謎のドーパントとゴート・ドーパントに敗北しリリィの心が折れてゆかりが意識不明という大敗北の、その後。楽しんでいただけると幸いです。
「リリィさん!」
ダブルドライバーNEOと各種メモリを置いて事務所を去ったリリィを追いかけて外に出るあかり。しかし既にリリィの愛車であるミダスホイーラーに乗って去っていく姿を見て、途方に暮れる。しかし、すぐに気を取り直して拳を握った。
「ゆかりさんもリリィさんもいない今、きりたんは狙われている身ですし私とミリアルさんしか動けません。ユキさんたちを見つけるためにも、私達がやらねば…!」
そう決意してきりたんに相談しミリアルとどこを調査するか話し終わった後、きりたんからハードボイルダーの鍵を借りて事務所を出ようとしたその時。あかりの視界に、ダブルドライバーNEOが視界に入る。
「……借りますよ、リリィさん」
そしてCOEFONT事件の時と同じくダブルドライバーNEOを手に取ると、改めて外に出た。
ミリアルは再び水都アウトレットモールに調査に向かい、あかりが目指したのは、行方不明者である小学生たちの通っていた潮風小学校。既にユキまで行方不明になったと伝えられているのか、水都警察署の警官たちが厳戒態勢を敷いている様だった。
「不破刑事!」
「やあ、紲星探偵事務所の所長さん。ゆかりがいないとは珍しい。君達も捜査かい?」
「はい。実はうちに行方不明になった友達を捜してほしい、と依頼がありまして。その捜査中です。あれ、有阿刑事は……?」
「……休暇をとってお姉さんを捜しているよ。行方不明だからね……」
「そうですか……」
まさかその依頼人まで攫われてしまったなどとはさすがに言えず、事実のみを伝えるあかり。IAの妹である有阿緒音がいないことについて聞いていると、その声に反応したのは事情聴取を受けていたらしい二人の教師だった。
「紲星探偵事務所って……ゆかりのところの?」
「あ、はい。結月ゆかりはうちの探偵ですが、貴方は?」
「俺は
そう主張するのはボサボサの茶髪でフード付きの黄緑色のパーカーの上にジャージを羽織った爽やかな青年。自分から前科を喋る辺り根が善人なのだろうか。すると、続いてメガネを直しながらスーツをびしっと身に着けた男性が加わった。
「僕は氷川清輝、この学校の音楽教師です」
「え、もしかしてロックバンド「アイスリバー」のボーカルの…!?」
「え、ええ。夜はロックシンガーを少々……。刑事さんたちにも言ったのですが……探偵さん、僕たちの知ってることはすべてお話します。
「はい、もちろんです!子供たちがいなくなった時の情報、なにかありませんか?」
あかりの問いかけに、腕を組んで頭を悩ませる教師2人。するとコウタが何か思いだしたようだった。
「ああ、そう言えば……誰かに呼ばれた気がして振り返ったら友達がいなくなってたって言ってた子がいたかな……」
「僕は、風車が逆回転して振り返ったら友達が消えていた、と……」
「……なるほど。ところで消えた子達に共通点ってあります?」
「ああ、それなら警察で調査した。行方不明になった子の大半が、「子羊の家」という孤児院で世話になっていたそうだ」
「! 行ってみます!」
ゴートのメモリの正体はわかったが、未だに主犯であろう小太りのドーパントの正体は未知数。少しでも推理の材料になれば、とメモするあかり。不破刑事から次の手掛かりを聞き、一礼してハードボイルダーに戻ろうとすると、校門に隠れてこちらを窺う人物が見えて、咄嗟に懐に納めたものを確認して、身構え、誘き寄せるように路地裏に向かったその人物を追いかける。
「…貴方は確か、紲星探偵事務所の所長さんでCLEARの一人……でしたね。こちらに敵対するつもりはありません」
「どの口が……!東北星香……きりたんは渡しませんし、ヒメさんを返しなさい!さもなくば……」
「……お願いします、話を聞いてください……」
そこにいた人物、ミュージアムの幹部である東北星香に対して戦おうとするあかりだったが、星香が行った行動に呆気にとられる。頭を、下げていたのだ。
「結月ゆかりが負傷し、金堂百合が去ったと聞きました。彼女たちが不在の間、私が代わりに戦います」
