ウマ娘逆転ダービー(仮)   作:グレート・G

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クラスについては、正確性を欠いております。

そのため、違和感などあるかもしれません。

また、日本ウマ娘8氏については、在来馬のウィキを見て制作しました。

ただ、もしかしたら、欠けていたりすることがあるかもしれません。

重ね重ね、申し訳ない。


第7話 トレーナーの日常 下編

トレーナーが保健室から出たとき、ちょうどお昼の鐘が鳴った。

ちなみにこの鐘は、秋川やよい理事長の希望で本物の鐘が使用されている。

何せ、用務員の就業条項の中にお昼の鐘つきが入っているのだから相当だろう。

 

 

「さて、俺もそろそろお昼の時間かな」

 

 

大型バスケットの中にある数々のサンドウィッチは、時間が立っているがいい香りがする。

文字通り、今か今かと食べられるのを待っているように。

しかし、その誘惑に耐えつつ彼はある場所を目指していた。

 

 

少しずつ、少しずつ、まるで夕闇が迫る道を行くように、陰の深まる廊下を進む。

原因は、窓からの光を遮る暗幕である。

窓一面に張られたそれは、日光を遮断し廊下を闇へと変えている。

本棟の蛍光灯はLEDへと変更されているはずなのだが、旧棟はまだ水銀灯を使用しており、

切れかけのそれは廊下の闇の中では空に浮かぶ星の煌めきに等しい。

 

 

立っていることがわかるぎりぎりの闇を抜けた先、トレセン学園旧棟の一室。

そこは、夜な夜な光を放ち、また、誰かの狂ったような笑い声が聞こえるという。

生徒たちもよほどのことでない限り近づかない、そこの主に合う事が彼の目的だった。

そこは「旧理科実験準備室」またの名を「タキオンラボ」「お化け屋敷」

そう、アグネスタキオンとマンハッタンカフェのいる場所である。

最近はジャングルポケットも入り浸っており、この3人組の校内拠点のようになっている。

 

 

「いるといいんだが」

 

 

独り言をつぶやき、扉をノックする。

3回のノックの後、ガタガタという音が返ってくる。

これは、カフェのお友達が「入ってよし」と意思表示しているのだ。

 

 

「それじゃあ、遠慮なく入らせていただくよ」

 

 

彼は何もない空間に言うと、扉を開けて中に入る。

その際、彼のいたスペースの少し後ろにカフェに似た少女がいたのだが、

それは一瞬だったし誰も見ていなかった。

 

 

普段ならば『ふーはっはっはっはっはっ、待っていたよモルモットくぅん』だの

『さあカフェ、ポッケくぅん、この薬をのんでみてくれないか』とか、

『お、おう、まあ実害がないならいいか・・・・・・?』

『ポッケさん流されないでください・・・・・・タキオンさん、貴女が飲めばいいんですよ』

という微笑ましいやり取りが繰り広げられているのだ。

 

 

しかし、本日はいささか事情が異なっていたようだ。

 

 

「おぉーい、モルモットく~ん、おなかがすいたよぉ~」

「わりぃ、あたしもダメだ、腹減って、しぬぅ~」

「すみませんトレーナーさん・・・・・・ちょっと早めに用意していただいてもよろしいですか?」

「ははは、了解了解」

 

 

3人とも、溶けていた。

そして、三人の腹の虫がものすごい音を立てている。

あのマンハッタンカフェですら、お腹から音を立てているのだから、相当なことだ。

 

 

とはいえ、(主にタキオンに)別に大きな問題があったわけではない。

彼女たちはトレーナーに胃袋を握られたのである。

 

 

それは、まだトレーナーが樫本チーフの下で下積みをしていた時の事。

レグルスフルメンバーの全体練習を行う際に、食事の用意をすることになった時の話。

彼が料理担当者と共に料理を制作したのである。

その際は、エネルギー補給と塩分補給を兼ねて焼きおにぎりとお吸い物という形になった。

が、その焼きおにぎりが曲者だったのだ。

彼のひと手間により、よりおいしくなった焼きおにぎりは、レグルスメンバー全員に食べ過ぎの

デバフを与える程美味しかった。

 

 

そして、そんな珍事はトレセン学園ではすぐさま広まるもの。

 

 

結果、彼の作る料理というのは割と狙われる羽目になった。

 

 

とはいえ、そこは思春期真っ只中。

ねだれば卑しいのでは? 

