特戦軍が沖縄にあるパワードスーツ生産拠点を無力化し、一時的にとはいえ新規にパワードスーツを生産できなくなったレイヴンズ。
特戦軍を率いるメイファンはレイヴンズの本拠地を落とす作戦を発動する!!
ファイル027『目指すべき場所』
――――西暦2105年
農場に隣接する大きな家の前に立つひとりの女性。
「場所はここで合っているわね」
活動しやすい服装にカメラを提げた姿が特徴的なその女性の隣で大きい荷物の入ったリュックを背負う大柄なアンドロイド。
「はい、GPSのデータでも確認しました。間違いありません」
門の横に設置された呼び鈴を鳴らすと、家の玄関が開き1人の男が現れた。
「ああ、もしかして電話でお話ししたユンさん?」
「はい、UN-NN (国連ニュースネットワーク)のユン・リアです。今日は宜しくお願い致します」
「そのサポートアンドロイド、サムです」
ヨーロッパ系の容貌をしたその男――――アレン・アンダーソンは爽やかな笑顔でリアとサムを迎え入れる。
「ユウキ、例のお客さんが来たよ」
「ようこそ、私達のホームへ――――ユウキ・カンナヅキ・アンダーソンです」
アレンとお揃いの指輪を左手の薬指にはめたその女性の穏やかな笑みに思わず見とれるリア――――それでも忘れず先ほどアレンにしたのと同じように自己紹介する。
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農場といっても種蒔きから出荷まで全てロボットがしてくれる為、ほとんど仕事が無いと言っていい2人は事前に約束した通り、インタビューの為に多くの日程を割いてくれた。5年前にようやく終戦を迎えた『第三次レイヴンズ紛争』を戦った当事者の話を聞けたのは有意義だ。
「ホントウニ、オ世話ニナリマシタ。アリガトウゴザイマス」
ユウキに向き直って、まだ勉強してからそれほど日にちが経っていない日本語で感謝を述べながら深々と頭を下げるリア。
「いいえ、私達の方こそありがとう。話を聞いてくれて」
「素晴らしい記事を楽しみにしていますよ」
アンダーソン夫妻は笑顔でリア達を見送ってくれた――――
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――――社宅の広いマンションに戻り、パソコンを開くリア。
キッチンからはサムが晩御飯を作る音が聞こえてくる。
「さて――――とりあえず、あと1本見ておくか」
そう言いながらフォルダに保存したインタビュー映像の1つを開く。
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――――西暦2081年
オーストラリア・某コミュニティー地区にある特戦軍本部オフィスでユェン・メイファンは作戦の内容をまとめ終えていた。
「――――警備の厳しい東京湾からではなく比較的手薄な大阪から上陸して一気に神奈川まで攻め込む。これしかないわ」
「ああ――――とりあえず東北や新潟に拠点を置く反レイヴンズ組織に武器や物資は流しておいた。こちらの上陸直前に武装蜂起して陽動の役割を果たしてくれる筈だ」
アレクがタブレットを片手にメイファンを見る。
「迷っている時間はない――――ここでレイヴンズを終わらせるわ」
こうして『第一次レイヴンズ紛争』最後の戦いとなる『日本上陸作戦』が発動した――――――――
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「みんな――――!!!今日はありがとう!愛してる――――!!!!!」
ライブ会場に響くリンダの声に負けないくらいファンの歓声が響く。
ステージから舞台裏に退場したリンダを待っていたのは恋人のマーカスだ。
「16歳の誕生日ライブ――――成功したな。おめでとう」
送迎車でマンション近くの公園まで送ってもらったリンダとマーカス。
「リンダ――――この後、少し時間あるか?」
公園のベンチに座る2人。
「肌寒くなってきたから、早めにプレゼントしようと思ってな」
そう言いながらマーカスが百貨店のロゴが入った紙袋から取り出したのはコートとマフラーだった。
「わあ~!!私のためにこれを?」
嬉しそうな表情のリンダに思わず照れるマーカス。
リンダが身体を寄せて自分とマーカスの首をマフラーで包み込む。
「えへへ~」
思う存分喜びを顔に出すリンダとは対照的にマーカスは変わらず照れくさそうではあるもののバラクラバの目元だけで嬉しそうにしているのが分かる。
「喜んでくれてよかっ――――」
そう言いながらマーカスが横を見ると、熱を帯びた眼差しでこちらを見つめるリンダの姿があった。
「怪我が治ってほんとうに良かった――――」
その言葉に笑みを浮かべながらリンダを抱き寄せる。
背中に回されたリンダの両腕の感触が愛おしい――――
「ねー、泊まっていかない?」
「流石にそれは駄目だよ――――まだ10代じゃないか」
その言葉にぷぅ、と頬を膨らませるリンダ。
「子ども扱いしないでよ。私達、4年と数ヵ月しか年齢違わないんだから」
「俺だって子どもから大人になったばかりなんだよ」
むー、と唸りながらも観念した表情になる。
「じゃあ代わりにぎゅーってして」
そう言いながらマーカスの胸に顔を埋めるリンダ。
マーカスはそんな彼女を愛おしく思いながら抱きしめるのだった――――
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――――西暦2105年
リアのパソコンの中で話すマーカス・サイモン。
『思えば、私が日本に上陸する部隊に組み込まれることなくリンダの護衛としてオーストラリアに残ったのは、ある意味では幸運でした――――日本で繰り広げられた凄惨な地獄を直接見ずに済んだのですから――――兵士としては無責任かもしれませんが』
~次回予告~
ファイル028『上陸』
陽動に釣られて東北・上越地方に戦力を集中させたレイヴンズ。
その隙をついて特戦軍は大阪湾からの上陸を試みる――――そして、それは地獄の始まりを告げる狼煙となった。