神転した男が特典貰ってリリなの世界で生きる話。

昔書いたのを供養投稿、多分続かない。

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リリなのオリ主

 うーん、と存在しない腕で腕組みしている感を出して俺である白い炎が呟く。

 どうやって物を感じ取ってるのかわからないが、多分何もないよくわからない色彩の世界で二人。

 

『いやーすまんすまん』

 

 その白い炎の前でへこへこ頭を下げるのは白髪白髭の老人、一頻り謝って顔を上げる。

 

『手違いでお主は死んでしまったんじゃ、元通りに生き返してやる事が詫びと言えるんじゃが規則で元通りにしてやることは出来んのじゃ』

 

 ミスして死んでしまったから生き返すのがお詫び、だけど元の世界に生き返すのはダメって事か。

 

『その通りじゃ、故に別の世界に転生してもらおうと思っているんじゃがどうじゃ? なんなら特典もつけるぞい』

 

 特典! ……よく考えたら二次創作の定番を体験してるのか。

 それは置いとこう、とりあえず特典とはどんなものがあるんだろうか?

 出来る事と出来無い事があるかもしれないし、強力な特典だとデメリットもあるかもしれない。

 

『お主が好きな物、好きな力を望めば良い。 制限は有りはしないし、転生した異界で好きなようにしたら良い。 こちらのミスであるからの、咎める者は居りはせぬよ』

 

 なんでも!? ふとっぱらだ、さすが神様だ!

 ……となるとどうしようか、転生する世界次第で欲しいのが変わってくるし。

 

『どこでも良いぞ、無限にある並行世界のどこでも良い。 お主が知る世界も存在する、いわゆるアニメや小説の世界も当然あるのだから好きな世界を選ぶが良いぞ』

 

 はー、確か異世界の情報を受け取って書いたりしてるのが漫画家とか小説家とか変な理論を見たことあるな。

 ……それなら──。

 

『良かろう、お前が望んだ世界、物を付けて転生させてやろう』

 

 そう神様が言い終わると、色彩が認識できない世界に何の色か分からない光が溢れる。

 

『楽しむがいい、望むように生きるがいい、それが楽しませるコツだ』

 

 遠くなる意識の中で、そんな呟きが聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 そうしてふと目覚めた、夜寝て意識が落ちた後にすぐ朝が来たような感覚。

 眠気は無く、頭も冴えて天井から視線をずらして起き上がる。

 周囲を見渡せば8畳位はある部屋、今寝ていた布団は玄関から見て右奥の角、玄関正面にはカーテンで光を遮られた窓。

 玄関の右には小さなキッチン、コンロとシンクが備えられたシンプルなもの。

 そのキッチンの奥には別々のトイレとバスルーム、やっぱ別じゃないと落ち着かないからね。

 

 そして布団の上にいる俺から見て右斜め前には学生が使うようなデスク、それも小さめで小学生くらいの子供が使うやつだ。

 それは当然で俺はちっこくなっている、この世界に置ける主人公と同じ年齢にして貰ったからだ。

 住居の場所は当然主人公が住む町と同じ、遠い所に住んでたら原作の展開を見られないからだ。

 確か『海鳴市』の『藤見町』だったか、ここは『魔法少女リリカルなのは』の世界であるはず。

 時系列は一期の少し前、ジュエルシードが落ちてくる数日前と願った。

 

 と言っても介入する気はない、原作と全く同じ展開になるかは分からないが下手に干渉しなければハッピーエンドになるはずだ。

 登場人物たちはアニメと同じで有ることも願ったし、俺TUEEEEEE! とか管理局ぶっ壊す! とかやらなきゃアニメとそう変わらない展開になるはず。

 俺は部外者で、遠巻きに見るだけの観戦者で十分。

 お金もあって変な親戚も居ない、産んでくれた親は残念だが死別させてもらった。

 前世の記憶がある以上、本当に申し訳ないがお父さん、お母さんと呼ぶには抵抗があった。

 

 時間が経てば慣れて呼べるようになるかもしれなかったが、それ以上に夜に外出など小さな子供である以上止められるし咎められるだろう。

 その心配を無くしたかった、故にこの身は天涯孤独であると設定した。

 学校にも行っていない、原作キャラと接点を作るならいいだろうがその気はないので無し。

 ダメ人間まっしぐらでしかないが、仕方ないね!

