気がついたら祟り神様(純粋)と一緒に呪術の世界にいた話   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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16.瑠風のお仕事見学 戦闘開始編

 恵くんが呼び出した玉犬と、私が連れている太歳星君が辿る呪霊の気配に従いながら、廃村の中を走り回る。

 すると出るわ出るわの大量呪霊。魑魅魍魎の百鬼夜行かと軽くツッコミたくなるくらいには、結構の数が湧いて出る。

 

「呪霊大量すぎでは?」

 

「それな。」

 

 恵くんが式神を使って呪霊を祓う中、私はチラホラと現れる三級以下の呪霊を手にしているゲイ・ボルクを利用して倒していく。

 コヤンスカヤからのアドバイスをもとに、人に能力を追加する力を利用して、戦闘時のみクー・フーリンの動きができるようにしてみたけど、これすごいわ。

 本当に次々と呪霊を薙ぎ倒せる。戦闘なんて一回もしたことないはずなのに。

 なにこれチートじゃん。でも、たまに人体ってこんな動きできんの?って言いたくなるような動きすることがあるから、彼女が言っていた慣れるまでは筋肉痛になる恐れがあるって言う話は本当なんだろう。

 

「うわっなんか呪霊溜まりあるんだけど。」

 

「ああ。小さい呪霊が集まってる感じか。」

 

「ふーん。ねぇ、ちょっと試したい技あるから試していいかな?」

 

「は?」

 

「呪力をそれなりに消費するから連発はできないけど、一発くらいなら多少疲れる程度でなんとかなるし。」

 

「いや、何をしようとして……」

 

「んー……対軍宝具?」

 

「……何だそれ?」

 

「見ていればわかるよ。」

 

 そんなことを考えながら呪霊を倒していると、目の前に小さな呪霊が大量に集まってるのが見えて来た。

 0巻の時に狗巻先輩と乙骨先輩が出会したあれみたいなやつだ。

 低級呪霊の群れ……0巻のアレよりは小さいけど、それなりの数。

 だからこそ、私のこれが役に立つわけで……。

 

 手にしているゲイ・ボルクに流す自身の呪力を少しだけ増やす。すると、ゲイ・ボルクは赤い光を帯び始めた。

 それを確認した私は、槍投げの構えをする。

 

突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)!!」

 

 そして、ある程度呪力が宿ったことを確認したのち、手にしていたゲイ・ボルクを呪霊の群れ目掛けて放り投げた。

 呪霊の群れ目掛けて真っ直ぐと飛んでいくゲイ・ボルク。少しの間飛翔していたそれに、変化はすぐに訪れる。

 分裂……彼が単体に向かって放つ【刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)】とは違い、魔槍の呪いを最大限開放して渾身の力で投擲するこれは、心臓に命中させるのではなく、一撃の破壊力を重視しており、相手に向かって無数に分裂していき一発で一部隊を吹き飛ばすとされている。

 因果逆転程の強制力はないが、一度ロックオンすれば「幾たび躱されようと相手を貫く」という性質を持つため標的が存在する限りそこが例え地球の裏側だろうと飛んでいくのではと推察されているけど、実際見たことはないから謎である。

 

 無数に分裂した朱槍は、目の前にいた呪霊を一匹残らず貫いた。次々と消滅していく呪霊の姿を見て、恵くんが目を丸くしている。

 まぁ、そりゃびっくりするよね。何で一本の槍が無数に分裂した上、的確に呪霊を貫いてんだよって感じに。

 それを聞かれても、これはそう言う性質なんだから仕方ないとしか言えないんだけど。

 そんなことを考えていると、長物が風を切るような音が辺りに聞こえてくる。

 すぐに手を上に上げて手のひらを開いてみれば、そこにあるのが当たり前だと言わんばかりに、朱槍が綺麗に収まった。

 

「……何でクー・フーリンが持ってる武器を使うのかと思ってたけど、こう言うこと?」

 

「はい。呪いの武器って類だし、呪霊の数によって応用が利くので。数が多ければさっきのを使うし、単体だけだったり、不測の事態が発生した場合は少しだけ呪力を込めてそのまま突き刺せるので。後者の単体に叩き込む技なら心臓を穿つと言う因果を作ってから放つので必中になるし、なんらかの拍子にまれに外した場合も呪霊がすぐに回復できなくなるように回復阻害の呪いを残せるから便利なんですよ。ガンド……ルーン魔術の一種で、相手を指差すことにより病に陥れる、または病状を悪化させるって能力も考えていたんですけど、複数の呪いを相手にする可能性を考慮すると、単体も複数体も相手にすることができるこれの方がやりやすいなって思って扱えるようにちょっと能力で自身をいじりました。」

 

「あはは。やることがぶっ飛んでるねぇ……。」

 

「よくやろうと思ったな。まぁ、確かに応用は利きそうだが。」

 

「でしょ?」

 

 槍の柄の部分で肩を叩きながら、恵くんの応用は利きそうと言う言葉に対して笑顔を見せる。

 単体相手ばかりを相手にするなら本当にガンドでもよかったんだけどね、コストは低いだろうし。

 でも、今回みたいに低級でも複数体現れることがある可能性を考えたら、一体一体を指差すのめんどくさいからこうした方が早い。

 まぁ、その分呪力を消費するから、余程のことがない限りは連発に持ち込めないところが玉に瑕だけど、使い勝手の良さを考えたらガンドよりマシだ。

 