そう考えてしまう娘達が多いため、彼は被害を受けずにすんでいたのである。

だが、世の中にはそんな思春期の考え方を一蹴するような奴もいる。

そう、かのマッドウマ娘がそうだった。

 

 

『ふふふ、シャカール君から聞いたが中々いい料理スキルを持っているんだねえ』

『おや、タキオンさん・・・・・・なぜ俺は縛られているんだい?』

『ふふふふふふ、お約束さ・・・・・・ということで、私のお昼を作ってほしいんだよ』

『まあ、縄抜けできないほどではないな・・・・・・いいよ、少し待っていてくれ』

『断るというならばこの試薬第108号の・・・・・・へ?』

『それじゃあ、軽く作ってくるよ』

『あ、ああ・・・・・・割ときつめに縛ったし、麻酔も強力なはずなんだけどなあ?』

 

 

首をひねったタキオンを後にして数分後。

 

 

『おや、なんだかすごくいい匂いと余計な二人が付いてきたねぇ』

『余計な二人とはなんだ、お前が余計なことしたんだろうが!』

『タキオンさん・・・・・・ギルティですよ・・・・・・?』

 

 

湯気と美味しそうな匂いを漂わせながら現れたのはトレーナーとジャンポケとカフェの3人。

なお、この日からタキオン、カフェ、ポッケの3人は旧理科準備室でつるむことになる。

 

 

『何つーか、美味そうな匂いがあたり一面に充満してるからよ、顔出しに来たんだ』

『トレーナーさんの・・・・・・手伝いです』

『ふぅん、この匂いは・・・・・・チャーハンかい?』

『ご名答、本当はニンニクを使用したかったが口臭も考えてね・・・・・・高菜を使用した高菜チャーハンにしたよ』

 

 

高菜の香ばしい匂い、煌めく米、卵とチャーシューのシンプルな具材。

料理のできないタキオンからすれば、実においしそうだった。

それが3人分である。

 

 

『二人ともお昼を食べ損ねたと言っていたからね・・・・・・ま、腹の足しになると思うよ?』

『なんかすんません』

『ありがとう・・・・・・ございます』

『おぉい、私の分が少なくなるじゃないか!』

 

 

むすっと頬を膨らませたタキオンだが、カフェとポッケは気にしない。

カフェのおしゃれな丸テーブルに、3人分のチャーハンを乗せ、3人輪になって手を合わせる。

 

 

「「「いただきます」」」

「味が濃すぎるかもしれないから、お茶買ってくるよ」

 

 

うっかり、と彼はお茶を買いに行ったが、3人はそれどころではなかった。

 

 

口に入れた瞬間に広がる、高菜の味。

しかし、2~3口かみしめるとそこから卵とチャーシューのうまみが溢れ出す。

ご飯はパラパラとしていて、コメの旨みが十分で負けてない。

何より、油だ。

 

 

(これは、いわゆる動物系の油だねぇえ!)

(やべえ、すきっ腹にガツンと来やがる!)

(蓮華が、止まりませんっ!)

 

 

健康志向という言葉に中指を突き立てるがごとく、動物性の旨みをこれでもかと叩き出した、そう、ラードであった。

 

 

「すまない、本当ならばウーロン茶を入れたかったんだけど・・・・・・む?」

 

 

ものの5分、彼が近くの自販機に言って緑茶を買ってきて5分である。

彼女たちの皿は空っぽになり、そして。

 

 

「「「おかわり!!!」」」

 

食欲の爆発した目で、彼を見ていたのである。

 

 

そんなこんなでいろいろあって、毎日とはいかないまでも、週に一度は彼がお弁当を作ることになってしまったのである。

 

 

最も彼自身、ウマ娘達に自分の料理の腕を振るうことを楽しんでいる節があるため、苦とは思っていないようだ。

 

 

今日は多めに作ってきたからね、心なしか弾んだ声でトレーナーは大型のランチボックスをどこからともなく取り出した。

今朝がた作成した自信作であり、バンブーメモリーとゴールドシチーが食べたのはその一部であった。

 

