東方異譚録〜万の神人紡ぐ糸〜   作:金柑太郎

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遅れてすまんかった。後報告が一つ。これから小説を書くにあたって全ての異変を書くことができないかもしれないので、書いて欲しい異変があったらコメントで送ってください。


十二話 紅霧異変・壱

霊夢はいつもどおりまっさらな布団から起き上がると、いつもどおり井戸の水で顔を洗う。冷たい水に背筋を震わせながらもタオルで顔を拭き、まだ閉じようとするまぶたを無理やりこじ開け意識を覚醒させる。

 

「はぁ〜。掃除やりたくないよぉ。」

 

 普段内に秘めている愚痴が口からこぼれ出て、群青色の空へと消えていく。博麗の巫女として妖怪退治をするのはいいが、こういう雑務は私には向いていない。だって面倒くさがりやだからだ。こんな人の来ない神社いくら掃除したって無駄だろうに。

 

「とほほ‥。」

 

 普段妖怪から人を守ってあげてるんだから少しぐらいいい生活しても良くない?と疑問を提すも今の貧しい生活は変わらない。

 母屋に立てかけてある竹ぼうきを手に取り境内の掃除を始める。なんでこんなに落ち葉が落ちてるのかなぁ。原因としては昨日の弾幕ごっこのせいであろう。結局自己責任だ。

 

「何か楽に儲かる仕事ないかしら?」

 

 この薄汚い考えは今までで何万回口に出したかわからない。でもそれはしょうがないと自分では思う。だって働くあてを探したところで人里では下っ端として働かされるだけだし、魔理沙とかに頼んでみても魔法の実験台とかろくな仕事を持ってこないだろう。

 

「上から命令されるのは性に合わないのよねぇ。」

 

 そう、これが働けない1番の理由。人に命令されたくない。だって上から目線で物を言われるとムカつくんだもん。だから結局私は貧乏巫女として働くしかないのだ。

 

「ていうかあのBBA自分の布団片付けてないで出てきやがった。こっちからしたらいい迷惑だっつうのに。」

 

 またいつもみたいに藍と喧嘩したのだろうか?

 一回思考を切り離し、足下の落ち葉に視線を向ける。赤、茶、黄色と境内の中で自己主張をしていた落ち葉は一箇所にまとめられ鳥居の横に小山ができている。

 

「あぁ、やっと終わった。じゃ寒いしさっさと中入っちゃお。」

 

と竹ぼうきを引き摺りながら踵を返すと、ヒョ〜と冷たい風がほんのり赤く染まった頬をかすめて吹き抜けていった。

 

 ダメだ振り返ってはいけない。わかっているのに反射的に後ろを振り向いてしまう。そこにはさっきの小山の存在はなく、代わりに色とりどりのカーペットが敷き詰められていた。

 

「クソが。」

 

思わず人里の子供みたいな失言をしてしまった。

 

「もうこんなんやってられっか!」

 

苛立ちが最高潮に達して破壊衝動に襲われる。とにかくものに当たりたい気分だ。持っていた竹ぼうきを膝で真っ二つに折ろうとした瞬間、

 

パッと群青色の空がまるで血に染めたような紅色へと変わった。太陽の光が赤い霧に覆われ遮られる。最初は疲れで自分がおかしくなった?、と考えたが自分が大したことをしてないことを一番知っている。基本的にゴロゴロしてばっかだ。

 

「どうやら、掃き掃除やらなくてすみそうね。」

 

 これは間違いなく異変だ。赤い霧が太陽を遮る、紅霧異変とでも呼ぶことにしよう。異変ということは博麗の巫女の出番であってこの異変を起こした犯人を退治しに行かなくてはならない。

 

「なんとなくこっちな気がする‥。」

 

 私の勘はなぜかよくわからないがよく当たるのだ。思うままの方向へと飛び立つとムシムシした空気が全身を逆立たせる。秋ごろ飛んでいると風が涼しくて気持ちいいのだが、今の陽気は最悪だ。

 さっさと、退治して終わりにしますか。そう心に決めると飛ぶスピードを更に上げる。

 

 真っ赤な巫女服をまとう博麗の巫女、博麗霊夢の後ろ姿はあっという間に小さくゴマ粒だいになり霧の湖の方角へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁあ。」

 

今日もいつもどおり早起きだ、昨日と変わらず布団からのっそりと起き上がると時計に目をやる。カチッカチッと規則正しい音を奏でる振り子時計の針は五時半を指しており外はまだ薄暗い。

 

「そういえば社大丈夫かな?」

 

 横を向いてみれば白目を向いていた目は閉じられスースーと寝息を立てながら胸を上下させている。安心して昨日と同じように制服を取りに行こうとそちらに視線を向けると、

 

「俺の制服がない?」

 

昨日あったはずの場所に青い警官服はなく代わりに黒の袴に青色の羽織が置いてある。ベルトと帽子だけがその場所でちょこんと寂しそうに置かれており昨日の自分の記憶を辿ってみる。

 

「そうか俺警官服のまま寝ちゃったから今洗濯してるのか。」

 

 そう自分の中で答えをはじき出したときであった、あきらかに今の自分と矛盾しているということに気づいた。今俺が着ているのはこの屋敷の浴衣である。

 

「俺の服装誰が着替えさしたんだ?」

 

 これ俺やったか?慌てて自分のパンツをチラッと覗いてみると、チェックのものから変わっておらず胸をなでおろした。何とかセーフか‥‥。

 

「つまりこの服はこれ着て生活しろってことか。」

 

 ていうか社はどうしてるのか?そう思い社の方を向く。すると枕元には黒の袴に白の羽織と捕色でアッピールの激しい和服が置いてあった。まぁ、でもあいつらしくていいのかな?

