オールラウンダーなトップウマドルを目指すスマートファルコンに転生した男の話。

スキャンダルのない昔ながらの清純誠実なウマドルを目指します。

尚スキャンダルからやってくる模様。

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ホントはファル子イベントの時に出したかったんだ……


P1 ウマドル誕生秘話

この時代、ウマ娘たちには多様化の波が訪れ様々なウマ娘像が求められ、またウマ娘たちも求めてきた。

 

ダジャレ皇帝、たわけ女帝、不良風ウマ娘、ナマイキ帝王、パクパク名優、黄金の問題児、等々……多くのウマ娘像が生まれ、その覇権を争う中、それは唐突に舞い降りた!

 

まるで一瞬に現れる流れ星のように、颯爽と現れたそのウマ娘は多くの人を虜にし、笑顔を生み出し、幸せにしてきた。

 

そのウマ娘像の名こそ――――ウマドル。

 

 

時に歌い、時に踊り、時に走る。そんな彼女に多くの者たちが魅せられた。

 

多くの友人を得て、信頼できるトレーナーをパートナーとし、様々な艱難辛苦を乗り越え、適性を覆し、オールラウンダーとして駆けてきた彼女を、誰が言ったかウマドルと。

 

そんな皆が認めるウマドルのプライベートは、マネージャーを兼任するトレーナーによって難く秘されている。

 

そんな彼女が、今何をしているかというと――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえねえファル子先輩! 美味しいスイーツのお店見つけたんですけど、一緒に食べに行きませんか? とっても美味しいって評判なんです! そうだ! ウマスタグラムにその写真乗せましょうよ!」

「ファ、ファル子が一緒よりもカレンちゃん一人の方が良いんじゃないかなぁ~」

「大丈夫ですよ。今更カレンとファル子先輩が仲が良いことを疑う人なんていませんから。それとも、カレンと一緒にお出かけするの、いやですか……?」

「ファルコンさん、私今日これからの時間空いてるんですが、せっかくなら一緒に水族館なんてどうでしょうか? もちろん、ファルコンさんのためならいつでもスケジュールの変更は可能ですよ」

「いや、ファル子これからダンスのレッスンを……」

「いけませんよ。ファルコンさんは少し根を詰め過ぎです。昨日だって4時間36分51秒のトレーニングの後に、ウイニングライブのダンストレーニングを1時間15分32秒。そして一週間と8時間23分51秒の河川敷ライブの練習を1時間と3分していたではありませんか。そのようなファルコンさんを出汁に自分の可愛さアピールをしようとするような方といるよりも、水族館をのんびり堪能しませんか?」

「フフッ……ファル子先輩をストーカーしてるような人と一緒にいたら、ファル子先輩疲れちゃいますよね。カレンがいーっぱい癒してあげますから、一緒にスイーツめぐりに行きましょう?」

「ファルコンさん?」

「ファル子先輩?」

「す、スキャンダルぅ……」

 

絶賛修羅場に巻き込まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

転生した。スマートファルコンに。

 

驚いたものだ。いきなり車に轢かれたと思ったら、耳と尻尾が生えた赤ちゃんになってるんだもんな。

しかも母親らしき人から、「あなたの名前はスマートファルコンよ」なんて言われたからさらにおったまげたものだ。

 

ウマ娘じゃねえかよと。

 

さて、スマートファルコンについて説明しよう。

競走馬を擬人化させたゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』に登場するキャラクターの一人。史実の競走馬スマートファルコンの擬人化キャラであり、トップウマドルを目指すウマ娘である。

 

で、ウマドルって言うのがウマ娘のアイドル、略してウマドル。

レース後にあるウイニングライブでキラキラ輝けるような存在のことで、そのウマドルを目指して日々努力しているキャラ。

 

しかし悲しいかな。本人の適性はダート。注目が集まりやすい芝のレースでの適性はなかった。公式設定的には、本人も泥臭いイメージを気にしているらしい。

だがダートでの才能は確かにあり、史実でもあの逃げウマであるサイレンススズカから取って、『砂のサイレンススズカ』という異名があったりするほど能力は高い。

 

