

 人だかりでよく見えなくてほとんど音声だから詳しいところはわからないけども、あれをここまで鎮静化する腕前には素直に感服した。シバタツヤ…ね。一応覚えとくか。E組ならたぶん会うこともないだろうけどさ。

 

 人だかりは思ったよりあっという間にぞろぞろと散っていった。

「やっと正門開いたなぁ」

「…ん?ああ終わった?」

「「衛(君/は)無敵なの?」」

 さっき庸介君も言ってたツッコミが私と螢の口から飛び出して、幻人君が声をあげて笑った。

 

 

 

【 】

 

「うーん…?」

「どうした?真由美、新入生のデータベースとにらめっこして」

「摩利…いやね、どうも百山校長が気にかけてる生徒がD組にいる、って先生方の間で噂になってるみたいなのよ。それが気になってね」

「校長?……となると、彼じゃないか?深瀬衛。深瀬の家とは縁が深いだろう」

「私もそう思ったわよ。たしかに深瀬は百山校長と付き合いの深い家、けれど彼は一科生の中で最下位の成績だった生徒、ではあるんだけれど…どうも違うみたい」

「違うのか?」

「というか、深瀬の子ならもう風紀委員に一人いるじゃない、去年はこんなことなかったと思うけれど?」

「あぁ…そうだった。弟が入学したって言ってたな。じゃあ誰なんだ?」

「わからない…。校長本人もとくに何も言わないし…でも、気にかけられるほどの何かがあるのは確かよねぇ」

「それはまず間違いない、と思うが…」

「あ、姐御」ベシッ!!「…痛いです委員長」

「噂をすれば影だが姐御はやめろ奏」

「すみませんつい…一科と二科でいざこざがありまして。こちら報告書です」

「ああわかった…早速ちらほら出ているな…」

「そうですね、今回は弟の友人がすみません」

「知ってるヤツなのか…」

「はい…ところで噂をすれば、とは?」

「いや実はねぇ、校長が気にかけてる生徒が1年D組にいるって噂があって」

「おい真由美、」

「そうなんですか………もしかして幻人君では?」

「げん……あぁ、高塔幻人…こいつか?確かに入学早々トラブルメーカーになっているが」

「諸事情あってしばらくうちに居候してたんです。校長とも面識はあるはずです」

「あ、さっき弟の友人って言ってたわね………その諸事情って、聞いちゃっても大丈夫かしら?」

「踏み込みますね会長…残念ながら。私もそこまで詳しくは聞いてませんし、あまり気持ちの良い話でもないので。すみません」

「そう…わかった。けどがぜん興味が湧いてきたわね。どんな子なの?」

「私から見ても本当にただただ無邪気なトラブルメーカーですけど…どうしてもどこかに入れたいというなら保健委員でしょう。治癒魔法の腕があるので」

「…一年で、すでに"()()()()"なのか?」

「はい、適性が高いみたいです」

「面白いじゃない…!今年の一年は本当に期待できそうね!」

「ああ、そうだな…」

 

 

 

 

 

 

*1
私のは先天性スキルだし、一般に認知されてるやつとはなんだか違うらしい




・識
地味に行動力の塊。幻人とはとても仲良し
先天性(の割にややこしい)スキル登場。視覚に依存する点で順風耳とは異なるが、まさかの正式名称をつけていない適当っぷり。いくらCAD無しで行けるからって軽率に使うな

・幻人
面白そうなら首を突っ込む…が、本人のフィーリング次第。かなりノリで生きてる。人にどう思われるかとか知らんし
そんな人柄でありながら治癒魔法強者であることが判明した
入学早々トラブルメーカーになるのはやめようね

・庸介・螢
ツッコミに回る二人
しかし後者、実はひそかに強行突破も考えてたりした

・衛
こんかいはこっちがつよい

・達也
名前は覚えられた
識の魔法は認識したが本人を見てない

・[深瀬]
百家支流。いくつかの古式の家と連携し、主に百家の間で人材派遣のような役回りをしているため、そのあたりでは名前が通っている。十師族では十文字家としか積極的に関わってない。

・校長
正確には関心を寄せている程度。

・生徒会
「(面白そうね!)」
「(大変そうだな…これから)」
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