気がついたら祟り神様(純粋)と一緒に呪術の世界にいた話   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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10.はじめまして、夜蛾学長

 車に揺られて山の中。程なくして現れるのは、城や寺を彷彿とさせるような大きな和風建築。

 東京都呪術専門高等学校と書かれた正門前を見て、本当に呪術廻戦の世界に来たんだなと改めて考える。

 いやぁ……憧れがなかったわけじゃないけど、まさかリアルでこの学校を見ることになるとは思わなかった。

 とりあえず今言えることは……

 

「……広くない………?」

 

 この一言のみである。

 いや、マジで広いなここ。いったいどれくらいの敷地があるんだ……。

 

「そう?普通じゃない?」

 

「普通じゃないと思います。」

 

 いや、思いますじゃねーわ。普通じゃねーわ。

 いくら呪術師がこの学校を起点として動いていると言えど、これだけの広さは敷地を持て余すでしょ。

 呪術師ってそこまで多くないって言ったの先生ですよね?

 あれか?ずっとこの学校を拠点にしてるから、感覚バグでも起こしてらっしゃる?

 色々ツッコミを入れたくなりながらも、リアル呪術高専を見渡す。辺りには山と呪術高専の建物しかない。

 何というか、ここだけまるで隔離されているかのような感覚に陥ってしまうな……。

 

「それじゃあ、一応学長に挨拶しに行こうか。この学校のまとめ役だし、顔を合わせないと怒られちゃうからね。」

 

「わかりました。」

 

 先行して学校の敷地内へと足を運んでいく五条先生についていくように、私も敷地内へと足を踏み入れる。

 ……本当に呪術高専に足を踏み入れちゃったよ。最高って気持ちと、この学校で上手くやってけんのかなって疑問を抱く。

 まぁ、それなりに生活はできると思うけど、呪術廻戦のキャラクター、みんな好きだから興奮で鼻血とか出ないよね?

 

「わはー!すっごく広いのだー!今日からここで生活するのかー!」

 

「マスターに嫌がらせをするような方がいないといいのだけど。」

 

「そのような輩がいたら、あなたの手でSAN値直葬コースにでも送って差し上げればよろしいのでは?そう言う精神攻撃、お得意でしょう?」

 

「それはわかっているのだけど、マスターを傷つけるような方がいらしたら、私、抑え切れる自信がないの。だって、マスターを傷つけるような方はいらないじゃない。」

 

「まぁ、過激だこと。(わたくし)、ちょっと引いてしまいます。」

 

「マスターに害する者は必要ないと思ってるもの。狐さんだってそう思うでしょう?」

 

「はぁ……(わたくし)の意見……でございますか?そうですねぇ……。基本我関せず状態でいるのでなんとも……。なんせ(わたくし)は雇われ秘書のようなものですので。あとは、まぁ、別にマスターが気にしないのであれば、(わたくし)はどうとも思わない主義ですから、同意はし兼ねますわ。」

 

「あなたはマスターが傷つけられてもいいの?」

 

「別にそうは言っていないでしょう?マスターが本当に、面倒だなー?邪魔だなー?こいつら消したいなー?……と思わない限り、こちらから何かをするつもりはないと言うだけの話です。流石にマスターがそのような感情を抱くようなら、黙っているつもりはございません。」

 

「あびあび。るかるかを傷つけるような輩がいたら、ワガハイたちだけでどうにかしてやればいいのだ。狐は基本、るかるかの意見に従うだろうからなー。」

 

「その通りです。呪いたい。祟りたい。殺したい。終わらせてしまいたいとマスター本人が望まぬ限り、または、愚かな方々が虎の尾ならぬ()の尾を踏みつけるような愚行をやらかさない限り、(わたくし)はどうこうするつもりなどありません。それに、これらの領分は太歳神の領分でしょう?(わたくし)に意見を求めるのは、少々お門違いじゃありませんこと?」

 

「……マスターのサーヴァントなのに、マスターが傷つけられても気にしていなければ何もしないの?」

 

「マスターのサーヴァントである以前に神ですので。基本的には様子見しか致しません。その際にギルティが見つかった時は裁きますが。」

 

 ……なんか、すぐ側でかなり物騒な会話がされているような気がする。

 ていうか、コヤンスカヤに関しては、キレたら即行で辺り一面が焼け野原と化して悲劇しか生み出さない気がするなー……。

 

「……ちょっと瑠風のサーヴァントたち、物騒過ぎない?」

 

「……通常運転です。」

 

「通常運転かー……」

 

