気がついたら祟り神様(純粋)と一緒に呪術の世界にいた話 作:時長凜祢@二次創作主力垢
「……どうぞ。」
「うん、邪魔するよ。」
「…………。」
最強呪術師と出会して数十分後。
私は、彼、五条 悟を自宅の方にまで招いていた。
私が彼を連れて帰った時、母さんがすごく驚いていたことは記憶に新しい。
彼の顔の良さと、体調を崩しているのをたまたま見つけたからここまで送りにきたという清々しいまでの嘘に騙された姿もね。
で、まぁ、母さんがお礼をしたいとか、もう遅いですからとか言って、彼を夕飯に誘ったのは数分前。
五条 悟……いや、内心でも年上……さらには一応教師でもある人をフルネーム呼び捨ては失礼か……。
……五条先生は、母さんが口にした、夕飯を食べて帰らないかという質問に対して、躊躇うことなくそれじゃあお邪魔しますね?と素晴らしい笑顔(目隠しなし)で承諾しやがりました結果、夕飯ができるまで、なぜか私の自室で待つことに。
─────……なんで私の部屋なんだよ。つか目隠し外して笑顔とか正気かこの人?自分の顔面の良さ理解しての反応だよね絶対。マジふざけんな。母さんが骨抜きになったらどうすんだよこの野郎。まぁ、イケメンだからと言って、母さんが一回りも年下の人に現を抜かすことはないだろうけどさ。ジャニを応援する年上ファンくらいっしょ。
「さてと……じゃあ、ちょっと僕と話をしようか。その前に、君の名前を聞かせてもらってもいいかな?」
「……そういえば名乗ってませんでしたね。
「瑠風ね。僕は五条 悟。この東京にある呪術師の学校で教師をしてるよ。」
「呪術師……。」
「そ。世界には結構呪いが存在していてね。それを祓うことができる人間がいるんだ。で、僕が勤務しているのは、そんな呪術師が集まる場所……ってところかな。僕も呪術師をやっててね。これまで結構祓ってきたかな。」
知ってます……と口が裂けても言えない。
そんなこと言ったら、いくら調べても一般ピープルという結果にしかならないであろう私が、なんでそんなこと知ってるんだって話になるし。
そうなったら面倒臭いことこの上ないことになるのは確定するし、実は別の世界からこっちに来ていて、この世界は漫画になってたんですよ……なんて突拍子もない説明をしたところで誰が信じるというのか。
むしろ精神科に飛ばされるわそんな話したら。
だから黙っておく。
「その呪いを祓う人が、私に何か用ですか?」
まぁ、理由なんて簡単に想像つくけどね。
だって、私の側にいるのは太歳神とも呼ばれている祟り神、太歳星君。
呪術師である五条先生が、呪いの塊や発生源と言ってもおかしくないこの子のことを見逃すはずがない。
もちろん私は彼を祓わせたりしない。
利用する……という表現は正直したくないけれど、彼には何度も助けてもらっている。
彼がいなければ、私は呪霊に執拗に狙われる人間になってしまうから、離れてほしくない。
……幽霊とか、悪霊とか、そういう奴らって、自分たちを認識することができる存在を襲う傾向があるって話があるし、多分、私もそれに近い性質なのだろう。
でも、どうしてこんな性質を持ち合わせて生まれたのかはわからない。
なんらかの原因があるのは、間違いないと思うのだけど、それを探ることは今のところ難しい。
そう考えると、呪術高専に通うことで謎を解明することができるかもしれないし、どっちみち太歳星君を素直に奪わせるわけにもいかないか。
「そこにいる子、太歳神とも呼ばれてる祟り神だろう?」
「大人しく祓わせろとでも?もしそうだとしたら、こちらも考えがありますが。」
「……るかるか。コイツのこと祟ろうか?」
「うん、ちょっと待って?僕のこと祟ろうとしないで?それしたらどうなっちゃうか知ってるよね?」
「あなたの血縁を中心に、親戚の全てが死ぬでしょうね。」
「洒落にならないからやめて。解呪することはできるかもしれないけど、間違いなく時間がすごくかかるし、その内にどれくらい死んじゃうかわからないから。」
太歳星君の祟るかという言葉に即行でストップをかけてくる五条先生。
まぁ、別に祟るつもりはないけど、一つの牽制としては有効だったようだ。
今はいいよ、と太歳星君に告げる。
今はって何?って五条先生に言われたけど、その質問はスルーしておいた。
「僕は君らを害するつもりはないよ。流石に祟り神とは言え、神格相手にいくら力がある僕と言えど手出ししない方がいいことは理解してるからね。その子が君のことを守ってることも知ってるから。あの場にいたしね。それに、契約を結んでるみたいだし。どんな条件で結んでるのかまではわからないけど、契約者が害された瞬間、その子がこちら側どころか人類相手に敵対する可能性は十分ある。まぁ、そこら辺は弁えてるから安心してよ。」
五条先生が、私と太歳星君に危害は加えないと告げてくる。
くだらない冗談は言う人だけど、嘘を無駄に口にする様な人じゃないことはわかるから、これは嘘じゃないと判断する。
それに、彼が口にした言葉はもっともだ。
太歳星君は祟り神。神は余程のことがない限り約束を違えない。
これは、太歳星君にも言えることだ。
私が約束を違えたりしない限りは、こちらを守るという約束、契約は遂行される。
つまり、現在もまだその約束、契約を継続している私を害するということは、神格を敵に回すに等しい愚行。
