サイレント・ナイツ ―無名のヒーロー達―   作:趣味全開人生

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特戦軍最強の戦力であるパワードスーツ、エクセリオン。

その力の源泉である『スタードライブ』の製造技術を持つ異星文明『星の民』。


その指導者であるシーザーには2人の子供が居た――――




ファイル013『星の民』

 

 

 

上空に星々が広がる平原を駆ける幼い少女――――ヴェガ。

 

 

 

その視線は平原の中心に立つ10代の少年――――アルタイルに向けられている。

 

 

 

 

 

と、そこに3メートルもの巨躯を甲冑で完全に包んだ使用人――――マルスがヴェガを抱き上げた。

 

「姫様、王子様は星を織っておられるのです。邪魔してはなりませんよ」

 

 

 

頬をぷうと膨らませるヴェガ――――しかし、星空から無数の光の帯がアルタイルに向かって伸び始めると目を輝かせてその光景を見守り始めた。

 

 

 

 

 

 

アルタイルに向かって伸びた帯が彼の胸の前に集まったかと思うと収束し、光球に姿を変える――――そして、それは金属でできた小さなリングの中心に空間固定される。

 

 

そして光球を捕らえたリングを更に薄い金属製の円状カバーで覆う。

 

 

 

これこそが、星の民が宇宙に安寧をもたらすクリーンかつ大出力のエネルギー源――――スタードライブである。

 

 

 

地球全土の原子力発電所を合わせたパワーですら足元に及ばない圧倒的なエネルギーを半永久的に供給するそれが1人の少年の手によって『織られている』などと誰が信じるだろうか?

 

 

 

 

 

「いいなあ……私もお兄ちゃんみたいに上手に星を織りたい」

 

そう呟いたヴェガにマルスが反応する。

 

 

 

 

「姫様、同じ事を小さい頃の王子様も仰っていましたよ。勉学に励み、訓練を重ねれば王子様に劣らぬ織り手となりましょうぞ」

 

 

マルスの言葉にヴェガの瞳が輝く。

 

 

「ほんと!?私、なれるかな?お兄ちゃんみたいに!」

 

 

 

 

「はい、諦めなければ必ずや」

 

 

マルスの巨大な身体から出てくる優しい言葉がヴェガの心を包み込み、少女の視界から闇が払われていく。

 

 

「――――うん、私頑張る!」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

――――14年後

 

 

 

ベッドでまどろむヴェガ。

 

 

「――――眠い」

 

 

 

 

目をこすりながら上半身を起こしたヴェガが浴室へと向かい、そこからローズの香りがする湯気が漂い始めた。

 

 

そして30分後、ダイビングスーツの生地を厚くしたようなスーツに身を包んだヴェガが現れる。

 

 

 

 

下の階まで降りると、ちょうどダイニングで甲冑の上にエプロンを着けたマルスが朝食を用意している所だった。

 

 

「おはようございます、姫様。大好物のハムエッグを用意しておりますよ」

 

 

「いつもありがとうね、マルス」

 

 

 

星の織り手になる修行の一環で親元から離れて離宮で生活するヴェガにとってこのやり取りは心の温もりを感じるかけがえのない時間だった――――

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

平原に立ち、星空を見上げ――――意識を集中させ右腕を天に突き出す。

 

 

(――――来た!)

 

 

 

胸の前に力を集める――――そのイメージと共に降ってきたエネルギーを一点に凝縮して光の玉を作り上げる――――しかし何かが足りなかった。

 

 

 

「――――はぁ………」

 

 

 

 

体育座りになってその場で溜息をついていると、背後に気配を感じた。

 

 

 

 

「姫様、今回も上手くいきませんでしたか?」

 

忠実な鋼の巨人――――マルスが膝を屈めて目線を近づけてくる。

 

 

 

「もう嫌になるな~!ここ何年練習しても兄さんみたいにならない」

 

「ふむ……」

 

 

 

しばらく何か思案していたマルスが両手を叩き、ヴェガを見る。

 

 

