東方異譚録〜万の神人紡ぐ糸〜   作:金柑太郎

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久しぶりの投稿だ・・・。やっと落ち着いて執筆できるようになったので月一ぐらいのペースでまた投稿していこうと思います。キャラ設定忘れてキャラぶれてたらすみません。



二十五話 春雪異変・弐

私はたった一枚の桜の花びらを握りしめながら上空を飛んでいた。まわりの景色にはそぐわない春の欠片を一目見た瞬間思った。これは異変だと。そうと勘づいてからは早く、必要な防寒対策をするとすぐに箒にまたがり花びらを握り締め、外に飛び出した。

 

 今回こそ霊夢よりも早く異変解決をしてやろうという思いが熱源となり、寒いはずの外もあまり寒いとは感じない。あたり一面の雪、箒が風を切る音と自分の呼吸音のみがこの世界を形作っていた。ふと、何だが世界に私一人しか存在していないような感じがして、体をブルッと震わせる。しかし、私は一人で走り出した、走り出してしまったのだ。もうあとには引けない。箒を握る手に力を込め、目を見開き、前を向く。

 

 

 

「待ってろよ。」

 

 

 

 

 

まだ、私の異変解決は始まったばかりだ。

 

 

 

******

 

 

 

「おい、早く立てって。」

 

 

 

 引きづられたまま現地へと到着した犬斗を立たせると、あたりの様子を見回してみる。周りは終わりのない空間のようなものに囲まれていて、宇宙にいるような感じだ。しかし、重力はあるのでここが宇宙のど真ん中ではないことだけはわかる。

 

 眼の前には、長く連なる石段が、まるで山城のように存在しておりさっきまで、やる気満々だった気持ちが、みるみるしぼんでいくのを感じる。

 

 

 

「これ登るのか。」

 

 

 

 犬斗の顔を見てみると、露骨に嫌がっているのがわかった。

 

 

 

「ここまで来ちまったんだから行くしかないだろ。帰りは紫に頼んでそのまま返してもらおうぜ。」

 

 

 

 そして俺達は、いやいやながらも階段を一段一段と登り始めた。石段は一段の隙間が広く、岩でゴツゴツとしていて非常に登りづらい。まったく・・、ここへの訪問者はみんなこの階段を上るのだろうか、飛べる奴らならまだしも飛べない俺たちからしたらただの迷惑でしかない。

 

 

 

「そもそも、普通の人間はここには来ないか。」

 

 

 

 少しずつ重くなっていく足に不安を抱きつつも、一歩一歩その足を進めていく。だんだんと互いの口数も少なくなってきて、空気が重くなってきた。進んでも進んでも前が見えない絶望感が自分たちをそうさせるのである。なにか他に話題はないかと考えていると、犬斗がふと思いついたように口を開く。

 

 

 

「そういやお前の妹・・、命だったか?とお前ってめっちゃ仲いいよな。」

 

 

 

「いや、さすがにそろそろ覚えろよ。」

 

 

 

「俺、人の名前を覚えるのが苦手なんだ。」

 

 

 

「いや、会社員として取引先とかの誕生日覚えとくの大事だろ。」

 

 

 

「ブラックすぎてまともに頭が回ってなかったんだよ。現世であんだけ苦労したんだから、少しぐらい休ませてくれよ。」

 

 

 

「そもそも、幻想郷に来てからろくに頭つかってないだろ。でもまぁ、俺と命の仲に触れたことだけは褒めてやる。」

 

 

 

「シスコンきめぇ。」

 

 

 

 実際、自分でも自分たち二人の仲は他の兄弟よりも良いと断言できる。べたつく自分に対し、つっけんどんな態度をとる命であるが、実際は自分のことをすこぶる心配してくれている。両親がいなくなって自分ひとりで妹の生活を支えている、そんなハードワークを日常的にこなしていると、疲れが表情ににじみ出てきてしまうものらしい。

 

 

 

「兄ちゃん疲れてるでしょ。」

 

 

 

 笑いながら命はそう言った。しかし、その笑っている顔はどこか申し訳なさげで彼女に優しさがにじみ出ている。

 

 

 

「こんぐらい、楽勝だよ。ちょっと疲れてるけどな。」

 

 

 

「無理はしないでね。私いつでも働けるから。」

 

 

 

「ばか。そんな事したら俺が公務員になった意味ないだろ。養われる側は、心配しないでこっちに感謝してればいいの。」

 

 

 

 そんな会話が過去にあったことを思い出した。まったく、俺たちが年の離れた兄弟じゃなかったらどうなっていたことか。

 

