東方異譚録〜万の神人紡ぐ糸〜   作:金柑太郎

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本っっっっっっっっっっっ当に申し訳ございませんでしたーーーー‼‼‼‼‼‼

 最大限の謝罪です。予定が建て込みすぎていたので全くと言っていいほど執筆ができませんでした。遅れすぎましたね。まぁこれからもこんなことが多々あるかも知れませんが、ご了承ください。では、本編にLet`s go!


四話 三度目の飛翔

 タッ、タッとリズムよく板を踏む音がする。その残された乾いた音の先を見れば一人の青年が屋根の上を前へ前へと身軽に飛び移って、何かから逃げまとっている。

 対して追いかける側の男も負けておらず道路の上を必死に駆け青年との距離を保っている。

 それがどのくらい続いただろうか。30分?いや1時間かもしれない。しかしその鬼ごっこも終わりを告げようとしていた。住宅街の隅を堂々と牛耳る国道によって。

 

 

 

ーフワっー

 体が宙に浮くのを感じる。そして足が塀の上にかかる。自分でも驚くほど簡単に塀にのぼることができた。右足をそのまま沈め、さらに隣家の屋根へと踏み切る。

ータッー

 屋根の上に着地すると、乾いた木を叩くような快音が響き渡る。元の場所を見ると警察官がポカンと口を開けていた。

 

「山犬だ‥‥。」

 

 呆然としたつぶやきが耳に届く。人を山犬呼ばわりするとはなんてやつだ。俺はただ運動神経がいいだけの人間、でも実際は自分でも驚いている。いや驚愕と言っても良いだろう。しかしいつまでも驚いてはいられない。すぐに飛び移り屋根伝いに逃げる。年若い警察官はしばらく呆然としていたが、はっと我に返ったように追いかけてきた。

 

「しつけぇなぁ。」

 

 さっさと諦めてくれんかねぇ、と思っていると住宅街の隅まで来てしまった。隣は国道でブーンと多くの車が走っている。排ガスのけむ臭い匂いで、ケホッと思わず咳をする。

 最端の家の屋根に突っ立って思案していると、追いつかれてしまったようだ。肩で息をしてポツンとたたずむ警官を見ていると何故か違和感を覚え、いつも見ているお気に入りの刑事ドラマ、「相()」を思い出す。いつも主人公の右京さんは相棒と常に単独行動だけど、犯人確保のときは他の警察官が来ていた‥‥。それに比べこの警官はずっと一人。ここで一つの疑問がはじき出された。

『こいつはなんで増援を呼ばないんだ?』

 増援を呼べば、もっと俺を早く捕まえる事ができるだろう。そこで俺は端的に直接聞いてみることにした。

 

「おい、お前なんで増援を呼ばないんだ?」

 

 警官は拍子抜けしたようにポカンと口を開けていたが、やがてフッと笑うと答えた。

 

「手柄がほしいんだよ。それだけだ。あきらかにヤバい奴を一人で捕まえたってなればおそらく本庁に行きだ。少なくとも昇進は間違いないだろう。近づくんだ‥‥あの人に。」

 

 何やらよくわからないが一人で捕まえたいって事がわかった。つまり相当なことがない限り仲間を呼ぶってことは無いだろう。

 とりあえずどう逃げるか考えるのが大切だ。戻るにもそっちには警官がいるからなぁ〜。車に飛び移る?いや映画の見過ぎだ。どうせ風圧で吹き飛ばされてしまうだろう。

 いや、ちょっと待てよ。トラックの荷台なら行けるんじゃないか?横目に国道を走っている車を見ると、朝だからか多くのトラックがボロロロと低いディーゼルエンジン音を響かせながら50キロぐらいのスピードで通り過ぎている。

 いけるか?でも痛いだろうなぁ。再び国道に眼をやると道の端に立ててある土木工事の看板が目に入った。

 これだ!荷台に土を積んでいるトラックに飛び込めばいいんだ。幸いこの近くではニュータウン開発が行われているらしいからいずれ通るだろう。と思っていると遠くの方にそれらしきトラックが走ってくるのが見える。

 主人公補正か!と内心思いながらも体の向きを変え警官に言う。

 

「あっ!?あんなところに全裸の露出狂が‼!」

 

「なんだって⁉」

 

 まるで絵に描いたような反応だったが、今は飛ぶことだけ考えよう。タイミングが命だ。少しでもタイミングがずれれば即ミンチだろう。ドクッドクッと自分の心臓の鼓動が聞こえる。死ぬかもしれないという不安が胸を締め付け、手がプルプルと震えた。体を前傾姿勢にして足に力を込める。

 こんなことになるなら何か食っとけばよかったと後悔しながらも走り出す。恐怖で目をつぶってしまう。しかしこの時の青年の表情は自然と笑みを含んでいた。

 

「頼むからもうついてこないでくれぇー!」

 

 そんな悲痛な叫びを残して一人の青年は道路にきえた。

 

