気がついたら祟り神様(純粋)と一緒に呪術の世界にいた話   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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09.いざ、呪術高専へ

 不思議な夢を見て二度寝を決めて、かけていたアラームで起床する。

 結局、自分が見ていた夢がなんなのかはわからなくなってしまったけど、どうしてかまた見るような気もするし、今はとりあえず気にしないでおくことにしよう。

 念のために太歳星君に、夜中に感じた力は感じるか聞いてみたら、今は感じないって話だし、多分、大丈夫。

 

「おはようございます、マスター。」

 

「うん。おはよう、コヤンスカヤ。アビーもおはよう。」

 

「ええ。おはようございます、マスター!」

 

「……夜中は起こしちゃってごめんね、セイ。」

 

「確かにびっくりしたけど、大丈夫だぞー!あ、忘れてたな。はんなまー!るかるか!」

 

「おっと。確かに忘れてたね。はんなま、セイ。」

 

 そんなことを思いながら、私は三騎に増えたサーヴァントたちと挨拶を交わす。

 そういえば……アビーとコヤンスカヤはサーヴァントって言ってたけど……私、令呪なんて………。

 

「………あったわ。」

 

 そんなもんあったっけと自分の体を探してみれば、くっきりと右手の甲に令呪が浮かび上がっていた。

 なんだろうこの形……流星……のように見える。

 なぜ流星……?フォーリナー中心だから?それとも太歳星君が地上を巡る星だからなんだろうか……。

 もしかしてコヤンスカヤ(闇)の影響で?……どれもあり得そうだな。

 

「マスター?」

 

「どうしたのだ、るかるか?」

 

「おや、ようやく令呪を見つけましたか。いささか遅すぎませんこと?」

 

「………うるさいな。サーヴァントを連れて動くことになるとは思わなかったから知らなかったんだよ。」

 

 無言で令呪を見つめていると、アビーと太歳星君が不思議そうな表情を見せる。

 コヤンスカヤの指摘はちょっと一言余計だったので軽く言い返しておいた。

 

「昨日までは令呪なんてなかったのに……」

 

「そうだったのですか?それはおかしいですねぇ……。(わたくし)たちは、マスターがこの時代に生まれ出でた時にはすでに契約を結んでいたはずなのですが……。」

 

「え?ここに生まれた時から?」

 

「はい。となると……何かしらの細工がされていたのかもしれません。(わたくし)たちをサーヴァントとして認識したら令呪が発生するとか……そんな感じの何かが仕掛けられていたとか。まぁ、こちらに来る前の記憶が戻る前に令呪なんてあったら、周りからなんだこの痣は、みたいな感じに気味悪がられていた可能性もありますねぇ。」

 

「ああ……まぁ、確かに、それはあり得るかも。この世界には、本来サーヴァントは存在しないし。」

 

「ええ。ですので、それを避けるためにも隠されていた可能性があります。マスターがサーヴァントという存在を認識できるようになった上、自身が持ち合わせている力をうまく扱えるようになりたいと望むまで。」

 

 コヤンスカヤの言葉に、なるほどと小さく呟く。

 本来ならばこの世界に存在しないはずの神秘。サーヴァントとそれを使役するマスター……そして、マスターが手に宿す令呪。

 側から見たらかなり不気味なものと言えるだろう。ただでさえ、この世界には呪霊と呼ばれる異形化した呪いが存在しており、それを見ることができる人間が少なからずいるのだから。

 それに、どうやらコヤンスカヤたちはサーヴァント……ではあるけど、魔力ではなく呪力により顕現しているような状態のようだから、呪術師や呪詛師には姿を消していても視えるようだし、もし、呪術師の上層部とかに見つかっていたらどんな目に遭うかわからない。

 だから、私がこの力を扱いたいと望まない限り、令呪は現れなかったというのも少しは納得できる。

 

「そういえば、この令呪は通常の令呪と同じもので、使ったら一画ずつなくなるのかな……」

 

「そうですねぇ……どちらかと言うと、カルデアの方に近いかと思われます。特殊な令呪ですので、(わたくし)たちにバフをかける程度のものであり、一画消費しても時間経過で復活するタイプみたいですから。」

 

「……それ、どっかに魔力供給源ならぬ呪力供給源があるってことでは?」

 

 別の世界で聖杯戦争とかやめてよね。

 いや、そもそも聖杯があるのかわからないけどさ。

 

「まぁ、この世界は呪力が溢れているような場所のようですし、もしかしたらそこら中にある呪力が供給元になってるのかもしれませんよ?」

 

「それはそれでなんかイヤだな……。」

 

