特戦軍が探し求めていたアルタイルは、レイヴンズの手によって別の場所に移送されていた。
そして、レイヴンズが誇る新型パワードスーツの開発メンバーのひとりであるリーズ・ロランス少尉は神無月 光(かんなづき ひかる)少尉と共に児童養護施設を訪れる――――
――――レイヴンズ・某基地
個室のベッドに腰かけ、無表情で壁を見つめる青年。
それを部屋に設置された監視カメラの映像越しに見つめる複数人の将校。
将校達が纏う国連軍の軍服は標準的な紺色ではなく、漆黒の布地が特徴的で右胸部分にはカラスを象ったバッジが付けられていた。
「星の民でも最高の織り手と言われる男、か――――我々の開発した自白剤でペラペラとしゃべってくれた」
「研究開発部門が嬉々として新しいプロジェクトを進めていると聞いた」
「なんでも敵のパワードスーツに使われる動力源を我々の方でも製造できないか検討しているとか」
そんな会話が繰り広げられるなか、エーリヒ・ラウ少尉はここに居ない同僚のことを考えていた。
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――――レイヴンズが運営する児童養護施設
裏側の入り口に設置された認証システムに自らの所属カードをかざすリーズ・ロランス少尉。
『カードを確認しました。続いて指紋・声紋・網膜チェックにお進みください』
専用の機械に右手の親指を押し付け、ゴーグルのようなものに目をつける。
「リーズ・ロランス、階級は少尉」
軍人らしい硬い雰囲気の声でマイクに話しかけるリーズ。
しばらくして入り口の扉が開いた。
『チェック完了、お入りください。リーズ・ロランス少尉』
施設内部に入ると、顔なじみの職員が笑顔で出迎えてきた。
「今日も来てくれてありがとうございます!子供達が楽しみにしていたんですよ」
「いえ、こちらこそ子供達と楽しい時間を過ごせています。光――――神無月少尉は?」
リーズの問いに職員が窓越しに庭を指さした。
「あそこで子供達と遊んでいますよ」
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「もう少し右!」
光に肩車された男の子が手を伸ばし、リンゴを取る。
「取れた!」
みずみずしいリンゴをかじり、幸せそうな顔になる男の子。
「お姉ちゃん、次はわたし!」
小さな子供達が次々と肩車をせがむなか、嫌な顔をせず笑顔で応じながら肩車する光の様子を微笑ましく感じるリーズだった。
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「悪いわね、光」
子供達が昼食をとるなか、光に話しかけるリーズ。
「本当は姪御さん――――勇希(ゆうき)ちゃんだったかしら?彼女と会う予定だったんでしょ?」
「いいえ――――今日は勇希が友達の誕生日パーティーに誘われてて暇だったんですよ」
そう言いながらスマホを開き、写真を見せてくる光。
「パーティーに行っている勇希から送られてきましてね。なんでも友達とのツーショットだとか」
その写真には2人の少女の笑顔が写っている――――光によく似た顔立ち、ボブカットで整えた茶髪の女の子が勇希だろう。
「可愛いわね~」
リーズがすっかりオフの口調になりながら勇希の可愛らしい笑顔に表情を緩ませる。
と、そこへひとりの男の子が駆け寄ってくる。
「光お姉ちゃんだ!この前は助けてくれてありがとう」
その少年には見覚えがあった――――両親がブラック企業の過酷な労働で命を落とし、自身も飢えで死ぬ寸前だった所を救出した子供だ。
あの時は骨と皮だけだったのに、今はすっかり肉付きが良くなって少々丸くなっている――――少々心配な気もする――――そんな姿に涙腺を刺激される。
「すっかり元気だね!たくさん食べてる?」
「うん!毎日いっぱい食べてる!」
そしておやつの時間が過ぎ、陽が西に傾く時間になる――――
リーズが部屋のピアノに近寄り、鍵盤の上で指を躍らせる。
その音色に子供達が集まり、誰かが歌いだす――――それにつられて他の子供達も歌い始めた。
可愛らしい天使たちの歌声に囲まれながらリーズもまたメロディーを口ずさみ始める――――――――
夕陽が空も地上もオレンジに染めていくなか、手を振る子供達に見送られながら帰路につくリーズと光。
「相変わらず元気そうでよかった――――」
「ええ。次の作戦が上手くいけば長期休暇が貰えるらしいので、その時にまたここに来ましょう」
そうね、と同意しながら後ろの方を向いて笑顔で手を振り返すリーズ。
――――夕陽の光を背にしたリーズの笑顔を子供達は一生忘れることはなかった――――
~次回予告~
ファイル024『反撃』
レイヴンズは特戦軍を誘引すべくアルタイルの移送計画をでっち上げた上でその情報を密かに流す。
そして罠に釣られた特戦軍に万全の戦力を整えたレイヴンズが襲い掛かる――――!