特戦軍のマーカス・サイモン軍曹と親しかった少女、リンダ・コスタは他者に縛られない生き方を讃える歌を歌ったのをきっかけにレイヴンズから目を付けられ拘束される。
そして、それは特戦軍の知るところとなった――――
『私の~心は~誰のものでも~ない~私~だけの~もの~』
少女の歌声がスマートフォンから響く。
『誰かに~決められ~たくない~私の~進む~道~』
その強い意志を感じさせる歌声の主――――リンダ・コスタに思いをはせるマーカス・サイモン軍曹。
(――――強く生きているようだな、リンダ)
と、そこへ兵士が駆け寄る。
「軍曹、九鬼中尉がお呼びです。至急の要件だそうで」
会議室の扉を開けたマールスの方を見る志穂。
「クキ中尉、至急の要件だそうですが一体何が?」
その問いに応えるように、志穂の指先がテーブル上のパソコンへと向けられる。
「これは今朝、ハッキングして入手した音声データだ――――冷静さを欠くなよ」
念押しするような志穂の言葉に不安を感じながらも耳を傾ける――――
『――――なんで私が犯罪者扱いされないといけないんですか!』
その言葉に固まるマーカス。
――――リンダの声だ。
『リンダ・コスタ、君は我々の統制を破壊する恐れがある内容の歌を歌った。立派な犯罪者だ』
軍人らしい口調をした女の声がそれに続く。
『人を銃口で脅して従わせているあなた達の方がよっぽど犯罪者よ!』
『子供だな――――世の中には銃口を突き付けねば自分勝手に振る舞って他者に害を与える愚か者も居る、という事を知らないようだ』
勢いよく立ち上がる音――――
『相手と向き合いもせずに、力で捻じり伏せて従わせるという安易な方法に逃げたあなた達こそ子供だってなぜ分からないの!』
『黙れ!秩序を破壊するテロリスト風情が!!!』
そして殴る音、蹴る音が響く――――
それを聞くマーカスの身体が小刻みに震える。
『その減らず口、いつまで叩けるか見ものだな――――服を剥ぎ取れ!』
服を無理やり脱がす音――――そして水がかけられた音が続く。
「――――まさか!」
マーカスの頭に浮かんだ嫌な予感が的中したと言わんばかりに電気のショート音が聞こえてきた。
やがて身体に電流棒を当てられたらしいリンダの絶叫が響く。
「――――――――現在、救出作戦を立案中だ。作戦実行の時は君も来てくれるか」
マーカスは迷わず「はい」と答えた。
――――――――――――――――
北米:難民キャンプ
避難民をキャンプに引き渡した後、レイヴンズの通信を傍受していたエドワード・ハラダ少尉の顔色が変わる。
「少尉、どうしましたか?」
ハラダの表情から不穏なものを感じ取りつつ、冷静に話しかけるファン・バー・ズン伍長。
「――――レイヴンズのやり方に反発したアイドルの少女が拉致され拷問にかけられている――――クソッ!」
今の戦力では助けに行くことは出来ない――――その悔しさが顔に滲み出ていた。
と、そこへ会話を聞きつけた女性――――ヴェガが歩み寄る。
「話は聞かせてもらったわ、私達が加勢する」
「――――――――」
先日、戦車を容易く破壊して見せたヴェガと、多数の敵兵をなぎ倒したマルスが加われば――――いける
そう確信したハラダは皆を集めるのだった。
――――――――――――10数分後
「――――――――という事で、彼女を救出しようと思う。異論が無ければ救出作戦に来てほしいが、いいか」
皆からは次々と賛同の声が上がり、異論を唱える者はいなかった――――
「驚いたな、異論を唱える者がいないとは」
マルスの言葉に反応したファンが応える。
「そりゃ、お上に逆らってまで正義を為そうって連中ばかりですよ。よほどの事がない限りこんな調子です」
――――――――――――――――――――――
――――数日後:レイヴンズ収容施設
施設を守る電子ロック扉のひとつが開き、それを通って施設内に入る数人の業者。
大きな段ボール箱がいくつも積まれた台車を押しながら食糧庫へと入った彼らはどこか周囲を気にしているようだった。
「よし、ここなら大丈夫だ――――」
一際大きな段ボールを開くと、そこからハラダが姿を現し室内を見回す。
「我々はこれで引き揚げます。幸運を」
施設内で働くスタッフの服を着たハラダに業者がサムズアップして見せ、ハラダもそれに倣う。
そして業者が去り、1人になったハラダは深く深呼吸した。
「よし――――やりますか」
~次回予告~
ファイル016『合流』
施設に潜入したハラダは、同じく施設に潜入していたマーカス・サイモンと遭遇する。
2人は協力してリンダを見つけ出し、救出できるのか――――?