※性的描写があります
レイヴンズ残党がエクソルを実戦投入しクーデターを成功させる1ヵ月前。
歌手として多忙なリンダは久々にマーカスと2人きりになり、この瞬間だけひとりの女の子に戻る――――
――――西暦2091年:オーストラリア某エリア
歌を歌い終え、会場から雷鳴の如き歓声と拍手が響く。
「みんな、私の歌を聞きに来てくれてありがとう!愛しているわ!」
満面の笑顔で観客に手を振るリンダ。
――――会場からリムジンに向かうリンダに黄色い声を上げる女の子たち。アイドルから歌手路線に舵を切り、ボーイッシュな服装をするようになってから女性ファンのリンダに対する熱はもはや近づくものを焼き尽くさんばかりにヒートアップしている。
そんな歌手としての成功を喜ばしく思いつつもバラクラバの下で複雑そうな表情を浮かべるのは護衛を務めるマーカス・サイモン中尉だった。
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燦爛と輝く摩天楼が夜空を照らすなか走行するリムジン内部でマネージャーがタブレットを操作し、リンダと予定の打ち合わせを行っている。
「このところ大型イベントが続きましたからね、暫く休みを入れましょう。ホテルのスイートルームを予約しておきましたのでごゆっくり」
そう言い、マーカスの方を見たマネージャーがサムズアップしてみせる。
(久々に2人で楽しんでね!)
彼女のサムズアップの意味を察したマーカスはバラクラバの目元を紅潮させるのだった。
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シャンプーと石鹸のいい匂いを纏いながらTシャツと短パン姿で客室に戻るマーカス。
ベッドで寝転がっていた、自分と似たような格好のリンダが笑顔をこちらに向けてくる。
ベッドに上がりリラックスするマーカスに跨り、抱き着くリンダ。その肩幅の狭い小さな身体をマーカスの鍛え抜かれた屈強な肉体が優しく包み込む。
服の布越しでも感じる互いの体温に愛おしさを感じる2人。
マーカスの胸に顔を埋めるリンダを安心させるようにマーカスの心臓の鼓動が響く。
「こういうの久しぶりだね」
「ああ――――ずっとこうしたかった」
その言葉通り、半年間もこういう時間がなかったマーカスは心からその言葉に同意するのだった。
「もっとリンダに触れたい――――いいかな?」
「――――うん」
下着姿になったマーカスとリンダの身体が重なり、直に触れ合った肌から互いの体温が伝わってくる。
マーカスの背中に回されるリンダの腕。そして重なる唇。
リンダの肌にマーカスの大きな手が重なり、肌を優しく撫でる。そして胸元にいくと心臓がいつもより速いリズムで鳴動しているのが分かった。
――――――――
マーカスの大きな身体を見上げる形でベットに寝そべるリンダ。
その逞しい身体はリンダの小柄な肢体を覆い隠してしまえるのではないかと思うほどでありながら、不思議と恐怖も圧迫感もなく、身体に触れてくるその手の感触は壊れやすいガラスを扱うかのように丁寧で乱暴さがない。
肌に優しく重ねてくる手や身体から伝わる温かさにリンダは安らぎを感じた。
ふと重なった視線。マーカスの頬は紅潮しており、呼吸が早くなっている。その視線が一瞬、ベット近くのテーブルに置かれたゴムの方にいく。
「――――――――そろそろいいかな?」
「うん、来て――――」
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行為を終え、リンダと自分のケアをしたマーカスがベットに横たわる。
その大きな身体に身を寄せ、大きくて逞しい腕で抱き寄せられるリンダ。
「マーカス――――大好き」
「俺もだ、リンダ。大好きだよ」
ふたりは額を重ね、この一瞬を大切に噛み締めるのだった。
――――――――――――
翌朝、ホテル近辺のビーチを散歩するリンダとマーカス。
朝日が真っ白なビーチを照らし、波打ち際をキラキラと輝かせるなか、リンダがサンダルを脱いで駆け出す。
波打ち際で水しぶきを立てながら冷たい感触に歓声をあげて笑うリンダ。そこにブーツを脱いでズボンの裾をたくし上げたマーカスが続き一緒にはしゃいで笑う。
「あはは、冷たい!」
少女のようや笑顔を浮かべて海水をすくい、マーカスにかけるリンダ。
「やったな、えいっ!」
お返しと言わんばかりにマーカスも応戦する。バラクラバの下で彼も少年のような笑顔を浮かべていた。
――――この幸せな休暇の記憶は、ふたりがこれから起こる大きな波乱の時代を生き抜き幸せを掴む上で大きな原動力となる。
時は20年後。
――――西暦2111年
「ここは変わらないわね」
そう言いながら隣のマーカスを見るリンダ。
「ああ――――大切な思い出の場所だからな。変わらなくて良かったよ」
10年の冷凍睡眠期間も含めて20年の間に世界は大きな混乱に包まれ、この数年はようやく混乱が落ち着きつつある。
「長かったね、マーカス」
「ああ、長かった。――――ようやく子供が子供らしくありのままに生きられる時代がやって来る」
と、その時。水面から水しぶきが舞い上がり褐色肌に金髪が特徴的な男の子が顔を見せる。
そしてリンダによく似た笑顔で手を振ってくる。それに手を振り返すリンダとマーカス。
ビーチへと上がり、足跡を残しながらふたりの元に駆け寄ってくる男の子に優しい笑顔を浮かべながら歩み寄る。
男の子――――否、ふたりの間に生まれた息子を抱え上げるマーカス。
「ねえ、マーカス」
マーカスがこちらを見つめる。
「私、すごく幸せだよ!」
「――――俺もだ、リンダ」
リンダは嬉しそうな笑顔を浮かべながらマーカスに身体を寄せるのだった――――