まあ、ゲームじゃ魔改造で芝の適性上げれるんで、誰が言ったか『芝のサイレンススズカ』なんて呼ばれたりもしたのだが。それただのサイレンススズカや。俺も作ったが。

 

 

話を戻そう。

そんなこんなでスマートファルコンに転生したわけなのだが、これはもうやるしかあるめぇよ。

 

 

俺はなるぞ! ダートはもちろん、芝も走れるウマドルに!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――と、意気込んだのは良かったのだが、その道のりはいきなり躓きだした。

 

ウマドルはレース後のウイニングライブで輝ける存在。なら、前提としてレースで勝てなければ意味がない。ウイニングライブはレースで勝ったウマ娘がセンターを踊る。センターは一番輝ける位置だ。そこで踊るためには勝利する必要がある。

 

走れる年齢になってからは、親には友達と外で遊んでくると言って外を駆けずり回った。

効率の良い練習方法なんて分かんないので、出来ることといえば走れるだけは知る事だった。

 

目的意識、というものだろうか。その甲斐あって、子供向けの地区レースでは負け無しだった。

 

 

……そう、負け無しだったのだ。()()()()()

 

レースとはいえその地区で行われる小さなもの。走る場所も土のグラウンドだ。本物のダートというわけではないが、土の上なら負けなかった。やはりスマートファルコンの俺には、ダートの才能があったようだ。

 

だが問題は、時たま行われるそこそこ大きいレース大会。芝のコースを借りて行われるレースでは惨敗を期した。

 

やはり史実同様、俺は芝適性がとてつもなく低いらしい。

これは、ダートも芝も走れるウマドルへの道が険しいことの証明に他ならない。

 

……おもしろい。やってやろうじゃねえか! 適性がどうしたこちとら精神年齢43歳の転生者ぞ!

気合は十分、後は行動あるのみじゃあああああ!

 

 

 

それからの俺は、自分で自分を褒めたくなるほどに動いた。

 

まずは図書館で芝とダートの違いについて徹底的に研究し、同じく図書館にある共用パソコンでトレーニング方法についても調べ上げて気になるものがあれば全て実践する。

たまに親にねだって、本物のレースを見に行ったり、URA主催のイベントに足を運んだ。イベントで実際のレース場の芝やダートを走れたのは良い経験である。

 

そしてアイドルの研究も忘れない。人間、ウマ娘のアイドルは共にいるが、やはりこういったものは種族が違えど共通していることはある。数は少ないが、ライブにも行ったことがある。メジャーなアイドルから地方、地下含め全てを研究した俺に死角はない。

今ではすっかりアイドルオタクとなってしまった。

 

しかしそれらに掛かりきりになって、学業を疎かにするわけにはいかない。しっかりと勉強もしてテストでは毎回ほぼ満点。まあ、これは前世の知識があるので当然っちゃ当然である。

 

それよりも重要なのは、学校での友達作り、コミュニケーションである。

ウマドルを目指す以上、『可愛い』を目指すのは当たり前だが、そう言った女子は得てして嫌われやすいもの。小学校の友達なんざ卒業してしまえばほとんど関わることはないが、これも将来のファン交流の練習と考えてしっかり取り組んだ。

幸い、生まれつき美少女が多いウマ娘の中でも、スマートファルコンの容姿はみんなの目を引くようで、練習だ……ゲフンゲフン! 多くの女の子が友達になってくれた。

 

まあなんか女の子たちの視線が妙に熱かったり、放課後校舎裏に手紙で呼び出されたりもしたが、おおむね順調に進んだと言っても良いだろう。

とはいえ、後者は本当にヤバいと思ったけどね。さすがにやり過ぎたかと思って逃げる準備はしていたが、蓋を開けてみれば数名の女子がファンクラブを作りたいというものだった。勝手に作ればいいものをと思ったが、本人に了承を取る辺り子供らしいと思った。

