気がついたら祟り神様(純粋)と一緒に呪術の世界にいた話   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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13.瑠風の武器

 真希さんたちとも仲良くなり、数週間が経ったころ。私は、自身の戦闘に必要なものは何かと考えていた。

 自身が持ち合わせている何かしらの力。それを解放するにはまだ少しだけ時間がかかりそうだった。

 でも、このままじゃ呪術師として動くことができないから、お荷物コースが確定である。

 呪術を扱えるようになるのはもちろん必要なことだけど、出来ることなら多少なりとも戦闘ができるようになっておきたい。

 

「コヤンスカヤ。」

 

「こちらに。どうかなさいましたか、マスター?」

 

 夕方の赤に染まりゆく空。それを確認するなりカーテンを閉めて、部屋の明かりを点ける。

 そして、頭を働かせるためにと甘めのココアを用意して、飲みながら頼り甲斐のあるアドバイザーへと声をかける。

 まぁ、まともな返答が返ってこない可能性も否めないけどさ。それでも、ダメ元で質問をするくらいは問題ないと思うんだ。

 

「……私が持ってるあらゆる力を付与する力のことなんだけどさ。これを使ってどれだけの自己拡張ができるかとかわからないかな?」

 

「自己拡張……にございますか……。そうですねぇ……一人に永続的な拡張を施すのであれば、一、二個くらいが限界かと思われます。一時的な拡張……いわゆる、一時的なバフの付与等ならば無限大に可能ですがね。」

 

「へぇ……これには答えてくれるんだ。早めに聞いておけばよかったな。……それってさ、私が何かしらの武器を持つことも可能だったりする?呪いに関連した武器とか。」

 

「呪いに関連した武器ですか?」

 

「そ。こっちの世界で言う、呪具に分類する武器だね。使いたい武器が一つあるんだけど……。」

 

「……ふむ……まぁ、可能だとは思いますよ。ですが、それってかなり負担がかかる武器を扱うつもりでは?もしそうだとしたら、あまりおすすめは致しませんが。」

 

「……負担がどれだけになるのかはわからないけど、扱えるようになったらそれなりに使えるんじゃないかなって思ってる。呪力を乗せることで火力も上げることができるだろうし。」

 

「……なんとなく、呪いがこもった武器という言葉で察してはいますが、念のためにお見せいただけます?どのような武器をご所望なのかを。イメージはございますのでしょう?」

 

「わかった。」

 

 コヤンスカヤの言葉に頷き、私は手元にあるものを出現させる。

 それは、ゲイ・ボルク。見た目は赤の槍だけど、心臓を穿ったと言う事実を発生させることにより発動させることができる呪いの朱槍。

 呪霊には心臓がないからランサーのような即死を発動することはできないだろうけど、ゲイ・ボルクの回復阻害を発動させ、動きを鈍らせることができるならば、呪霊を始末するために活躍できるのではないかと思ってる。

 まぁ、一時的な能力の付与を利用すれば、タニキが使う【抉り穿つ鏖殺の槍】レベルを放つこともできるけど、こっちの限界まで力を上乗せして投擲することになるだろうから、一発使用するのが限界だろう。

 多分、ぶっ倒れるだろうし。

 

「やはり、アルスターの光の御子であるクー・フーリンのゲイ・ボルクでしたか。」

 

「うん。本来の効能を全のせしたら間違いなく倒れるから、使う場は限られるけどね。特に【抉り穿つ鏖殺の槍】はぶっ倒れるだけじゃなく、身体にも何かしらの異常が出るだろうから、使う場所は考えないといけないと思う。効能的に呪霊を鏖殺できるのはこっちだから、できれば何回も使いたかったけど。で、こっからが本題なんだけど、【刺し穿つ死棘の槍】の方なら、メインウェポンとして使い勝手がいいと思わない?かのアルスターの英雄のように、心臓を穿ったという因果を作って放ち、即死させるような芸当は呪霊に通用しないだろうけど、回復阻害の呪いならかけることができるんじゃないかな。」

 