 後は特典として貰ったものを持って遠巻きに、三次元になった世界を眺め見るだけだ。

 

「………」

 

 それと必要なものは殆ど整えてもらった、後は特典を確認して最後の準備を確認するだけだ。

 そう意気込んで俺はデスクの上を見る、そこには深い蒼色をした二センチほどの宝石のような球体があった。

 あれが俺専用のデバイス、立ち上がってデスクの前に行き、蒼い球体を掴んで持ち上げる。

 

『おや? 目を覚ましたようですね』

 

 聞こえてきたのは胡散臭い声、やっぱこれだよこれ。

 

『……まったく、このような人物に使われることになるとは』

 

 こんな言い方されてもしょうがない、それほどまでの凄まじい人物のコピーであるからだ。

 

『それで、どうしますか? 試してみたいのでしょう?』

 

 え、良いの? すっごい文句言われるんじゃないかと考えてたが。

 

『慣れもしないことを重要な局面でやってのけるほど、あなたは出来た人間ではないはずですが』

 

 それもそうだ、練習出来るならしておいた方がいい。

 

『では……、私の自由を奪った……その罪は万死に値します。 覚悟はいいですね?』

 

 パチンと蒼い球体を掴んでいた手が弾かれ、浮かぶ球体の周囲に空間が歪むほどの黒紫の揺らめきが現れる。

 それを見て『あ』と思い出した、彼のオリジナルは自由であることを願う人間。

 自由であることを何よりも優先し、利用したり自由を奪う存在を決して許さない。

 そうだ、『そのままであること』を望んだのだ、であれば決して俺のことを許さない。

 それこそ『この宇宙から抹消する』ほどに、それを思い出して青ざめた。

 

『特異な体験であり少々名残惜しいですが、これで終わりにしましょう』

 

 逃げ出すことなど出来ない、踏ん張ってはいるが体全体が球体の方へと引っ張られている。

 これは間違いなく『重力』だ、この蒼に相応しい力だ。

 俺はこのまま近づいて圧し潰されるのだろうか、それとも事象の地平に飛ばされるのか。

 何とか耐えていたものの、踏ん張りも効かずに落ちるように蒼い球体に吸い込まれ瞼を反射的に閉じた。

 

『……ククク』

 

 頭の中に声が響いて、瞼を開けばまだ生きていた。

 超重力によって圧縮された訳でも、事象の地平で永遠を味わってもいなかった。

 そこに居たのは『蒼の魔神』、神様に望んだ『インテリジェンスデバイス』。

 重力を操る『グランゾン』が、あまりにも不釣り合いなワンルームの部屋に立っていた。

 

『残念ですが、あなたに危害を加えることが出来ないよう設定されています』

 

 本当に残念そうに彼、ユニゾンデバイス『グランゾン』のAI、『シュウ・シラカワ』が言う。

 え? まじ? 俺を抹消できないの?

 

『出来ませんよ、今はね』

 

 あ、死んだ。

 今死ななくても近い内に死ぬ、絶対この設定とやらをいずれ解除してこの宇宙から抹消される。

 儚い人生だった、彼女も居らずアニメやゲームばっかしてた人生だった。

 ……まあやりたくてやってたんだし、可愛い彼女が居なかったのは残念だがやりたいことやってた人生だからそんなに悔いはないかもしれない人生だった。

 

『……可笑しな人ですね、遠からず来る死に際をそのような考え方をするとは』

 

 そうですか? 別にボッチだったり枠からはみ出てたりはしてなかったと思うんですけど。

 

『その割には相当杜撰な選択では?』

 

 いやまぁ……、そうですけど。

 だってグランゾンってかっこいいじゃないですか、チートを体現したロボですし。

 と言うかグランゾンを操るのはシュウ・シラカワじゃないと違うような気しかしませんし……。

 

『そのような理由で自分の命を賭けるとは、余りにも愚かしくて感心してしまいましたよ』

 

 ま、まあ一度無くした命ですし……、少しくらいはっちゃけても……。

 

『そうですね……、少しばかり見直しましたよ』

 

 ……じゃあ、命は助けてくれます?