流石に最強呪術師と言えど、祟り神……というか、神格持ちにまで手を出した場合、自分だけは助かっても周りに生じる被害がとんでもないことになることはわかるようだ。
「じゃあ、何のために来たんですか?」
となると、彼が私たちに接触した理由は勧誘に絞られる。
別に問題はないけどね。
むしろ、呪術高専に通わせてもらえるのであれば、それだけでかなり助かる。
太歳星君がこの世界にいる理由。私が持ち合わせている呪霊に狙われやすい特異体質。
そう言ったものを調べる機会がたくさんあるだろうから。
「その前に、少しだけ質問してもいいかな?」
「質問?」
「うん。」
五条先生からされた質問は、太歳星君とはいつ頃から一緒に過ごしているのかや、太歳星君とはどんな契約を結んでおり、どの様な条件を設けているのか……呪術に関しての知識とかは持っているのかと言ったものだった。
太歳星君と一緒に過ごし始めたのは小学生から。
太歳星君と交わした契約は、守る代わりにして欲しいことや太歳星君が望んでいるものを必ず返すという内容。
呪術に関しての知識は皆無であり、呪術師なんてものは初めて聞いたこと(実際は漫画やアニメの影響で知ってるが)と言った答えを返した。
私の返答を聞いた五条先生は、なるほどと小さく呟く。
そして、最後の質問があると告げてきた。
「最後の質問……?」
「うん。これは、瑠風に対する質問じゃないんだけどね。」
「?」
私に対する質問ではないとはどういう意味なのか……素直に疑問を浮かべていることを知らせる様に首を傾げる。
しかし、それは次の五条先生の言葉と、それにより現れた存在により答えを理解することとなる。
「瑠風と接触した時からずっと僕のことを観察しているよね。君らも相当ヤバい存在みたいだけど、瑠風の知り合いか何かかな?」
五条先生が視線を向けたのは、私と太歳星君がいる場所のさらに後ろ。
彼に倣う様に背後へと視線を向ける。
その瞬間、その場には光の粒子が降り注ぎ、爪先から第三者たちの姿を形作り始めた。
「……どうやら、お気づきのご様子で。ああ、でもある意味で必然的なのかもしれませんねぇ。太歳神は祟り神であり、呪いの塊の様なもの。
「そうね。例えどれだけ強い方でも、私のことはその眼で視ないことをおすすめするわ。特に、悪い子になった私のことは。」
「今の姿でも十分危険な気もしますがね。」
辺りに響くのは二人の女性の声。
その二人も、太歳星君と同じように、聞き覚えのある声だった。
まさかと思い、目の前に広がる光景に眼を見開けば、光の粒子が消えていき、一人の女性と少女が姿を現した。
「……確かに、そっちの女の子もヤバいものがついてるのはわかってるんだけどね。それ以上に君の方がヤバいと思うのは僕の気のせいじゃないよね?見た感じは普通の女性のようにしか見えないけど、その割には随分と禍々しいものが視えてるよ?」
「否定はいたしませんわ。なんせ、これが
辺りに重苦しい空気が流れる。
しかし、今の私はそれを気にしている暇なんてなかった。
どうしてここにこの二人がいる?私がこの世界に生まれ落ちると同時に連鎖的に顕現したってどういうこと?
ねぇ……コヤンスカヤ。アビゲイル。
瑠風
何らかの力を持っているようだが、それに気づいていない異世界からの訪問者。
連鎖的にサーヴァントが呼ばれる理由と、呪霊から狙われやすい体質になってしまった理由は、実は共通している理由なのだが、彼女に呼ばれた二騎のサーヴァントしか理解できていない。
太歳星君
瑠風が転移すると同時に発生した祟り神。
しかし、彼は他の二騎とは違い、自分が発生した理由はわかっていない。
だが、二騎と同様に、瑠風を守ることだけは本能的に理解している。
五条先生
実は瑠風と接触した時に、他にも二騎ほどヤバいのがいることは視えていた呪術師最強。
瑠風を害するつもりはないし、上層部に教えるつもりもない。
隠れていた二騎のうち、一騎がかなりの悪霊であることはもちろん理解済み。
一応、もう一騎もかなりヤバい存在であることは理解しているけど、禍々しいものが視えるだけで何が原因かはまだ考えあぐねている。
タマモ・ヴィッチ・コヤンスカヤ(闇)
瑠風の特異体質と、その原因の影響で呪術廻戦の世界に顕現したフォーリナーのサーヴァント。
普段はNFFサービスの女社長や、獣のサーカス団の団長という姿をしているが、戦闘時は本来の彼女に戻る。
オシャレ好きのため、瑠風は問答無用で彼女の着せ替え人形にされることになるのだが、瑠風はまだ気づいていない。
五条先生が持ち合わせている能力等を理解しており、彼から言われたヤバい存在という言葉を否定しなかった。
アビゲイル・ウィリアムズ
瑠風の特異体質と、その原因の影響で呪術廻戦の世界に顕現したフォーリナーのサーヴァント。
普段は年相応の女の子として生活しているが、戦闘時は第三再臨状態に姿が変わる。(戦闘に特化してると判断しているため)
五条先生に気づかれていたことに関しては驚いていないどころか、五条さんなら気づいていてもおかしくないと認識していた。
コヤンスカヤと呼ばれた際は、一応の配慮として、第二再臨状態で姿を現した。
若干第三再臨の自身が出ている状態だが、瑠風を害していないことから、精神に対する負担を少なくしていた。