サイレント・ナイツ ―無名のヒーロー達―   作:趣味全開人生

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リンダ・コスタのライブ襲撃事件から1年が経った2082年。


神奈川での虐殺に端を発する憎悪と怨嗟は未だに終わらず、再びテロが計画される。

そして精神的な傷を癒していたイルヴァは再び戦いの場に立つ――――



ファイル034『癒えぬ傷は再び血を流す』

 

 

――――オーストラリア・西シドニー国際空港

 

 

数十機もの大型旅客機が発着する空港はビジネスや観光で訪れる人々で賑わっていた。

 

そして1機の貨物機が滑走路へと着陸しようとする――――

 

 

「――――なんだ?」

 

滑走路上に突如として現れた黒い1点――――パイロットが目を凝らすと、それはパワードスーツで全身を覆った人間だった。その手にはバズーカ砲――――

 

 

 

「――――敵だっ!」

 

思わず操縦桿を引くが、機が上昇を始めるよりも早く敵の発射したバズーカ砲弾が輸送機のコックピットを粉砕した。

 

パワードスーツが横に跳んだ次の瞬間、制御を失い滑走路に叩き付けられた輸送機が火花を立てながら滑り、爆発炎上する。

 

 

その様子を目撃した管制塔がざわつき始める。

 

 

「一体何があった!?」

 

 

「滑走路はもう使えない!発着を予定している全ての便に知らせろ!」

 

 

「消防車、出動せよ!」

 

 

――――その瞬間、管制塔に漆黒のパワードスーツが接近しバズーカ砲を構える。

 

 

「――――!?」

 

凍り付く管制塔を見つめる兵士の顔はパワードスーツの装甲に覆われており、表情は一切読めなかった。

 

 

そして機械のように迷いなく引き金を引き、管制室が爆発する。

 

 

 

――――その後は一方的な殺戮の始まりだった。誘導路で立ち往生した旅客機、観光客を乗せたバス、人々で賑わうターミナル――――あらゆるものにバズーカ砲が撃ち込まれ人々の絶叫がこだまする。

 

 

 

 

 

――――その頃、空港周辺を警備していた防衛部隊は、空港を襲ったものとは別の所属不明パワードスーツ部隊と交戦していた。

 

 

「機種不明のパワードスーツ、2機!」

 

 

「映像を見る限り、レイヴンズが使用していた機体の改良型に見えるが…何という練度だ!」

 

 

防衛部隊にはレイヴンズから接収したデータを基に造られた新型パワードスーツが10数機ほどいたが、性能的に劣っている筈の相手にかすり傷すら与えられず、逆にこちら側が次々と撃墜されている。

 

 

「そんなバカな……バッテリー式で、スタードライブを使っているエクセリオンには及ばんが、それでも連中(レイヴンズ)のモノよりは性能はいい筈だぞ!?」

 

 

指揮車両の中で戦況を見守っていた指揮官が信じられないと言わんばかりに叫ぶ。

 

 

――――防衛部隊最後の1機が撃墜され、敵の狙いが指揮車両へと向く。

 

 

「敵パワードスーツ、こちらに急速接近!」

 

 

「た…退避!退避!」

 

 

「駄目です、間に合いま――――」

 

 

次の瞬間、車体をビームで貫かれた指揮車両が爆発炎上し乗員は全員即死した。

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

オーストラリア・某コミュニティー地区・本部オフィス

 

 

「西シドニー国際空港がテロリストに襲われ、死傷者多数…!?」

 

 

報告を受けたメイファンが驚きの声を上げる。

 

 

「――――記録映像を見る限り、レイヴンズが使用していたパワードスーツの改良モデルね。――――どうやって調達しているのかしら」

 

 

そんな疑問を口にするが、実際のところメイファンも側に控えるアレクも分かりきっていた。

 

 

 

1年前の神奈川で反レイヴンズ勢力が行った虐殺は、実行犯こそ処罰されたものの世論は彼らを責めるどころかもっとやれと憎悪を駆り立てている。

 

そんな世論に嫌気が差した一部の企業がレイヴンズ残党を密かに支援しているという噂まで囁かれている――――

 

 

「最悪、またエクセリオンを出さないといけないわね」

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

格納庫で眠るエクセリオン。1年前の戦闘以来、一度も使用されなかったそのパワードスーツは大規模な改修を経て新たな装備が追加されていた。

 

 

そんなエクセリオンを見つめる1人の女性――――イルヴァ・サッソ。

 

未だに1年前の戦いのトラウマでやつれていたものの、その瞳には覚悟が宿っていた。

 

 

 

と、そこへ護衛のマーカスを伴ってリンダが歩み寄る。

 

 

「――――イルヴァ、戦いたくないなら戦わなくてもいいのに」

 

リンダの言葉に後ろのマーカスも頷く。

 

 

――――しかし。

 

 

「それでもエクセリオンを使えるのは私だけ――――だから私がやらなくちゃ」

 

 

悲しげな笑みを浮かべながらイルヴァはそう口にした。

 

 






~次回予告~

ファイル035『黄昏の戦い』


テロ活動を活発化させ、強力なパワードスーツまで投入してきたレイヴンズ。


対する国連軍は開発したばかりの新型パワードスーツで対抗するものの全く太刀打ちできず、遂にエクセリオン出動の要請がなされた。

そしてイルヴァは再び地獄へと舞い戻る――――



【人物紹介】


・イルヴァ・サッソ

人種…イタリア系

性別…女性

年齢…15(2082年時)


《解説》
オーストラリアのコミュニティー地区で生活している少女。リンダ・コスタの歌に惚れたファンで、リンダ本人との面識もある。

星の民の技術で造られた無限のエネルギー炉であるスタードライブを動力源とするパワードスーツ「エクセリオン」の適合者でもあり、1年前にこれを装着してレイヴンズ残党と戦ったが、その際に人を殺めた罪悪感で心を壊して療養していた。

しかし、再びレイヴンズ残党がテロ活動を始めたことで戦場に戻る決意を固める。




・リンダ・コスタ

人種…ブラジル系

性別…女性

年齢…17(2082年時)


《解説》
オーストラリアのコミュニティー地区で生活しながら活動しているアイドル。

レイヴンズに捕まった時に拷問を受けた影響で顔や身体に傷を負っており、レイヴンズに対して『どれだけ身体を傷付けてもお前達(レイヴンズ)に心が屈することはない』というメッセージを送る為に敢えて治療せず傷痕を残している。

自身を守る為に心に深い傷を負ったイルヴァを心配しているものの何もできない事をもどかしく感じている。




・マーカス・サイモン

人種…イギリス系

性別…男性

年齢…22(2082年時)

階級…准尉


《解説》
特戦軍所属の軍人で、リンダ・コスタの護衛。レイヴンズとの戦争で多くのベテラン軍人が戦死し深刻な人手不足に陥っているため、下士官出身としては最上級の階級である准尉に22歳という若さで昇進している。(マーカス本人が優秀というのもあるが、准尉は本来なら50代あたりの優秀なベテラン下士官から選出される)


リンダ・コスタの恋人でもあり、その縁で彼女を通してイルヴァ・サッソと関わっていくことになる。

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