サイレント・ナイツ ―無名のヒーロー達―   作:趣味全開人生

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国連内部に潜んでいたレイヴンズ残党によるクーデターが成功し、レイヴンズは国連政府直轄の治安維持部隊として復権。そして特戦軍は犯罪組織に指定され追われる立場となる。


北海道にあるレイヴンズ極秘研究施設の調査から帰還中のイルヴァ達にも量産型エクセリオン、エクソルの部隊が差し向けられていた――――




ファイル040『コンサートの約束』

 

 

白銀の装甲を煌めかせる複数のエクソルがライフルを構え、赤いビームの雨がエクセリオン・ルフス――――イルヴァを襲う。

 

 

「くっ!」

 

 

ギリギリで回避し、ビームを撃ち返すルフス。胸を撃ち抜かれ爆散するエクソル。

 

 

『くたばれ、悪魔!』

 

20にも満たないであろう若い声と共にエクソルの1機がルフスに襲い掛かり赤く光るビームソードを振り上げる。

 

 

「ここで死ぬわけにはいかない!」

 

矛の刃で赤い刃を受け止め、そのまま跳ね返す。

 

 

「隙あり!」

 

エクソルの無防備になった腹部を矛で貫くと同時に装着者の絶叫が脳に直接響く。

 

 

矛を引き抜いて爆発範囲から離脱する直前、イルヴァの脳に響いたのは『お母さん』という言葉だった。

 

 

 

「――――ごめん」

 

イルヴァは鋼鉄のマスクの中で唇を噛みながらも次の敵との戦闘に意識を集中させるのだった。

 

 

36機のエクソルが隊列を組み、ルフス目掛けてライフルを構えたかと思うと次の瞬間にはルフスを呑み込まんとする赤い光の豪雨が襲い掛かる。

 

「くそっ!」

 

シールドを構え、何とか凌ぐが不利な状況である事は変わらない。

 

 

と、そこへ別方向からビームが飛来しエクソルの1機を貫いて爆散させる。

 

 

 

同僚の突然の死に驚いた他のエクソルがビームの飛来した方向を見ると、そこにはイルヴァと合流すべく駆け付けた『星の民』の姫であるヴェガとその全身鎧の従者たるマルスの姿があった。

 

「マルス、もう一度攻撃!」

 

「心得ました、姫様!」

 

 

ふたりが手をかざし、そこからビームが放たれたかと思うと更に複数に拡散していく。

 

 

「拡散すれば1つ1つの威力は落ちる!防御に徹しろ!」

 

指揮官の命でエクソル部隊が一斉にシールドを展開する――――が、次の瞬間に指揮官は自分が出し抜かれた事を悟った。

 

 

 

拡散したビームが1機のエクソル目掛けて再び集中し、最初の何発かはシールドに弾かれたものの耐久力が尽きてシールドが消滅した瞬間、様々な方向からビームを浴びせられ爆発四散する。

 

 

「全機撤退しろ!このままでは無駄な死者が出るだけだ!」

 

指揮官が即座に撤退を命じ、エクソル部隊は擬似スタードライブから発せられる赤い粒子で光の尾を引きながら引き揚げていった――――

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

太平洋:避難ポイント

 

 

海に浮かぶ小島に設けられたシェルター内部ではメイファンが冷凍睡眠に入る前に予め用意させていた複数の船舶が出港準備を進めている最中だった。

 

 

「これはフォルツ大佐!国連内部に潜んでいたレイヴンズ残党がクーデターに成功し暫定政府を発足する宣言を出した時点で出港準備を始めておいて良かったです」

 

脱出船の船団司令を務める老齢の軍人――――ハン・ミンジェ(韓 民戴)中佐が避難してきたばかりの部隊を率いるラルフを出迎える。

 

 

「ハン中佐、出港準備をもう少し急がせてください。敵がいつ来るかわかりません」

 

自分よりも長い間、軍人として勤め続けてきた者に対する敬意を忘れず、かつ臨時の最高責任者として強く命じるラルフ。

 

 

「わかりました。――――“オリンポス”建造の為に掻き集めた資材の運搬も兼ねていますからな、1隻たりと失いたくない。それに船を動かすクルーは皆まだ若い――――1人残らず南極に送り届けたい」

 

ハンの言葉通り、出港準備を進める作業員たちは皆20代くらいの若者だ。

 

 

「――――死なせたくないですね、ひとりたりと」

 

「はい、大佐」

 

 

――――――――――――――――

 

 

一方、イルヴァ・サッソはエクセリオン・ルフスの整備と補給を兼ねて新たな装備を追加する作業を見守っていた。

 

――――近接戦闘主体のルフスには似つかわしくない、戦艦のような大砲――――それも複数。

 

(複数の敵――――それもエクセリオンと同等の戦闘力を持つ敵をレイヴンズがどれだけ持っているかは分からない)

 

 

イルヴァの脳裏に先ほどのエクソルとの戦闘がよみがえる。

 

 

(近接戦闘に強いルフスでも同等の戦闘力を持つ大量の敵に囲まれれば生き残るのは難しい――――遠距離からどれだけ数を減らせるか、だな)

 

 

