東方異譚録〜万の神人紡ぐ糸〜   作:金柑太郎

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まずこの前書きを謝罪から入らなければならないことを私はとても残念に思っております。

「投稿遅れて申し訳ございませんでしたぁーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!」

GW中いろいろと予定でギチギチでしてなかなか執筆が進みませんでした。と謝罪はここまでにして、今回三話はかなり鬱々しい物語となっています。開始三話目でっていう感じですね‥‥。僕にもっと文章力があってタイピングが早かったら、くぅぅ。と自分の無力をこの頃特に感じています。水を差すようで悪いですが、学校の定期テストが刻々と近づいてきています。次も遅れてしまうかも、そのときには閲覧者の方に最大限の「ごめんなさい」をプレゼントします。ではまたあとがきで!


三話 犬と狐の追いかけっこ

「何あの子。ちょっと気持ち悪いんだけど。」

 

 

 

「きっと何かやってるのよ。筋肉増強剤とかさ。だって小1よ、小1の子供が普通に育ってあんな動けるわけないじゃないの。」

 

「親に無理やりやらされてるのね。だってあそこの父親確かアスリートだったでしょ。」

 

 

 

「そんな事してまでかたせたいのかしらねぇー。」

 

 

 

 うるさい。うるさい。うるさいんだよ。

 

隠す気もない悪口と親への非難。表向きは俺を批判しているようだが、裏には自分の子供が負けて悔しいんだろう。嫉妬だ。こういう感情の読み取りは素直な子供のほうが得意であるから大人たちの気持ちはすぐに理解できた。

 

 母にもこの悪口は聞こえていたであろうが素直に俺がかけっこで一位を獲った事を喜んでくれている。

 

 

 

「だんとつだったね犬ちゃん!」

 

 

 

俺はどこか心から笑えていなかったんだろう。そのことに気づいた母は、

 

 

 

「どうしたの?」

 

 

 

と尋ねてくる。俺は視線だけでさっきのババアたちを訴えると、母はふふっと笑って口を開く。

 

 

 

「どんなに悪口言われたって気にしちゃだめよ。自分がしてないってわかってるでしょ、だったら信じないと

 

自分の力を。」

 

 

 

「まだ犬ちゃんには早かったかな?」

 

 

 

と心配してくれたが俺にはよくわかった。言葉の意味はよくわからなかったが、心をグッと掴まれた。自分を信じる。今思いだすと、母はとても大事な事を言ってたんだと胸が熱くなる。

 

 

 

 しかし、これが俺の最初で最後に獲った一位だった。

 

見てしまったのだ。俺が寝た後、布団にこぼれ落ちた涙を。やっぱり母も人間だった。そんな残念な気持ちと悲しい気持ちが混ざり合って俺は溢れてくる涙を悟られないようにするのでいっぱいいっぱいだった。人間は弱い。いつまでたっても変わらない永久の真理だ。

 

 自分が目立つと母が傷つく、だったら大人しくしていようと幼かった当時の俺は強く心に誓った。しかしこのとき自分が一番読み取らなければならなかったことに気づけていないことに、俺は全く気づいていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 警官に向かって叫んだ時俺は幼い頃を思い出していた。母は死んでいない、だったらいつまでも殻にこじこもっている必要は無い。傷つくとしても自分だけ、我慢すればいいだけだ。生憎俺は我慢することに慣れている。今までそうしてきたんだ、だったら今更ビビってられない。

 

 

 

 後ろへ体をひるがえし、塀に向かって走る。さぞかし無駄なことをと呆れているだろう。だからこそ心の中で言ってやる。

 

「指くわえて見てろ。」と。

 

 さっき全力で走って運動神経は鈍っていないことは把握済み。だから後は、

 

 

 

「自分の力を信じるだけ。」

 

 

 

 右足を踏み込み力を込める。全体重を右足に預けると、左足を勢い良く振り上げ飛び上がる。右足が地を勢い良く離れ体が宙に浮くのを感じた。塀の頂上が近づいてくる。絶対届く、俺は信じて疑わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やっと追い詰めた。彼はとても足が速いようだが少し頭が足りないようだ。さっきの曲がり角でこの先行き止まりの看板が出てきたときは焦ったが彼は気づかなかった、相当慌てていたのだろう。

 

 

 

「は〜い。まずはお兄さんから質問があります。できれば答えてほしいなぁ。」

 

 

 

 まず相手を落ち着けなければならない。どの警察官も相手の気を抜く技術というものを持っている、抜き方は人それぞれだが。そんな中でも俺の武器は笑顔だ、ニコニコ笑いながら話しかけることによって相手の警戒心を解く。中には犯人を威圧して心を折る奴もいるが、失敗すると相手がヤケクソになり被害が拡大する可能性があるかもしれない。だから俺的にはこの方法が最善だと思っている。

 

 

 

「なんで君はそんなに一生懸命に逃げるんだい?」

 

 

 

 少し嫌味を込めて相手を苛立たせる意味を持つ質問だ。青年のどこか寂しい黒瞳が揺れる。

 

 

 

「あまり警察に良いイメージがないんでな。」

 

 

 

 少年の態度を見るか限り嘘では無いだろうが、もっと大事なことを隠しているはず。もう少し深堀してみるか。

 

 

 

「それにしては随分と一生懸命に洗っていたけどね?」

 

 

 

 人間は意外と皮肉に弱い。皮肉を言われると言われると案外簡単にボロを出すものだ。

 

 

 

「顔に鼻くそがついてたんだよ。」

 

 

