特戦軍が管理する児童保護施設。そこは彼らにとって『もう一つの戦場』だった。
兵士達は小さな怪獣たちを相手に無事、お世話ミッションを完遂出来るのか!?
「メーデー!メーデー!もっと応援をよこしてくれ!」
小さな子供たちがめちゃくちゃにした部屋を前に兵士の悲痛な応援要請が響く。
『こちら本部、どのような状況だ?』
「子供たちがワンパク過ぎて手を付けられ――――あ、こら!木に登らない!……人手が足りなくて――――そこ、洗濯物の山で遊ばない!」
兵士が子供を追いかけ、またとある兵士は子供が荒らした跡の片付けに追われる――――そんな声が通信機越しに本部に届く。
『こちら本部、了解した。直ちに応援人員を送る。30分持ちこたえろ』
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ミニゴジラ作戦臨時本部
「現地から応援要請がありました。アルファチームのみでは対処が困難、ブラヴォーチームは直ちに装備を整えてヘリに搭乗を」
オペレーターの指示に従い、兵士達がベストのマガジンケースにお菓子を、リュックにぬいぐるみや玩具類を詰め込んでいく。
「皆、用意は出来たか?」
部隊を指揮する隊長の問いに全員が『イエッサー!』と返答し、離陸準備が整ったヘリに次々と乗り込んでいく。
――――――――――――――――
一方、施設の方では子供たちの襲撃をかわしながら何とか洗濯物を洗濯機に入れ終えた兵士の耳に泣き声が入った所だった。
「大丈夫か!?」
そこには躓いて膝を擦りむいて泣く男の子が居た。
「メディーック!」
直ぐに駆けつけた医務兵に手当され絆創膏を貼られる頃には男の子は泣き止んでおり、笑顔で兵士たちの方を見つめていた。
「ありがとう!お兄ちゃんたち!」
「ああ、気にするな。ちゃんとお礼を言えて偉いぞ、坊や」
頭を撫でながら笑う兵士。
と、そこに無線機から悲鳴が響く。
「誰か小っちゃいゴジラ共を台所から引っぺがしてくれ!このままじゃ危なくて包丁も火も使えん!」
台所に駆けつけると、子供たちが興味津々で兵士の周りに集まり、まな板の方を見つめていた。
そこに別の兵士が近づく。
「君たち、お兄ちゃん達と遊ばないかい?」
「遊ぶ!」
「私も!」
子供たちの興味がその兵士へと集まり、釣られるように台所から出ていくのを確かめ、調理担当の兵士に近づく。
「陽動は任せておけ、今のうちにカレーを」
施設の体育館の方を見ると、5人の兵士が数十人の子供を相手にドッジボールを楽しんでいる様子だ。
――――――――――――――――
『いいな?打合せ通り本気を出し過ぎず、手加減し過ぎず、を意識しろ。子供が楽しめなくなる』
『『『『了解!』』』』
子供達の笑顔を前に兵士達はバラクラバの下に真剣な表情を滲ませるのだった。
その数秒後、予想以上に速いボールを前に悲鳴を上げることになるとは知らずに。
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とある部屋では数人の兵士が保育士達をマッサージしていた。
「凝ってますね~いつも大変でしょう?」
「はい……可愛い子たちですけど、少ない人数でお世話するのは大変です……」
極楽に居るような表情を浮かべながら返事する保育士の目にはクマが出来ていた。
「上に報告して人員を補充して貰いますから、安心してくださいね」
すると、ヘリのエンジン音がグラウンドの方から響いてきた。
――――――――――――――――
グラウンドに着陸したヘリから兵士達が次々と降り、空になったヘリが離陸していく。
そして複数人の子供に引っ張りだこになってボロボロの兵士が目に入った。
「た、助けが来た……」
応援に来た兵士達が子供たちと遊び始めるなか、1人の兵士が花壇の方でしゃがんでいる少年に気付く。
「――――君、遊ばないのかい?」
そう問いかけると、アジア系の少年は隣の小さな女の子の方を見た。
「この子、寂しがりで……」
事情を察した兵士は少年の肩に優しく手を置き、笑みを浮かべる。
「良い子だな。でも、君だってもっと楽しんで構わないさ。この子は任せろ」
少年はしばしグラウンドの方で遊ぶ子供たちと女の子に交互に視線を走らせ、「ありがとう!」と返事してグラウンドへと走り出した。
