誰だって最初は初心者ニートだった。
いつからだろう・・・プロのニートになったのは。

これはニートがより高みのニートを目指す物語。

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日曜のひとときいかがお過ごしでしょうか?

ジャンル分けがいまいちわかりません。
以前、2chで知り合ったニートが、

「遮光カーテンを開けられなくなってからが本番」

と聞いたことが元ネタです。
倒錯する精神状態、何気ない日常に潜むニートへのいざない。
これは他人事ではない、明日のわが身なり。


【短編】遮光カーテンにニートはひれ伏す

目が覚めると、今日も俺は俺だった。

信じられない。神と同じぐらい信じがたい。

 

神は天と地を最初に作り、光あれと言った。

そのあとなんかんだで、俺というニートを作った。

神が本当にいるなら間違ってないはず。

 

一般人のために、ニートについて説明を軽く説明しておこうか。

正式な意味は横に置いといて、無職とか引き籠りとか犯罪者予備軍とかロリコンとかとだいたい同一視される。

別にそれでいいよ。

こういう不謹慎な内容に気になる人は今すぐ社会貢献のために、こんなくだらない小説を読んでいてはいけない。

 

世の中には産まれながらのエリートニートがいる。

不登校からの引き籠り。ほんと頭が下がる。神ニート。

俺みたいなプロニートで踏ん張っている身分からすると、ちょっと想像がつかない。

あいつらみたいな神ニートの苦悩は凡人には理解できない。

 

ニートっていうのは選ばれた勝者で、なりたいからってそうそう慣れるもんじゃない。

才能。そして環境と運が大事だ。

高卒、または高校中退からフリーター、そしてニートっていうのが一般的かな。

でも、そういう有象無象のニートはニート力が弱くってプロニートにはなりにくい。

なんていうかタフで、意外と楽しく生きていけるやつも多い。

あんまり考えてないやつもいるし、反社会活動に勤しむやつもいる。

なんなら自暴自棄でガソリンや刃物もって社会的迷惑かけるし、もしくは首吊って死ぬ。

 

精神科通って薬飲んで現実逃避するやつは、ニートとは言えないな。

そいつらは病人で療養中なんだ、優しくしてやれ。

そしてそういう病人を作ったのは、社会であってそいつのせいじゃねーよ。

原始時代にそんな風に病んだ奴なんていないことぐらいわかるだろ?

 

おっと、あんまり社会的なことに言及はしたくない。いらぬところから反発を受ける。

プロニートになる大切なことは、真面目ってこと。

まずは大卒。まともに生きてれば今の日本なら大卒になる。

経済的な理由で進学できないやつは、そもそも家に引きこもれるような場所がないから、ホームレスやネットカフェ難民の道を選ぶ。自分で選ぶんだ。選ばれされるんじゃないんだ。そこは大事だ。

おっと、あんまり下層社会のことに言及したくないな。貧困ビジネス界から逆恨みされる。

 

そういうわけで大卒。名のある大学ならなおよし。プロニートも学歴社会。

学歴が高ければ高いほど、自己評価が高くなるからな。ここがポイントだ。

次に就職。社会経験が大事だ。社会経験があればニートじゃないとか言わない。それはNEETだ。

そして挫折。パワハラ、セクハラ、倒産、解雇、ブラック企業。なんでもいいよ。なんなら自己啓発本を読んで『自分探しの旅』がしたいでもいい。会社を辞める。そこがスタート地点。

ニートワールドに足をつっこむわけだ。

 

なぜか?

 

ここに社会福祉の罠がある。ニートが量産される理由がある。

すなわち、ハロワだ。ハローワーク。公営の職業安定所。ここがいかにひどい所で、いかに無責任で、どうしようもないところかってことは、そうだな・・・国会中継で寝ている議員でも見てればわかるだろ?

おっといけない。国の批判はしたくないんだ。イデオロギーと宗教には関わらない。これニートの鉄則。

何かに目覚めてしまうと猛烈な勢いで社会活動するからね。反社でも福祉でも布教でもいいけど、とにかくプロのニートにはなれない。

そっか、ニートになるってこう書いてみるといろいろ大変だな。

 

でな。

 

1ヵ月だか3ヶ月だか、もうすっかり忘れてしまったけど『待機期間』っていうのがあるんだよ。そのあとに『給付金』が支給される。それも数カ月続く。

「今までがんばったし、せっかくだから給付金でももらってゆっくりするか」

そんな思考ができるなら、ニートの素質がある。

 

そして半年ほど社会から離れる。

真面目だから貯金がある。ましてや実家暮らし。

親孝行でもしとくかなんて、母親連れて温泉旅行でもいったらもうおしまい。

旨い料理食って、旨い酒飲んで、温泉に浸かって。

 

そうやって、親に恩を売る。いい思いをさせる。これが大事。

わかってきた?