 

 あからさますぎる。鼻くそだと、どこぞのチャイナヒロインかよ!鼻くそほじる暇があるなら卵かけご飯でも作ってろ!!おっと危ない、気を冷静に保て。いつも職場でツッコミ役をしてるせいで思わず突っ込もうとしてしまった。とりあえず話題を変えるしかない。

 

 

 

「じゃあ話を変えようか。さっきの警察に良いイメージがないってのはどういうことかい?」

 

 

 

数秒の間沈黙が流れる。なんだかピリピリした威圧を感じたが追い詰められた側が出せるものじゃない。気のせいだろう。

 

 

 

「そのまんまの意味だよ。」

 

 

 

 こいつはなかなかしぶとい。これでも俺は周りに「懐柔刑事デカ」と呼ばれている。普通の一般人だったら今頃あっという間に懐柔されているだろう。

 

 

 

「そんなふうに言うのには、理由があるはずだ。君のその情報を役に立てたいんだ。」

 

 

 

 情に訴えかけるのはあまり得意ではないが、やるしかない。

 

 

 

「わかってるよ。周りに流されているだけなんだろ?直接警察に被害を受けているわけでもないのに面白おかしくするための他人の考えたデマに乗せられているだけなんだろ?全部知ってるんだよ。」

 

 

 

 とりあえずはこうするしかない。手がかりが少ない今は抽象的な同情しかできないが何もしないよりはましだろう。しかし次の瞬間に、彼の真っ黒の双眸に明確な殺意が宿ったのを肌で感じた。あっ俺地雷踏んだ‥。

 

 

 

「警察風情が俺をわかったようなことを口にするなァァァァァァァ!!!!!!!!」

 

 

 

 思わず肩をビクッと震わせる。彼の光を宿さない目に睨まれると彼の抱える闇の片鱗を見たようで、怖い物を見たわけでもないのに背中を冷や汗が濡らす。

 

 

 

「逆に質問してやる!!お前が俺の何を知って、何を思って、何を感じたのか知っているのか!!あぁ信用できねぇよ。今朝のニュース見たか、警察官が横領だってよ。やった警官は大層なご身分だな。あんな奴が警察やるんなら俺がやったほうがまだマシだぜ!はっわかったかこれがすべてだよ。わかったら、さっさと俺の前から消え失せろ。」

 

 

 

 しかし、今の言葉を聞いたら怯えなんか消え失せた。こいつは何もわかってない。ただメディアのでまかせに踊らされて、一人でタップダンスを踊っているだけだ。

 

 あの人にあったこともないくせに何をほざいてるんだ、苛つく。苛つく。苛つきすぎて今自分の頭にヤカンを乗せたら今すぐ沸騰しそうだ。怒りのボルテージが限界まで振り切るのを自分でも感じる。

 

 

 

「何も‥‥何もわかってないのはお前だろ!!!!」

 

 

 

無意識に腰のホルダーに手が伸びる。拳銃に手を伸ばさなかったのは無意識に自制心が働いたのだろう。まぁスタンガンに手を伸ばしてる時点でOUTかもしれないが。

 

 

 

「まじかよ。」

 

 

 

 驚きの声が青年から漏れる。

 

 

 

「一般人に使ったら色々とやばいんじゃないの?」

 

 

 

 聞かれるが無視する。

 

 

 

「最後のチャンスだ、大人しく署まで来てもらおうか。」

 

 

 

 この状況になってはもう脅ししかないだろう。

 

 

 

「わかった。ついていく‥‥」

 

 

 

「おっありが‥‥」

 

 

 

「わけねぇだろうが!!!!!!!!」

 

 

 

 まぁそれもそうだろう。さっきの目を見た限りここで大人しく捕まるようなやつではない。だがそのあがきは無駄なもの。道の行く手にはスタンガンを持った警官、触れた瞬間しめーだ。そして後ろは高い塀。正直詰みだろう。

 

 だから青年が後ろの塀に向かって走り出したときは正直気が触れたかと疑ってしまった。

 

 

 

「俺の脚力しかとみやがれーー!!!!!!!!」

 

 

 

 青年は思いっきり足を踏み込み飛び上がる。衝撃の風が俺の短髪を揺らす。

 

 

 

「なっ!!」

 

 

 

 何が起こったんだ。さっきまで下で向き合っていたはずの青年はすでに民家の屋根の上、飛んだのか?この塀を?すると一瞬ズキっと頭が痛む。ザーっと視界が歪み頭をおさえる。その歪んだ視界の端に写り込んだのは澄んだ瞳で俺を見つめる一匹の山犬であった。

 

 

 

「山犬だ。」

 

 

 

 しかしそれも一瞬のことで山犬は青年に戻り、自分の空虚なつぶやきが残されているだけだ。シーンと静まり帰りなんともいえない寂しさが込み上げる。その寂しさを表すかのように茶色に萎れた落ち葉が風に飛ばされカサカサと音を立てている。

 

 頭痛も引き、視界の乱れも止まった。しかし消えないこの緊張感はなんだ?喋りだすことができない、いやできない空気になっている。

 

 青年はそのまま足を沈ませもう次の屋根に飛び乗っている。そんなすばしっこい青年を見ている俺はただ口を開けることしかできなかった。

 

 




ははは。序章が長いって?大丈夫だ閲覧者諸君!後2話ぐらいで終わるからな。あくまで予定ってことを頭に入れてくれると嬉しいなぁぁー。ということでこの後早速4話の執筆をしたいと思います。

 ではまた今度ぉぉー!!

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