東方異譚録〜万の神人紡ぐ糸〜   作:金柑太郎

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やっと書けたぜ。


七話 はじめの一歩

そっちにお店は無いわよ。の問答から10分が経過している。俺たちは紫とか言う女の威圧に押し負け結局屋敷の中に引っ込み、紫がのんびりとカレーを食べているのを二人とも正座で眺めているのだが…、

 

 

 

「いや、どういう状況だよ!」

 

 

 

 俺が大きな声でツッコミをすると社は白々しい目でこちらを見てきた。

 

 

 

「いやだって何か気まずかったじゃん!」

 

 

 

「……………」

 

 

 

「なんか言えよ!」

 

 

 

 こんな不毛なやり取りを続けていると紫の口が食べるためでは無く、喋るために開かれる。

 

 

 

「ふふっ。仲がいいのね。それよりもこのままだと藍にご飯作ってもらえなくなっちゃうかもしれないから、さっさと連れてきた理由を言っちゃうわね。」

 

 

 

「さっさとこっちは帰りたいんだ。早くしてくれよ。」

 

 

 

「帰ることは・・・いや話が先に進まないから先に説明しておこうかしら。まずここはあなた達が住んでいる日本ではない。幻想郷って場所なの。まぁ詳しくはこれから教えるとして、あなた達をここに連れてきた理由はあなた達に強くなってもらうためよ。だからあなた達が強くなるまで元の世界に戻ることはできないわ。」

 

 

 

「はぁ?帰ることができない?そんなことあってたまるか。」

 

 

 

「どう言おうと無理なもんは無理なの。諦めなさい。」

 

 

 

「ていうか何で俺たちがお前のために強くならなきゃいけないんだ?俺たちが強くなったとしてもお前には関係の無いことだろう。」

 

 

 

 俺が熱くなっているのに対して社は冷静に紫の矛盾点を指摘している。たしかに部外者である俺達に強くなったら返してあげるというには紫にはなんにもメリットがない話だ。

 

 

 

「俺たちがここの世界にいる間は元いた世界では時間は進むのか?」

 

 

 

 なんかこいつ嫌に順応が早いな。俺はこんな状況に頭がアップアップなのに社はこんな非現実な現象に少しもどうじてない……。こいつ元厨二か?

 

 

 

「当たり前じゃない。同時に二つの世界が存在してるんだから。」。

 

 

 

「それは困る!」

 

 

 

 俺はハッキリと言い放つとギロリと紫を睨んだ。

 

 

 

「俺は妹まだ就活中なんだ。俺が生活費を払ってやらないとだめなんだよ。俺たちは親がいないからな。」

 

 

 

「しょうがないじゃない。それに今この場の主導権を握っているのは私。あなた達が私に意見する事はできないの。」

 

 

 

 なんて自分勝手なんだ。北海道の積雪のようにズシズシといら立ちが山のように積もっていく。プッツン。自分の何かがはち切れた。

 

 

 

「いい加減にしろ。」

 

「勝手に俺をこんなとこに連れてきて、完璧に法律違反だ。」

 

 

 

「法律・・何のことかしら?」

 

 

 

「とぼけるな!幻想郷?そんなこと信じられるか!」

 

 

 

ふざけるな。これからだったんだ。あの人のように正義感の強い人になって、妹を守れるくらい強くなって偉くなってのんびりと生きていたらそれで良かったんだ。なのにあいつは俺からそれを引裂いて個人の目的で利用しようとしてる。許せない。

 

 

 

「元の世界に返しやがれ・・。」

 

 

 

「ふーん、あくまで反抗する気・・・・か。まぁ基礎を見ておく必要もあるか・・・・。」

 

「幻想郷では力がすべて。返してほしくば私を倒せば良いんじゃないかしら。」

 

 

 

「いいんだな?」

 

 

 

そう啖呵を切り返す。するとそれまで黙って紫の隣に控えていた藍がこちらに向かって気まずげに言ってきた。

 

 

 

「あの、そのやめておいたほうが…」

 

 

 

 そこまで言うと紫が藍を手で制す。

 

 

 

「藍あなたは黙ってなさい。」

 

 

 

一呼吸置くと紫は続ける。

 

 

 

「あら、えらく自信ありげね。」

 

 

 

「社。今は一旦休戦だ。お前も元の場所に戻りたいだろ・・・・。だから協力しろ。」

 

 

 

 青年は何だかめんどくさそうな表情をしていたが、はぁ〜、と大きなため息をついて言った。

 

 

 

「ったく、さっきまで俺を追いかけてめったんめったんにしてた奴が言う言葉か・・・・。でも誰かに駒にされるってのは…。」

 

 

 

青年はスクッと立ち上がるとファイティングポーズをとって続けた。

 

 

 

「俺の性分じゃねぇからな。」

 

 

 

 舞台は整った。よくわからない能力が何だか知らないが、そんなもんあってたまるか。

 

