東方異譚録〜万の神人紡ぐ糸〜   作:金柑太郎

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今回は誰のお話でしょうか。まぁ感のいい人はおわかりでしょうが、読んでればわかります。
 何とかかけました。このまま書いてたらいつ終わるんだってなりそうですがそれは忘れてください。


二十二話 もう一輪のガーベラ

 ヴーッ、ヴーッ。枕元のスマホのアラームで私は目を覚ました。目を覚ましたと言ってもまだ目は閉じたままで手探りで枕元においたはずのスマホを探す。

 

 

 

「はぁ、眠い・・。」

 

 

 

 携帯のアラームを止めると、まだ閉じようとする目をこすり上半身を起こす。今日も学校か・・。学校のだるい授業を思い浮かべながらあくびをするとよろよろと立ち上がり、シャッとカーテンを開けた。太陽光が部屋に差し込み薄暗かった部屋を明るく照らす。眩しくて目をしかめながらいつものようにこう思うのだ。学校行きたくないなぁ、と。

 

 

 

 パジャマ姿のまま階段を降りいつもの食卓へと向かう。昨日ドライヤーを忘れてしまったせいか今日は寝癖がひどい。一段降りるごとに普段は触れることのない頬を髪が撫でるのでイライラしていると下から祖父の声が聞こえてくる。

 

 

 

「鮮華〜。ご飯ができてるぞ〜。」

 

 

 

「は~い。」

 

 

 

 私はできるだけ明るい声を心がけながら、返事をする。それが私にできる精一杯のことだから。

 

 

 

「今日のご飯何〜?」

 

 

 

 そんな気になるふりを装いつつ私はいつもの食卓に向かった。テーブルには目玉焼きに1杯の白飯、大根の味噌汁、キュウリの塩漬けと簡素な朝食が並べられている。すでに座っている祖父の正面に腰掛けると二人で頂きますと手を合わせる。私の右側にはもう一組の食器が並べられておりこれは祖父が並べたものだ。去年亡くなった祖母がいつも座っていた席に今も食器を並べている。この光景が私の大好きだった祖母を毎日のように思い出させる。二人共仲良かったんだろうな。そんなことを思いながら私は大根の味噌汁へと手を伸ばした。

 

 

 

「今日の味噌汁、大根シャキシャキしてて美味しいね。」

 

 

 

 自分でもちょっとオーバーかなと思うぐらいに反応してしまったが、それでも祖父はニコニコと笑って幸せそうだった。ホッと息をつきそのままご飯を口に運ぶ。今日も一日が始まる。

 

 

 

 

 

 ご飯が食べ終わると、私は2階の自室へと上がり学校の制服へと着替える。鏡の前に立ち苦戦しながら寝癖を直し、時計を見た。6時、そろそろ家を出る時間だ。

 

 

 

「じゃあ行ってくる!」

 

 

 

「おう気をつけてな。」

 

 

 

 そう祖父に伝えると、私は家を出た。6時は早すぎないか?そう思うかもしれない。しかし、私には毎日の日課、いや仕事があるのだ。早朝のランナーに抜かれながら私は目的の場所へ向かう。薄汚れた石段を1段1段、踏みしめ朱色の鳥居をくぐる。

 

 

 

「相変わらず汚いな。」

 

 

 

 坂の上神社。それが私のそれが私の仕事場だ。隣接する倉庫に立てかけてある竹箒を手に取り、落ち葉を集めていく。森の中にポツリと佇む神社は鳥の鳴き声や風のそよぎを残して何も聞こえない。だから考え事をするにはちょうどいい。毎日祖父の神社の掃除をするこれが日課だ。

 

 

 

「今日は落ち葉が少ないな。」

 

 

 

 いつもは二袋ぐらいは貯まるのだが、今日は一袋ですんだ。私はサンタクロースのようにゴミ袋を背負うと立ち上がり学生カバンを片手に階段を降りる。いつもは二袋なのでカバンを取りに二往復しなければならないのだが今日はそのまま学校へ向かうことができた。小さな幸せを噛み締めつつ私は学校の校門をくぐる。

 

 

 

「おはようございます!」

 

 

 

 生徒会の挨拶に見送られて下駄箱へと向かった。そして私が向かうのは自分の教室・・ではなく保健室だった。

 

 

 

「あっ、鮮華ちゃんおはよう。」

 

 

 

保健室の先生がいつも通り優しく応対してくれる。毎日授業を受けなければならないと思いながらも、あいつらを思い出してしまって体がすくんでしまう。

 

 

 

「先生、今日は家の用事があるので午前中で早退します。」

 

 

 

「あらそうなの?じゃあ昨日のとこだけでも復習しとこうか。」

 

 

 

そうすると先生はバックを開けて教科書を取り出す。先生はちゃんとしたとこの大学を出ていて頭がいいらしく、授業を受けれていない分の勉強をマンツーマンで見てくれている。ぶっちゃけ授業を受けるよりこっちのほうがわかりやすいのでなんだか得した気分だ。

 

 

 

「はい。今日はここまで。」

 

 

 

