星の民のプリンセスであるヴェガは、地球で拉致された兄アルタイルを救うべく、忠臣マールスと共に地球へと向かう。
そして、そこで新たな出会いが待っていた――――
――――離宮・バルコニー
「マルス、準備はいい?」
ヴェガの後ろに大量の荷物を抱えたマルスが現れる。
「はい、いつでも出発できますよ。姫様」
忠臣の言葉に頷いたヴェガは意識を足元に集中させ、次の瞬間には身体が宙を浮き始めた。
後ろのマルスも同じように宙に浮かび上がっている。
「さあ、行こう!地球へ――――!」
――――――――――――――――――
――――地球:オーストラリア・某コミュニティー地区
特戦軍司令部のデスクでユェン・メイファンは厳しい表情をしていた。
「アレク、アルタイルからの連絡が途絶えてもう3日よ。最後に連絡があった場所はレイヴンズの活動が活発だった地域――――拉致された可能性がある」
「まずいな、現状我々がスタードライブを入手するには彼の力が必要だ。居場所はつかめないのか?」
アレクの問いに首を横に振るメイファン。
「残念だけど、そっちは諜報員を送り込んで調査するしかないわ。――――それにアルタイルの件とは別に戦力不足という問題もある。ラルフ・フォルツの部下が何人か生き残っているらしいから、そちらの救出を優先するわ」
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――――北米:スラム街
漆黒の機体に、国連旗の白いエンブレム部分を赤くしたようなマークの上にカラスの紋章が塗装された戦闘ヘリが廃ビル群の上空を飛行する。
『反逆者共はここに潜んでいる筈だ。動くものはとにかく撃て』
盗聴用に改造したスマホから流れるレイヴンズ側の会話。
「――――追い詰められたな、ファン」
廃ビルの一室でエドワード・ハラダ少尉は隣のファン・バー・ズン伍長にそうぼやいた。
「まだ見つかっておりませんが、時間の問題ですな」
そんな会話を交わしている間にも、スラム街のひび割れたアルファストの上を漆黒の戦車が同じく漆黒の兵士を伴ってゆっくり前進する。
「――――まずい、戦車まで持ち出してきたぞ。民間人を保護しつつ脱出だ」
ハラダがそう指示すると、数人の兵士が一緒に避難してきた民間人に一緒に来るよう促した。
――――――――
ビルの陰から空を警戒しつつ路地裏を進むハラダ達。
途中まではビルとビルの間を縫うように進めたものの、道幅が広い開けた場所へとぶつかってしまう。
「これはまずい――――全員、一時停止!」
ビルの角から様子を窺うファン。
「大通りは無人のようですね。上空のヘリの目が大通りから外れた隙を狙って――――」
ファンの言葉を遮るようにハラダが『身を屈めろ』と小声で周りに指示する。
直ぐ近くをレイヴンズの兵士が捜索している――――!
不安と恐怖を抑えながら見つからないよう祈る人々。その願いが通じたのか足音は遠ざかっていき、聞こえなくなった。
安堵のため息が漏れる――――次の瞬間、プロペラ音がしたかと思うと頭上数メートルでドローンが停止した!
「――――見つかった!走れ!」
大通りを走る一行――――横目で装甲車の機銃がこちらを睨むのを捉える。
「危ない!!遮蔽物に隠れろ!」
避難民の子供を抱え、転がり込むように廃トラックの陰へと隠れると同時に機銃の唸り声が響く。
「ファン!無事か!?」
「無事です!ただ、逃げ遅れた他の奴と民間人が――――!」
機銃の音が止んだのを確かめ、敵兵に警戒しながらトラックの陰からハラダが見たのは――――言葉に出来ない凄惨な光景だった。
迫りくる装甲車のエンジン音、兵士の足音。
避難民の怯える声。子供の泣き声――――
――――次の瞬間、空から巨大な影が落ちてきたかと思うとそのまま装甲車を『踏み潰した』。
爆発――――爆風で吹き飛ばされるレイヴンズの兵士。
「――――!?」
夢でも見ているのか、とハラダが感じたのも無理はなかった。
3メートルはある巨躯を甲冑で固めた戦士が巨大な斧を片手に立っていたからだ。そして、その隣には威厳を纏った女性の姿がある。
「マルス!弱い者苛めをする奴らを倒して!」
「心得ました、姫様!」
そんなやり取りをした2人に兵士達が銃を向け一斉に発砲する――――が、女性が何かを唱えると同時に見えざる壁に全弾阻まれてしまう。
そして壁を突き破るように突進した甲冑戦士が斧を振り下ろし――――赤い水滴が大量に宙を舞う。
そして漆黒の兵士達をあらかた片付けた次の瞬間、遅れて駆け付けた戦車の砲撃が甲冑を直撃、十数メートルほど吹っ飛ばされた。
「マルス!」
続いて主砲が女性の方を向く――――
「そこのあんた!」
廃トラックの陰から現れたハラダが女性に呼びかける。
「戦車と勝負しようなんて思うな!逃げるぞ!」
しかし、女性はその言葉に応じず周囲を見回した。
「――――戦車を中心に半径10メートル内に民間人の生命反応無し」
女性がそう呟いた瞬間、ハラダが目撃したのは彼女の手のひらで生成されたごく小さな一点の光球だった――――それを戦車の方へと投げる。
光球をぶつけられた戦車が一瞬で赤熱化して溶け始めた――――と同時に爆発した。
「――――――――――――――――――――――」
言葉を失うハラダ。
と、先ほど吹っ飛ばされた甲冑が何事も無かったかのように起き上がり女性の方へと歩み寄る。
「申し訳ありません、姫様の手を煩わせてしまいました」
「気にしないで、マルス」
そこでようやくハラダに気付き、視線を向けてきた。
「――――私はヴェガ。聞きたいことがあるの」
~次回予告~
ファイル015『攫われた歌姫』
特戦軍に衝撃的な報せが舞い込む。それは――――マーカス・サイモン軍曹と親しかったアイドル、リンダ・コスタが拉致されたという情報だった。
一方、レイヴンズの通信を盗聴してそれを知ったエドワード・ハラダ少尉はヴェガ達と共に彼女の救出を決意する。