 

 

 

 

 はぁはぁ。体がドクッドクッと震え、体中に血液を押し出す心臓は悲鳴を上げている。もう駄目かと諦めかけたその瞬間、青年の足が不意に止まる。

 あぁどうやら住宅街の端にまで来てしまったようだ。

 ここぞとばかりに少年の退路を塞ぐ。

 

「はぁはぁ、さあもう逃げ道はないぞ大人しくついてこい。」

 

とは言ってみるも青年の顔に焦りの感情はなくむしろ訝しげにこちらを見ている。何を見ているのかわからないがきっと頭の中でどうやって逃げるのか考えているのだろう。しかしその後の青年の一言に俺は唖然としてしまった。

 

「お前は何で増援を呼ばないんだ?」

 

「は?」

 

 思わず間抜けな声が出てしまう。なぜ応援を呼ばないのか‥‥。言ってしまえばその答えは最終的に1つの答えに収束する。

 

「手柄がほしいだけだよ。」

 

 様々な理由があるが結局これだ。とにかく今は昇格だ。来年から金もかさむからな。さぁさっさと捕まえて公務に戻ろうと塀に手をかけると、青年は叫んだ。

 

「あっ!?あんなところに全裸の露出狂が!!」

 

「なんだって!?」

 

 思わず振り向いてしまった。ありがちな展開と思う人もいるとは思うが、人間いきなりある方向を指さして叫ばれたら思わずその方向を見てしまうものだ。当然見た場所には誰もいなく誰かがポイ捨てしたであろう短くなったタバコが落ちているだけだ。

 だっ騙された!?慌てて後ろの青年のいた所を見ると、雲隠れしたように何もない空間が残っているだけで、代わりに道路の方向を見ると子供のように満点の笑顔で飛翔する山犬の姿があった。

 

 

 

 

 ボフッと音をたてて足が埋まり、続いて胸までズズズッと音を立てて土に埋まる。まさかこの感触はと、恐怖でまだつむっていた目を開くと胸まで浸かっている土と黄色の主張の激しい金属のボディが目に飛び込んでくる。

 

「奇跡だ。」

 

 ホッと安心して一息つくと自分のいた場所をふちから顔を出し確認する。遠ざかっていく警官は何やら地団駄を踏んでいるようだ。あの警官でも流石に車までは追って来ないだろう。警官に追われていたことによる緊張がゆるりとほどけ、安心と同時にじわじわと脱力感が湧いてくる。

 土の上に四肢を投げ出し、空を見上げると段々と空がくすんで曇って来ているのがわかった。溜まったストレスと共に重く淀んだ溜息を吐き出す。いつまでもここにいてはいけないと思いつつも中々動く気にはなれない。ついそのまま、うとうとしていると不意に金色の光が目を刺した。

 眩しいなぁ、と思いつつも体を起こしあたりを見回すと田んぼが一面に広がっていることがわかった。手につけている腕時計に目をやるとさっき飛び乗った時から約10分がたっていた。

 

「寝過ごした‥‥‥。」

 

車の上に乗っているから10分あればそこそこな距離を進んでいるだろう。

 

「ん?」

 

 何やら遠くでサイレンのような音が聞こえてきたような気がする。まさかあいつは応援を呼ばないはずだが、警察か?

 

「・・・・。やばくね。・・・・ちょ待てよ、え⁉、はっ⁉逃げれないやん。」

 

 走行中の車から逃げるのは困難を極めるだろう。でも車が止まってしまえばそれこそ本当の終わりだ。

 

「3回目‥‥‥か。」

 

 正直言ってやりたくない。死ぬかも知れない。でも今の俺は何も怖くない‥‥はず。枯れかかっていたアドレナリンが再びドバドバと溢れ返ってくるのが自分でもわかる。パトカーはもうすぐ後ろで、トラックもスピードを落とし始めている。

 

「社、行っきまーす!!」

 

 どこかで聞いたようなセリフだが、フッとあたりが暗くなると足を踏み切る。その姿はまるで闇に紛れ夜の街を跳び回る忍者のようだった。

 

 

 

 

 

「クソがッー!!」

近くを歩く子連れの親子が驚いたようにこちらを見たがそそくさと去って行く。警察が一般人に警戒されてしまうことは良くないことだが、この際どうでもいい。まさか車に飛び乗って逃げられるなんて。

 地団駄を踏んでいると、近くでキーッと車が停車する音が聞こえる。音のした方を見ると白黒のパトカーが一台止まっていた。

 

「こんなとこでどうしたんすか?先輩。ていうかそもそもここ今日先輩の担当じゃないですよね?」

 

「おっ。」

 

「ていうか汗ダラダラで‥‥何かあったんですか?」

 

 こいつは俺の1年後に入ってきた後輩の小塚だ。こいつは大の車好きで休みの日にサーキットに行って走行会に参加するほど好きらしい。こいつは普段どこか抜けているやつだが今はとても有り難い。