 

だが、さすがに小学生の内にファンクラブがあるのはマズイと思い、丁重に断らせてもらった。トレセン学園に入ってウマドルの活動を始めれば勝手にできるだろう――というか未来のトレーナーに作らせる――し、その時になって既にありましたとなっては、いらぬイザコザが起きてしまうかもしれない。小学生の時に、小学生が作っていたからといって、それを公式とするかはまた別問題だ。炎上はしたくない。

 

とはいえ、このまま断るだけというのも申し訳ないので、聞ける範囲でお願いを聞いてあげることにした。

何故か全員、頭を撫でてほしいだとか、耳元で囁いてほしいとか、冷たい目で思いっきり罵倒してほしいとかだったので、それくらいならとやってあげた。もちろん最後のは断った。

 

他にも美容、ファッション、健康、生活習慣、日々の仕草や礼儀作法etc.etc.……これらを磨きに磨き上げ小学6年生に進級した俺は、満を持して両親に話をした。

 

「お父さん、お母さん。お話があるの」

 

中央トレーニングセンター学園。通称トレセン学園の中等部に進学したいと。

多くのウマ娘が夢見るトゥインクル・シリーズ。そこで走るウマ娘たちが多く在籍するトレセン学園に入ることは、ウマドルとしても絶対条件。

そのための準備はしてきた。走りを鍛え、前世の経験で油断しないよう受験勉強だってコツコツしてきた。後は親の許可一つなのだ。

 

しかしトレセン学園の学費は、他の私立と比べても高い。おまけに特待生制度はほとんど充実してないときた。現役トレーナーからの推薦状……すなわちスカウトされれば、いくらか学費が免除されたりもするが、それを頼りにするのは難しいだろう。

 

「だからお願い! ファル子に、トレセン学園に通わせてください!」

 

俺を一番近くで見てきた両親には、今まで磨き上げてきた仕草も笑顔も意味をなさない。

本音一つ、ありのままの自分の言葉でぶつかるのだ。

 

「顔を上げて、ファルコ」

「私たちも、お前がトレセン学園に入りたいと思っているのは気付いていたよ。そのために、昔から頑張っていたのもな」

「え……?」

「お友達と遊ぶなんて言って、いつも泥だらけで靴底をすり減らして帰って来るんだもの。気づかないわけないわよ」

「アイドルの出る番組や雑誌を一生懸命見てたりしたのも、そのためなんだろう? ウイニングライブとかもあるしな。いつかこんな日が来ると思ってたんだ。安心しろ。私たちも準備はしてる。お父さんたちにも、ファルコの応援をさせてくれ」

「でも、やるからには一生懸命頑張るのよ。辛くなったら、お母さんたちを頼っていいから」

「……お父さん……お母さん…………あり、がとう……!」

 

気づけば泣いていた。

 

思えば前世の家族との仲は、どこか冷え切っていた。だからこそ、この優しい両親の元に生まれてこれたのは幸せだった。

 

情けない話である。ウマドルとして、みんなに笑顔を届けるなんて言っておきながら、両親に先を越されてしまった。親は強しである。

 

決めた。ウマドルになる事とは別に、レースで勝って絶対に親孝行をする。今度は両親を泣かせるのだ。

 

次の日から、トレーニングに一層力が入ったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時は経ち、俺はトレセン学園の制服に身を包み、門の前に立っていた。

 

「おはようございます!」

「おほようございまーす!」

 

あのたづなさんに挨拶されることに内心興奮しながら、トレセン学園へと踏み出す。

 

ここからトップウマドルへの道が始まるのだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――と思っていたのか?(ブロリー感)

 

いや、始まったのは始まったんですよ? 