――――――――――――――――
数十分後、グラウンドで子供たちとサッカーで遊んでいた兵士たちは子供のスタミナを甘く見ていたことを痛感させられる。
「………装備、もう少し軽くしとくんだった」
息が上がり始めた兵士を前にしてまだまだ遊べると言わんばかりに笑顔を浮かべる子供たち。
「間違いない、あれはゴジラだ……」
しかし、兵士たちが解放されるのは更に数十分後のことになる。
――――――――――――――――
グラウンドから「もう許して!!!」と兵士たちの悲鳴が聞こえるなか、食堂ではカレーの配膳が終わりつつあった。
『アルファ班、ブラヴォー班共に兵員の疲労甚大!間もなく到着するチャーリー班とデルタ班に引き継ぎを行った後に撤収する』
「了解」
通信機に返事した次の瞬間、食堂の扉が開き数十人の子供たちが手洗い場へと集まっていった。
「わ~!カレーだ!」
カレーを美味しそうに食べる様子に兵士も思わず表情が緩む。
――――――――――――――――
「遊ぼ―!」
「遊ぼー!」
「遊ぼー!」
「お前ら、少しは静かにしろってんだ…」
カレーを食べてスタミナを充填した子供たちの『遊ぼう』コールと共に引っ張りだこにされてもみくちゃにされた兵士だったが、木の上からの悲鳴で我に返り声のした方を凝視する。
「助けて!」
それは今にも折れそうな枝にしがみつく女の子の声だった。
瞬時に木の方へと向けて走り出す兵士。
しかし、無情にも枝は重みで折れ――――――――女の子はギリギリの所で兵士にキャッチされた。
「やれやれ、世話を焼かせやがって」
――――――――――――――――
「はあ……クッソ面倒くせえ」
思わず本音が漏れる兵士。しかし、先ほど助けた女の子は意に介さず兵士の隣で座りながら鼻歌を歌う。
「えー?あたしは楽しいよー?」
そのピュアな笑顔にそれ以上何も言えず面倒くさそうにする兵士。やがて疲れたのか彼の膝を枕代わりにして眠りだす女の子。
すやすやと眠る女の子の頭を撫でながら「面倒くせえ」と呟く兵士の目は穏やかだった――――――――――――
――――――――――――――――――――
――――数日後・特戦軍基地
「――――は?何でお前が?」
ヨハン・ヴェルトミュラー中尉は数日前に助けた女の子が目の前に居る事実に間抜けな声を出した。
「今日から宜しくね!」
目を白黒させていると、ヨハンの部下のひとりが女の子の後ろから走ってきた。
「中尉、本部から伝言です。この子が中尉になついて会いたいと言って聞かないのでとりあえずこの子のお世話をするように、との事です。業務や訓練のスケジュールは調整してくれるとか」
「――――――――――――――――」
思わず天を仰ぐヨハン。
そして思い切り大きな溜息を吐くと背を向けて歩き始めた。
突然の行動に女の子と部下が呆然と見ていると、ヨハンの視線がふたりに向けられる。
「何チンタラしてやがる、さっさと付いてこい」
ぱあっと笑顔になった女の子が鼻歌を歌いながら付いてくるのを確かめ、ヨハンは「面倒くせえ」と呟くのだった――――――――
~次回予告~
ファイル009『自由の乙女』
レイヴンズの力に物を言わせる暴政に反対し自由を求める運動が激化しつつある中、その運動の中心となっている少女の暗殺計画が立ち上がる。
それを察知した特戦軍が動き出す中、ラルフ・フォルツは偶然にも少女と同じ飛行機に乗り合わせる――――――――
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【人物紹介】
ヨハン・ヴェルトミュラー
人種…ドイツ系
性別…男性
年齢…27
階級…中尉
《解説》
特戦軍に所属する士官。強い束縛を嫌う傾向にあり、強権的な姿勢に対して反発する問題児だが、それ故にレイヴンズの思想にそまっておらず一通りの仕事をこなす能力があった事から特戦軍にスカウトされる。
児童施設の手伝いの際にひとりの女の子に懐かれ、その世話役を命じられる。
エリカ・カルレラ・ラモス
人種…スペイン系
性別…女性
年齢…7
《解説》
児童施設で保護されていた子供。施設の手伝いに来たヨハンにとても懐いた為、特例で彼と共同生活を送ることになる。