オーストラリア各地の国連軍を攻撃するレイヴンズ残党。
残党側が投入した新型パワードスーツ『リンクス』によって防衛ラインが破られ、その後方の都市で暮らす民間人に危険が迫る――――その瞬間、ギリギリのタイミングで到着したエクセリオン――――イルヴァ。
そしてエクセリオンは今まさに進化しようとしている!
薙刀を大きく振りかぶり、リンクスに突撃するエクセリオン。
その一撃を、背中から抜いた大剣で受け止めるリンクス。
「正義のヒーロー気取りが!邪魔するな!!」
リンクスを纏う青年――――鳴神 修(なるかみ おさむ)が忌々しいと言わんばかりに吼える。
その一撃は重く、性能では勝っている筈のエクセリオンが弾き飛ばされる――――
(そんな馬鹿な!?化け物じみている!)
咄嗟に薙刀で受け止めて防御したものの、剣を受けた時の衝撃で手が痺れている。
「――――!?」
跳躍して大剣を振りかぶるリンクス。横に跳んでかわしたイルヴァはさっきまで立っていた場所が大剣の攻撃で直径数メートルのクレーターになるのを見て肝を冷やした。
次の瞬間――――舞い上がる土ぼこりを突き破るように突進してきたリンクスの一撃がエクセリオンの装甲を突き破り、イルヴァの左肩を貫く。
「あああああああっ!」
痛みのあまり叫ぶイルヴァ。本能的に後ろへと跳躍し、距離をとる――――
痛み、恐怖――――これまでにない強烈な感情を抱いたイルヴァの精神状態に、エクセリオンの胸部に取り付けられた動力源――――スタードライブが反応する。
「正義の味方ごっこは終わりだ!!」
その言葉と共に振り下ろされた大剣がエクセリオンの薙刀を真っ二つにした。
咄嗟に腰の後ろに取り付けてあったライフルを取り出すも、リンクスの剣がそれを弾き飛ばす。
身を守る武器が失われた――――それが決定的となりスタードライブの反応が活発化し、イルヴァは幻を見た。
――――――――――――――――
アパートの扉を蹴破って侵入してきたレジスタンスの兵士。
修が身を挺して彼らがこれ以上入ってこないようにするも、複数人に囲まれては一方的に暴行されるだけで碌に反撃も出来ず、全身の激しい痛みと朦朧する意識で立てなくなった修はそのまま気を失った――――
そして次に意識を取り戻した時、知らされたのは同居していた妹の死だった。
「お悔やみを」と声をかけてくれた医師が冷蔵庫から引っ張り出したトレーに横たわる遺体袋のチャックを少しだけ開ける。
「――――」
おそらく病院側が処置してくれたのだろう、妹の死に顔はまるで眠っているようだった。
だが、首に残った手形が妹の末路を物語っている。
何でこの子がこんな目に遭わなければならないんだ――――俺が弱かったせいで――――
修の目から溢れ出た涙が頬を濡らす。
――――妹の遺灰が入ったアルミ製の筒のような容器を抱え、魂が抜けたような表情で街を歩く修。
と、その進路を塞ぐように戦闘服を纏いバラクラバで顔を隠した兵士が現れる。
「――――鳴神 修だな?奴らに復讐したくないか?」
兵士が修にしか見えないように示した身分証にはレイヴンズのエンブレムが印刷されていた。
――――数時間後
同意書にサインした修が医師の方を見る。
「好きにやってくれ。俺は奴らに復讐できればそれでいい――――」
その表情は怒れる復讐鬼のそれだった。
――――――――――――――――
それは目の前のパワードスーツ――――リンクスを纏う青年の記憶であり感情だった。
「――――こんな、ことが」
もはやイルヴァにとって目の前の相手は単なる敵ではなくなった。
~次回予告~
ファイル037『生きる。どれだけ苦しくても』
哀しみを胸に復讐を遂げようとするリンクス――――修。
更なる死を止めるべくイルヴァはリンクスを討つという哀しい選択をする。
そんなイルヴァの想いに応えたエクセリオンは、スタードライブはその力を解き放った。
サイレント・ナイツ、第一部完結。そして物語は第二部へと移る――――