サイレント・ナイツ ―無名のヒーロー達―   作:趣味全開人生

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レイヴンズ残党は密かに特戦軍最強のパワードスーツであるエクセリオンの動力源にして『星の民』のテクノロジーの産物たるスタードライブの特性を理解し、それを擬似的に再現する事に成功していた。


そして擬似スタードライブを搭載しオリジナルのエクセリオンと同等の基本性能を獲得したパワードスーツ、エクソルを既に量産しており特戦軍に死神の足音が近付きつつあった――――



ファイル039『見えない明日』

 

 

――――オーストラリア・某コミュニティー地区

 

 

その境界線に建てられた監視塔で監視にあたっていた兵士が空に何かを見つけ、双眼鏡を目に当てる。

 

 

「―――!?」

 

 

夜が明け、太陽の光に照らされる空に赤い光が幾つも見える。――――それは複数のエクソルが放出する擬似スタードライブの赤い粒子だった。

 

「警告!諸君らはオーストラリア行政管区の特別エリアに接近しつつある!所属と目的を明らかにせよ!」

 

 

無線機越しに国際周波数で警告する兵士。――――次の瞬間、赤いビームが監視塔を貫き兵士を爆死させた。

 

 

 

――――監視塔からの連絡が途絶え、レーダーに不明機の反応が出た事で地区の民間人達が慌ただしくも混乱なく避難準備をしていく中、本部ビル付近の基地では特戦軍が開発した新型パワードスーツ部隊が出撃を開始していた。

 

 

「敵の正体は不明だ、気をつけろよ」

 

戦闘服とバラクラバを装着した兵士が迷彩塗装のパワードスーツを纏ったリウ中尉に話しかける。

 

 

「心配するな。コイツはバッテリー式パワードスーツとしちゃ最強なんだ。レイヴンズの新型よりも高性能さ」

 

そう言いながら空を眺めるリウ。

 

 

「奴らをさっさと片づけて報告書上げて帰りに美味い店に行こうぜ」

 

リウの言葉に兵士が頷き、自らの持ち場に戻る。

 

 

 

しばらくして、基地からでも空中の赤い光が目視できるようになった。

 

「――――敵の数は20機、か。こいつはちょっと骨が折れ――――」

 

 

そう言いかけた瞬間、こちら側の射程よりも遥かに遠い距離から赤いビームが飛来し同じくパワードスーツを装着していた隣の部下を直撃する。

 

「――――!?」

 

 

爆発に吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。

 

 

 

「退避!退避!物陰に身を隠せ!」

 

通信機にそう叫びながら近くの物陰に滑り込むリウ。

 

 

「射程内まで近づいてきたら撃ち返せ!」

 

震える手を必死に押さえつつ、敵の接近を待つ。

 

 

 

――――1秒、1秒が長い――――

 

 

恐怖で大きな鼓動を刻む心臓のリズムと共にヘルメット内部のディスプレイに表示されたレーダー画面が敵の接近を告げてくる。

 

 

――――自身の位置を中心に表示される緑の円――――こちら側の武器の射程を示すラインの内側に敵を示す赤い光点が入ってきた。

 

「撃て!」

 

 

基地から一斉に緑色のビームが何発も放たれ、光の豪雨となって上空のエクソル部隊に襲い掛かる――――が、エクソルは凄まじいスピードでそれを回避していく。

 

 

「馬鹿な……」

 

信じられない、という気持ちを抑えつつ必死に撃ち続ける――――ようやく敵への直撃弾が出る。が。

 

 

 

ビームが命中する直前にエクソルの左腕に装着されたシールドが作動し、粒子を放出して半球形の光の膜を形成。

 

ビームは虚しく弾かれてしまう。

 

 

と、そこへミサイルが飛来し更に複数の小型弾に分裂したかと思うと全弾エクソルに直撃し破壊に成功した。

 

「よし!次だ――――」

 

 

携行式ミサイルを抱えた兵士がバラクラバの目元に喜びの色を浮かべた次の瞬間、そこに赤いビームが直撃し彼の身体を蒸発させてしまった。

 