「まぁ、呪霊は呪いの塊ですので、まず心臓がなくても動きますからね。心臓を穿ったという因果を作っても致命傷にはなりませんし、意味がありません。ですが、回復阻害ですか…。それくらいならば、呪力を消費したからちょっと疲れたな…程度の負担で使用できそうですね。呪霊の回復が阻害できればその分勝率も上がりますし、特級と呼ばれる階級の呪霊などの回復も阻害できれば、祓う時の負担がかなり軽くなるでしょう。」

 

「でしょ?だからゲイ・ボルクの力を借りることができないかなって思ってさ。」

 

 どう思う?とコヤンスカヤに問いかければ、彼女は小さく頷く。それは、紛れもない賛同の意味を込めたものだった。

 同意してくれたことによかったと呟く。そして、私は自身にゲイ・ボルクを使えるという特性を付与した。

 状況に応じて【刺し穿つ死棘の槍】、【突き穿つ死翔の槍】、【抉り穿つ鏖殺の槍】の三種類を変則的に使えるように。

 【抉り穿つ鏖殺の槍】を使用した場合は残ってる呪力に応じて、動けなくなるように条件を設けて。

 

「オルタニキさんが使う【抉り穿つ鏖殺の槍】を使用した場合は呪力の残量に応じて動けなくなる……ですか。」

 

「うん。すっからかんになったら、この世界で使われている反転術式をかけてもらっても一ヶ月は動けなくなると思う。呪力の消費量は一応コントロールできるから、どれだけの範囲に【抉り穿つ鏖殺の槍】を放つか決めて使用すれば、数日で動けるようになるけどね。でも、やっぱり撃てるのは一戦闘に一発のみが限界かな。【刺し穿つ死棘の槍】は連発できるけど。」

 

「当たり前でしょうに。マスターが使用するそれは、本来、その宝具を持つ者が使用するからこそノーリスクで放てるというもの。人の身であるあなたが使用していいものではないのですから。バックアップを利用して、“使用できるのは戦闘時に一回だけ”。“使用したら動けなくなる”と言う縛りを設けなくては使えるはずがありません。ああ、“呪力の残量によって動けなくなる期間が長くなる”という縛りも使うのでしたね。これらは妥当の縛りでしょう。まぁ、どちらにせよ使用したら動けなくなるだけで終わるのは奇跡に等しいです。【刺し穿つ死棘の槍】も、本来なら動けなくなってもおかしいのですから、なおさらに。」

 

「でも、賛同はしてくれるんだね。」

 

「ええ。(わたくし)たちがマスターを不測の事態に追い込むことはまずないと言い切れますが、万が一と呼ばれる事態は神の身であってもいつ起こるかわからないと言うもの。低確率であっても可能性がわずかにでもあるとすれば、マスター御自身にも身を守る術を一つくらい所有していただければ、安全性が上がりますので。ですが、よほどのことがない限り、使用は控えていただけますね?」

 

「……わかってるよ。無茶して倒れたら意味がないからね。そう言えば、なんとなく私はこれ以上何かしらの能力拡張ができない気がするんだけど、間違いない?」

 

「はい。その通りでございます。マスターはこの地に生まれ落ちた際、自身が持ち合わせている能力を付与する特性を使用し、永続的に使える能力を一つ獲得して生まれ落ちておりますので、今回の能力拡張により、永続能力枠は埋まってます。こちらの方は……まぁ、いわば、領域展開のようなものですので、使う場所は限られておりますね。ついでに、この能力と、此度付与した能力は併用することも可能です。しかし、併用した場合は間違いなく呪力が素寒貧になると思われますので、使用することはおすすめできませんね。」

 

「……なるほど。教えてくれてありがとう。」

 

 少しずつなら情報を開示してくれるんだと思いながらも、コヤンスカヤに感謝を述べる。

 彼女はどういたしましてと一言口にしたのち、他にご質問は?と聞いてきた。

 ないことを示すように首を左右に振れば、そうですかという短い言葉だけが返ってくる。

 

「るかるかも戦うのかー?」

 

 さて、使う武器も決めたし、次は槍の使い方を学ばないといけないな……と考えながら、呪力により顕現させたゲイ・ボルクをくるくる回していると、太歳星君が話しかけてきた。

 視線を太歳星君に向けてみれば、どことなく心配そうな表情を浮かべている。

 小さく笑いながら小さな頭を優しく撫でて肯定すれば、心配そうな視線はさらに強くなった。

 