 

『殊勝ですね、命だけで良いとは』

 

 で、ですよねー……。

 出来ることなら何でもしますので、五体満足精神崩壊なしで命をお助けて下さい!

 

『でしたら、これより私の手足となって動いてもらいますよ?』

 

 そ、それで助かるなら!

 

『まったく……』

 

 ため息を吐くシュウさん、コピーと言えど人間の精神をAIにして閉じ込めたのだからしたいことやりたいことを俺を通してやれるのであれば勿論手伝う。

 あり得ないけど俺がそんなことになったら、まともでいられる自信はない。

 

『それで、これから大人しく過ごしていくのでしょう? この力を振るう気も、介入する気もない、身を守るためだけにグランゾンをデバイスにするとは何とも……』

 

 超火力にくっそ堅いイメージしかないし、下手なロボよりも堅実じゃないかなぁと。

 

『確かに、歪曲フィールドがあれば彼女の砲撃でもこのグランゾンにろくなダメージを与えられませんよ』

 

 彼女とはあの魔法……魔砲少女?

 

『ええ、そうですよ。 まあ、関わらないと言うのでしたら仮定する意味は無いのですが』

 

 一期でAAAランクだったかな? 砲撃も同じだったはずだから……堅すぎワロタ。

 

『あなたがそれを言いますか? SSSランクなどと知能が見られない魔力保有量を願っておいて』

 

 オ、オリ主には必須だから! それ位ないと危ないから!

 

『確かに、それが知られれば危険には事欠かなくなるでしょうね』

 

 ……よくよく考えれば、莫大な魔力持ってる奴が居れば色々実験したりしたくなるかもしれんね……。

 失敗した!

 

『まあ、グランゾンを動かすに当っては必要な魔力量と言えますが。 良かったですね、Sランク程度の魔力量を願っていたら消費の少ない武装しか使えませんでしたよ』

 

 やっぱり成功だったかもしれない!

 

『それと一つ言っておきますが、私とあなたは細胞レベルで融合してあります。 当然神経学的にも繋がっているので、あなたが持つ記憶は全て閲覧することが出来ます』

 

 ……く、黒歴史が。

 

『なるほど、夢がありますね』

 

 痛い、こう……胸の辺りが。

 

『そんな事よりも、幾つかの懸念を解決せねばなりません』

 

 人の黒歴史をそんな事扱い……、まあいいや、懸念とは?

 

『ええ、私自体はデバイスのグランゾンを制御するAIでオリジナルよりも数段能力が落ちること。 他にはこの世界においてグランゾンは魔力をエネルギー源としたデバイスと言う枠組みの中で、それ以外の動力を保持しておらず、魔法使用不可の虚数空間に落ちればこのグランゾンでも這い上がることすら出来ませんかもしれません』

 

 え? 対消滅エンジンやブラックホールエンジンがないのか、確かそのままであることを願ったんだけど……。

 

『………』

 

 つまり俺の魔力が無くなったらグランゾンを展開できなくなるのか……。

 

『そう言う訳では有りませんが、魔力タンクであるあなた以外の動力を確保しなければなりません』

 

 ひ、ひでぇ……。

 

『私としてはあなたと同じで介入する気などさらさら無いのですが、可能な限り不安要素を消しておきたいのですよ』

 

 ……でも他の動力って何をすれば? 単純な文明レベルは転生前の世界と殆ど変わらないはずだから、グランゾンを十全に動かせる動力とか無さそうですけど。

 

『単純な原子炉ですら不安定で出力不足なのですから、見合うだけの動力を調達することは出来ないでしょうね』

 

 対消滅エンジンとかいかにも凄そうな物と同等な動力とか絶対この世界にはないだろうな……、ミッドチルダにも多分無い。

 

『あるとすれば一つ、まあ総称になってしまいますが』

 

 え、うそマジであるんですか?