 

そして本日のオーダーは、カフェのメインオーダーである「コーヒーとそれに合う料理」である。

そこに、タキオンのオーダーで「エネルギーを大量に摂取できる料理」を追加。

更には、ジャングルポケットの「肉とかそういう腹にたまるやつ」というふわっとした概念を加味した結果、彼の行き着いた最適解とは。

 

 

「米粉を使用したパン・・・・・・ですか」

「ああ、それに肉や卵、紅茶にコーヒーと一通りの飲み物とも相性がいい」

「おお、肉じゃねーか!」

「ああ、たっぷりの肉類を挟んだローストビーフサンドだ、がっつり食べてくれ」

「ふぅん、これは卵サンドかい? はさんであるのは卵焼き?」

「米粉だからな、和風卵焼きを挟んだ変わり種のサンドイッチさ」

 

 

次々と大型バスケットから出てくる大量のサンドウィッチ。

それらは全て、種類も味もはさんである具材すら異なる、非常に手の込んだ代物だった。

バスケットから取り出されたサンドイッチは、そのすべてが米粉のパン特有の香り漂う代物で、そのこうばしい香りだけでもおいしそうだ。

 

 

タキオンが手に取ったのは、厚い卵サンド。

分厚く焼いた和風の卵焼きは、だしのしっかりとした香りと卵本来の旨味に加え、昆布だしで溶いた和風からしのピリリとしながらツンとしない辛さが食欲をそそる。

一口食べて、二口食べて、気が付いたら彼女の食欲は加速した。

 

 

ジャングルポケットは迷わず肉のサンドに手を伸ばす。

ローストビーフサンドの分厚さは指四本分もあろうか、しかし、決して食べにくいわけではなく、むしろひと噛み毎に肉の美味さが際立ち、肉汁を使用したグレービーソースと西洋わさびのソースにクレソンが合わさり、彼女の食欲がもっと食わせろと叫び出す。

 

 

マンハッタンカフェは、おずおずとバランスのいいサンドイッチに手を伸ばした。

ベーコン・レタス・トマトの3種類が絶妙なバランスで成り立っているBLTサンドは、堅実かつ丁寧なおいしさを提供してくれる。

更に、挟み込まれた薄切りのチェダーチーズが「こく」と「まろやかさ」を演出。

この名わき役のおかげで、劇団BLTサンドの美味しさは摩天楼を突き抜ける。

タキオンに負けないほど、彼女の食欲が加速したのはお友達だけの秘密だ。

 

 

ポテト・ツナ・照り焼き・カツ、エトセトラ。

大量のサンドイッチが文字通りあふれ出る。

その美味しさは、普段は小食のカフェが大口を開けてかぶりつくほどだ。

 

 

勿論、彼の作る料理には箸休めがきちんとついている。

小鉢(ウマ娘基準)にどっさり入ったサラダも忘れてはいけない。

スモークサーモンとオニオンスライスのサラダは、酢が利いていて口の中をさっぱりとさせてくれる。

そのおかげで、サンドイッチを2口3口と食べていても飽きが来ない。

 

 

付け合わせとしては異例の、大きく食べ応えのある鶏のから揚げ。

鳥の皮もカリカリになるまで揚げてあるそれは、まさに「肉って肉」としてメインに負けない異彩を放つ。

醤油ベースのたれで漬け込まれた鶏肉は、時間がたっても美味い。

 

 

大きな保温式の水筒の中には、彼の作ったコンソメスープがたっぷり入っていた。

小さなパックに分けられたカリカリのクルトンが心憎い演出をしている。

 

 

更に、デザートとして生クリームたっぷりのフルーツサンド(イチゴ・オレンジ・マスカットの3種類)までついているのだ、彼女たちの食欲が止まらないなんてレベルではない。

 

 

無心になって、一心不乱にかぶりつき続ける3人は、ものの15分で大きなバスケット群を空っぽにしてしまった。

 

 