 そこまで考えるとグー、と腹の虫が鳴き今まで感じていなかった非常に大きな空腹感を覚える。

 

「お、俺にな、なにか食い物ぉを‥‥。」

 

 すがるように廊下に這い出ると厨房に向かってよろよろと、酔っぱらいみたいに歩いていく。

 厨房に着くと何やらガチャガチャと調理器具を用意をしている音が聞こえる。藍か?少し襖を開けて中を除いてみると予想通り藍が料理の準備をしていた。

 しかしまだ料理は作り始めていないようでなにやら調理器具を用意している。まずい一刻も早く何かを胃の中に入れないとこのまま永遠の眠りについてしまうかもしれない。

 

 力の入らない腕をプルプルと震わせながら再び襖の取手に手をかけ厨房の中に入った。

 

「め、飯をぉ。」

 

驚いたように藍はこちらを振り向き駆け寄ってくる。

 

「どうしたんですか!?」

 

「お腹が空いて力がでない・・・。」

 

 どこぞのパンヒーローを連想させる言葉を乾いた口からこぼすと、一刻も早く料理を食べるために

 

「俺も手伝いますよ。1秒でも早くご飯を食べたいんです。」

 

しかし、藍は申し訳なさそうに

 

「じゃあ私が1人でパパッと作っちゃいますから。」

 

とやんわりとまるで布団の羽毛のように断られる。

 

「それじゃあダメなんですよ!」

 

 これだけは言える。このままだとヒモ男みたいになってしまうと。ヒモ男ほどカッコ悪いものはない。男子たるもの女の子を助けてあげることが本望ではないいか。少なくとも女の子が働いているのに俺は黙って待っているなんて俺はできない。

 

「これは僕がやんなきゃいけないことなんです。人はやんなきゃって思ったら今やんなきゃいけないんです。今じゃなきゃ間に合わないこともあるから。」

 

藍は困ったように苦笑いを浮かべていたが、やがてその苦味はピーマンを大人になって食べたかのように抜けていく。

最終的にニンマリと笑顔を浮かべ、

 

「わかりました。じゃあ優太さんはピーマンを洗ってきてください。」

 

まさか本当にピーマンがあったとは。ちょっとした偶然に驚きながらも

 

「おう!」

 

とさっきとは正反対の生気に満ち溢れた顔で返事をした。

 こっちの生活に少しづつ慣れてきてそれなりに仲間と交友を深めるできた。そんな心地のよい生活をしていく中でこのままこっちで暮らしてもいいんじゃないか、と考える自分がいることに真弓は自分で気づいていなかった。

 

 10分程たつとジュウジュウとごま油の香りが野菜とお肉を包みフライパンの上で踊っている。ゴクリと口内で分泌される生暖かい唾をゴクリと飲み込み喉仏がクイっと上に上がる。それを見た藍は口の端に柔らかい笑みを浮かべうふふ、と声をころして笑う。

 

「もう少しでできますからもう座ってていいですよ。」

 

そう言われて立っているのが限界だった俺は、

 

「ありがとうございます。」

 

と短く礼を言い水に浸かってさめざめとした手をさすりながら席に着く。これを体験をするとなんで主婦の人の手がカサカサしているのかわかる。画面の向こうの君もお母さんに感謝しなきゃ駄目だぞ?

 

 するとなにやらノソノソと寝起きのライオンみたいにゆったりとしたコチラに歩いてくる足音が聞こえた。時間を確認すると既に6時位を時計の長針と短針が差しており時間的にも紫が起きてきたのだと思ったのだが、

 

「お前かい。」

 

「あぁ、眠みぃよ。もうちっと寝てくれば良かったわ。」

 

 そこにいたのは以外にも昨日中々起きなかった犬斗であった。その姿は先程枕元に置いてあった羽織と和服ではなく、だるんとだらしなく帯を垂らした寝間着だった。

 

「お前、部屋戻って着替えてこいよ。枕元に着替え置いてあったろ。」

 

「マジ?全然気が付かなかった。ちょっくら戻って着替えてくるわ。」

 

 そういうとまだ眠そうな体を引きずって再び俺たちの部屋に戻っていく。しかし、人間の生理行動はそう抑えられるものではない。ご飯早く食いたいという欲求を抑えられず、藍が置いてくれたほかほかご飯と野菜炒めを口に放り込む。

 

 突然だった。

 

「なんだよこれ!」

 