「え、なんで……」
「……孤児院「子羊の家」そこに住んでいて、現在行方不明の子供たちの一人、
「え、ええええええええ!?」
あかりの驚きの声が木霊した。
「……水都アウトレットモール。恐らくここで、子供たちはドーパントに襲われて行方不明になった……」
一方、戦闘の跡が痛々しい水都アウトレットモールにやってきたミリアル。先のホーク・ドーパントの事件で襲われて以降、めっきり一通りが少なくなった場所だが、それでも人はいる。聞き込みしつつ、人がいそうな酒場を訪れると、変な二人組を見つけた。真昼間だというのに空の一升瓶を複数机の上に転がして一升瓶を振り回している明かな酔っ払いの、色素の抜けた長い黒髪を括った胸の大きい女と、それに付き合っているらしき赤みのかかった茶髪の女の二人組だった。
「ふへぇ………ショウタくぅん……あいちゃんん……ユキちゃぁん………どこにいるのぉお……ヒック」
「飲み過ぎよ
「
「同級生にいい子もなにもないでしょ!酒臭いわよ!」
「あふん」
「おおー」
抱き着く夜半と呼ばれた女性を、蹴り飛ばして壁に叩きつける美喜と呼ばれた女性のハイキックに思わず拍手するミリアル。訓練していたのでそれがどんなに洗練されていたのか目に見えて分かった。
「あ、こんにちは。私は紲星探偵事務所の探偵ミリアル・ボルコフと申します。行方不明事件を追っていて、何か知りませんか?」
「ええ~!?なら私!わたしはねえ、行方不明になった子達の住む孤児院の院長なのよぉ!」
「え」
「もう、夜半ったら……私は
「ひどいわみきぃ~!」
「はいはい。うちで話しましょ?」
そう言われ、ミリアルは頷き、美喜の経営しているバレエ教室のある建物に向かうのだった。
水都タワー前広場のラーメン屋台「金堂」。そこに、店主であるキクの代わりにリリィが店を開いていた。
「ようこそ、いらっしゃい!……はぁ……なにやってるんだろうな、オレは……」
呼び込みをするが、美女であるもののいつもの覇気がないリリィに人々は目にもくれない。虚しくなって、屋台の裏に置いてあるパイプ椅子に座ってぐったりするリリィ。そこに、一人の客が訪れた。
「おや、リリィ様……調子が悪そうですね?」
「んあ?ああ、いらっしゃい……って、お前は!」
「改めてこんにちは、リリィ様。貴女はまだ、有象無象なんかに影響されている様だ」
西友蒼司。リリィを裏切り、IAとキクを連れて去っていった元側近がそこにいた。咄嗟にダブルドライバーNEOを取り出そうとするが、置いてきたことを思い出し、それでもお玉を構えるリリィ。覇気は消えども戦意は残っていた。
「何の用だ。生憎とオレは、ただの抜け殻だぞ」
「クククッ……リリィ様が、遂に奴らの事務所を飛び出したと情報を得たのです。今なら、エル・ドラードに戻ってくれると思い、誘いに来たが……今のリリィ様は、仮面ライダーだった時以下だ。余りに悔しくて、誘う気にもなれん。だからこそ、俺はコレを持ってきた……!」
「……これは?」
そう言って差し出された、透明なガイアメモリの様なものが装填されているブレスレットの様なものをまじまじと見つめるリリィ。西友は台の上にそれを置きながら、続けた。
「これは、ガイアメモリダウンローダー。装着した人間に残った記憶を引き出し、メモリブレイクされたメモリを再生する為の装置。俺が、ミュージアムとの取引で手に入れた物だ。エルドラドメモリは、やはり東北記理子無しでは、作るのが難しいらしいが……これがあれば、エルドラドメモリを再生できる……!そうすれば、貴女の覇気も戻り、エル・ドラードに戻って来るはずだ!……俺は心の底から、その事に期待していますよ、リリィ様……それでは、また何時か」
「あ、待て……」
そう言って去っていく西友に、手を伸ばして。しかしそれは空を切り。リリィは、眼下にあるガイアメモリダウンローダーを見下ろして。
「……力があれば。ユキを」
その目を暗く濁らせながら、手首に装着するのだった。
容疑者続々登場。セイカも参戦。失意のリリィの魔の誘い。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。