「好きなものを食べて、好きな事をして気分転換しませんか?美味しいお菓子を食べながらお気に入りの映画を見てのんびりペッドで眠るというのは」

 

 

その提案に目を輝かせるヴェガ。

 

「いいの!?」

 

 

 

「はい、早速今から離宮に戻りましょう!さあ」

 

 

ヴェガを両腕で抱え、思い切りジャンプするマルス。

 

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

しかし、離宮の入り口までやって来たふたりを待っていたのは衝撃的な知らせだった。

 

 

 

「アルタイル兄さんが拉致された!?」

 

「左様でございます。陛下が至急王宮までおいでになるように、と」

 

詰め寄るように問いかけてくるヴェガを余計に刺激しないよう言葉を選びながら伝言を伝える使用人。

 

 

 

 

 

 

――――王宮・謁見の間

 

 

 

その男の身を包むボディースーツは年老いてなお頑強な筋肉のラインを微かに浮かび上がらせていた。

 

 

「ヴェガよ、よくぞ参った。早速本件に移ろう」

 

 

 

威厳ある佇まいをしたヴェガの父にして星の民を統べる王――――シーザーが床に手をかざすと青い星の立体映像が謁見の間に現れる。

 

 

 

「知っての通り、お前の兄であるアルタイルが拉致された。最後に連絡があったのはこの星――――地球だ」

 

 

 

 







~次回予告~


ファイル014『邂逅』


アルタイルを救出すべくマルスと共に地球に向かったヴェガを待つ新たな出会い。


それは果たして何をもたらすのか――――!?




【人物紹介】





ヴェガ

性別…女性

年齢…20

人種…地球人のイギリス系に相当


《解説》
星の民を統べる王シーザーの娘であり、『星の織り手』の見習い。


出産の際に母が死亡しており、母親の顔を知らないが使用人のマルスに大切に育てられており愛情に飢えてはいない。

父王からは兄であるアルタイルに匹敵する織り手になると見込まれているが……





・アルタイル

性別…男性

年齢…26

人種…地球人のイギリス系に相当


《解説》
シーザーの息子にしてヴェガの兄。


星の民の中でも最も優れた星の織り手であり、星の民を率いる次代の指導者の筆頭候補でもある。ヴェガの知らない所で地球に何度も行き来していたらしく、その時に買った恨みが今回の拉致事件に繋がっている。





・シーザー

性別…男性

年齢…54

人種…地球人のイギリス系に相当


《解説》
星の民を統べる王。


宇宙の平和と秩序を守るという使命を背負っており、戦争で荒廃した地球にクリーンで膨大なエネルギー源であるスタードライブを供与する事を検討していた。

地球人がスタードライブを扱うに相応しいかどうかを見極めるべく息子のアルタイルを遣わし、地球側の協力者とも調整を進めていたが突如としてそのアルタイルが拉致されたとの報せが入る。





・マルス

性別…不明

年齢…不明

人種…不明


《解説》
ヴェガの世話を任されている、身長3メートルの巨躯を誇る使用人。全身を甲冑で覆っており素顔は見えないがヴェガを慈しんで育てるなど情が深い面を見せる。





【用語】



・星の民

地球外の異星文明で、宇宙空間に浮かぶ巨大な大陸に居を構える人々。その外見や寿命は地球人と変わらない。


地球人でいう欧州系、インド系、アジア系、アラブ系、アフリカ系の外見的特徴を備えた5つの部族で構成されており、各部族から選出された候補が試練を受けて次代の王になる仕組み。


彼らの最大の特徴は、地球の技術を遥かに上回るクリーンでハイパワーな半永久エネルギー機関『スタードライブ』の製造技術を有する事であり、それを宇宙に供与する事でエネルギー不足とそれに起因する戦争をを解消し平和をもたらしてきた。





・星の織り手

スタードライブの核となる『指先サイズの恒星』を作る人々。テレパシーのような能力で周囲の恒星と交信しながらエネルギーを集めて星を生成する。


ヴェガの兄アルタイルは歴代の織り手を上回る実力を持っており、最高の織り手と呼ばれている。
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