サイレント・ナイツ ―無名のヒーロー達―   作:趣味全開人生

22 / 45

レイヴンズの極秘施設攻略作戦から数日後。次の作戦に備えて束の間の休息をとる特戦軍の面々はそれぞれの時間を過ごしていた。


そして、ヨハン・ヴェルトミュラー中尉は自分が世話している子供であるエリカと1日中遊ぶ約束を果たそうとする。





ファイル022『束の間の休息』

 

 

 

――――オーストラリア・某コミュニティー地区

 

 

 

本部ビルのオフィスでパソコンに表示された情報を見つめるメイファン。

 

 

「なるほど……レイヴンズの粛清計画か」

 

 

「そうだ――――SNSなどで潜在的な支持層が幅広くレイヴンズの政治的な立場は日々強まっている。これだけ強引な手段を取っても支持を失わない自信があるんだろう」

 

 

アレクの言葉に頷くメイファン。

 

 

 

 

「ええ。いくら強権的な姿勢を取っても世論の支持が無ければレイヴンズと言えども本当の意味で大きな力は持てない。逆に言えば今のレイヴンズは大きな力を手に入れつつある――――」

 

 

キーボードを叩き、レイヴンズと国連評議会の支持率を表示する。

 

 

 

「ここでレイヴンズの強権的な姿勢に反発する勢力を根こそぎ一掃して、政治・軍事・経済の権限を一気に掌握するつもりね。それこそ、国連軍の反発を力で捻じり伏せてでも」

 

 

その言葉と共に新たなウィンドウが表示され、レイヴンズの新型パワードスーツが表示される。

 

 

 

 

「この計画で重要なのは、反発する国連軍を圧倒できるだけの武力。その要となるのがパワードスーツの量産――――既に量産モデルの設計は大部分が完了し、少数生産されたモデルがテストを重ねている」

 

 

 

量産モデルの戦闘力は、試作された基本モデルの『ナイト』、その発展型『ミラー』、潜入任務モデルの『アサシン』と比べて劣るものの、戦車などの既存兵器を圧倒できるだけのポテンシャルがある――――それが数十、数百と量産されて敵として立ちはだかるのだ。

 

 

 

 

「今はまだ少数生産モデルで欠点の洗い出しを行っている段階よ。洗い出された欠点を改善した本格的な量産モデルが完成し大量生産が始まる前に手を打てば勝てる可能性は高い――――」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

喫茶店でハムエッグの乗ったトーストを美味しそうにかじるエリカ。

 

 

 

その幸せそうな笑顔を、頬杖をつきながら眺めるヨハン・ヴェルトミュラー中尉。端正ながらも不愛想な表情を浮かべた顔は銀髪も相まって冷淡な印象を与える。

 

 

 

「――――――――」

 

 

 

 

しかしエリカはヨハンの事をよく知っていると言わんばかりに、不愛想な顔を向けられても大して気にせず朝食を平らげるのだった。

 

 

 

 

「ごちそーさま♪いこ―!」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

某ネズミ――――ではなく猫耳のついたカチューシャを付けるエリカ。

 

 

「なあ、本当に付けないと駄目なのか?」

 

 

 

やや困惑した表情のヨハン。

 

 

「うん、ちゃんと付けないと!」

 

 

 

 

やれやれ、と言わんばかりの表情で膝を屈めて頭をエリカの目線より低くする。

 

 

「付けてあげるね♪」

 

 

 

 

 

「――――――――」

 

 

スマホのカメラ越しに、バラクラバの上に猫耳を付けられた自分を見る。そこへエリカが横から割り込んでくる。

 

 

 

 

「お揃いだ~」

 

 

 

 

 

 

周囲からの視線を感じ、居心地悪そうな表情を浮かべるが隣で手を繋いで楽しそうにするエリカに視線を移すと自然と表情が緩んだ。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

「うわ――――!!」

 

 

 

ジェットコースターで楽しそうな声を上げるエリカ。

 

 

 

一方のヨハンは不愛想な表情を崩さない。

 

 

 

 

 

「次はあっち行こう!」

 

 

ヨハンの裾を引っ張りつつぴょんぴょん跳ねながらエリカが急かす。

 

 

 

 

「そう慌てんな、特別パスで優先的に遊べるって言ったろ」

 

 

「早く早く~!」

 

 

 

その無垢な笑顔に面倒臭そうな顔をしつつも付き合うヨハンだった。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

パークの中心にある人口湖が一望できるレストランでハンバーガーを頬張る。

 

 

「~♪」

 

 

 

 

目の前のエリカは不愛想な自分と居て、それなのに楽しそうだ――――

 

そんな事を感じつつポテトを口に放り込むヨハン。

 

 

 

正直疲れたし帰りたい――――が、もう少し頑張ろうという気持ちが芽生えつつあった。

 

 

 

 

「なあ、次はどこに行きたい?」

 

 

 

「え、うん。じゃあ――――次はキャプテンUSAのショー!」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

その後も様々な場所を巡り、閉園時間間近の大目玉であるナイトショーを待つのみとなったふたり。

 

 

 

「――――ヨハンお兄ちゃん」

 

 

「ん?」

 

 

 

膝の上にちょこんと座るエリカがヨハンを見つめる。

 

 

 

 

「今日は色んな所をお兄ちゃんと一緒に遊べて嬉しかった!」

 

 

その幸せそうな笑顔にバラクラバの下で口元が緩む。

 

 

 

「そうか、そりゃ良かった」

 

 

「またこれからもお兄ちゃんと色んな所を見に行きたいし遊びに行きたいな!」

 

 

その言葉と共に花火の音が響き、無垢な笑顔が照らされる――――

 

 

 

 

「ああ――――また予定作っとくわ」

 

照れた顔をまじまじと見られるのが恥ずかしかったのか、ヨハンの目線が上空の花火に移る――――エリカの視線もそれに続く。

 

 

 

人口湖を舞台に繰り広げられる幻想的な光のショーにエリカの歓声が何度も上がった――――

 

 

 

 

 

 

 

 

あらゆる施設の照明が消え、帰る客の為に街頭風の照明だけが灯るパーク。

 

 

ナイトショーの興奮を残しつつも昼間の活気が嘘のような静寂を感じるヨハン。気が付けば隣で手を繋ぐエリカも遊び疲れたのか舟をこいでいる。

 

 

 

「おぶってやるよ、ほら」

 

 

ヨハンはそんなエリカを微笑ましく感じながら脚を屈め、背中に被さるよう促した。

 

やがてエリカが安心して背中に体重を預けたかと思うと直ぐに寝息が聞こえてくる。

 

 

 

 

 

背中で眠るエリカの寝息を聞きながら迎えの車を待つヨハン。その心はいつの間にか安らぎで満ちていた――――

 

 

 

 

 







~次回予告~



ファイル023『黒烏の休息』



極秘施設を襲撃されるも、最重要人物であるアルタイルの移送に成功したレイヴンズ。

新型パワードスーツ開発計画のメンバーのひとりであるリーズ・ロランス少尉は久々の非番の時間を子供達と過ごすべく神無月 光少尉と共に児童養護施設を訪れていた。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。