サイレント・ナイツ ―無名のヒーロー達―   作:趣味全開人生

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メイファン率いる特戦軍が仕掛けた東北地方や上越地方での反乱。それと連動する形で特戦軍は日本に上陸しレイヴンズ本部がある神奈川へと進軍。

反乱の鎮圧に多数の兵力を割いたレイヴンズの背後を突く形となり、これを食い止めるために投入された精鋭パワードスーツ部隊はエクセリオンの前に敗北しエース級を2人も失うことになった。

ここに至りレイヴンズは降伏を決意した――――


※今回は次回予告の後も少し続きます



ファイル031『英雄の死と惨劇の街』

 

 

――――神奈川

 

 

先ほどレイヴンズから降伏するとの連絡があり、事後処理のために神奈川に進軍する特戦軍の車両。

 

 

その先頭車の運転手が目的地の方から立ち上る煙を視認する。

 

 

「――――?」

 

 

 

その不穏な空気は車内の兵士達にも伝わったのか、即座に戦闘に入れるよう備え始めた。

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

都市部に進入した車列が最初に目撃したのは獣のような男達に追われる1人の少女だった。

 

 

助けて――――そんな悲鳴が聞こえたかと思うと即座にトラックを停車させ、幌のない荷台から兵士達が次々と飛び降りて駆け出す。

 

 

そうして少女を護るように囲み、そのまま獣どもに銃口を向ける。

 

 

「耳を塞いで!」

 

 

その指示に少女がすばやく両手で耳を塞ぐ。

 

直後、兵士達の銃口が明滅し獣どもは逃げる間もなく絶命した。

 

 

 

「もう大丈夫だ、我々が保護する」

 

兵士が優しく話しかけると少女の顔が歪み、涙が溢れてくる。

 

 

 

そのまま自分の胸へと飛び込んできた少女を優しく抱きしめる兵士。

 

(――――いったい何があったんだ?)

 

 

 

と、その時。部隊を率いていたラルフ・フォルツの無線機に通信が入る。

 

 

『隊長!あちこちで略奪と暴行が行われています!略奪者たちは反レイヴンズ活動に参加しているレジスタンスの模様!』

 

 

そこでラルフは気付いた。ここ神奈川はレイヴンズのお膝元――――そこに暮らす人々はレイヴンズ関係者またはレイヴンズの支持者、その家族――――

 

 

 

レイヴンズの降伏によって身を護る術を失った彼らは、レイヴンズに恨みを持つ人々から見たら奪い放題、犯し放題、殺し放題の絶好の獲物――――

 

即座に車列の後方にいるメイファンに事態を報告し、略奪者の掃討許可を取り付けるラルフ。

 

 

 

「いかなる理由があれ、略奪する者を赦すな。全員に然るべき報いを受けさせろ!!」

 

その命令には怒気がこもっていた。

 

 

――――――――――――――――

 

 

――――18時間後

 

 

略奪者の鎮圧があらかた完了し、静けさを取り戻した神奈川。

 

しかし、耳を澄ませると様々な所から人々のすすり泣きが聞こえてくる――――

 

 

 

身を寄せ合って涙を流し身体を震わせる女性達。

 

その憎悪がこもった視線の先には手を後ろで縛られ座らされた男達。そして兵士のひとりが上官に目配せする。

 

 

 

上官が頷いたのを確かめ、兵士は腰のホルスターから拳銃を抜いた――――バラクラバで覆われ表情が見えなかったが、唯一露出していた目元は恐怖で震え命乞いするような眼差しを向けてくる獣どもを冷ややかに見つめていた。

 

 

そのまま迷いなく端の男、その頭部に銃口を向ける――――引き金が引かれ、目の前の男は永遠に動かなくなった。

 

悲鳴、命乞いする声、泣き声――――そんな醜い騒音を撒き散らしながら処刑されていく男達。

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

神無月 勇希(かんなづき ゆうき)は魂が抜けたような表情で街をとぼとぼと歩いていた。

 

 

昨日まではごく普通のティーンエイジャーにも満たない幼い子供として生きてきた彼女の人生はこの日を境に永遠に変わってしまったのだ。

 

 

父は自らの妻と子を護る為に盾となろうとし、無情にも嬲り殺されてしまった。そして泣き喚く勇希を足蹴にした男達に連れ去られた母はあまりにも酷い亡骸となって見つかった。

 

 

 

胸の中に満ちていた筈の子供らしい無垢な感情や夢はズタズタに引き裂かれ、彼女の中には激しい憎悪の感情が渦巻き始める――――

 

 

そう遠くない未来においてエクセリオンと巡り合い、見初められる時まで、自身すらも焼き尽くさんばかりの激しい憎しみの炎によって自らを傷付けていくのだ。

 

 

――――――――――――――――

 

 

そしてエクセリオンが見初めた戦士である九鬼 志穂中尉の生命は死者の無念、怨嗟の感情に直に触れ続けた事で終わりを迎えつつある。

 

 

病室のベッドに横たわる志穂の頬や腕にはまるで血管が光っているかのような発光する模様が身体を蝕むように広がっていた。

 

 

 

目を空けるとそこには泣きそうになるのを堪えるメイファン、そして悲しげな眼差しを見せるアレクの姿が。

 

 

それでも志穂は悲しいと思うどころか、ようやく苦しい日々から解放されると確信し安堵を覚えていた。そして――――

 

 

 

医療スタッフの慌ただしい声が耳に響き始めたが、それもだんだん静かになりその意識は永遠の静寂へと沈んでいく。

 

 

 

メイファンとアレク、医療スタッフは信じられない光景を目撃していた。ベッドに横たわっていた志穂の身体が光の粒子となって消滅していき、彼女が着けていた酸素マスクだけが転がっていたのだ――――

 

 







~次回予告~


ファイル032『歌姫と鋼の天使』


レイヴンズ降伏から数ヵ月後。リンダ・コスタのライブを手伝っていたイルヴァ・サッソの運命は大きく動き始める。


忘れられない憎しみ。その炎が歌姫を焼かんとする時、その守護者たる鋼鉄の天使が舞い降りる。




【人物紹介】



神無月 勇希(かんなづき ゆうき)


人種…アジア系(日系)


性別…女性


年齢…8


《解説》
極東行政管区の中央都市・神奈川で暮らしていた子供。父親はレイヴンズの技術将校であり、その妹にあたる神無月 光少尉からは可愛がられていた。

後に神奈川虐殺と呼ばれる事件によって人生が一変してしまう。(後々に成人した姿で登場予定)





――――――――――――――――


九鬼 志穂の意識が再び明瞭になっていく。


病室の薬品の匂い――――ではなく草木や花の香り――――


目を見開くと、とてつもなく広い湖がどこまでも広がり上空の星空が水面を彩っていた。



「――――ここ、は?」


辺りを見回すと、こちらへと歩み寄ってくる青年の姿が。ダイビングスーツの生地を厚くしたようなスーツに身を包んだその青年は優しげな眼差しを向けてくる。



「エクセリオンに見初められし戦士よ。今は休むがいい。――――再び使命を果たす時が必ず来る」


その言葉の意味は分からなかったものの、当面は苦しい思いをしなくてもいいという事を理解した志穂は木の根元に腰を下ろし上空の星空を眺めるのだった。

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