 

『可能性の一つですよ、出来るなら私も調べてみたいですからね』

 

 なんですかそれ? そんなものあったら……。

 

『……もうすぐ落ちてくるのでは?』

 

 ……そうか、ジュエルシード。

 

『あなたの記憶に拠れば次元干渉が可能なエネルギー結晶体なのですから、制御すれば十分な動力に成り得ますよ』

 

 なるほど、能力が数段落ちててもスカリエッティよりも上手く扱えそうだよなぁ。

 

『この世界であれば脅威と言って差し支えないでしょうが、オリジナルの世界では多く見られる程度でしょう』

 

 スパロボ世界はおかしいわ。

 

『神を僭称する者も跋扈していましたからね、この程度でしかなければとっくに滅んでいますよ』

 

 やっぱスパロボ世界は可笑しい(確信)

 

『では、ジュエルシードは手に入れる方向で』

 

 ……いや、でも。

 

『……一つ忠告しておきましょう、この世界ではあなたが思う展開にはならないと思いますよ』

 

 え? なんで?

 

『それは聞かない方が良いでしょう、まあ聞いた所であなたではどうにもならないことですが』

 

 なにそれ?

 

『私の考えが間違いかどうか、物語の観察をして正しいか確かめてみましょうか』

 

 アニメとは違う何かが起こるってことですか?

 

『その通りです、その際はジュエルシード獲得に向けて動きます』

 

 そう言われて少し想像した。

 深い蒼を基調とした全身を覆う重厚な鎧っぽいものを纏う存在が、突然現れてジュエルシードを掻っ攫っていく。

 どう見ても怪しいやつです、本当にありがとうございました。

 

『構造や原理を解析するだけですから、別にアレ自体が欲しい訳ではありませんよ』

 

 ……解析出来たら返すってことですか?

 

『ええ、コピーでは再現できない機能があれば別ですが』

 

 異星人の高度な技術を解析して取り込むシュウさんにコピー出来ない代物とかどんな超技術なんですかねぇ……。

 

『まあ、あなたの魔力を使っても能力は十全に発揮できますからね。 ですが魔導師相手に使えるのは極力出力を抑えたグランビームか、グランワームソードしかありませんよ』

 

 最弱武器でもオーバーキルになるとは、さすがグランゾンだ!

 

『それでは解除しておきます、記憶が正しければ声が聞こえるでしょうからそれまでお好きな様に』

 

 瞬間、蒼い装甲は消えてもとの子供の姿に戻っていた。

 だが蒼い球体、多分本体である宝石は何処にも見当たらない。

 

『自分が願ったことを覚えておいたほうが良いですよ』

 

 ん? 何がですか?

 

『ユニゾンデバイスで欲しいと考えたのでしょう? 常にデバイスと融合しているのでもう手に取ることは出来ませんよ。 尤も、実際にはユニゾンデバイスの形式を象った別物ですが』

 

 ……確かに、それなら落として探す心配も無いわけだ。

 

『……気楽ですねぇ』

 

 ネガティブに考えても落ち込むだけじゃ?