 

「おい、今すぐパトカーを出してくれ!」

 

 急いでパトカーの助手席へ乗り込む。

 

「え!?ていうか先輩ここの担当じゃない‥‥。」

 

 普段職場で俺は賑やかし係、いわゆるボケキャラなのにこんなにも真剣になっているので小塚としても戸惑っているんだろう。

 

「いいから早くしろ!」

 

 半ば無理やり小塚を車に乗せるとキィィィと大きなタイヤのスリップ音をたてパトカーが発進する。急発進により身体が大きく後ろにのけぞるが気にしている暇はない。

 

「東京△△区◯◯◯ー◯◯◯、のナンバーのトラックを追ってくれ!!」

 

 俺は訓練に鍛えられたおかげで記憶力は人一倍ある。車のナンバーを覚えるのなんて訳ない。スピードメータを見るとゆうに120kmを超えている。しかしこのパトカーは軽自動車タイプのやつなので120kmが限界だろう。すでにギシギシと車が嫌な音を立てている。

 幸いにも平日の正午ということもあり車通りは少なく120kmで走ってもあいつの運転なら事故ることは無いだろう。すると突如車が左へと傾き同時に身体も左へと振れる。思わず窓ガラスに手をつき「おっ。」と叫ぶ。

 今片輪が浮いてた気がする。

 

「危なぁ。」

 

と思ったのも束の間さっきの車線変更の反動で後ろのリアタイヤがスリップしバランスが崩れる。タイヤからキャャャァと悲鳴が聞こえ、白煙がのぼるが、小塚は気にもとめずに澄まし顔で逆ハンをきると車のバランスを立て直す。

 最近、地球温暖化が進んでいるとかなんとかでセダンのパトカーから軽自動車のパトカーへと移行が進んでいるる。環境にはいいかもしれないが、いざ犯人を追うってなると軽自動車じゃしんどいかもしれない。

 

「こういうカーチェイスには向いてないすね。」

 

 小塚は独り言のように呟くと、さらにアクセルペダルを深く踏み込みエンジンの唸り声が最高潮に達する。

 

「ちょ、流石に出しすぎだろ!」

 

「でも早くしろって言ったのは先輩っすよ。」

 

 まぁ確かに小塚に任せとけば事故ることは無いだろう。

 

「いや、なんでも無いこのまま頼む。」

 

「OKっす!」

 

 チラッと小塚の方を見ると妙に顔がいきいきとしている。多分つまらないパトロールにも飽き飽きしていたんだろう。はぁ、何で警察になったんだろうか。まぁ彼なりの考えがあるんだろう。

 それにしてもこのスピードで走られると落ち着かん。全身が変に力んでしまう。タバコで一服して気を落ち着けるか。胸ポケットからタバコとライターを取り出し、カチッカチッと石どうしを打ち鳴らしたような快音が車内に響き渡る。

 このライターはさっき買ったばかりだから傷もなしでテカテカと光輝いている。さらにテカテカと輝くボディーの側面に描かれているのは浮世絵風の荒々しい海。正直派手すぎるので買い換えようと思っていたところだ。前のが壊れたのでその場繋ぎで500円で買ったものだったので買い換えても大丈夫だろう。

 

「ちょ、先輩!匂いが制服に付いちゃうじゃないすか!車の中でタバコは辞めてくださいよ。ただでさえ窓開けられないのに‥‥。」

 

「今だけだからな?頼むって、な?頼むって!」

 

「はぁ、早死しても知りませんからね。」

 

 小塚はしかたなさそうに溜息ををつくと質問する。

 

「先輩が言ってた車ってあれすか?」

 

 まだ遠いが、かすかに黄色っぽい工事車両が走っているのが見える。

 

「そうだあの車だ。」

 

 あたりはいつの間にか田園地帯になっておりあたり一面が稲穂で覆われている。その風景は、かの有名なナウ◯カのオ◯ムの触手のようだ。

 

「早すぎやろ‥‥。」

 

 だいぶ前に出発したはずの車にもう追いついている。やはり小塚に頼んで正解だった。この先のトンネルを抜けた先らへんで追いつくことができるだろう。

 

「このまま全力で追いついてくれ!」

 

 一人で捕まえることはできなかったが小塚となら良いだろう。仲良く昇進だ。そんなことを考えながらひたすら前に進んでいると、トンネルが近づいてくるのと同時に青年の後ろ姿も近づいてくる。

 そしてフッ視界が暗転し、目が慣れるまで数秒かかった。コーというトンネル内を走る車の音のみが聞こえ、蛍光色の車が迫ってくる。そしてフッと視界が明転した時、そこにさっきまでいたはずの青年の姿は無かった。




 最後まで読んでいただきありがとうございます。次でやっと東方キャラとの接点が出てきます(ていうか幻想入りします。)。拙い文章ですが今後とも読んでくださると嬉しいです。では、さいなら~
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