それはVDCに向け、ヴィルの猛特訓を出場メンバーが受けていた合間の事。
「じゃじゃあああん!」
『おおお!』
ヴィルとルークが本番の設営のやり取りで居ない合間、エースはオンボロ寮の談話室の居間でみんなにマジックを披露していた。
エースが手にしたペットボトルにハンカチをかけると、次にそれを取った瞬間ペットボトルの中にハートのエースが入っている。
「触ってみろよ。このペットボトル未開封だぜ?」
エペルは渡されたペットボトルを受け取り、試しに蓋をねじった。
「わ!ホントだ!」
「確かに魔法は使ってないな…大したもんだ。」
ジャミルが率直に褒めてくれ、エースが頬をほころばす。
「えへっへっへ、いーでしょ?この前の冬休み兄ちゃんに教わったんだ?」
「エースって兄ちゃんが大好き何だな!!」
間。
エースが頭に片手を当てたまま硬直する。
渋い顔をし、顔を濁らせた。
「っぷ、あははは。ハーツの同室の奴も誰も言わないようにしてたのに!」
「え!?そうなのか!?」
デユースが吹き出し、カリムが仰け反り驚いた。
「僕も、何度かエース君がお兄さんの事話すの見た事あるな…」
エペルが微笑まし気に言う。
「結構ブラコンだよね?」
監督生が言うと、エースが顔を顰め屈みこんだ。
「…オレちょっとトイレ」
エースはその場から逃げた。
「くっくっく、エースの奴!目茶目茶悔しそうだったんだぞ!」
「こら、グリム。」
「いてっ」
監督生がグリムの頬を引っ張った。
(レッスン中エペルとデユースに優しく無かったから、ちょっと意地悪したかっただけなんだけどな)
上手くいかないなと溜息を着く。
「何だよ~、お前だってエースの事ブラコンって言ってたじゃねーかぁ」
グリムが足元に纏わりついて来て、猫パンチを繰り広げた。
「まぁ、それはホントの事だしね。」
「そういえば、アイツ部活中も兄の話を良くするな。」
ジャミルはエースと同じバスケ部だ。
(そこでも話してるのか)
「いいな、僕兄弟いないから…」
エペルは本当に羨ましそうだ。
「俺も兄弟がいないから、何で兄さんが好きな事を言われて怒るのか分かんないな。」
「まぁ、エースは自分の兄に特別な思い入れがあるのは事実だろうね。」
「何でだ?」
デユースがきょとんと首を傾げる。
「歳の離れたエースのお兄さんが、お母さんの変わりにエースの面倒を見ていたからだよ。きっと小さい頃からね。」
その場がしんと静まり帰った。
「そう言えば、アイツ自分の母親の話しないな…。」
「偶然かも知れないけどね?」
困った顔をするデユースに監督生がフォローを入れる。
「おい!お前ら!そろそろヴィル先輩帰って来るから掃除するぞ!」
突然エースが叫びながら戻って来た。
「あはは!そうだなまた怒られちまう。」
カリムが微笑みそれぞれが談話室から動き始める。
(全く見栄っ張りだな。まぁ体裁だけ整えたメッキだらけのヒーローよりずっと好きだけどね。)
「何、オレ見て笑ってんだよ監督生?」
「別になーんにも?」
「さっさと、掃除しなさい!」
「はいはい」