サイレント・ナイツ ―無名のヒーロー達―   作:趣味全開人生

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ニューヨークからパリに向かう飛行機に乗ったラルフは機内で暴漢を返り討ちにした2人組と出会う。


その1人は反レイヴンズ活動で名が知れている少女だった――――



一方、その少女の暗殺を阻止する為に特戦軍のアレクセイ・ヤムキンも同じ機に乗り込んでいた。




ファイル010『空の棺桶』

 

 

銃声がした――――アレクセイ・ヤムキンが席を立った瞬間、既にファーストクラスの方へと走る人影があった。

 

 

 

(――――反応が速い。軍人か?)

 

 

 

そんな感想を抱きつつ、後を追いかける。

 

 

 

 

 

 

やがて辿り着いた席付近に到着すると、暴漢らしき男が頭を撃ち抜かれていた。

 

 

――――やはり護衛に密かに銃を携行させたのは正解か――――

 

 

 

 

 

などと思案していると、自分より先に動いた軍人らしき男が名を名乗った。

 

 

 

 

「――――私はラルフ・フォルツ、軍人だ。一体何が――――」

 

 

 

 

 

(――――ラルフ・フォルツ、確か穏健派のメンバーでレイヴンズの弾圧に苦しむ子供達を保護するコミュニティを作っていた――――特戦軍とも繋がりがある筈だ)

 

 

 

そこで護衛対象であるミレーヌ・シェロンがこちらを見ているのに気付いた。

 

 

「私はアレクセイ・ヤムキン――――そちらの護衛であるレイラ・タナー氏のバックアップ要員としてこの機に搭乗しております」

 

 

 

 

と、その時だった。機が急に傾いたのは。

 

 

 

 

「――――!?」

 

 

 

 

客室のあちこちから悲鳴があがる中、どうにか席に掴まって転倒するのを回避したアレクは即座にラルフに同行するよう呼び掛けてコックピットに向かう。

 

 

 

 

「――――失礼!今の操縦は一体!」

 

 

ノックしながら中のパイロットに呼びかける。

 

 

 

 

 

「席にお戻りください」と強めの語調で止めてきた客室乗務員に軍人の身分証と航空機操縦資格の証明カードを提示すると、コックピットと数十秒ほど通話し通してくれた。

 

 

 

「突然、こっちの言う事を聞かなくなったのです!」

 

 

機長が必死に操縦桿を動かすが、機は全く反応しないのか水平飛行を続けている。

 

 

 

 

 

「――――もしかすると特定のコースを自動操縦で飛ぶよう命令されているのでは?」

 

 

アレクがコックピット計器を操作すると案の定、モニター部分に飛行ルートが赤い線と矢印で示された。

 

 

 

 

「何だ、これは!?シャルル・ド・ゴール空港じゃなくてパリの市街地に向かっている――――!?しかも航路を無視した直線コース!」

 

 

 

 

機長が動揺するなか、アレクは素早く衛星通信端末でメイファンとの回線を開きコックピットのコンピューターと接続する。

 

 

「メイファン、この機はハッキングで遠隔操作されているようだ!そちらから更にハックして制御を取り戻せないか?」

 

 

 

 

『了解、チームで対応するわ――――持ちこたえて!』

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 

数十分後、ようやく操縦システムが人間の操作を受け付ける状態に回復したが、新たな問題が生じていた。

 

 

 

 

――――機長・副機長共に事前に毒を盛られたのか苦しそうな声と共に操縦席から転がり落ちたのだ。

 

 

 

 

 

 

「まずい――――ラルフ・フォルツ、といったな?とりあえず右席に座ってくれ。私は医者を呼ぶ」

 

 

 

コックピットの機内放送スイッチをオンにし、ヘッドセットで医者が居ないかどうかを問いかけるアレク。

 

 

 

 

 

 

「――――どうやら医者は乗っていないようだな………やむを得ない、スペインのマドリード=バラハス空港に緊急着陸する」

 

 

 

アレクの指がコックピットのスイッチ上を走り、マドリード空港の管制と通信が繋がる。

 

 

 

 

「メイデイ、メイデイ、マドリード空港管制!こちらニューワールド航空259便、機長と副機長が遅効性の毒を盛られた。早急な治療が必要でありそちらに着陸したい」

 

