異星文明『星の民』のヴェガとマルス。
星の民のテクノロジーで造られたスタードライブをコアとするパワードスーツ、エクセリオン。
この大きな脅威を前にレイヴンズは極秘開発中の新型パワードスーツを投入する――――
無数に襲い掛かってくるライフル弾――――銃口の向きからその軌道を予測し、それに重ならないように跳躍し身体を捻りながら華麗にかわしていくヴェガ。
そして警備員のひとりのそばに着地し、下顎に手刀を叩き込む。
直ぐに身体を屈め、上をライフル弾が通過するのを確かめながらそのまま次の警備員へタックルし顔面に拳を叩き込んだかと思うと跳躍した。
「ば、馬鹿な!?」
想像以上の跳躍力に驚愕する警備員――――狙ったはずのライフル弾は全部外れた――――
空中で上半身を時計回りに捻り、それを思い切り戻す――――と同時に右の拳を警備員の左頬に叩き込む。
それでも完全に気絶せずふらつく――――そこに、先ほど右の拳を叩きつけた時にそのまま反時計回りに捻った上半身を戻して下顎に左の拳を叩きつけた。
そのまま意識が吹っ飛び、仰向けに倒れる。
ライフル弾を鋼の身体で弾き返しつつ、文字通りの鉄拳で警備員を次々と殴り飛ばすマルス。
そこへグレネードランチャーを構えた兵士が現れ、マルスの鋼の身体に何発ものグレネードが叩き込まれたかと思うと派手な爆発が起こった。
「や、やったか!?」
――――――――爆炎の中から傷一つなく現れたマルスに警備員は今度こそ悲鳴を上げながら敗走していく。
――――その時だった。
敗走する警備員達とすれ違うようにこちらへと向かってくる銀色の人影がライフルらしき武器を構えたのは。
「危ない!」
咄嗟にマルスの前に立ち、星のエネルギーで『織った』盾を構える。と、同時に緑色のビームが盾に弾かれて霧散する。
「――――何なの?あの甲冑は?」
銀色の輝き――――それは敵兵が纏うパワードスーツを覆う装甲だった。
――――――――――――――――
新型パワードスーツ、コードネーム『ナイト』を操るエーリヒ・ラウ少尉は未知の敵を前に闘志をみなぎらせていた。
「貴様ら秩序の敵は全員捻り潰してくれるわ!」
高層ビル一つを1週間は稼働させられる大容量バッテリーからエネルギーを給電したビームライフルを構え、引き金を再度引く。
――――またしても弾かれるが、女が構えた光の盾は少し薄くなっていた。
「――――無敵ではないようだな」
――――――――――――――――――――――
戦車部隊をあらかたスクラップにした志穂の背筋に悪寒が走る。
「――――――――!?」
咄嗟に回避し、さっきまで止まっていた位置を緑色のビームが走るのを横目で確かめる。発射地点を特定するとそこには漆黒のパワードスーツを纏った兵士が立っていた。
「――――レイヴンズの新型パワードスーツ!?いつの間に!」
激しい戦闘の最中でも戦場全体を見回していたが、このパワードスーツが増援に現れるのを見た覚えはない――――!
すると、一瞬で姿を消したではないか。
「馬鹿な!?」
――――――――――――――――――――――
コードネーム『アサシン』の名を冠するパワードスーツに身を包んだリーズ・ロランス少尉は光学迷彩の威力に舌を巻いていた。
「技術部の解析ではあのスーツの動力源は私達の技術では太刀打ちできない、という話だけど……使うのはただの人間、つけ入る隙はあるってことか」
そのまま敵の死角まで移動し、ビームを発射する。が――――
「何で避けられるわけ?後ろに目でもあるの?」
――――――――――――――――――――――
ナイトと交戦するヴェガ。
スター〇ォーズのライト〇ーバーを想起させるような光の刃を繰り出したナイトに対して光の剣を『織って』対抗する。
光の刃同士がぶつかり合い、激しく散らされる火花。
互いの力が拮抗し互いに相手を睨む――――
「死ね!秩序の敵が!」
光の剣ごと突き飛ばされ体勢が崩れる――――そこへ光の刃を振り上げるナイト!