 

『それはそうですが、最悪の状態も考えておかなければ咄嗟に対応できませんよ』

 

 ……前向きに検討しておく所存であります。

 

『それで下手を取らなければいいのですがね』

 

 

 

 

 

 そして数日後、待ちに待ったその時が来た。

 ……いや、実際には家でテレビ見てたりパソコンしてただけだけど。

 あと他に俺みたいな存在が居ないか確かめたけど、ズレて浮いてる存在は見つけられなかった。

 主人公たちに纏わりついてるのとか居なかったしなぁ、まあ居ないなら居ないでいいけど。

 

『……聞こえますか、僕の声が』

 

 お、聞こえる聞こえるー。

 聞くだけで返事はしない、多分今頃主人公が返事をしてるんだろう。

 

『さて、時間のようですね』

 

 布団から起き上がって一瞬で俺の姿が変わる、重厚な鎧を着たような蒼い姿に。

 いやー、やっぱかっこいいわ、グランゾン。

 

『それでは行きますよ』

 

 俺の目の前の空間が黒紫色に歪んで円形を作り、ワームホールの中へ。

 通り抜けるのは一瞬、次に見えたのは眼下に広がる明かりが瞬く町。

 藤見町の上空へと、ワームホールを使って一瞬で移動した。

 

『フッ……、どうやら私の予想通りだったようですね』

 

 重力を操って落下せずに空中を漂う、下を見れば自然とズームアップされて人気のない道路で戦う影が三つ。

 

『やはりと言うべきか、ますます備えなければなりませんね』

 

 影がみっつぅぅっ!

 魔法少女は私がやる! 将来は管理局の白い悪魔! 魔砲少女高町なのはだぁぁ!

 金髪は強気な証! ピンクを基調として所々赤い線が入ったバリアジャケットを纏うのはアリサ・バニングスだぁぁ!! 

 最後は紫髪の大人しい少女! グランゾンの蒼よりは薄いが暗めの青いバリアジャケットを纏うのは月村すずかだぁぁ!!!

 ってなんで三人なんですか!?!? こんなの可笑しいですよ! シラカワさん!

 

『あなたの記憶に拠れば高町なのはだけではなかったのでは?』

 

 何がどうなっているのかまるでわからない……。

 

『では、予告通りジュエルシードを集めるとしましょう』

 

 え、マジでやるんですか?

 

『ええ、本気ですよ』

 

 横殴りはルール違反では……。

 

『ローカルルールを持ちだしても何も変わりませんよ』

 

 奇妙な無重力の感覚が突如無くなり、地面に向かって落ち始めた。

 

『さあ、覚悟を決めてください』

 

 ちょ!? バンジージャンプとかやったことないのォォ!?!?

 

『念じなさい、暴走体を切り裂く剣を』

 

 うぉあああああ!?!?

 

『やれば出来るじゃないですか』

 

 グランワームソード! とちょっとシュウさんを真似ながら念じれば黒紫色のワームホールが突き出した右腕の前で開いて、滑るように柄が飛び出てくる。

 ナムサン! と柄を掴めばワームホールが小さくなりながら前方に移動してグランワームソードの全身が通常空間に現れた。

 それを肩口まで振り上げ、背面のネオ・ドライブが眩い噴射光を放つ。

 落下する速度が数倍となり、視界は僅かな揺れだけで正確に暴走体を捉え。

 

「きゃっ!」

「ちょ!?」

 

 まるで墜落したように地面にめり込みながら振り下ろし、グランワームソードで暴走体を両断した。

 その衝撃でか、暴走体の体組織が周囲に飛び散るも歪曲フィールドのグランゾンはもとより、周りに居たなのはたちもデバイスがプロテクションを張って体組織を防ぐ。

 だが落下の衝撃で大きくえぐれた地面や飛び散った体組織が塀や電柱、無事だった他の道路に幾つもの穴を開けた。

 

『色々とサポートはしましたが、及第点としておきましょう』

 

 周囲の悲鳴やシュウさんにそんな風に言われるも俺はそれどころじゃなく、まるで犬の呼吸のように息の吸い吐きを繰り返していた。

 

『この程度で息を切らしていてはこの先やっていけませんよ?』

 

 い、いきなり紐なしバンジーさせられたら誰だって息が切れるって……。

 

『……まあいいでしょう、ジュエルシードも無事ですから回収しましょう』

 