 

 

「厨二かよ。」

 

 

 

 その発言が開戦のの合図となり両者は素早く飛び下がる。正直女を複数で攻撃するのは気が引けるが、妹が関わってくるとなると放って置くことはできない。

 

 

 

「とりあえずは小手調べね。」

 

 

 

 そう言うと紫は紫色のドレスをふわふわとたなびかせまるで天女のように空中に浮き上がる。その表情は笑みを浮かべており、こちらを見下す強者の目をしていた。

 

 

 

「は?」

 

 

 

 ただそれだけが口から溢れる。どういう原理なんだ?しかし目を凝らして見てもワイヤーや機械の存在は確認できなかった。

 

 

 

「あいつなめてるな。」

 

 

 

 社がつぶやく。確かに紫は浮き上がるだけで攻撃らしい攻撃はしてこない。

 

 

 

「たどり着けるもんならたどり着いてみろってことかよ。」

 

 

 

 さてどうする。普通にジャンプしても届く距離ではなさそうだ。あれこれ考えてみるも妙案は浮かんできそうにもない。するとさっきまで隣りにいた社が勢いよく駆け出した。

 

 

 

「俺をなめてもらっちゃ困るんだよ!」

 

 

 

 右足で地を踏むと一回で屋敷の屋根に飛び乗る。そして着地した左足にそのまま力を込めると、紫の方へと手をのばす。紫は慌てた様子で上に掴みを避けた。社の腕は紫のドレスをかすっただけであったが、紫の表情は余裕をぶっこいていたものから挑発的な表情へと変わる。

 

 相変わらず超人的な身体能力だ。まるでゲームのバグを見ているような気分になる。

 

 

 

「ふふっ。馬鹿げてるわ。でもあなた相手ならちょっとぐらい力使っても大丈夫そうね。」

 

 

 

 片頬をにやりと持ち上げ言うと、紫が手を広げ、その腕を振り抜く。すると何もなかったはずの虚空から紫色に輝く閃光玉らしきものが放たれた。

 

 

 

「なっ!?」

 

 

 

 剣道をやっていた頃の瞬発力が何とか体を横へと押し出した。頬に擦り傷ができる。

 

 

 

「俺かい!?」

 

 

 

 今の流れは着地した社に向かって仕掛ける場面だろ!俺まだ何もして無いんですけど。こいつずる賢いタイプだな。俺は曲がったことが好きじゃないのであまり好きにはなれないタイプかもしれない。

 

 

 

「ていうか色々ツッコミ過ぎて、肝心の閃光に何も触れられてないんだけど。」

 

 

 

 銃弾よりは遅くなんとか視認できる速さであったが……、今となってはいちいち不可思議な現象に構わない方がいいかもしれない。今の最優先事項は東京に帰ることだ。

 

 

 

「今のを避けるのね。あなた達本当に一般人かしら。」

 

 

 

 そう言うとさらに腕を振り上げ2、3発の閃光玉を飛ばしてくる。その速さはさっきより増しており的確に俺の体を捉えて、まっすぐこちらに飛んでくる。考える暇もなく俺はさっきと同じように横に飛んだ。閃光玉が足の間と腕の上、脇下を通り過ぎていき風が吹き抜けていく。本能は当たったらヤバいと告げているのだが、怪しく煌煌と紫色に輝く閃光は、妙に俺の視線を誘う。

 

 

 

「きれい。」

 

 

 

というのが率直な感想であった。

 

 

 

 しかし、今のこのやり取りでお互いの役割は明確化しただろう。俺が誘い、社が潰す。これしか無い。悔しいが俺にはひと踏みで屋根に飛び乗るほどの身体能力はない。空に行かれてしまっては手の出しようがないのだ。自分のやれることをする、それが最善策だ。

 

 

 

「おやおや紫さま?当たってませんけど大丈夫ですか?」

 

 

 

 とにかく煽って気を引くのは紫の性格によって効くか効かない変わってくるが、あんなに上から目線なんだからプライドも高いと思いたい。これでも人を見る目は持っているつもりだ。

 

 

 

「ふんっ。だまらっしゃい。でも、まだまだ足りなそうね。」

 

 

 

 再び紫は閃光を飛ばしてくるがさっきより速さと数が増しているのがわかる。ははん、さてはこいつ普段は自分の冷静キャラですよ感出してるけど実は負けず嫌いなタイプだな。思考にかかる時間は、ほんの0,0数秒なのにも関わらずもうすぐそこまでもう閃光は迫っている。

 

「ふんっ」

 

 

 

 それを無理やり伏せることで回避する。脳天すれすれを閃光が通り過ぎていった。やはり剣道をやってきたころの観察眼がいきている。

 