「ハッ!?」
「これで終わりだぁぁぁぁぁ!」
ヴェガの身体が瞬時に反応し、相手の左頬に光の剣を突き刺す!
――――次の瞬間、エーリヒ・ラウ少尉の言葉にならない絶叫と共に転げて悶えるナイト。
と、そこへエドワード・ハラダ少尉が外の部隊と合流した事を知らせる連絡が入った。
「うん、分かった――――そのままマーカス・サイモンって人の部隊と合流するんだね?私達も向かう――――」
通信を終え、マルスを見ると互いに頷き離脱する。
――――――――――――――――――――――
アサシンを纏うリーズ・ロランス少尉に、ナイトの着用者であるラウ少尉が敗北し負傷した事を知らせる無線が入ったのはその数分後だった。
「噓でしょ!?私たちのパワードスーツに傷を付けられるのはあのパワードスーツくらい――――その筈よ!」
『ですが、現にラウ少尉は負傷しています――――ロランス少尉、スーツを過信せずに撤退してください!』
しばし思考し、上空のエクセリオンを見据えながらじりじりと後ずさりするアサシン。
やがてこちらに交戦の意図がないことを悟ったのかエクセリオンはそのままいずこかへと飛び去って行った。
――――――――――――――――――――――
数日後・オーストラリア・某コミュニティー地区
「――――――――あ……」
不明瞭だった意識が明確になっていき、ぼやけていた焦点が定まる。
そして最初に見たのはマーカスの顔だった。バラクラバに覆われているけど目元は見間違えようがない――――
「リンダ!」
久しぶりに聞いた彼の声は半年前と変わっていなかった。
――――――――――――――――――――
更に数日が経過し、歩行できるレベルまで回復したリンダの希望で屋上まで連れて行ったマーカス。
冬の新鮮な空気を吸い込み、歌うリンダ。
彼女の歌声がとても懐かしく胸に沁み渡る――――――――
『私の~心は~誰のものでも~ない~私~だけの~もの~』
『誰かに~決められ~たくない~私の~進む~道~』
まだ包帯と患者着に包まれた姿ではあるが、それでもリンダは美しかった。
ひと通り歌い終えたリンダがマーカスのそばへと歩み寄る。
「マーカス、聞いたよ。私を巻き込みたくなかったんだって?」
その言葉に申し訳なさそうな顔をするマーカス。
「そうだよね――――結局こうなっちゃったけど、私にこうなって欲しくなくて急に去ったんだよね」
「――――その通りだ、すまない」
しばらく流れる沈黙。
「――――マーカスには心配かけちゃうけど、それでも私はマーカスと一緒に居たいな。だって一番心がポカポカするもん」
思わず顔を上げると、南米系のやや褐色よりの肌が紅潮していた。
と、次の瞬間。
すぐ目の前にリンダの顔が見える。
「――――――――え?」
唇に柔らかい感触――――完全に紅潮したリンダの顔が離れる。
「大人になったら……バラクラバ越しじゃなくて直接、ね」
――――――――ぷしゅうっ
突然のことに頭の処理が追い付かず大量の蒸気を放出したマーカスはそのまま意識を失うのだった――――――――――――――――――――――
~次回予告~
ファイル018『歌姫と少女』
コミュニティー地区で暮らすようになり歌手として活動するリンダ。
そんなリンダに憧れの眼差しを送るひとりの少女がいた。
――――――――
【人物紹介】
エーリヒ・ラウ
人種…ドイツ系
性別…男性
年齢…22
階級…少尉
《解説》
レイヴンズの将校。新型パワードスーツ開発計画のメンバーであり優秀な士官だがレイヴンズに敵対する人間を見下す差別的な思想の持ち主。
リーズ・ロランス
人種…フランス系
性別…女性
年齢…24
階級…少尉
《解説》
レイヴンズの将校。新型パワードスーツ開発計画に抜擢されるほど優秀な技術将校で自身もスーツの運用に関与する一方で非番の時は児童養護施設で子供達の為にピアノを弾くという一面を持つ。