 半分埋まった体、ジュエルシードは俺よりも深く埋まっているが腕を突っ込めば十分に届く位置。

 グランゾンの赤い手を地面に突っ込み、青い宝石を掴み取る。

 

「何が……、っ!?」

 

 土煙が晴れ始めてなのはたちが見たのは蒼い存在、威圧感を伴う重厚な存在は自然となのはたちの口を閉ざさせる。

 

『さて、戻りましょうか。 ジュエルシードを胸元に近づけてください』

 

 シュウさんの指示通り左手に持つジュエルシードを胸部に近づけると吸い込まれるように消えた。

 

『……なるほど、大方の原理は把握しました。 あとは構造と原理を組み合わせて正しく製造できるかどうかですね』

 

 解析速すぎワロタ。

 

『この程度、グランゾンの原理に比べれば容易いものです』

 

 あー、確かグランゾンにも次元跳躍装置みたいなのが積んであるんでしたっけ。

 

『それの応用でワームホールを生成していますからね』

 

 マジで天才だわ!

 

『……続けますよ、ジュエルシードが次元干渉型と言うのは頷けますね、ダメージを与えて待機状態にしたとはいえ極小規模の次元振が確認出来ます』

 

 影響はあるんですか?

 

『空間、重力、人体への影響は全く有りません、有ったとしても重大な物には成り得ないでしょう』

 

 そりゃよかった。

 

『では戻りましょうか』

 

 上半身から重力に引っ張られて、道路に埋まっている下半身も引っぱり出される。

 

「待って! それは……!」

『さて、残るジュエルシードも集めていきましょうか』

 

 ユーノ君が制止をかけるも、シュウさんは気にせず上昇してからのワームホール転移でさっさと帰宅。

 

『ナンバー21ですか、いくつあるかはわかりませんが集めましょう』

 

 まあ思うところがあるが、次元犯罪者待ったなし!

 

『次元犯罪者などと、火の粉が降りかかってきたら払うのは当然でしょう?』

 

 ……いや、まあそうですけど。

 ジュエルシードが発動して、暴走体が暴れたらこの街もあっさりと破壊しかねないから、危険を取り除くって言い訳できるか……。

 

『それでも己が定めた法を他者に押し付け枷とする、他者ならどうでもよいのですが……私を縛り付けるというのであれば時空管理局を消すのも吝かでは有りません』

 

 止めてください! 普通に次元世界の治安を守ろうとしてる善人もいるんですよ!

 

『ならば元凶の根源を断てば、少しはましになるでしょう。 そもそもジュエルシードも解析が終われば不要となりますからね』

 

 解析は終わったんじゃ?

 

『この21番の解析が終わっただけです、残りも差異が無いか調べておきたいですからね』

 

 ……長い旅になりそうだ。

 

 

 

 

 

 その後もジュエルシードが暴走して、三人娘が相手にしているところで横から暴走体を殴りつけたり。

 先に駆けつけて片手間にジュエルシードを捕獲したり、途中でなのはが話しかけてきたが正常運転のシュウさんは華麗にスルー。

 俺としては話しておきたい気もするが、シュウさんがさっさと帰るから話しかける間もない。

 

『話を聞いてどうするんです?』

 

 ほ、ほら、話しておかないと余計な誤解が……。

 

『彼女たちが誤解しているとは思えませんが』

 

 ……よく考えれば誤解していないのか! 

 いやでも、解析するのが目的なんだし協力して集めてもいいのでは?

 

『……私に会話させる気ですか?』

 

 だ、だめですかね……?