 

ダートはもちろん、芝も走れる俺は引く手数多だった。その中からしっかりと考えて契約を結んだのが、今の女性トレーナー兼マネージャーである。

彼女を選んだ理由は簡単。学園でやったゲリラライブに、初めてトレーナーの観客としていたのが彼女だからである。

 

トレーナーの中には、レースで勝たせるために担当のやりたいことを許可しないトレーナーもいる。というか、ゲームでのエアグルーヴとかそのことでトレーナー間では問題児扱いされてた気がする。

まあ、間違いでもないんだろうけど、やっぱり思春期の女の子(精神年齢47歳)としては、やりたいことを簡単に捨てられるわけない。

だからこそ、ウマドルに理解のある人をトレーナーにしたかった俺にとって、彼女は渡りに船だった。

 

彼女と専属契約を結び、一年ほどトレーニングを行い、俺たちはデビューした。

トレーナーとも話し合い、俺たちの方針としてはダートを主戦場にして、芝も走る。つまり、出れる限りのレースに出るというものである。用は、あのハルウララの真似をしようと言うことだ。まだ入学してなかったけど。

ダートにおける適正を捨てるのは勿体ないし、だからといって注目が集まりやすい芝のレースに出ないのも、俺の思い描いたスマートファルコン、ウマドルとしてどうなのか。

その結果である。

 

ダートレースのデビュー戦を華麗に勝ち抜き、鍛えに鍛えたアイドル技術を駆使してウイニングライブで観客たちを虜にし、芝の重賞も勝った。

乗りに乗った俺たちは、次の目標を皐月賞に定めた。

 

しかし、やはり生まれ持った適性の差か、芝のGⅠは厳しかった。皐月賞ではギリギリ掲示板に名前が載りはしたが、やはり適正というものを覆すには至らなかった。

なまじGⅢやGⅡは勝てただけに、そのことがとても悔しかった。

 

あんなに意気揚揚と始めといてそれはないでしょホント……。

 

とはいえ、負けてしまったものは仕方ない。バックダンサーとしての貴重な経験が積めたと考えて気持ちを立ち直らせた俺は、NHKマイルカップへの準備をしていた。

 

そんな中、トレーナーが一人のウマ娘を連れてきた。

 

「ファル子、いきなりで悪いんだけど、チームを作ることになったわ」

「……トレーナーさん、ファル子のこと要らなくなったの……?」

「んなわけないだろー? お前がどれだけ自意識過剰で大言壮語な奴だとしても。私はお前の担当だ」

「一気に信用できなくなったよ!」

「夢の一つや二つ、一緒に見てやるから。な? だから泣くなって面倒くさいから」

「そういうとこだよ! でもありがとう! 好き!」

「私も好きだよ。だから芝のGⅠレース勝ってボーナスくれや」

 

ホント、余計なことを言わなきゃイケメン女性なのに……。

 

でも少しだけ、少しだけ心配になってしまった。どうやら皐月賞の結果をまだ引きずっていたらしい。

 

取りあえずそれは置いといて、本気でトレーナーがチームを作る理由が分からない。

俺がかなりの戦績を上げて、学園側からチームを作れとかせっつかれたならまだ分かるが、今の俺は言うほど戦績を持っていない。皐月賞も負けたし……あれ、目から水が……。

 

「……あのー、カレン忘れられてませんか?」

 

あ、忘れてた。って、ん? カレン?

 

「ああごめんごめん。ファル子、この子がチームを作るきっかけになったウマ娘、カレンチャンよ。今年の新入生ね」

「はーい! カレンチャンって言います。よろしくお願いしますね、ファルコ先輩」

 

トレーナーの後ろから現れたのは、一人のウマ娘。左耳に赤いリボンをつけたそのウマ娘を、俺は見覚えがあり過ぎた。

 

「カレンチャンって……もしかして、ウマスタグラマーの!?」

「わー! もしかしてフォローしてくれてるんですかぁ?」

「うん! してるしてる!」

 

そう。カレンチャンといえば、ウマスタグラムで圧倒的人気を誇るウマスタグラマーであり、そのフォロワー数は小学生の時点で驚異の200万人。

小学生の時はさすがに顔を隠してたりしていたが、卒業してからは顔出しを解禁。今も尚フォロワーは増え続け、300万の大台に乗り上げている。

 