 

 

「おい、黙ってどうしたんだよ。」

 

 

 

 犬斗の声で我に返ると、

 

 

 

「まぁ、俺たちは親がいなかったからな、その分他の奴らよりも仲が良かったんだよ。相思相愛ってやつだな。」

 

 

 

「その言葉づかい、周りから誤解されるからやめとけ。」

 

 

 

 そんなことを話していると、はるか頭上から大きな衝突音が聞こえた。もう博麗の巫女が、異変解決に向かって生きているのか?俺たちの目的は博麗の巫女たちを見届けることである。俺たちが着く前に異変が解決してしまったら、紫から何を言われるかわかったもんじゃない。もっと先を急がねば。

 

 

 

「なぁ、犬斗。」

 

 

 

「なんだ?もう始まっちまったぞ。早く急ごうぜ。」

 

 

 

「俺をおぶって、五段飛ばしくらいで登ってくれよ。俺より体動くんだからさ。」

 

 

 

「は?いくら力あっても疲れるぞ。なんなら俺が疲れるだけじゃねぇか。」

 

 

 

「いいから早く。異変終わっちまうぞ。次は、俺の場所にこたつ入れてやるからさ。」

 

 

 

「ったく。しょうがねぇな。ほら、早く乗れ。」

 

 

 

 この態度の変わりよう。やはり、炬燵には人を虜にする力があるらしい。そのまま、犬斗は自分をおぶるとそのまま一歩を踏み出す。おんぶされたまま、中を浮く。体が重力に逆らって、ふわりと上にあがる。なかなか味わうことのできない感覚だ。

 

 

 

「それいけ、ケントマン!」

 

 

 

「俺は飛べねぇぞ。」

 

 

 

******

 

 そのまま、花びらの痕跡を追い続けてきたわけだが、まさかこんなところまで痕跡が続いているなんて考えもしなかった。

 

 

 

「冥界か。」

 

 

 

 点々と続く、桜の花びらをたどり、私は冥界にまでたどり着いた。ったく、ここにたどり着くまでどれだけの時間を費やしたことか。花びらの小さいのなんのって。

 

 

 

「階段長すぎだろ。」

 

 

 

 冥界についた一番最初の印象は、階段の段数が多すぎるというものである。あれを徒歩で登らせる気があるのかと疑いたくなってしまうが、幸い私には箒がある。

 

 

 

「ひとっ飛びだぜ。」

 

 

 

 そのまま、階段に沿って箒で飛んで行く。ひらひらと舞い落ちてくる桜の花びらにを手で受け、まじまじと見てみると、桜の花びらはふっくらと厚みがあって、さぞかしいい栄養を与えられていると思われる。小さな春の温かみを掌にのせると、かじかみ切った手の先にほんのりと感覚が戻ってくる気がした。

 

 

 

「行くか。」

 

 

 

 こんなことをしている場合ではない。博麗の巫女よりも早く事件を解決するという目標を忘れるところだった。

 

 なぜ私がこんなにも早く異変を解決したいのか。その理由は、霊夢一人に異変解決をやらせるのは違うのではないかと思うからである。異変を解決するのが代々続く博麗の巫女の宿命であるが、博麗の巫女という孤高の存在ひとりに異変解決を任せるのは違うのではないかとずっと思ってきた。この幻想郷にある弾幕ごっこは、遊びだけじゃない。異変解決にも役が立つのだ。

 

 

 

「まぁ、一番の理由は霊夢に負けたくないからなんだけどな。」

 

 

 

 そんな独り言は、不気味に広がる冥界の空に消えてゆく。一人というものは、寂しいものだ。家に一人でいる時とはわけが違う。風の切る音以外の何もない。孤独というものを露骨に感じるのだ。

 

 

 

「そこの魔女、止まりなさい。」

 

 

 

 ふと、その孤独を破り捨て自分に声をかけるものがいる。大慌てで箒を止め、声のした方向に目線を向けると、そこには緑色のシャープなワンピースに、白髪、髪型はボブぐらいの少女が立っている。黒色の髪留めに目が行くその少女の手は、腰に差された二刀の鯉口を切っており、こちらをにらんでいる。

 

 

 

「なんだってんだよ。私はこれから異変を解決しようってんだ。勝負したいならまた今度にしてくれ。」

 

 

 

「もし、私が異変の元凶だとしたら・・。」

 

 

 

 異変の元凶だと・・・。これは、私が異変を解決するチャンスなんじゃないか。ここでこいつを倒して、霊夢より早くこの異変を終わらせてやる。

 

