とある軍人、ジョーは孤独なクリスマスを過ごしていたが小さな女の子がケーキを持ち帰るのをエスコートすることになり――――!?
クリスマスの飾り付けで彩られ賑わう町。
雪がそれなりに積もった歩道を歩く東洋系の男の視線は幸せそうな家族を追っていた――――
と、賑やかな声の影に隠れるように、微かに泣き声が流れてくる。
「――――ん?」
泣き声の方に向かうと、厚手のコートに手袋、フードを深く被った女の子がすすり泣いている。
屈んで目線を合わせると、フードの下にある白い鼻は寒さで真っ赤になっており金色の前髪には粉雪がかかっている。どうやらこけたらしい――――
「どうした、嬢ちゃん。迷子か?」
しばらく泣き止むのを待つと、ようやく少女が口を開いた。
「エリィね――――エリィね、ケーキ屋さんが分からないの。エリィひとりでお買い物できるってママに言ったのに――――」
そう言いながらメモを見せてくると、そこには店名らしき単語が書かれていた。
「ああ、この店なら分かるぞ――――付いてきてくれるか?」
――――――――――――――――――――
エリィと名乗った女の子の先頭に立ち、時おり後ろを確認しながらケーキ屋に着く。
「ああ!エリィちゃん!待っていたわよ!」
知り合いらしき店員がエリィのもとに駆け寄り、屈んで頬に手を当てる。
「ちゃんとここに来られたわね、偉いわよ」
えへへ、と嬉しそうに笑うエリィの隣に立つ男に視線を移した店員が「ありがとう」と感謝を口にする。
「ありがとう、この子のお母さんが心配して電話をかけてきたところなの――――お迎えに来るよう呼ばなきゃ」
しかし、それに反応したエリィが首を横に振る。
「エリィ、ちゃんとひとりで家に帰れるもん!」
――――ホールケーキの入った箱を両手で大切そうに持ちながら歩くエリィ。
「重くないかい、嬢ちゃん」
「エリィ、まだ頑張れるもん!」
そう言うものの、やはり重いのか頬が赤く染まっている。
「あそこのベンチで少し休むかい」
その言葉にエリィはコクリと頷いた――――
「どうして、ひとりでケーキを買おうと思ったんだい?」
温かい缶ココアを手渡しながら訪ねる男。
「エリィ、ママにいつも心配かけてるから――――ひとりでもだいじょうぶだってところ見せたいの」
「だから自分で持ち帰りたいのか」
コクリと頷くエリィに男が微かに笑う。
「家までもう少しだ。頑張れるか?」
「――――うん!」
――――――――――――――――
家の前まで来ると、エリィの家族らしき数人の男女が外で待っていた。
「――――エリィ!」
無事に帰ってきた娘に母親らしき女性が歓喜の声をあげる。
「ちゃんと買ってこれたのね、偉いわ」
エリィの冷たくなった頬に手を当てて温める母親。
「えへへへ…」
嬉しそうに笑うエリィの傍らに立つ男が無言で立ち去ろうとすると、父親に呼び止められた。
「ありがとうございます。娘が無事に帰ってこれるように見守ってくれたと聞きました。なんとお礼したらいいか。良ければ一緒に食事でも――――」
「気にしないでください。子供が困っていたら助けるのが大人ですから」
今度こそ家族のもとから立ち去った男がそのまま歩を進めると、柱の陰に煙草を咥えた男が立っているのに気付いた。
「相変わらず不愛想だな、食事に誘われたんだろう?」
ニット帽を被ったアフリカ系の男にそう言われたものの、全く返事しない男。
「やれやれ、別に強制はしないが少しは人との関わりってのも大事にした方がいいぜ?――――ジョー」
ジョーと呼ばれた男――――北条 了(ほうじょう りょう)は一切応えることなく雪が積もる住宅街に足跡を刻んでいった――――
~次回予告~
ファイル012『不穏な影』
特戦軍による反レイヴンズ活動で多くの人々が救われるなか、レイヴンズが開発中の新兵器の情報がもたらされる。
それはエクセリオンを参考にして作られたパワードスーツだった――――
【人物紹介】
北条 了 (ほうじょう りょう)
人種…アジア系(日系)
性別…男性
年齢…22
《解説》
レイヴンズに所属する戦闘機パイロット。寡黙な性格であり人との関りを好まない。
子供時代にラルフと関りがあったらしく、彼に対して強い憎しみの念を抱いている。
なお、サミュエルからは『北条』の『条』をもじって『ジョー』と呼ばれており、パイロットとしてのTACネームも『JOE』である。
サミュエル・オブライエン
人種…アフリカ系
性別…男性
年齢…27
《解説》
レイヴンズに所属する私服エージェントで、普段はいち市民に扮して生活している。
少々お節介な気質なのか、不愛想すぎるジョーの性格を心配している。