一通り昨日の授業の復習をすると時刻はもう12時をまわっており、4時間目が始まっていた。

 

 

 

「先生、私そろそろ帰ります。」

 

 

 

「そう、じゃあ車に気をつけて帰ってね。あと、おじいちゃんによろしく言っといて頂戴ね。」

 

 

 

「はい、わかりました。今日もありがとうございます。」

 

 

 

 そう言うと私は保健室の扉を締め外に出る。帰宅の時間には少し早かったが、帰りの時間が昼休みとかぶると面倒なので嘘をついてしまった。

 

 

 

「やっと終わった。」

 

 

 

 誰にも聞こえないように小さな声でつぶやき、人通りがまばらな道を歩く。スーパーの前を通ると年のいった女の人がこちらを見てくる。おそらくこんな時間になんで中学生が歩いているのかしらとでも思っているのだろう。コンビニを通り過ぎて、橋を渡り住宅街を抜け、いつもの駄菓子屋も通り過ぎて私は朝と同じいつもの自宅へと帰ってきた。

 

 

 

「今日は地鎮祭やるんだっけ。」

 

 

 

 私はよくおじいちゃんの手伝いで一緒にこういった祭事に連れて行かれる。私が学校でクラスに馴染めていないことを知ってかもしれないが、でかけた先ではいつも会話の席に強制的に参加させられる。

 

 

 

「別に他人と話すの好きじゃないのに。」

 

 

 

 少しの不満を口からこぼすと、私は家に上がる。

 

 

 

「じいちゃん!どこ〜?」

 

 

 

 声を出して聞いてみると、どうやら台所の方にいるようだ。

 

 

 

「おう早かったな。このあと地鎮祭やるから一緒にいこうや。」

 

 

 

「うん。じゃあ着替えてくるからちょっと待ってて。」

 

 

 

「うんわかった。今昼飯作ってるから食ったら行こう。」

 

 

 

私は階段を急ぎ足で上り自室に飛び込む。ヨレヨレの制服を脱ぎ母に買ってもらった数少ないよそ行きの服に着替えると、再び階段を降り食卓へ向かった。

 

 

 

「ほい、焼きそばね。」

 

 

 

 祖父はワンプレートに山盛りに積まれた焼きそばを机に置く。毎回思うのだが、祖父は私の胃袋をなんだと思っているのだろう。そこのないブラックホールだとでも思っているのだろうか?

 

 

 

「じいちゃん流石に量多すぎだろ。」

 

 

 

「鮮華は育ちざかりなんだからいっぱい食べんと大きくならんぞ?」

 

 

 

「いや、太るだろ。」

 

 

 

「いや、その年じゃ太らんよ。」

 

 

 

「いや、それ偏見だよ。」

 

 

 

「いや、偏見じゃない。」

 

 

 

「いや、だとしてもこんなに食べれんよ。」

 

 

 

「いや、やっぱ人が作ったものは残さず食べるのが大事なんじゃよ。」

 

 

 

「いや、あなたが作りすぎなきゃいいだけでしょ。」

 

 

 

「・・・。」

 

 

 

「いただきます。」

 

 

 

一方的にいただきますをして昼飯を食べ始める。いつもこんな感じだから別に気にはしない。祖父との距離が近いと思われるかもしれないが、両親がいないのが一つの要因だろう。

 

 

 

「鮮華もいつの間にか口が達者になりおって。鮮華の将来は安泰だな。」

 

 

 

「はいはいそうですか。」

 

 

 

 そのまま焼きそばを半分食べると、残りはラップに包んで冷蔵庫にしまった。先に食べ終わった祖父は席を立ち仕事着へと着替えに自室へと歩いて行った。

 

 

 

「はぁ、腹裂けそう。」

 

 

 

 女の子に腹がこんなに膨れるまで食べさせるなんて・・。それも毎回毎回。でもご飯を作ってくれる人がいて、ご飯が毎食食べることができる。これに勝る幸せなことはないだろう。

 

 

 

「じいちゃん先外出てるね?」

 

 

 

「おう。」

 

 

 

玄関の扉を開けて外に出る。さっきまで外を歩いていたはずなのに私服を着て外に出ると空気が全く別物のような感じがする。私はまだまだ高い位置で輝いている太陽を見上げながら額から垂れてくる汗をぬぐう。

 

 

 

「暑い・・。」

 

 

 

近頃妙に日差しが強くなった気がする。これも地球温暖化のせいなのだろうか。そんなことを他人事のように考えていると祖父が玄関から出てくる。先ほどとは違い狩衣をまとっておりいかにも神主って感じの服装だ。今日は近所の仕事らしいから家で着替えて車に荷物を積んで行くらしい。

 

 

 

「ほいじゃ、さっさと車に乗れ。」

 

 

 

 祖父に言われるまま車に乗り込むと車の中はサウナのように暑くなっており、いるだけで息が詰まりそうだ。

 

 

 

「暑いよ。さっさと冷房つけよ・・。」

 

 

 

「駄目だ!」

 

 

 

突然祖父が大声で伸ばした手を静止してくる。

 

 

 

「なんでだよ!?このままここにいたら熱中症で倒れるぞ!」

 