「うー、もう食べられねえ」

「うーむ、私としたことがつい食べ過ぎてしまったねぇ・・・・・・」

「とてもおいしかったです・・・・・・あ、コーヒーありがとうございます」

「タキオンも紅茶をどうぞ、ポッケにはウーロン茶なんてどうだい?」

「あー、ありがてえ」

「モルモットくぅん、砂糖マシマシ・・・・・・いややめておこう、ストレートで頼むよぉ」

「はいはい、わかりましたよ」

 

 

3人の顔には「感動的満腹」と書かれており、何も語らずとも彼にはそれがわかった。

何より、自分の作ったサンドイッチをひとかけらも残さず食べてくれるのだから、そのうれしさというのは並大抵のものではない。

 

 

先のバンブーメモリーとゴールドシチーといい、自分の作ったものを美味しそうに食べてくれるのは、作った側として至上の喜びと言っていい。

だからこそ。

 

 

(まあ、エネルギーバー3本食べれたしいいか)

 

 

彼は常に、自分の昼食が貧相になろうと、別にいいかとなってしまうのだ。

本人もこれは問題とは思っているのだが、どうしてもウマ娘への愛情が勝つらしい。

 

 

「ああ、そういえばねえ」

「なんだい、タキオン?」

 

 

昼食後の休憩時間、腹をさする3人のうち、タキオンがなんとなく口を開いた。

本人的には、食後の歓談のようなものらしい。

彼女の時々マッドな内容に脱線する話に、嬉しそうにトレーナーはそれに律儀に付き合うのだから、大したものである。

ちなみに、カフェとポッケは食後の一服中であり、いつもの事と聞き流す気満々である。

 

 

「シャカール君から聞いたんだけど、どうやら君のチームに2名ほど移籍させるらしいよ」

「・・・・・・マジ?」

「ああ、なんでも『初めから6人は無謀』とのことらしい・・・・・・恐らく、シニアクラスの子じゃないかなぁ」

「あー、サブ的な?」

「そう、サブ的な」

 

 

そっかー、サブで来るのかぁ・・・・・・なんて、トレーナーはちょっと苦笑い。

確かに、6人分の練習メニューを考えるのは楽しいけれど、いかんせん一人ひとりにかける時間も6分の1だから、物足りない感は常にあった。

もし、この話が本当ならば、その二人に5人を任せて1人に時間を作れるかもしれない。

 

 

「特別移籍・・・・・・ですか」

「まあ、アタシらには関係ない話だけどなぁ」

 

 

ズズー、と珈琲とウーロン茶をすすりながら言うカフェとポッケ。

確かにねえと相槌を打ちつつ、ストレートティーを飲み干すタキオン。

 

 

彼女たち3人は、今まさにクラシックの真っただ中におり、

3人はこの世代の3強と目される存在である。

もし、特別移籍でもしようものならば学園新聞を超えて、

一般新聞等が取材にかこつけて色々書くだろうことは想像に難くない。

 

 

手早くバスケット及びこまごまとしたものを片付けるトレーナーに、カフェが手伝いを申し出るも休憩していなさいとやんわり断られる。

なお、残り二人は言わずもがな手伝う気はないらしい。

その時である。

 

 

『こちらは理事長室、こちらは理事長室、黄金新星のトレーナーは直ちに理事長室に来るように、直ちにこちらに来るように、以上』

 

 

秋川理事長の呼び出しがかかった。

なお、呼び出す声が少し疲れているような気がしないでもない。

 

 

「呼び出しとは」

「バスケットは・・・・・・運んでおきますから」

「ありがとう、カフェ」

「いえ、これくらいは」

「それじゃあ、また明日」

 

 

そう言って旧理科準備室を後にするトレーナー。

そんな旧理科準備室では、残された三人がこんなことを考えていたなんて知る由もない。

 

 

(むふー、これが愛妻弁当というものなのかな?)

(私の好みを・・・・・・的確に・・・・・・これはもう)

(やっぱダンナにするには、あのトレーナークラスのやつがいいなあ)

 

 

トレーナーを狙う肉食獣がごときウマ娘が増えた瞬間である。

 

 

 

――――――――――――(午後の授業)――――――――――――

 

 

「さて、今回は歴史の一コマを受け持つことになったわけなんだけれども」

 

俺は、今臨時講師としてトレセン学園の歴史の授業を受け持っていた。

なぜ、だと?