 本当に大規模爆発が起こるレベルの爆弾じゃん……ウケるんだけどと五条先生が呟く。

 でも、ドン引きしているのがよくわかるような声音だ。少しでも核に刺激を与えたら爆発し、爆発物処理班を呼んでも解除できないのではレベルのものが三騎もいるんだから無理もない。

 ていうか、アビーちゃん……やっぱりマスターガチ勢なのね……。太歳星君も結構ぶっ飛んでいらっしゃる。

 コヤンスカヤはこっちが望まない限り何かしらの制裁を与えないらしいからまだストップが利くみたいだけど、多分……いや、絶対に神様の逆鱗……彼女の場合は尻尾を踏んづけられたらかな……?そんなことやらかすようなことをしたら、間違いなく都市が丸々消し飛ぶな。

 雷天日光(らいてんにっこう)禍音星落火流錘(まがねぼしらっかりゅうすい)は、対界宝具だしね。

 そんなことを考えながら、五条先生について歩き続ければ、呪術高専内の一室に辿り着く。

 

「戻ったか、悟。」

 

「ええ。ちゃんと連れて来ましたよ。」

 

 その瞬間、五条先生に声がかかり、五条先生はそれに応える。

 視線を新たな声がした方へと向けてみれば、サングラスに髭を生やしたヤのつく自由業でもやっておられますか?と聞きたくなるような容貌をしていらっしゃる男性が一人、チクチクとカワイイを作っていた。

 

 ─────……ヤーさんがカワイイを作ってる…!!

 

 思わず原作で悠仁がしていたようなツッコミを心の中でする。夜蛾学長……この呪術廻戦の世界に出てくる人物の一人であり、呪骸と呼ばれる呪いを込めて操作することができる依代を使う呪術師。

 ヤーさんじゃないのはわかっているんだけど、見た目のせいでヤーさんなオッサンがカワイイぬいを作ってるのを見ると、あまりにもシュール過ぎて言葉を失ってしまった。

 

「……その子が祟り神を連れていると言う少女か。」

 

「そうですよ。視たらわかるでしょ?」

 

 言葉を失って夜蛾学長を見つめていると、彼はこちらをじっと見つめ始めた。

 ……いや、違うな。彼が見てるのは私じゃない。

 夜蛾学長を警戒するように見つめながら、私に抱きつく太歳星君とアビー、それと、私の少し後ろの方に立ち、堂々と彼を見据えているコヤンスカヤのことを視ている。

 

「……悟。私は、祟り神を連れているとしか聞いていないんだが?」

 

「あ、言い忘れてた。実は彼女、祟り神だけじゃなく、なんか他にもヤバイの引き連れていたんですよ。しかも、全部特級レベルで、中には世界規模に影響を与えそうなのもいたりいなかったり。」

 

「……はぁ……………。」

 

 夜蛾学長が深い溜め息を吐く。うん、吐きたくもなる。

 報連相はちゃんとしないとダメでしょ五条先生……。

 

「えっと……とりあえず、はじめまして。今日からお世話になる御子神 瑠風と言います。私の側にひっついてる男の子は祟り神の太歳星君で、女の子はちょっと特殊な事情を持っているアビゲイル。そして、私の付き人のコヤンスカヤです。私が持ち合わせている呪力により顕現している式神のようなものと思ってください。まぁ、式神と示すにはあまりにも力は強大すぎますがね。なんせ、戦闘機一機分くらいの力は余裕で持ち合わせていますから。五条先生から、自分の中にある力は制御できるようにしておかなくては無差別に人を殺しかねない代物であると聞かされたので、その使い方を学ぶためこちらに足を運びました。よろしくお願いします。」

 

 早速五条先生のちょっとした適当な部分を知ってしまい、苦笑いをこぼしたくなりながらも、夜蛾学長に挨拶をする。

 面接は必要ないと言われたけど、念のためここに来た理由を口にすれば、夜蛾学長は小さく頷く。

 

「ああ。ようこそ、呪術高専へ。……しかし、よくそれだけの存在を側に置きながらも平然と過ごしていられるな。」

 

「この子たちは基本的に私に対する害意や敵意を消しにかかる子たちなので、余程のことがない限りは力を使わないんですよ。まぁ、私を侮辱したり、攻撃したりすると反射的に行動を起こし、こちらの指示を聞くことなくそれらを行った者を滅ぼさんとするようですが……。なので、五条先生と学長さんが上層部の方々に私のことを報告することをしないと約束してくださり助かりました。私のように呪いを扱う者、意識をしていなくとも外敵を排除するための呪いを持ち、ばら撒く恐れがある者、または、すでにばら撒いてしまった者は規定により処断されると五条先生か伺いました。特に、ばら撒き被害を出した者は、問答無用で死刑扱いにされてしまうとも。もし、そのようなことがあったら、間違いなく上層部の方々は全滅するし、血縁者共々全ての命が消され兼ねませんからね。」

