レイヴンズはメイファン率いる特戦軍に打撃を加えるべく、偽情報で誘引し万全の戦力で迎え撃つ計画を立てる。
しかし、メイファンもそれを察しており――――!?
――――オーストラリア・某コミュニティー地区
本部ビルのオフィスでパソコンと向き合うメイファン。
「アルタイルの移送計画……急にリークされたこの情報、不自然ね」
眼鏡を直しながらアレクの方を見る。
「罠、だろうな。今まで情報統制がキッチリしていたのが裏目に出たな」
おそらく特戦軍にとって一番身柄を確保したい人物――――アルタイルを餌にして特戦軍の主要戦力を誘引の上、万全の戦力で迎え撃って壊滅的な打撃を与えたいのだろう。
「2ヵ月前からレイヴンズの技術部門が管理する中国のパワードスーツ関連企業――――その日本法人が建設した新工場がフル稼働している。レイヴンズが実戦投入している軍用パワードスーツの量産モデルをここで生産している可能性は高いわ」
「少数生産モデルで欠点の洗い出しをしている話だったが――――もうそれを待たずに早急にこちらを潰すことにしたようだな」
と、その時。オフィスのドアがノックされる。
「どうぞ、お入りください」
メイファンの言葉を受けて開かれたドア――――そこには金髪碧眼の男が立っていた。
「お会いできて光栄です、ドクター・ユェン」
シワひとつないスーツ姿のその男は横に立つアレクに臆することなく歩み寄り、爽やかな笑顔を見せる。
「改めて――――ロマン・ソルボンです」
――――――――――――――――――――――――――――
「――――今回の作戦にあたって、我が社から強力な電磁パルス発生器を提供しましょう。更に電磁パルス対策を施した兵器も」
ロマンの言葉にメイファンが感謝の言葉を返す。
「ありがとうございます、ミスター・ソルボン」
見送りの兵士に付き添われながらオフィスを去るロマン――――――――その後ろ姿を見るメイファンは既に思考を切り替えていた。
「電磁パルス発生器でレイヴンズの兵器に積まれている電子機器を破壊し、無力化出来るとはいっているけど――――起動するまでの間は激しい攻撃に晒されるわね」
「ああ――――上手くいったとしても相当な被害は覚悟しなければならんな」
――――――――――――――――――――――――――――
コミュニティー地区を去る車の後席で足を組んで思考にふけるロマン。
(――――レイヴンズのこの作戦を逆手に取れば、逆にレイヴンズに決して軽くない打撃を加えることができる――――)
そしてスマホを取り出し、とある連絡先を呼び出す。
「――――私だ、今回は静観しろ。まだ動く時ではない」
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――――数日後・東アジア――――
旧日本エリア・沖縄本島。50年前の戦争以来、島全体が軍事基地化されたこの島は国連軍の管轄を経てレイヴンズの一大拠点となっていた――――
海面スレスレを飛行するエクセリオン――――志穂がライフルを構え、発射されたビームが哨戒についていたフリゲート艦を貫き、爆沈させる。
(またこの悲鳴――――)
しかし志穂は苦痛をこらえながら次の標的に銃口を向けて再び引き金を引くのだった。
「こちらエクセリオン、那覇港方面の奇襲に成功!次の段階へ!」
――――――――――――――――――――
那覇港がエクセリオンの奇襲で火の海になるのと時を同じくして、旧・国頭村エリアでは海面スレスレを飛行して接近したヴェガとマルスが戦闘を開始していた。
「な、なん――――」
何だ、と言おうとした戦車兵の言葉はそれを全て言い終わる前に戦車もろとも木っ端微塵になった。
「とりゃあ!」
手の中で生成した光球を戦車に向けて投げると同時に戦車が爆発。マルスが金属の拳で戦車のハッチを突き破り、そのまま内部の乗員を潰す。
そして奇襲から数分で国頭村エリアの沿岸を警備していた部隊は壊滅したのだった――――
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旧・糸満エリアでサムライ小隊のF-35や無人機の編隊による上空援護を受けながら上陸する特戦軍の兵士達。
「くっ――――敵の攻撃が激しい!」
部隊を指揮するラルフ・フォルツ大尉はそんな言葉を漏らしながら遮蔽物越しに感じる着弾の衝撃に冷や汗をかいていた。
「ハラダ、ドローン部隊を展開させろ!敵陣地に爆撃を仕掛ける」
その命令と共にハラダが配下の部隊に詳細な指示を飛ばす。
――――レイヴンズ側陣地
「臆するな!奴らをここで叩き潰すんだ!!」
ベテランの軍曹が檄を飛ばしながら銃座で特戦軍を攻撃する。
その言葉に鼓舞された兵士達が猛烈な攻撃を加え、特戦軍側の兵士が数人ほど銃弾にズタズタにされて倒れる――――その時だった。
複数のドローンが瞬時に陣地上空を陣取ったのは。
「――――!?」
ドローンから一斉にロケットランチャー用弾頭が投下され、爆発音と共に陣地が木っ端微塵になる――――
――――――――――――――――――――
作戦開始から1時間後、奇襲により沿岸の拠点を失ったレイヴンズ側の部隊は沖縄本島の中心部へと退却を開始し始めた。その事を本部のメイファンに報告するラルフ。
『よし、確保した陣地に電磁パルス発生器を送るわ!それまで陣地を奪われないように持たせて!』
貨物船から飛ばした複数の無人機が1時間以内に各陣地に接近して電磁パルス発生器をパラシュート投下する予定だ――――それを起動させればレイヴンズ側の兵器は無力化され残敵掃討を経て作戦は完了する。
――――だが、そう簡単にいかないと言わんばかりに新たな報告が上げられる。
無線機のスイッチをオンにするや否や、悲鳴じみた声が聞こえてきた。
『大量のパワードスーツです!数十はいます!』
それを皮切りに各方面から同じような報告が飛んでくる。
「――――各員、陣地で抗戦しろ!」
『こちらエクセリオン、敵パワードスーツ部隊を叩きます!』
『こちらヴェガとマルス、同じく!』
那覇方面と国頭村方面は彼らがやってくれる――――問題はここ、糸満方面だ。
エクセリオンのような強力なパワードスーツも無ければ、ヴェガとマルスのような超能力者もいない。戦車すら上回る攻撃力を持った数十ものパワードスーツ部隊を一般的な武器と兵士だけで凌がなければならない。それもおそらく1時間ほど――――
――――――――――――――――
糸満港から陸揚げしたばかりの戦車部隊が次々と砲撃を開始するが、機動力の高いパワードスーツ部隊にはほとんど当たらず、当たったとしても合金製の盾で受け止められ有効打を与えられない。
上空から襲い掛かったF-35や無人機の一斉攻撃で数体ほど撃破できたが、それでもパワードスーツ部隊の勢いは止められず数分で戦車部隊壊滅の報がラルフに届けられることになる――――
~次回予告~
ファイル025『虐殺の島』
作戦終了後、特戦軍の兵士達によって記録された証言。
それは特戦軍のおぞましい戦争犯罪を後世に語り継ぐ為の記録だった――――
【人物紹介】
ロマン・ソルボン
人種…フランス系
性別…男性
年齢…30
《解説》
特戦軍およびオーストラリアのコミュニティー地区に資金を出資している大富豪で、グローバル企業の会長でもある。
若くしてスピード昇進を果たし大富豪となった男だが、幼少期の経歴は不明であるなど謎も多い。