俺? お、俺は見る専だから……(目逸らし)

 

そして、何を隠そう俺はカレンちゃんとメールでやり取りしたことがある。

 

SNSで人気な人は、それ相応の何かがある訳で。当時カワイイのなんたるかを求めていた俺は、そういったSNS方面にもリサーチを入れていた。

 

その中で偶然見つけたのが、まだアカウントを開設したばかりのカレンちゃんである。カレンちゃんを見つけた時、俺は彼女が『カワイイの伝道者』であることを思い出し、すぐさまメッセージを送った。

普通、こういったメッセージは受け付けない設定にするのが基本だが、今とは違ってまだフォロワー数も二桁。そして小学生というのもあって、そう言う設定にはされていないみたいだった。

 

やはりと言うか、俺よりも年下なのにカレンちゃんはカワイイとはなんたるか、確固とした考えを持っていた。俺のモノとはやはり方向性等も違うが、少しやり取りしただけで認めざるを得なかった。この子にはカワイイに対する天性のセンスがあると。

 

それからは、毎日のようにやり取りをしてはカワイイ談義に花を咲かせた。

夢のような日々だった。メッセージとはいえ、原作キャラとお話しできるし、なによりカレンちゃんは本当に可愛かったのだ。

顔出ししないと言う制約がある中でも、投稿された写真からはなんというか、並々ならぬ熱意の様なものを感じたし、現に日を追うごとにカレンちゃんのフォロワーは増えていった。

 

その後、彼女のフォロワーが増えたことで、さすがにメッセージ機能は切っておいた方が良いということになった。前世の経験と知識から、SNSでの注意することを伝え、それ以降はほとんど連絡を取ることもなくなった。

 

まあそんな訳で俺はカレンちゃんのファンだし、何ならメッセージでやり取りしていたが、それをあえて言う必要はあるまい。

古今東西のアイドルを研究した俺は、もちろんファンの在り方にしても熟知している。めんどくさいファンにはなりたくないのだ。

それに向こうも俺がそのやり取りした相手だとは気付かないだろう。だってアカウントの名前『カワイイの求道者』とかそんな感じだし、写真も自分の顔が写ったりしてるものは使ってない。

 

 

「あ、自己紹介しないとだね。スマートファルコンって言います! 気軽にファル子って呼んでね!」

「はい! よろしくお願いします、ファル子先輩!」

 

ぐはぁぁあああ!

 

両手を胸の前で握り、首はやや傾けて顔にはとびきりの笑顔! この挨拶だけで彼女のカワイイ力がどれだけ高いか、それを伝えきれないのが悔やまれる。

 

こんなに可愛いカレンちゃんを、トレーナーがどうやって捕まえて来たのか、てんでわからない。

だが確かに言えることは、カレンちゃんがトレーナーに毒されてしまわないように守ってあげることだ。

 

……矯正計画、始めるか。

マネージャーも兼任して貰うトレーナーがスキャンダルとして取り上げられたらたまったもんじゃない。

 

「んじゃ、トレーニング始めるぞー。グラウンドに出ろ。時間は有限。時間外労働はしないからな」

「カレン楽しみー! あ、ウマスタに写真あげていいですか?」

「一枚千円な」

「トレーナーやめて!?」

 

有能なのに性格に何のあるトレーナーを叱る俺。その様子を背景に写真を撮るカレンちゃん。

 

何だか漫画の一話みたいな光景に、俺は笑みが溢れるのを止められなかった。

 

 

 

 

 

……あれ、そういえば何でカレンちゃん、ウチのトレーナーのスカウト受けたんだろ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うう~、疲れたぁ。トレーナーのトレーニング厳しすぎるよ~」

 

気怠い身体を引きずりながら自室への道を歩く。

 

オールラウンダーを目指す身としては、芝適性を上げることは急務だ。故にトレーニングもそれ相応のものになる。

ただやはりと言うか、他人の目から見ても厳しすぎる様で、カレンちゃんから心配されてしまった。マジ天使。

 