 どんだけ呪力が世界中に溢れてんのよ。怖いっての。

 コヤンスカヤの言葉に、少しだけ表情が引き攣る中、供給源はいったいどこにあるのか少しだけ考える。

 この家なのか、それとも自分の体の中にある何かのせいなのか……あ、なんか嫌な予感がしてきたから考えるのやめよう……。

 

「……とりあえず、荷物まとめるか。」

 

「手伝うわ、マスター。」

 

「ワガハイも手伝うぞるかるか!」

 

「では、(わたくし)は少々マスターのクローゼットを漁りますね。」

 

「いやクローゼット漁るなよ。」

 

「何をおっしゃいますか。漁るに決まっていますでしょう?なんせあなたは女子高生。もうちょっとオシャレに力を入れても構わない年齢なのですから。それに、一応(わたくし)はNFFサービスのトップを務めている者ですのよ?多少はオシャレをしていただかなくては困ります。」

 

「めんどくさ……」

 

「何か?」

 

「………ナンデモナイデス。」

 

 コヤンスカヤの目がちょっと怖かった。

 自分と契約をする以上、マスターも一匹の獣に過ぎないとか、洋服と言い理屈と言い、人間はどうして裸になることを嫌うのかとか言っていたくせに、オシャレさせるんかい。

 あれか?あっちはいわば神としての側面が全体的に出ているからであり、こっちの自分は人間に擬態して生活している部分が出てるからとかなのか?

 ていうか、コヤンスカヤはカルデアの記憶あるんだ。

 太歳星君は曖昧にある状態で、アビゲイルはほとんど覚えてない状態に見えるのに。

 

(わたくし)が愛玩の獣であることをお忘れですか?他のサーヴァントとは違うのは当然でしょうに。」

 

「いや心を読むな。」

 

「マスターがわかりやすいのが問題かと。読んだ覚えはありません。」

 

 ……どうやら、ビーストと通常のサーヴァントはかなり違うようです。

 太歳星君は通常のサーヴァントとはどこか違うような気もするけど、忘却補正とかないのかね……。

 ゲーム内では、直接彼を藤丸立香たちがカルデアに連れて帰った感じだったから、あの島の出来事を覚えていただけってことかな。

 まぁ、なんでもいいや。

 

「るかるか。これはどうするんだ?」

 

「それは持って行くよ。そっちは持って行かない。」

 

「マスター。ぬいぐるみさんたちはどうするのか決めているの?」

 

「……少しだけ持って行くつもり。なんか落ち着くから。」

 

「まぁ、可愛らしい。まるで幼子ですねぇ?」

 

「うるさいよコヤンスカヤ。」

 

 余計な茶々を受けながらも、順調に荷物を纏めて行く。

 こっちの下着を見たコヤンスカヤがダサくありません?とか言ってきたけど、まだ高校生だから問題はないでしょうが。彼氏がいるわけでもないんだし。

 女ならば下着にも気を使うべきではとか言うなし。それは大人になってからでいいだろ。

 別に私は胸が大きいわけでもないんだから。

 

「……こんなものかな。」

 

「それなりにコンパクトにまとまりましたねぇ。」

 

「……気のせいかしら?コヤンスカヤさんの側に、結構大きな荷物がある気がするのだけど。」

 

「おい狐……なんなのだその荷物は……」

 

「こちらですか?もちろん、マスターの私服ですわ。しっかりと選別しておきましたので、お出かけの際はこちらを着ていただきます。そういえば、あのペンギンの衣装は……?普通のサイズのようでしたが。」

 

「セイの寝巻きだよ。この子が欲しいって言ったからね。値段的にも十分買えるものだったから買ったんだ。」

 

「ああ……なるほど。彼女と過ごした記憶が、曖昧ではあっても存在しているのですね。」

 

「みたいだね。だから、それも荷物に入れてあげて。」

 

「畏まりました。」

 

 必要な荷物をまとめることができて一安心。

 あとは、そろそろ迎えに来る五条先生を待つだけだ。

 そう考えながら、それなりに片付いた部屋をベッドに腰掛けながら眺めていると、玄関のチャイムが鳴り響く。

 

「瑠風〜。五条先生がお迎えに来てくれたわよ〜?」

 

「うん。今行く。」

 

 同時に聞こえてきた母さんの声に返事を返し、まとまった荷物を持って自室から出て行く。

 そのまま玄関の方へと向かえば、そこには五条先生が立っており、ヒラヒラと私に手を振っていた。

 彼の背後には大きめの車が一台。太歳星君たちも乗れるようにしているのだろう。

 まぁ、私がいるだけで四人分だからね。仕方ないね。

 

「やっほー瑠風。準備はいい?」

 

「ええ。大丈夫です。」

 