 廊下から声が聞こえてきた。なんだ?せっかくこれから飯を食おうと思ってたのに。

 

「どうかしたか?」

 

 米と野菜炒めを詰め込んでいる口を片手で抑えながら、かろうじて廊下に届く位の声で聞き返す。

 

「空が‥‥、空が‥‥、赤くなっちまってる‼︎」

 

「はぁ?」

 

 思わず変な呟きが漏れてしまう。

 

「んなことあるかよ!?嘘ついてないでさっさと食おうぜ。」

 

「いや‥本当d。」

 

「白々しいぞ。そんなことしてないでさっさと戻ってこいよ。」

 

「いやでも‥。」

 

「仮にそうだとしてもとりあえず食ってからにしようぜ。腹が減っては戦はできぬって言うしな。腹空いて死にそうなんだよ。」

 

 そこまで会話すると、しぶしぶ犬斗は戻ってきてテーブルのうえに着席する。

 

「言っとくけど嘘はついてないからな。」

 

「まぁまぁ、うまいから食えって。藍さんのご飯やっぱうまいわ。昨日の疲れが取れてないんだな。うんうん。」

 

 そう言って藍の方を見ようとしたのだが藍はいつの間にか出ていったらしい。

 

「本当なんだけど‥‥、やっぱうまい。何かどうでも良くなってきたわ。ていうか話変わるけど俺昨日何があったん?何かイキって力込めたとこまでしか覚えてないんだけど。」

 

「そういえばあなた雑魚すぎてあなた霊力を全部放出しちゃったらしいよ。まぁ俺は弾幕打てるようなったけどな。」

 

「Why?まじかよぉ。まぁ身体能力はチミ雑魚だから実質プラマイゼロだね。」

 

「What?Are you stupid?」

 

「Oh! Fuck you !」

 

そんなやりとりをして俺たちは机の上の皿を空にしていく。最後の締めに残ったお味噌汁をグイッと飲み干して背もたれに体重を任せた。

 

「うんめぇ。」

 

 腹が空いて極限状態だった後に食べる飯はとにかく美味い。部活後の夕飯と同じだ。

 

「でさっきなんか言ってたけどなんなん?」

 

「そうそう何か空が赤くなってたんだよ。お前も見に行ってみ?」

 

「ふーん。じゃあちょっと見てくるわ。」

 

 そう言って椅子の背もたれに手をかけ立ち上がった時であった。突然目の前の空間が裂け、艶やかな金髪があらわになる。いきなりだったので止まれず額を思いっきりぶつけてしまった。

 

「痛っ。」

 

そう声が漏れ、ぶつかった張本人の方を見るとやはりそれは紫でありさっきのことを意にも返さずこちらを見つめている。

 

「おい、いきなり出てくんなって、痛かったんだけど。」

 

「私は痛くないし。これが人間と妖怪の違いかしらね。」

 

「うるせぇ。悪いのはそっちだろ。」

 

「私何にも聞こえませーん。」

 

 この態度に無性にイラつくのは俺だけであろうか?しかしいつもみたいに揉め事ばっかしていたら話が進まない。ここは大人らしく返す言葉を飲み込んだ。

ていうか俺よりも圧倒的に長く生きてて子供っぽいっていうのはおかしくないないか?

 

「で、どうかしたのか?まだ特訓の時間には早いだろ。」

 

「異変よ。」

 

「異変?」

 

 そういえば昨日読んだ本に書いてあった気がする。確か度々妖怪かなんかが異変ってのを起こして、それを人間が解決するって書いてあった気がする。

 

「それがどうした?別に俺たちが出る幕ってわけじゃないだろ。博霊の巫女がいるんだし?」

 

「博霊の巫女?」

 

 あの本を読んでいない犬斗はポカンとしているが、俺にはわかる。博霊の巫女は妖怪退治を主な仕事としており異変の解決は大抵巫女がやっているらしい。

 

「いいえ。貴方達は経験が足りなすぎる。異変解決の場面を直接見てもらおうと思って。」

 

「それってつまりこれから見に行くって事?」

 

「そうよ。今日の修行は無しってことで。でも正体がバレてはダメなの。貴方達はそういう存在だから。」

 

「なんかよくわからないけど、その現場に行ったら結局バレちゃうくね?」

 

「そう、だから気配と姿を隠せる術とでもいうのかしら?それを貴方達にかけるわ。現場に着いたら私はやることがあるから一緒には居られないけどくれぐれも見つからないようにね。」

 

「おう。その術ってのはウルト○マンみたいに制限時間見たいの無いんだよな?」

 

「そこら辺は心配しなくてもいいわ。私って大妖怪だもの。」

 

「だってよ。じゃあさっさと歯磨きしていこうぜ。」

 

その言葉を合図に俺たちは洗面所へと足を向ける。ギシギシと歩数と比例して床が軋み乾いた音が早朝の静かな廊下に規則正しく響く。顔を洗い終わると再びリビングに戻り、紫の裂け目の中へと入っていく。

 この先で何が待っているのかその二人はまだ知るよしもなかった。




次回も二週間後かも。すまん。
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