特戦軍が東海地方でレイヴンズの精鋭パワードスーツ部隊を打ち破ったのと同時刻。
リンダとマーカスはオーストラリアのコミュニティー地区で穏やかな日々を過ごしていた。
――――オーストラリア・某コミュニティー地区
街中を歩くリンダとマーカス。
先頭のリンダは休暇ということもあって上機嫌だ。
「マーカス、あそこのゲバブの屋台、美味しいんだよ!」
彼女に引っ張られる形で屋台に連れてこられたマーカス。
「おっ、今日は彼氏さんも一緒か!」
やや中東のアクセントが残る英語で店主が話しかけてくる。
「今日はサービスだ、3割引きにしてやるよ」
リンダが鶏肉、マーカスが牛肉のものをそれぞれ注文し、美味しそうな匂いと共に出来立てのそれを受け取った。
バラクラバの口部分を捲り上げて一口食べると、パンに挟まれた野菜のシャキシャキした食感の奥に牛肉の歯ごたえ、旨味あふれる肉汁がその舌を幸福で満たしていく。
「――――はい、こっちも美味しいよ」
顔を上げると、リンダが鶏肉のケバブを差し出してきた。
「あ、ああ――――」
鶏肉のあっさりした味わいも悪くない――――そんな事を考えていたら、リンダがマーカスのケバブを一口かじっていた。
呆気にとられるマーカスの方を見て悪戯っぽく笑うリンダ。
――――赤面するマーカスとそれをからかうように笑うリンダの様子を見た屋台の店主は心の中で神に最大の感謝を捧げるのだった。
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北米エリアのニューヨークにあるセントラルパークを参考にして作られた公園のベンチに腰を下ろし、春の気配が迫る暖かい日光を浴びる2人。
「ねえ、マーカス……今の戦いが終わっても私の隣に居てくれる?」
リンダからの問いにマーカスがバラクラバの下で笑う。
「なに当たり前のことを言ってんだ。居るに決まってるだろう」
その言葉に嬉しそうな顔になったリンダがマーカスに身体を寄せ、その肩にマーカスの手が添えられる。
気付けばリンダの口からは歌が流れていた――――
聞き覚えがあるメロディーに思わずリンダの方を見るマーカス。リンダもそれを分かっているかのように笑顔でマーカスを見つめながら唄う。
(――――初めて会った時に唄っていた歌……!)
この幸せなひとときを2人は思う存分堪能するのだった。
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2人は知る由もなかった。
この先、更に大きな戦乱と災厄が待っている事を。
「エクセリオンの呪い」が更なる生贄を欲している事も。
そして、それを終わらせる第一歩が自分達に懸かっている事を。
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自宅でスマホから流れるリンダの歌を聴くイルヴァ・サッソ。(ファイル18参照)
――――リンダ・コスタの熱心なファンであり、九鬼 志穂に続いてエクセリオンに見初められた運命の少女。
彼女は知る由もなかった。
自分が志穂に続いてエクセリオンの呪いを継承する事を。
~次回予告~
ファイル031『英雄の死と惨劇の街』
エクセリオンのスタードライブは志穂の心身と深く結びつき、それを通して感じ取った死者の無念や怨嗟は志穂の生命を限界まで削っていた。
そして特戦軍に対して事実上無防備となったレイヴンズは降伏を宣言、戦後処理の為にレイヴンズの本拠地である神奈川へと進軍した特戦軍はそこで人間の醜悪さを凝縮したような地獄を目の当たりにする。