 

 

「よくも仲間を!」

 

パワードスーツ兵のひとりが対要塞用のビームのチャージを完了し、エクソルの1機に向けて放つ。

 

 

不意を突かれたエクソルは回避が間に合わず、下半身がビームに吞まれていき残った上半身も装甲の隙間から爆炎が噴き出し、爆発四散した。

 

だが、エクソルに一矢報いたパワードスーツ兵もまた反撃を受けて爆散する。

 

 

 

――――気が付けば基地は壊滅状態に追い込まれ、最後まで抵抗を続けていたリウ中尉の周辺には敵しかいなくなっていた。

 

「馬鹿な――――こんな馬鹿な」

 

 

 

エクセリオンと同等の圧倒的な戦闘力を持ったパワードスーツ、それも2機3機どころではなく10数機が敵として立ちはだかっている。そしてその威力の前に特戦軍自慢のパワードスーツ部隊は戦車の前に立つ生身の人間の如く無力だ。

 

「あ…悪夢だ」

 

 

そう呟いたリウ中尉は直後に集中攻撃を受けて爆発四散した。

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

――――北米行政区・ニューヨーク

 

 

かつて国連本部が建っていた場所に新たに建てられた国連センタービル。

 

その警備を行う兵士達の中に潜んでいたレイヴンズのスパイが指令を発し、偽装して潜入、あるいは味方に引き入れた部隊が一斉に行動を起こす。

 

 

 

隊列を組み歩を進める部隊を不審に思った警備兵がバラクラバの目元に訝しげな表情を浮かべる。

 

対する部隊の兵士達はバラクラバの目元に一切感情を見せていない。

 

 

「おい、何かあったのか――――」

 

警備兵の言葉は頭部を貫いた銃弾によって中断させられた。

 

 

ビル内部で銃声が響き、悲鳴が聞こえてくる。

 

 

 

――――国連政府の要人達が集っていた会議室には、先ほどまで閣議を行っていた政府閣僚らの遺体が転がっている。そして扉が開き入ってきた人物に兵士達が姿勢を正して敬礼する。

 

 

「我らの正義を否定し、神奈川の惨劇を引き起こした罪人らには罰が下る」

 

整った顔立ちに洒落た口ひげが特徴的なスーツ姿の東洋人の男は冷たい声でそう告げた。

 

 

 

15分後、世界に向けられた緊急放送によって国連政府の議長以下各閣僚が粛清されたこと、そしてその粛清を実行したのが国連政府の高級官僚である常間地 隆興(じょうげんじ たかおき)と彼に賛同した部隊であり彼を臨時の議長とする暫定政府が樹立される事が宣言された。

 

と、同時にこれまで犯罪者として扱われてきたレイヴンズが国連政府直属の治安維持部隊として復権すると同時にレイヴンズ打倒に貢献してきた特戦軍が犯罪組織に指定され近々掃討作戦が実施される事も併せて告げられるのだった。

 

 






~次回予告~


ファイル040『コンサートの約束』


レイヴンズの極秘研究施設を調査し帰路についていたイルヴァ達にもエクソルの部隊が差し向けられ、犠牲を払いつつもメイファンがこの状況を予見して予め用意しておいた避難ポイントに逃げ込む事に成功する。


対するレイヴンズは既に避難ポイントの位置を把握しており保有するエクソルを全機動員して特戦軍の掃討作戦を発動。


52機のエクソルに対してたった1機で戦いを挑むエクセリオン――――イルヴァはそれでも戦う。

出撃する前にリンダ・コスタと交わした「コンサート会場でリンダの記念ライブを観に行く」という約束を果たす為に。



――――――――――――――――


【人物設定】


・常間地 隆興(じょうげんじ たかおき)

性別…男性

年齢…44

人種…アジア系(日系)

《解説》
国連政府の高級官僚。正義感が強すぎる性格で、自らが信じる正義の為なら非道な事もやってのける冷酷さを持つ。

国連政府の実権を掌握し議長となった彼が見つめる未来とは一体どのようなものなのか――――

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