しかし私専用とはいえ、あの厳しいトレーニングを見て良く逃げださなかったと思うよ。普通は自分もあれをやらされると思うもんだけども。

 

「ただいまー」

「お帰りなさい、ファルコンさん。門限まで12分45秒……門限に間に合っているとはいえ、あまりギリギリに帰ってくるのはいかがなものでしょうか?」

「うっ……ごめんなしゃい」

 

部屋に入るなり俺を出迎えてくれたのは、黒いショートヘアにボンッキュッボンッのルームメイト、フラッシュちゃんことエイシンフラッシュである。

アプリでもスマートファルコンとは同室にされており、何かと仲の良い関係とされるイベントも多い。

 

彼女の特徴と言えば間違いなく皆が答えるであろう胸部そうこ、時間に対する正確さだ。レースの勝利ポーズはエッ、とにかく時間に厳しく、一日のスケジュール管理すら秒単位で決められている。

 

「どうぞ。コーヒーです。ファルコンさんの好みに合わせて、角砂糖は3つですよ」

「あ、ありがとうフラッシュちゃん。……ってあ、これフラッシュちゃんの方のマグカップだよ?」

 

よくよく見れば、受け取ったマグカップはフラッシュちゃんのマグカップだった。

前にフラッシュちゃんと出掛けた時に、その場の雰囲気に流されて買ったペアルックのマグカップなのだが、ペアルックなのでちょくちょく間違えちゃったりするのだ。

 

しかし以外である。彼女はこんなミスをするような子ではないと思っていたのだが。

 

「……本当ですね。すいません、間違えてしまったようですね。ファルコンさん気にするなら、淹れなおしますが」

「ううん。ファル子は気にしないけど……フラッシュちゃんは気にする?」

「そうですね。私も特に気にはしません。ちゃんと洗っておりますし」

「そっか! じゃあいただきます!」

 

フー、フーと冷ましてから一口飲む。

砂糖の甘みとコーヒーの熱が、疲れた体に染みわたる。このコーヒーも毎日疲労困憊で帰ってくる私を見かねてか、部屋に帰るとフラッシュちゃんが淹れてくれたのが始まりだ。別に毎日してもらう必要はないのだが、「好きでやってますから」と言われてしまっては何も言えまい。何より、この一杯があるから頑張れる。

 

その心地良さに浸っていると、ふと視線を感じた。

 

視線に振り返ると、フラッシュちゃんがジッと俺を見ていた。

 

「フラッシュちゃん?」

「いえ、お疲れなようですし……寝る前にマッサージはいかがですか? これでも自信はあるんですよ?」

「でもフラッシュちゃんも疲れてるし、コーヒーも淹れてくれてるのにこれ以上迷惑は掛けれないよ」

「大丈夫です。まだトレーナーも見つけていませんし、それにファルコンさんよりは余裕がありますから」

「うーん。それならお願いしちゃおっかな」

「では、そこのベッドに寝そべってください」

 

フラッシュちゃんに言われるがままに、ベッドにうつ伏せで寝ころがる。

 

「失礼します」と断って来たフラッシュちゃんの指が、足に触れる。

 

「あ~~きもぢい~~。フラッシュちゃん上手だね~」

「喜んでもらえて何よりです」

「コーヒーにマッサージマデして貰っちゃって、何かお返ししないとね~」

「それなら既にもらっゲフンゲフン。気にしないでください。好きでやってることですから」

 

フラッシュちゃんのマッサージはとても気持ちよく、それでいて眠気を誘うような心地良さがあった。

 

「次は背中にいきますよ」

「ん~~」

「……眠たいなら眠ってしまってもよろしいですよ」

「しゃ~~~~い……」

「……では、順番を変えますね」

「すぅ……」

 

太ももの辺りを押される感覚を感じながら、俺の意識は落ちて行った。

 

 

ちなみに快眠でした。


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