 

 

「環境に悪い!・・・・。」

 

 

 

「・・・。車のエアコンって、走った時の排気ガスで動かしてるんだよね・・・。」

 

 

 

 するとさっきまで汗をかいていた祖父は無言でエアコンを入れると黙ったまま前を向いた。

 

 

 

「絶対知らなかったでしょ。」

 

 

 

「知ってたし・・。」

 

 

 

「もう認めなよ。」

 

 

 

「いや、知ってたけどあえてね。そうそうあえてだよ。孫がどのくらい成長したのか確かめるためだよ。」

 

 

 

「フーン。」

 

 

 

「なんだその疑い深い目は!ったく、そんなに言うなら教えてやろう。環境に悪いとさっき言ったがそれはお天道様に悪いということだ。つまりエアコンをつけてしまうことによって無理やり神様が決めた気候を捻じ曲げることになってだなぁ・・。」

 

 

 

「はいはい、またその話ね。ていうか結局エアコンつけちゃってるし。そもそも毎回、妖怪とか霊とか神様とか言ってるけどそんなのいるわけないじゃない。全部人間が作り出した幻想にすぎないんだから。いつまでもそんな言い訳が通じるわけないじゃない。」

 

 

 

 昔から祖父はことあるごとに妖怪とか神様を言い訳にしてきた。そんなのいるわけないのに。もしいるんだとしたら、私の人生はもっといいものになっているはずだ。こんなクソみたいな現実から救ってくれるに違いない。

 

 

 

「いる。」

 

 

 

「は?」

 

 いつもは笑ってごまかすはずの祖父がこの時は違う。

 

 

 

「いるんだよ。絶対に。」

 

 

 

「急にどうしたんだよ?」

 

 

 

 急に真剣なまなざしになった祖父に驚きながら聞くと

 

 

 

「なぁ鮮華。」

 

 

 

と聞く耳を持たない。

 

 

 

「儂がいなくても生きてくれるよな。」

 

 

 

「はぁ?」

 

 

 

 急に変なことを言われたもんだから再び呆けた声を出してしまう。

 

 

 

「儂は妖怪にあったことがあるんだ。」

 

 

 

「ちょっと待って。本当に大丈夫?ボケてない?このまま事故らないでよ?」

 

 

 

「これから色々大変だと思うが、つらくなった時は儂を思い出せ。どこからでも儂は見ているからな。」

 

 

 

「なに、今から死にますみたいなこと言ってるの?やめてよ。」

 

 

 

すると車がキィーッと音を立て止まる。

 

 

 

「よし着いた。さっさと行くぞ。」

 

 

 

 すると祖父はなにごともなかったかのように車を降りて人だかりまで入っていく。わからない。なぜ祖父があんなことを言ったのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのあとの地鎮祭は全く頭に残っていない。休憩時間になると私は一人で近くの森へと入り倒木に座る。

 

 

 

「儂がいなくても生きていけるか。・・か。」

 

 

 

そんなのわからない。だって今まで私は祖父に頼り切りで両親もいない。お金だって自分で稼げないし自分に何か特技があるわけでもない。さらには人とかかわるのが苦手・・。そんなの無理だよ。

 

 

 

 すると遠くのほうから雅楽が再び聞こえ始めたのを聞いて休憩時間が終わったことを知る。

 

 

 

「戻るか。」

 

 

 

 そう一人ながらつぶやくと気づく、

 

 

 

「あれ?」

 

 

 

 泣いているのだ。目から涙がポロポロとこぼれて余所行きの服に染みを作る。なんでなんだ?いやその答えは簡単だ。情けない自分に、弱い自分に嫌気がさしているのだ。この世に生まれてきて私はよかったのだろうか。今まで隠し続けてきた疑問が涙と一緒に噴き出る。

 

 

 

「何が正解だったの!」

 

 

 

 叫ぶ。腹から空気が無くなっても叫ぶ。私はどこで選択を間違えてしまったのだろう。ただ、家族と幸せに暮らして普通に学校に行って平和に暮らしたかっただけなのに。

 

 

 

「そう。なら連れてってあげるわ。」

 

 

 

は?流れていたはずの涙がふと止まる。誰の声だ?ここには私しかいないはずなのに。

 

 

 

 後ろを振り向くとそこには変な服装の女の人が気配もなくそこに立っていた。

 

 

 

「ちょうどいいところにいい人間がいたわ。あなたを幸せな世界に連れてってあげる。」

 

 

 

「は?いや、ちょっと待って・・。」

 

 

 

「私は小さい子は連れてかない主義なのだけど、あなたのお爺さんがねぇ。まぁいいわ。じゃ、いってらっしゃい。」

 

 

 

 彼女はどこかイッチャている人なのかと思う間もなく、地面を踏みしめる感覚がなくなる。

 

 

 

「あっ。」

 

 

 

落ちていく落ちていく。私の体も瞼も意識も闇に落ちていく。最後の最後、意識が本当に落ちきる間際にじいちゃんの、頑張れってエールが聞こえた気がした。




次回はどうなることやらできるだけ早く書くように善処します。
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