「オッケー。じゃあ高専に向かおうか。本来なら面接とかあるんだけど、瑠風はちょっと特例って言うか、他人から危害を加えられそうになったら何が起こるかわからない爆弾状態だからね。なんとか免除してもらえるよう説得しておいたから、そのまま高専に入れるからね。」

 

「……面接で危害が加えられるって何…………?」

 

「……まぁ、いろいろあるんだよ、いろいろ。」

 

 まぁ、知ってますけどね。悠仁が夜蛾学長にやられていたし。

 確かに、あれをやられたら何が起こるかわからないわな。五条先生曰く、私の中にある特異物質は私に対して攻撃性のあるものや危害を加えようとするものに反応してカウンター的に相手に攻撃を引き起こすものらしいし、コントロールできていない以上、試すための攻撃に反応したこっちの力が相手を殺めるとか言う過剰防衛が入る可能性があるようだし……。

 

「……深くは聞かないことにしときます。」

 

「うん、そうして。」

 

 普段は余裕な様子を見せる五条先生が苦笑いを溢すとかレアでは?

 なんて、彼の表情を見ながら考えていれば、玄関から母さんが出てくる。

 すぐに母さんに視線を向けてみれば、母さんは穏やかな笑みを浮かべながら、私のことを見つめていた。

 

「行ってきます、母さん。」

 

「ええ、行ってらっしゃい。たまには連絡を入れてよ?父さんがいないと、母さん一人になっちゃうんだから。」

 

「もちろんだよ。」

 

「……気をつけてね。」

 

「うん。」

 

 何のために出てきたのかはすぐにわかった。だから私は、母さんと短く言葉を交わしたあと、五条先生に目を向ける。

 五条先生は小さく笑みを浮かべながら、私の方に手招きをしてきた。

 それに従うように近づけば、車のドアが開く。

 これに乗り込んだら私は呪術高専の生徒。すぐには自宅に戻れなくなるけど、自分の中にある力をコントロールし、欠けてる記憶を見つけるためだ。

 最後に母さんの方に手を振って、車の中へと乗り込む。

 あ、運転席にいるの伊地知さんだ。とりあえず軽く挨拶だけはしておいた。

 

「じゃ、行こうか。」

 

 五条先生も車に乗り込み、ドアが閉まると同時に車は動き出す。

 どんどん離れて行くこの世界での自宅。原作に関わる準備が、また一歩進んだのだと改めて認識するのだった。

 

 

 




 瑠風
 自分の中にある力の一つに嫌な予感を抱く異世界からの訪問者。
 危害が加えられたら自身の中にある特異物質の力と何かの祝福が、カウンターとして力を発動し、相手を殺めると言う過剰防衛になるのは勘弁して欲しいので、呪術高専で力の使い方を学ぶため自宅より離れる。

 太歳星君
 瑠風のサーヴァントの一騎である祟り神様。
 お気に入りのペンギンパーカーを瑠風が高専に持って行ってくれたことにご満悦。
 コヤンスカヤのことは狐。アビゲイルのことはアビアビと呼んでいる。
 五条先生のことはあまり特異じゃないが、瑠風に危害は加えないみたいだしと、あだ名を考え中。

 闇のコヤンスカヤ
 カルデアの記憶ありなビースト幼体からこぼれ落ちた一欠片で、現在は瑠風のサーヴァントなフォーリナー。
 神としてのの(わたくし)は確かに服を身につける人間に対して疑問を抱いておりますが、社長としての(わたくし)はモラルがあるのでオシャレくらいは自由にさせます☆
 まぁ、服装は全般的に(わたくし)が選びますが。

 アビゲイル
 瑠風の側にいるフォーリナーのサーヴァント。
 悪い子じゃない時の彼女は、全般的に瑠風のお手伝いをするし、瑠風や太歳星君と一緒に遊んでる。
 悪い子が入ったらコヤンスカヤを狐さん呼びにするが、普段はコヤンスカヤさんと呼んでいる。

 五条先生
 夜蛾と話し合うことで瑠風には面接をしないことを決めた先生。
 だって、瑠風の中にある祝福って、少しでも刺激したら容赦なく命の危険に晒してくる爆弾だから、試すだけのものでも過剰に反応しそうだからとは先生談。
 ちなみに、説明した際に使ったトドメの言葉は、三人目の新入生、あの太歳神が憑いてるから刺激したら何が起こるかわからないし、最悪大勢が死ぬの一言だった。
 もちろん上層部には黙ってるし、夜蛾にも話してはダメだと念をおしておいた。


瑠風のメインサーヴァントは?

  • 題名の通り太歳星君
  • あえてのアビゲイル
  • 宿儺様と張り合えそうな獣、コヤンスカヤ

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