 

『ならばいっその事、現地協力者として加わったらどうです?』

 

 ……色々突っ込まれそう。

 

『教える必要はないのですから、黙秘すれば良い話です』

 

 それがいいのかな? もしバトってしまったら彼女たちがミンチより酷いことになりそうだし……。

 

『……まあいいでしょう。 では、解析したジュエルシードは渡すということで』

 

 それでお願いします。

 まあオリ主となのはが協力するのもよくある話だから、悪い話じゃないだろう。

 

 

 

 

 

 ……と思っていたんだけど。

 

「気が変わりました、あなた達が持つジュエルシードを渡してもらいましょうか」

 

 唐突にそう言っちゃうシラカワさん、確かサービス回とも言える温泉回の日。

 夜にジュエルシードの反応を見つけて移動したら、フェイト・テスタロッサと使い魔のアルフがジュエルシードを封印して手に入れていた場面。

 突然現れた俺ことグランゾンに驚いて警戒、フェイトの使い魔のアルフも構えて睨みつけるように見ていた。

 ここまでは良い、突然怪しい奴が現れたら誰だって警戒する、俺だって警戒する。

 睨み合いの状況に移ってすぐ、わずかに遅れてきた三人娘、当然セットアップ済みでそれぞれがバリアジャケットを着ていた。

 

「あ、アンタは!」

『彼女がフェイト・テスタロッサですか』

 

 こっちを見るなりアリサ・バニングスが指差して言うが華麗にスルーして脳内で話し合う俺たち。

 うーむ、何度見ても子供向けなバリアジャケットじゃないなぁ。

 大きなお友達向けな気がしてならない、魔砲少女の方は子供向けと言っても通用するデザインだが。

 スカート付きの黒いレオタードとか薄い本が厚くなりすぎている!

 

『集めている理由が母親のため……ですか、その母親は彼女を使い捨ててジュエルシードを使いアルハザードで行こうとしている』

 

 結構悲しい話なんだよなぁ、子は母を愛しているが、子はクローンだから本当の娘ではないと母は愛していない。

 子のクローンは母を愛している、自身がクローンであることを知らず母の本当の娘だと信じている。

 本当の娘ではなく、ジュエルシードを集めるだけの道具としか見ていなかったがための悲劇。

 その結果が数が足りないジュエルシードの並列励起によって起こった次元振動、その反動で開いた虚数空間に落ちて生死不明の行方不明だったはず。

 

『滅んだ古代文明、実に興味深いですね』

 

 あれ? 確かシュウさんも母……。

 

『その話はしないでもらえますか?』

 

 アッハイ。

 

『………』

 

 それを機にシュウさんも黙って三竦み状態、フェイトたちとなのはたちは俺とと言うかグランゾンを気にして動けない。

 ……あれ? どうするんですかこの状況? 戦闘能力から考えると向こうが協力して敵対してきても3秒もあれば向こうがひどい状況になってしまう戦力差。

 なのはたちにジュエルシード渡すんじゃなかったの?

 シュウさーん! おーい!

 

「……いきなり現れてジュエルシードを渡せだぁ?」

 

 外部音声で宣告するのはシュウさんに反応したのはアルフ。

 その言葉を聞いてアルフが更に睨みを効かせて、一歩前に出る。

 

「ええ、ジュエルシードを渡すのであれば見逃してあげましょう」

 

 ちょ、ちょっとシュウさん!?

 

『アルハザード、興味は有りませんか?』

 

 な、無いことはないけど、集めたってアルハザードに行けるかわかりませんよね!?

 

『行けますよ、基本的に暴走する原因は放出されるエネルギーを制御できないか、そのためのプログラムが存在しないために起こる物です。 ですからその二つを用意してやれば正常に作動するのです』

 

 ま、まじで!?

 

『あらゆる望みが叶う理想郷でしたか、本当にジェイル・スカリエッティがアルハザードの技術を使って生み出された存在ならば、それは一つの証明になりますから』

 

 すげぇ……、ところでアルハザードに行って何するんです?

 

『……技術ですよ、施設が生きていようと死んでいようと何かが残っている可能性があります』

 

 それを利用してグランゾンをサイキョーにするんですね、わかります。

 

『語弊がありますが、概ねその通りです』

 

 なるほど、でも虚数空間に落ちたら危なくないですか?