 

 

「おっと、それは話が変わっちまったぜ。ここで。お前をぶっ倒して異変を解決してやるよ。」

 

 

 

 その言葉を皮切りとして、少女が二刀を抜く。瞬間、二振りの斬撃型の弾幕が私の頬を通り過ぎていった。

 

 

 

「あっぶね。」

 

 

 

「次は当てます。」

 

 

 

 少女が飛び上がるのを確認し、私も行動を開始した。星形の弾幕を多数、少女へと発射する。その流れ星のような弾幕はそのまま少女へと直撃するかに思えたが、そうはならなかった。彼女が弾幕に刀を振るうと、その弾幕は消えてなくなりこちらへと斬撃の弾幕が返ってくる。

 

 

 

「弾幕を切るやつがあるかよ。」

 

 

 

 慌ててその弾幕を回避すると、再び弾幕を打って牽制をしつつ、この敵を打開する方法を考える。どうしたら、あの刀裁きを突破できるであろうか。ぶっちゃけ適当に弾幕を打っていても彼女にあたる気がしない。こんなことを考えている間にも、打った弾幕は切り捨てられており少しの時間稼ぎにもなっていない。

 

 

 

「ちょこまかと逃げ回っているだけでは私に勝てませんよ。」

 

 

 

 彼女は煽るようにこちらを見ると、飛び上がってこちらへと接近してきた。

 

 

 

「おまえだって、ただ弾幕を切ってるだけじゃねぇか。」

 

 

 

 そんな悪態をついている間にも、その少女は私の懐に潜り込んでいた。少女は抜き放った刀をきらめかせ、こちらの体をとらえている。一瞬脳裏に、自分が刀で切り捨てられる様子が浮かび、咄嗟に乗っていた箒を前に突き出した。

 

 ドカーンッという衝撃と共に私は体制を崩して下に落ちてゆく。そんなに高い位置を飛んでなかったのが不幸中の幸いであったが、それでも腰を打ち付けてしまった。なかなか足に力が入らず、立ち上がることができない。

 

 

 

「隙ありです。」

 

 

 

 はっ、と上を見上げると白髪の少女はすぐ目前にまで迫っていた。自らの危機を感じてか体が勝手に八卦炉へとのびる。弾幕が切られるのであれば、切れないほどの質量で押しつぶしてしまえばいい。そして私は、スペルカードを唱える。

 

 八卦炉がぐるぐると回転し、中心に魔力が集まっていく。バチバチと魔力が飛び散り、今にも圧倒的なエネルギーの波が放たれようとしているのを肌で感じる。白髪の少女も、こちらの異変に気付いたのかその場で立ち止まり刀を構えた。

 

 

 

「恋符 マスタースパーク!」

 

 

 

 衝撃波と共に、七色の光を放つレーザーが空間を一直線に突き進み、白髪の少女を飲み込まんと迫る。さすがに冷静沈着に見える彼女も目を見開き驚いた顔をしていた。マスタースパークの反動で地面に押さえつけられながらも、八卦炉を持つ手だけは降ろるわけにはいかない。

 

 

 

「お前の負けだ!」

 

 

 

 マスタースパークを正面から受けた少女は、その勢いに飛ばされ上へと打ち上げられる。

 

 

 

「勝負あったな。」

 

 

 

 地面に打ち付けられた時に飛んで行ってしまった帽子を拾うために、やっとのこと立ち上がり、帽子を深くかぶりなおすと、再び飛ばされた少女の行方を捜すために後ろを振り返る。しかし、そこに飛ばされたはずの少女はいなかった。はっ、と一瞬で状況を察し、辺りを見回すも彼女が見つからない。

 

 

 

「私のマスタースパークを食らってまだピンピンしてるとは、やるな。」

 

 

 

 だが、どこに行ったのか。どこかに逃げてしまったとは考えにくいし、かといって隠れる場所もない。まるで神隠しにでもあったかのようにその場から消えてしまった。あたりを静寂と沈黙が支配し、時間だけが一秒一秒と過ぎていく。どこかへと飛ばされてしまったのか、そう思い始めた頃にその声は聞こえた。

 

 

 

「人符 現世斬。」

 

 

 

 スペルカード?脳の処理が追いつかない。私はどこか見逃しているのか、そう自問すると、はっとある事実に行き当たる。顎を最大限にグイッと持ち上げ、真上を見ゆる。そこには白色が広がっていた。彼女の弾幕の白色が。




前よりも文章がうまくなったので、過去のエピソード見てると恥ずかしくて死にたくなってくる。
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