 剣道と聞いてアニメとまでは行かないが、竹刀での激しい打ち合いをイメージする人は少なく無いだろう。しかし違うのだ。本来剣道はほんの一瞬で勝負が決まる。お互い相手の動きを観察し動きがあったらすぐに反応する。手の微妙な動きも見逃さないそういうスポーツだ。今の紫の動きは予備動作が大きく、閃光が飛んでくる前に対策を立てられる。

 

 剣道やっておいて良かったと胸をなでおろすも、俺の仕事は終わって無いと言い聞かせ、立ち上がり紫をにらみ直す。

 

 

 

「大層な口聞いてた割に一発も当たりませんけど、もしかしてこれが限界ですかぁ?」

 

 

 

 わかりやすい煽りだが言われた本人からしてみればイライラしてくるだろう。実際自分も言われたらイライラしてくると思う。

 

 

 

「そんな大口叩けるのも今のうちよ。せいぜい頑張って頂戴。」

 

 

 

 そろそろ止まって避けられるのは限界だろう。疲れるけど走るしか無いみたいだ。体を横に傾け走り出すが、目線は紫から離さない。再び紫が閃光を放とうとさっきよりも予備動作小さく腕を振ろうとした時、紫の背後に迫る影があった。そう、もちろん社である。期を見て背後からの不意打ちである。どうやら松の木を踏み台にして飛んだようで、その拳は紫の胴体をしっかり捉えている。

 

 その拳が紫に触れようかという時紫が告げた。

 

 

 

「甘いわ。」

 

 

 

 その体を空中でひらりと翻すと、当たるはずだった社の拳は空を切りこちらへと体ごと転がるように飛んでくる。

 

 

 

「お前背中に目でも付いてるのか?」

 

 

 

「さぁ?どうでしょうね?」

 

 

 

 こいつの場合本当についてそうでちょっと怖いが、それよりも今は対策を立てないとだめだろう。前回り受身を取りこちらへと転がってくる社に小さく声をかける。

 

 

 

「もう少しこの戦法でいこう。」

 

 

 

 彼はうなずくと、再び立ち上がり逆方向に走り出す。今のが偶然というのもありえる。その間にも何個か閃光は飛んできておりそれは足元へとぶつかり、純白の砂利を巻き上げる。。そんな状況ながらも俺は心に誓った。

 

 絶対に帰るんだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 心に誓ってから何回が経過しただろう。何回やっても紫はまるで蝶のように攻撃を回避してしまう。俺にも攻撃手段があればと思うがそれは無理な話だろう。いや無いことはないのだ。部屋には警察のベルトが置いてある。拳銃も中に入っているが、倒すのと殺すのは違う。殺されていい命なんてこの世には一つもない。

 

 

 

「じり貧だな。」

 

 

 

 攻撃は当たらないのに、こっちの体力が減って行く。ついに乳酸がたっぷりと溜まった足はその場で動きを止めてしまう。何か隙が、いや大きな隙が必要だ。それを無理やり作るしか無い。そのためにはこっちも痛手を食らうかもしれないが…、

 

 帰るためだったらなんだってするそう決めたのだ。

 

 

 

「次の閃光が終わったら俺が絶対、隙を作る。だから絶対決めてくれ。」

 

 

 

「その確証はあるのか?」

 

 

 

「あぁ。絶対だ。」

 

 

 

「わかった。」

 

 

 

 それだけ言うと社は前に向き直り駆け出す。閃光が肩の横を通り過ぎるのを流し見ると俺も社と同じように駆け出す。ただし、社と違う箇所といえば俺はまっすぐ紫に向かって走っていることだ。

 

 

 

自分がどうなろうと関係ない。あったか我が家に帰りたいだけなのだ。妹のためになりたいのだ。だからこそ俺はこの言葉を叫ぶ。

 

 

 

「俺はシスコンだぁぁぁぁ!!!!!!!!」

 

 

 

 絶叫と同時に紫に飛びかかる。幸い紫は閃光を打ったあと一瞬だけ高度が下がる。このことにきづいた自分を褒めてあげたいぐらいだ。

 

 紫の手に手先が触れそのまま掴む。

 

 

 

「隙は作ったぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」

 

 

 

 瞬間、体が吹っ飛ぶ。ゼロ距離での閃光。物凄い衝撃が体を貫き地面をゴロゴロ転がる。かすれる視界で紫を捉える。社の拳はもう紫の目の前。避けれるはずがない。

 

 

 

「あなた達やるわね。」

 

 

 

 そう紫呟いたのかもしれない。でも何でだろう。社の拳は空間へと埋まっていく。そして拳は社の腹に突然出現した。ゲホッ。すっかり暗くなった視界の中で社の咳が聞こえる。そのまま耳に届く炸裂音と共に誰かが転がってきた。あぁ、これじゃ俺が恥ずかしい告白をしただけではないか。

 

 

 

「おやすみなさい。」

 

 

 

最後、空っぽの耳に優しくその言葉が響いた。




特に書くことがねぇ。
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