理事長呼び出しからの、たづなさんお願いからの、歴史教師が失恋でお休みという事実を知らされたからさ。

いや・・・・・・いいのかトレセン学園、こんなガバガバな理由で有給取って?

まあいい、俺はトレセン学園から給料をいただいている身分、無理のない範囲でやらせてもらうとしよう。

ちなみに、教員免許はきちんと取得している。

トレーナーズスクールの合格=教員免許の取得と考えていい。

だったら体育じゃないんですか、と聞いてみたら、理事長曰く『驚愕! 自殺願望でもあるのか君は!?』と驚かれた。

確かに、ウマ娘の全力突撃なんて、一度は大丈夫でも二度三度と立て続けに食らったらアウトだ。

さすが理事長、部下のことをよく考えていらっしゃる。

さて、そんな経緯から俺は歴史の担当をすることになったんだが。

 

(アッツゥイ!?)

 

今時の子は歴史の授業なんか興味ない、みたいな風潮があると聞いたが、全然そんなことはないというか、視線が熱エネルギーを帯びまくっていて怖いぐらいだ。

今だって、背中に浴びている視線がものすごい。

どれくらいすごいかというと、背中に熱を感じてしまい、変な汗が流れているレベルだ。

まあいい、やる気があるのは結構なことだからね。

 

「さて、今日は歴史ということで近代のウマ娘の歴史を振り返っていこうと思う」

 

噛まずに最初の出だしが言えて、実にいい調子だと思う。

さて、地球の日本国における『在来種』と呼ばれる馬の種類は凡そ8種類と言われている。

絶滅した品種も数あり、100の純血はゼロだったと思う。

そして、このウマ娘の世界においても、割と似通った状況と言える。

 

「では、日本古来より存在する『日本ウマ娘八氏』を順番に答えていただこうかな」

「「「「「「「「はいっ!!」」」」」」」」」」」

「おおぉう」

 

思わず声が漏れた、俺は悪くない。

俺の学生の頃、こんな風に聞かれたら絶対(当てないでくれ)と心中で叫んでいたからだ。

やる気に満ち溢れている、とはまさにこのことなんだろうか。

 

「では・・・・・・グラスワンダー・・・・・・いや、ここはセイウンスカイにしようか」

「えっ!?」

「ありゃ、私かぁ~」

 

グラスワンダーは、なんというか、俺に変わって解説もしそうだからやめておこう。

すまん、だからそんな涙を浮かべた目で俺を見ないでくれグラスワンダー、このまま3階の窓からアイキャンフライしそうになるじゃないか。

 

「ほいほいっとぉ、え~と【北海道氏】【木曽氏】【御崎氏】【対州氏】【野間氏】【トカラ氏】【宮古氏】【与那国氏】の八氏ですかね~」

「大正解、さすがに基本だから覚えているね」

「まあね~」

「よし、じゃあ途絶えてしまった有名な明治の氏を・・・・・・エルコンドルパサー、答えられるかい?」

「ケッ!? ええと、その、あと、三河氏・・・・・・でしたっけ?」

「惜しいな、正解は【ウマ娘南部氏】だよ、三河氏は明治以降だ」

「うぅ、不覚でーす」

 

うむ、我が教え子たちが勉強しているようで何よりである。

だから、その、グラスワンダー、泣きそうな顔でこっち見るのはやめなさい。

 

日本人より日本を感じる、と言われるグラスワンダーだけあり、この分野においてはすごくすごい知識を持っているのは想像に難くない。

だけど、それじゃあだめだ。

授業というのは、知識を得るだけじゃなく知識を補うのも役目だ。

キミが答えると、ほぼ100パーセント答えちゃうから。

俺はそういう意味でウインクすると、授業を進める。

グラスワンダーとその一帯が、示し合わせたかのように別の方向へ向いた。

教師いじめ・・・・・・ではないだろう、多分。

 

「また、近代化に伴い、日本に入ってきて定着したものが2つある」

 

なんだかわかるかな?