「さっきのを使うとしたらどれくらいの呪力を消費するのかな?」

 

「うーん……まぁ、数値化するなら3桁くらいはガッツリ持っていかれますかね。少ししたら回復するけど。それで、単体に放つだけの方なら2桁くらいかな。」

 

「へぇ……」

 

「ちなみに、全呪力を込めれば、さっきの以上の火力を出せる上、特級すらも一撃で消すことができるであろう技も一応ありますが、あまりにもコストが大きいし、最悪一ヶ月は動けなくなるので、余程のことがない限り使うつもりはありません。」

 

「まぁ、それくらいの火力がある技なら、妥当と言えるリスクかな。」

 

「何でそんな技を作ったんだよ……」

 

「うーん……基本的にはサーヴァントたちが何とかしてくれるんだけど、万が一サーヴァントが動き辛い状況が発生した場合、自分でも特級に対応できるように……かな。どんな呪霊が現れるかわからないからね。そう考えると、自分でも対処できるようにしないといけないかなって。めちゃくちゃでかいリスクできちゃったけど。」

 

「デカすぎるだろ。」

 

「まぁね。でも、ジョーカーは持っていて損はないでしょ。」

 

「そうかもしれないけどよ……。」

 

 恵くんから心配気な視線を向けられる。なんだろう。絶対に使わせないようにしなきゃ的な意思も感じられる気がする。

 まぁ、でも、今はお仕事が先かな。

 

「呪霊の気配は?」

 

「……こっちの方はもういない。次は、あっちが多い……かな?」

 

「なるほど。呪霊多すぎでは?」

 

「……………。」

 

「「………五条先生?」」

 

 太歳星君に呪霊がいる場所を答えてもらう中、五条先生がやけに無言で一点を見つめていることに気がつく。

 不思議に思い彼に声をかけてみれば、どうやら恵くんも同じように疑問を抱いていたのか、2人分の声が重なった。

 

「……ああ、ごめんごめん。ちょっと考え事をしててさ。……もしかしたら、僕も動かないといけなくなるかもね。」

 

「え……?」

 

 五条先生の返答に目を丸くする。五条先生も動かなきゃいけないって、それ特級案件ってこと?

 いやいやいやいや、なんでお仕事見学の場でそんなことになっちゃうのさ。

 

「……瑠風。恵。警戒は怠らないで、なおかつ、身の危険を感じたらすぐにこの場から離脱して。サーヴァントたちの力があれば、すぐに離れることくらい簡単でしょ?」

 

「確かに簡単ですけど……」

 

「じゃあ、危なくなったらすぐに離脱。これは一つの命令だから、ちゃんと聞いてくれるよね?」

 

 五条先生から命令と言う言葉が出てくるって相当なことだと思う。

 つまり、ガチの特級案件ってわけか。……太歳星君も一緒に呪霊を倒していたから、呪力ドレインによる強化はできているけど、五条先生がそこまで言うとなると、素直に従った方が良さそうだね。

 

「わかりました。その時はすぐに離脱します。」

 

「うん。そうして。恵もね。」

 

「わかりました。」

 

 五条先生の命令に素直に頷けば、五条先生はそれでいいとばかりに笑みを浮かべる。

 

「それじゃあ続けようか。2人とも、気を引き締めてよ。」

 

「「はい。」」

 

「太歳神。いざと言う時は2人の離脱よろしく。」

 

「わかった。」

 

 太歳星君がいざと言う時は私と恵くんを離脱させることを承諾するなり、五条先生は村の中を歩き始める。

 とりあえず、低級の呪霊は始末して行こう。

 

 

 




 瑠風
 試しに投げボルクを使ってみたら思った以上の効果が出て上機嫌。
 しかし、すぐに五条先生からヤバいのがいるかもと言う言葉と共に、いざと言う時は離脱するようにと命令されて気を引き締めた。

 太歳星君
 呪霊の位置や数を把握しては瑠風たちに知らせていた呪霊レーダー。
 五条先生から危なくなったら瑠風と恵の2人を連れて離脱するように言われ、すぐにその指示に頷いた。

 恵
 瑠風が放った投げボルクに思わず戦慄した。呪力の消費量によってはあれ以上の火力が出ると言われ、そんなもん使おうとするとかぶっ飛びすぎてると冷や汗をかいた。
 五条先生からヤバいものがいるかもしれないと言われ、気を引き締めた。特級が潜んでいたらすぐに瑠風を連れて離脱するつもり。

 五条先生
 あまりにも次々と瑠風が呪霊を薙ぎ払っていくし、投げボルクを使って一気に低級呪霊の群を掃滅させるため、接触してよかったとハッピー。
 しかし、あまりにも村の中に呪霊がいるため、もしかしたらアレがあるかもしれないとすぐに頭を切り替えた。
 特級が出てきたら必ず瑠風たちに離脱してもらうため、命令と言う強い言葉を使った。

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