 

 

『こちらマドリード空港管制、了解した。こちらの指示に従って飛行されたし』

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

マドリード空港に接近した時、それは起こった。

 

 

 

 

「よし、着陸するぞ――――ギア・ダウン」

 

 

 

 

遥か前方にマドリード空港の滑走路を確認したアレクが機体に内蔵されたタイヤを展開し着陸態勢に入った次の瞬間、前方からいきなり影が接近したかと思うと超音速ですれ違い、衝撃波を叩き込んできた。

 

 

 

「――――レイヴンズの刺客か!?やはり毒を仕込んだのも――――」

 

 

アレクの独り言にラルフが思わず反応するが、『話は後だ』と言われ操縦に集中する。

 

 

 

 

 

「安心しろ、既に護衛を呼んである!」

 

 

アレクがそう言い終わると同時に、更に超音速で飛ぶ影が上空を通り過ぎて後方へと翔けていった。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 

 

特戦軍航空隊所属・サムライ小隊

 

 

 

『こちらサムライ・ワン、旅客機を攻撃する敵機を排除する!』

 

 

 

F-35ライトニング戦闘機の3機編隊が旅客機の後方に展開する。

 

 

その前方には――――漆黒の塗装が施されたF-22ラプター戦闘機が2機。

 

 

 

 

 

『設計自体は古いが、飛行性能は向こうが上だ。油断するな』

 

 

隊長機が先頭の敵機をロックオン、続いて部下の機体が左右の敵機をそれぞれロックする。

 

 

 

 

 

『攻撃開始!』

 

 

敵が撃つより先に発射されたミサイルが次々と敵の方へと吸い込まれていく――――爆発。

 

 

 

 

『やったか!?』

 

――――次の瞬間、敵機の爆発で広がった黒煙を突き破るように1機のF-22が現れこちらに迫ってくる。

 

 

 

 

『――――1機、生きてやがった!』

 

 

 

 

その1機は瞬く間にサムライ小隊の3番機を捉え、その背後にぴったりとくっついた。

 

 

『振り切れない!』

 

 

 

 

 

3番機パイロットが必死に機体を急旋回させるが、敵機も圧倒的な機動性を発揮し後ろを捉え続ける。

 

 

『――――もう駄目だ!』

 

 

 

 

次の瞬間、F-22の胴体を青白い一筋の光が貫き大きな爆発が起こった!

 

 

 

 

『これは………エクセリオンか!?』

 

サムライ小隊の隊長が光の飛んできた方向を見ると、そこには純白のパワードスーツを纏った九鬼 志穂の姿があった。

 

 

 

『こちらエクセリオン、敵機は排除した。もう脅威はない』

 

その通信と共に構えたライフルを下ろし、空港に着陸する旅客機の方を見下ろした。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

数時間後、空港の事務室の一つで待機していたラルフ・フォルツのもとに機長と副機長が搬送先の病院で生命の危機を脱したとの知らせが届けられた。

 

 

 

「――――よかった」

 

 

安堵の表情を見せるラルフだったが、知らせを持ってきたアレクの表情は苦々しかった。

 

 

 

「――――君には悪い知らせが」

 

そう言いながらアレクが見せたのは、ラルフが所属する基地の映像だった。

 

 

 

 

「――――!?」

 

様子がおかしい――――漆黒の戦闘服に身を包んだレイヴンズの兵士達が走り回っている。

 

 

 

その1人が発砲し、撃たれた兵士が倒れる。

 

 

 

 

「どうやら君はレイヴンズが暗殺対象とした人物を守ったことで目を付けられ、仲間共々レイヴンズに刃向かったと見なされたらしい」

 

――――帰る場所が無くなった――――

 

 

 

青ざめるラルフにメイファンが通信機越しに提案する。

 

『――――私達と一緒に行かない?』

 

 

 

 

 

 

 







~次回予告~



ファイル011『クリスマスの天使』


とある軍人、ジョーはクリスマスケーキを持ち帰る小さな女の子のエスコートをする事になった。


小さな天使は無事にケーキを持ち帰れるのか!?





【新用語】



・サムライ小隊


特戦軍に属する、3機のF-35で構成される部隊。

部隊名は隊長の曽祖父・祖父が若い頃に米軍将校として日本に配属されたことに由来している。

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