 

「……太歳神と呼ばれる祟り神の怒りに触れれば、一族全てを祟られることも、その太歳神が君を大切にしていることも悟から聞いたのでね。少しでも君に敵意が向かないようにしたまでだ。流石に、太歳神の祟りは、こちらでも手に余る。」

 

「でしょうね。神様の力は偉大ですから。」

 

 私の言葉を聞き、夜蛾学長が少しだけ渋い顔をする。

 何気ない言葉でも敵意認定をされてしまったら、問答無用で太歳星君や、私の中にある力が反応し、守るための攻撃に転じる可能性があるため、言葉を選ぼうとしているのだろう。

 その姿に少しだけ笑ってしまう。でも、その気持ちは別に、わからないわけでもなかった。

 神は寛大だと言うけれど、少しでも地雷をつついてしまったら瞬く間に蔓延する呪いを持ち合わせている祟り神の力は、想像するだけでも恐ろしいからね。

 それに、私の中にはサーヴァント以外の強大な力がある。

 でも、それは未知なるもので、なおかつ私でも認識することができないのだから、余計に恐怖を抱いてしまう。

 

「ですがご安心を。私はこの子たちのマスターなので、ある程度抑えることは可能です。神格を完全に抑え込むことはできませんが、多少の抑止力にはなりますよ。」

 

 とはいえ、サーヴァントに関してはマスターとサーヴァントと言う主従関係のようなものが存在しており、令呪がある限りは指示を聞くと言う縛りが存在しているから、ストップをかけることはできるはずだ。

 だから、よほどのことがない限りは、彼らを使って数多の命を終焉に導くことはしないだろう。

 

「こちらも、上層部に気取られぬように努力をする。……が、呪術師が起点としている呪術高専で過ごす限り、絶対に見つからないと言うことはまずあり得ないと思われる。だからその時は、その者たちを抑制してくれ。」

 

「ええ。できる限りそうします。まぁ、限界もあるので、そこら辺は悪しからず。」

 

「………悟。彼女を寮に案内してやれ。」

 

「わかりました。じゃあ、学長に挨拶も済ませたし、瑠風がこれから生活することになる寮に案内するよ。ついてきて。」

 

「はい。」

 

 太歳星君たちをできる限り抑制することを夜蛾学長に約束すれば、夜蛾学長は、少しだけ複雑そうな表情をしながらも、五条先生に私の案内を頼む。

 五条先生はすぐに案内を引き受けたのち、寮に案内するからついてきてと私に言ってきた。

 了承するように頷いた私は、夜蛾学長に会釈をしたのち、歩き始めた五条先生のあとを再び追いかける。

 次に会えるのは誰かな。

 

 

 

 




 瑠風
 呪術高専入りを果たした異世界からの来訪者。
 太歳星君たちを抑制することは可能だが、神格やら外なる神とのつながり持ちを抑制できる限界がある。

 太歳星君
 瑠風のサーヴァントな祟り神。
 瑠風が抑制すれば基本的に誰かを祟ることはないが、あまりにも瑠風に対する敵意が強い者がいたら、瑠風の抑制を振り切り容赦なく対象とその一族を祟る。

 闇のコヤンスカヤ
 瑠風のサーヴァントなビーストの分御霊。
 基本的には瑠風の意思に追従し、向けられる敵意を瑠風が特に気にしていないようであれば何かをするつもりもない。
 しかし、あまりにもおいたが過ぎたり、戯れが過ぎたら荒御魂となるのでご注意を。

 アビゲイル
 瑠風のサーヴァントである銀の鍵。
 瑠風が大好きなので、少しでも瑠風が傷つけば即ギルティ。
 一応瑠風の抑制は利くのだが、一番外敵排除意識が強いので怒らせてはならない。

 五条先生
 瑠風の側にいるヤバイ思考の御三方に少しだけ冷や汗をかいていた最強呪術師。
 触らぬ神に祟りなしって、この時に使える言葉だよね。くわばらくわばら……。

 夜蛾学長
 祟り神以外にも特級レベルの手札を持つ瑠風に冷や汗をかいていた学長。
 上層部が瑠風を見つけたら最悪なことが間違いなく起こると確信したため、なんとか誤魔化す方法を全力で模索中。

友情>恋愛寄りの二次創作ですが、仮に呪キャラと恋愛を入れるとしたら、誰を贔屓・相手にして欲しいですか?

  • 虎杖悠仁
  • 伏黒恵
  • 五条悟
  • その他(意見があればコメ下さい)

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