気を取り直して俺がそう聞くと、む、と首をかしげる子と、あっ、と気が付いた子がいる。

そして、俺は首を傾げた筆頭であるスぺちゃんと同じクラスにいるボーノへ問いかける。

 

「へっ、えっと、えっと、なんだべか・・・・・・あ、あれ、えっとぉぉぉぉぉ」

「ふえ、うーん、うーん、あれ、喉元まで出かかってるのになぁ」

 

スぺちゃんとボーノは、眉間にしわを寄せてうなっている。

あまりにも自然すぎるから、結構気が付かないものなんだよね。

クラスを見渡すと、ビコーとツルちゃんは思考停止で魂が空へと昇っている。

戻って来なさい、特にツルちゃん。

グラスとキングは答えがわかったのか、切れるような目力でこちらにアピールしている。

二人の目力は、文字通り岩を貫くレベルだ・・・・・・最後の手段として二人は残しておこう。

バイトアルヒクマとジャラジャラの頭からは、考え過ぎて湯気が出ている幻が見える。

いや、顔赤くなるくらい考えるもんじゃない、間違えていいんだよ?

まあ、なんだ・・・・・・俺が正解を言ってもいいか。

 

「正解は『マウスピース』と『蹄鉄』だ」

 

俺の答えを聞いて、む、と考え込む子と、うんうんと頷く子に2分されるのが面白い。

とはいえ、顔には出さずに真剣に続ける。

 

「鎖国時代に日本にも、ウマ娘用の『ハミ』と呼ばれるマウスピースのようなものはあった」

 

ただし、芋がら等の食用植物で作られていたため、とある問題が発生してしまった。

 

「さあ、これが俺からの最後の問題、当時のウマ娘に一番多かったものは何か、そして、なぜマウスピースが広がったのかだ」

 

これには、模範解答が必要だろう。

 

「ということで、グラスワンダー、いける「もちろんです」・・・・・・おう」

 

まさかの食い気味返答である、グラスってこんな子だったかな?

 

「鎖国していた際、レースや労働を行うウマ娘達は『ハミ』と呼ばれる植物性のマウスピースを使用していましたが、あごの力をうまく分散させることができずに、歯が砕けてしまうことが多発してしまいました」

 

「うん、続けてくれ」

 

「はい、そこで西洋式のマウスピースが横浜の商人たちからもたらされると、どんどんと模倣されていき大正期には全国で使用されるまでになりました」

 

「素晴らしい、実にいい回答だ」

 

「「「「おぉぉぉぉぉ!」」」」

 

ちょっと照れ気味のグラス、かわいい。

みんなから注目されて照れ気味のグラス、超かわいい。

思考がずれるが、そこを強制的に真面目モードへ。

 

「それじゃあ、キングもう一つの方をお願いできるかな?」

 

「え、ええ・・・・・・蹄鉄が広がったのは西洋化が原因ではあるのだけれど、日本のウマ娘8氏等のウマ娘達が、蹄鉄なしでも山野を駆け巡ることができていたため、元々日本には蹄鉄という考えがなかったのよ」

 

「いいね、続きを聞かせてくれ」

 

「それは、日本のウマ娘8氏の足が今とは比べ物にならないくらい強靭だったのだけど、西洋化が進むにつれて、足を壊すウマ娘が増え、力の分散効率を上げるために蹄鉄を導入することになり、現在に至るといった所かしら」

 

「GREAT、模範解答だ・・・・・・テストの答えは彼女の回答で満点が取れるね」

 

「「「「おおおおおおおおおっ!」」」」

 

「ふふん、このキングにかかれば当然よ!」

 

どやキングが可愛い。

調子に乗ってるキングはとってもかわいい。

なでなでしたい、させろ・・・・・・はっ。

 

頭の中に浮かんだ悪魔のささやきを一蹴して、彼女たちに向き直る。

今の俺は先生なのだから、きちんとしなければ。

 

その後、俺の授業は問題なく進み、午後の授業はめでたく終了、みんな大好きトレーニングの時間になるのであった。

 

ただ、驚いたことにあのセイウンスカイが授業中に居眠りせずに授業を受けているというのは、

なかなか新鮮なものがあったことを付け加えておこう。

 




今回の投稿にて、トレーナーの日常はいったん終了。

次回より、黄金世代の練習風景やレースなどを重点的に書いていきたいと思います。

ただ、書くことに詰まったら、またトレーナーの日常という形で投稿します。

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