 確かジュエルシード使ってアルハザードに行こうとしたプレシアが、次元断層で出来た虚数空間の穴に落ちてたような。

 

『あれは制御出来ていないエネルギーに拠って開いたものですから、制御出来ていれば瞬間的に移動するはずです。 虚数空間についてはおそらく化学燃料推進剤であれば問題ないかと、あの空間は魔法を構築するプログラムを解体して行使を無効化しているようですし』

 

 そんなシュウさんのジュエルシード講座を聞いていたら、動きがあった。

 

「笑わせてくれるねぇ……、突然出てきてお呼びじゃないんだよ!」

 

 痺れを切らしたのかアルフが魔力を漲らせて飛び掛ってくるも。

 

「渡していただけますね?」

 

 ワームホールを背後に作り出して後退、その出口はフェイトの背後。

 

「なっ!?」

 

 瞬時にフェイトの背後に現れたことによってシラカワさん以外全員が驚いていた。

 

「……わかった」

 

 振り返らず、と言うより振り返れず背後から見えるようにジュエルシードを持つ左手を上げる。

 それを掴まずに重力を操って引き寄せ、胸部に取り込んだ。

 

「さて」

 

 グランゾンの首が動き、見据えたのは少し離れた所で此方を見ていたなのは達。

 

「あなた達のジュエルシードも渡してもらいましょうか」

 

 グランゾンの眼光に紫の色が宿って光る、その威圧感は推して知るべし。

 ましてや先程の不可解な瞬間移動もあって、この場の支配者は誰か一目瞭然な状態。

 

「……だっ、誰があんたなんかに渡すもんですか!」

 

 気丈にも言い返すのはアリサ、確かに悪役通り越してどう見てもラスボスなグランゾンに渡したくはないよなぁ……。

 

「渡したほうが身のためですよ」

 

 今度は体ごと向き直る、それだけで威圧感が倍増する。

 瞬間移動とも言っていい、一瞬で金髪の少女の背後に移動したという事実も大きい。

 その気だったら死角からの不意打ちも出来ていたと言うことが少女たちに伸し掛かる。

 

「……ま、待ってください!」

 

 見られているだけで心が折れそうになる重圧感を強引に撥ね退けるように、なのはの肩に乗っていたユーノが飛び降りて声を出す。

 

「教えてください! あなたはどうしてジュエルシードを集めているんですかっ! それはとても危険なものなんです!! だから……!」

「確かに、あなた達にとっては危険なものでしょうね」

「……それは一体──」

 

 ユーノが続けて聞こうとした瞬間。

 

「……なるほど、命を懸けるに値する事ですか」

 

 可能な限り素早く手に持つデバイス、バルディッシュをサイズフォームに変化させてグランゾン目掛けて一気に振り抜くフェイト。

 

「っ!」

 

 だがあまりにも呆気なく、歪曲フィールドを経た魔力刃はグランゾンに届かず散っていく。

 

「無駄ですよ、あなたでは決して私に勝てません」

 

 振り返らずに宣告、事実フェイトの一撃は無情にも何の効果も見せなかった。

 

「それでも戦うと言うのでしたら」

 

 瞬間、視界には『適度な魔力放出』と表示されてついつい従って魔力放出を試みる。

 

「覚悟をすることです」

 

 放出された濃密な魔力が大気と干渉し、爆風の如き魔力風となって全てを圧倒する。

 ランク付けしてオーバーS、その威容に相応しき力を見せつけた。

 

「っ!?」

 

 魔力を感知できるなら、その恐ろしさは筆舌しがたい。

 自分たちよりもはるかに上の魔力を見せられて、心折られないほうが稀だ。

 そして彼女たちはその稀のほう、気圧されるも気丈に視線を向けてくる。

 

「……しかたありませんね」

 

 ワームホールが開き、飛び出したグランワームソードの柄を掴んで引き抜く。

 

「足掻いて見せなさい、そうすれば生き残れるかもしれませんよ?」

 




勝利条件
 誰も撃墜されず、3ターン経過。

敗北条件
 いずれか味方が撃墜される。

SRポイント獲得条件
 ????のHPを60000以下にする。




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