「マスターは私たちが守るから、マスターは戦わなくても大丈夫なのに……。」

 

「そんなわけにはいかないでしょ。二人が心配してくれているのはよくわかるけど、呪術師の世界で生きるためにも、戦う術を一つくらい持っておかなきゃ。だから、私はこの槍を借りるんだよ。この世界で生きている間だけね。」

 

「でもでも、るかるかに傷ついてほしくないのだ。」

 

「ありがとう。でも、こればかりは譲れない。」

 

 何を言われても、ゲイ・ボルクを使用する意思は変わらないことを告げれば、太歳星君とアビーが拗ねたような表情をする。

 そして、ベッドに座る私の体をぎゅうぎゅう抱きしめてきた。ちょっとアビーの力が痛い気がするけど、決めた以上はやめるつもりないからね?

 

「あまり使わせないためにも、我々は気を抜くことなくマスターの代わりに戦闘をこなせばいいだけの話です。あくまで呪いの朱槍はいざという時の最後の砦。まずは、マスターに敵を近づけさせないことを最優先にして行動を取ればよろしいかと。」

 

 手にしていたゲイ・ボルクを消し、ぐりぐりと抗議するように頭を押し付けてくる太歳星君とアビーの二人の頭を撫でていると、コヤンスカヤがあくまでゲイ・ボルクは不測の事態が起こった際の最後の砦であり、基本的には自分たちが呪霊を一掃すればいいと口にする。

 それによりようやく納得いったのか、太歳星君とアビーは渋々私に抗議するのをやめた。

 コヤンスカヤにありがとうと告げれば、お気になさらずという言葉とともに、いざと言う時以外は絶対にゲイ・ボルクを使うなと念を押す言葉を残す。

 苦笑いをしながらその言葉に頷けば、満足げな笑みを彼女は浮かべた。

 

「……とりあえず、明日から真希さんに呪具を使い方を教えてもらおうかな。あとは、槍術をネットで調べたり、タニキやクーニキの戦闘時の動きを思い出したりといろいろしないとね。」

 

 翌日からやることを脳裏に浮かべながら、ベッドの上に置いていたスマホを手に取る。

 この世界にFate関連のものがないため技術をものにするまで時間がかかりそうだけど、少しずつやれることをこなしていこうか。

 ……タニキが召喚できたらいいんだけど、多分無理だよな。

 はーしょんぼり………。

 

 

 

 




 瑠風
 自身が持つ新たな力を追加して拡張する能力を利用して、呪いにまつわる武器の一つであるクー・フーリンの武器、ゲイ・ボルクを使用できる状態を自らに付与した異世界からの訪問者。
 【刺し穿つ死棘の槍】は低コストで呪霊に回復阻害の呪いを付与するメインウェポンとして使い、【突き穿つ死翔の槍】は呪力の消費量を上げることにより複数の呪霊に同時に回復阻害とダメージを与えるサブウェポンとして使う。
 最終手段として大量の呪力の消費と引き換えに【抉り穿つ鏖殺の槍】を戦闘時に一回だけという縛りと、使用後は自身の中にある呪力の残量に応じて3週間から一ヶ月は動けなくなるという縛りを施すことにより使用できるようにした。
 コヤンスカヤは、最終手段を使用した場合、特級は瀕死、一級以下は消滅に追い込むことができる凶悪な威力になると予測しているが、同時に瑠風に帰ってくる負担もかなりのものになるという見解を抱いている。
 なお、人に使用した場合は本来のゲイ・ボルクと全く同じ効能になるらしく、間違いなく食らった相手は死ぬらしい。

 太歳星君&アビゲイル
 瑠風がゲイ・ボルクを使用してでも戦闘を行おうとする姿に大反対。
 そのため、それを使用するような状況にならないように、絶対瑠風を守り抜くと決意した。

 闇のコヤンスカヤ
 瑠風の能力を全て理解している敏腕秘書。ゲイ・ボルクの使用を可能にしようとした瑠風の意見に賛成の意を示したが、あくまで万が一が起こった際の最終砦の扱いとして使用することに対する賛成の意である。
 彼女自身は太歳星君やアビゲイル同様、そのような事態を起こさないように注力を尽くすつもりである。

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