頭の中で戦闘をシミュレーションしていると軽やかな足音が響き、顔を向けると久々に見る顔があった。

 

 

 

――――休憩所で紙コップに入ったコーヒーを飲むイルヴァ。

 

「リンダちゃん、無事でよかった。逃げてこれたんだね」

 

 

「うん、もう駄目かと思った――――久しぶりだね、イルヴァ」

 

その笑顔からはイルヴァとの再会を心から喜ぶ気持ちが伝わってくる。

 

 

「うん、私も――――最近任務ばかりで買ったのにまだ聴いていないリンダちゃんの新曲が溜まっちゃってる」

 

申し訳なさそうに笑うイルヴァに、気にしていないと言わんばかりにリンダが距離を詰める。

 

 

「じゃあ、クーデター勢力を倒して落ち着いたら私のコンサートに来ない?一番いい席を準備するから!」

 

「いいの!?」

 

 

――――10年ぶりに少女らしい表情を浮かべるイルヴァ。そんなイルヴァの様子に嬉しくなるリンダ。

 

 

「もちろん!好きな曲リクエストしていいからね!」

 

「わ~、どれにしようかな」

 

 

――――10年前に初めて人の命を奪った衝撃でイルヴァの心に刻まれた傷が癒えつつある、それを感じたマーカスもバラクラバの下で笑みを浮かべる。

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

15時間後、避難ポイントのセンサー網が小島に接近する複数の国連軍艦艇を捕捉。迷わず小島を目指して接近する動きからして敵である事は明らかだった。

 

 

モニター室のオペレーターが後ろでスクリーンを見つめるラルフに報告する。

 

「地上監視無人機が洋上に敵を捕捉!大型揚陸艦2隻、巡洋艦2隻、駆逐艦4隻、大型補給艦1隻から成る艦隊です!ここから500キロの所まで接近しています!」

 

 

 

「思ったよりも早い…ハン中佐、準備ができた船から順次出港させてください。『星の民』の協力者たちとエクセリオン・ルフスで脱出の時間を稼ぎます」

 

「分かりました――――」

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

――――洋上・国連軍艦隊旗艦・揚陸艦ヨークタウン

 

 

小島から強力な妨害電波が発せられ、艦隊から長距離ミサイルによる直接攻撃が不可能になった事をオペレーターが告げる。だが、司令官にとってそれは問題ではなかった。

 

 

(どのみちここから撃っても途中で妨害電波を受けて外れる。それよりもパワードスーツによる鎮圧が確実だ)

 

 

ヨークタウン、そしてもう1隻の揚陸艦エセックスの格納庫では数十機ものエクソルが擬似スタードライブのエネルギー充填を完了し若い兵士達が次々とそれを装着していた。

 

「装着を終えた者はエレベーターで甲板へと移動し出撃命令を待て!」

 

 

 

――――数分後、ヨークタウンとエセックスの甲板でそれぞれ数十機のエクソルが整列し白銀の装甲を煌めかせていた。

 

「壮観だな」

 

 

艦橋から甲板を見下ろし、そう呟く司令官。

 

そのヘッドセットに艦隊が小島を攻撃範囲内に収めた事を告げる報告が入る。

 

 

「よし、エクソル部隊…全機出撃だ!」

 

 

その命令でエクソルが次々と脚を屈めて甲板を蹴り、そのまま赤い粒子で尾を引きながら高速で飛んでいく。

 

 

「虎の子の52機だ……これで倒れてくれよ」

 

司令官は祈るような表情でそう呟くのだった。

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

小島:モニタールーム

 

 

「艦隊からパワードスーツが発進!この反応はスタードライブです!数……52!?」

 

驚きの声と共に報告するオペレーター。

 

 

「全力でここを落としに来るか。……別動隊の心配はしなくて良さそうだな。エクセリオン・ルフスおよびヴェガ殿とマルス殿はこれを迎撃!避難船団はその間に順次出港!南極までのルートは任せる!」

 

 

ラルフの命令が下され、ルフスのヘルメット内蔵インカムでそれを聞いていたイルヴァは夜明け前の空を見上げた。

 

「エクセリオン・ルフス――――イルヴァ・サッソ大尉、出撃します!」

 

 

脚を屈め、地面を蹴る――――と同時にスーツ内部の推進器を最大出力にして青白く光る粒子の尾を引きながら急上昇していくルフス。

 

 

 

 

――――朝日に照らされる空に赤い光点がいくつも見える。

 

そして、赤い光ひとつひとつの中心に白銀に煌めく装甲を纏ったエクソルの姿がある。

 

 

 

「――――来い!私の後ろにいる人たちの所には行かせない!」

 

イルヴァがそう宣言しルフスの銃口がエクソルを睨み付けた次の瞬間、ビームが放たれる。

 

 

それは特戦軍と国連軍の最終決戦が始まった事を告げる狼煙であった――――

 

 

 






~次回予告~


ファイル041『散りゆく命』


エクセリオン・ルフス――――イルヴァを数で圧倒するエクソル部隊。


そんな驕れる敵に対してルフスの新装備が猛威を振るう――――


――――だが、それはイルヴァにとって想像を絶する地獄でもあった。

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