『うちの子はいい子』って親に思わせるわけ。

『子供は悪くない、社会が悪い』この思考法をもってもらわないといけない。

刷り込め。親に刷り込め。社会が悪いって刷り込め。

 

ブラック企業にパワハラ上司、不正と犯罪。世間はそんなニュースであふれていて、

そんな社会なんだと思わせるんだ。

環境が大事だ。

 

ニート三大条件。

 

才能

ニートを許す親

そしてそれを後押しする腐った社会

 

覚えた?ここ、テストに出るからね。

 

これでようやくニート見習いってとこだな。ウェルカムニートワールド。

この頃はさ、まだ社会復帰できるって思ってるわけ。持たなくてもいい罪悪も抱いたり、資格本を買って勉強したりする。無駄。ほんと無駄。

そんなんだからプロニートになれないんだな。少しずつ挫折していく。

 

まずは1年がんばる。がんばってニートをやる。

何事も石の上に3年。3年間引き籠ってニートやれるやつは才能がある。見込みがあるよ。

まぁ気楽に構えてさ、近所のコンビニとか図書館ぐらいいってもいいし、家の中の雑務をこなしてもいい。

 

でもさ、3年たったら諦めようよ。おっと言葉を間違えてしまった。目指そうよ。

プロニートをそろそろ本気で目指そうか。

なんていうかな、一言でいうなら死ぬまでニートをする覚悟みたいなことだよ。

 

覚悟が決まったら用意するもの。

それはね。『遮光カーテン』

間違ってもベニヤ板と釘で窓を塞いではだめ。スマートじゃない。完全に遮断したらそれは窓じゃなくって壁になる。社会との隔たりになる。そういう行動は自殺につながる。おすすめできない。

遮光カーテンがギリギリのせめぎ合い。わずかに光が入ってくる。そこに窓があるとわかる。空に太陽がでているとわかる。

太陽の周りを地球が周っていることがわからなくても、地球の周りを太陽が周っていることがわかる。

日が昇り、日が沈む。そして、また日が昇る。たぶん。

 

あとはまぁ自由にしなよ。

本棚には純文学。次に資格の本。それから歴史系の漫画。本は知性の象徴だからね。太宰とか飾っておこう。ラノベとかラブコメマンガとかおすすめしない。そういう『趣味がちゃんとあります』みたいのはかっこよくない。

だからフィギュアも飾らないほうがいいかな。ほら、美少女フィギュアを飾ったら下からパンツみちゃうじゃん。

 

服はモノトーンがいい。同じ服、同じ下着を複数そろえる。何を着るか悩まなくていい。どうせでかけないし、同じものでいい。でも洗濯はしてもらおう。洗濯しないと臭いから。

 

次に社会活動な。まったくしないわけにはいかない。人間は社会的動物だから、実家の部屋で無人島生活はできない。だからネトゲしておこう

デイリーミッションをこなそう。ログインして、イベントミッションまわして、キャラの好感度あげて、つまらない報酬もらおう。それ以上はしたらだめだ。金も時間も失う。デイリーミッションだけこなす。3つぐらいゲームをこなせば十分だ。

 

そうこうしたら5年ぐらいすぐすぎる。

親が心配してくる。会うたびに仕事の話してきてり、なんなら仕事見つけてきたりする。

そしたら親と距離を置くころだ。そろそろ親離れをしないとな。親も子離れをしないとだめだ。

ダメ人間になる。立派なプロニートになれない。

 

退屈な日常を過ごす。退屈っていうのが大事で忙しいのはよくない。

例えばソシャゲ。ギルドやクランに属して24時間ネットつなぎっぱなしで戦い続けるとかやったらダメ。できるのは若いうちの3年間くらいだけだから。一生は続けられない。

ボードゲームぐらいにしておこう。ボケ防止にもなるし。

 

そんなこんなで10年ぐらい。

10年ぐらい真面目にニート生活しているとさ。ある日、悟るんだよ。

ニートをなんだかん楽しんでいるやつは悟れない。

苦悩と隣り合わせじゃないとな。

そして、プロニートになる。

 

苦悩っていうは、何も社会復帰できないこととか、

同年代の平均年収とか、

親に心配かけていることとか、

そんなつまらないことじゃないよ。そういうのはもっと何年も前に見なかったことにしているだろ?

心に遮光カーテンをひいているだろ?

そうじゃなきゃ、10年もニートできない。

選ばれた人だけがプロニートをできる。

 

この苦悩っていうのは、煩悩って言い換えてもいいかもしれない。

老いること、病気、死の3つは楽だな

楽だから避けては通れない。ちゃんと終点が用意されているんだな。

でもさ、生きることだけは終わりがない。生きている間は生きていないといけない。

生きている間だけ苦しむことができる。痛い。辛い。生きているという苦痛。

 

生きているのがつらいから、自殺する。死は救いだ。

アルコールに逃げる。薬物逃げる。それは病気だ。

みてみないふりをして日々を楽しく過ごす。それが老いだ。

 

生きている。そのことに対する苦痛。それがわからないと。

肉体的な苦痛なんてたいしたことないんだ。怪我をすれば治るし。

例えば虫歯。ズキズキと痛む。触っていても虫歯と分かる。鏡をみたら黒くなってる。

そしたらマイナスドライバーをあてて、金づちをガツンと当てて折る。

なんなら隣の歯が折れても構わない。

びっくするぐらいの激痛のあと、なんなら気を失った後に平穏が訪れる。

鉄の味がする口いっぱいの血。脈打つ鼓動。生きている自分。

今日も自分でいようとする自分。

生体的恒常性。ホメオスタシス。

自分の意思ではどうにもならない。

だから、ぜんぜんたいしたことない。

自分の体だけど自分で選択できないことは、考えても無駄。苦悩の外側にある問題。

 

心の問題はそれよりも大きいけれど、心の傷は過去の自分。

今の自分の苦悩とは別問題。連続する因果としてとらえるのは無駄。

過去は現在に存在しないし、現在は過去の上になりたっていない。

昨今だと『宇宙5分前仮説』なんて気の利いたものある。

もし、自分の記憶も含めて神様が5分前にそう作ったなら、俺は知りようがない。

 

要するに今だけが大事だ。今、まさに苦悩している自分がいる。

そこまで気が付けばあと少しだ。これは智慧によるもので、本質的な悟りではない。

 

ある日、目が覚めると俺は俺だった。

その衝撃。

実感がわかない。

ついに発狂したかと自覚する。叫びたくなる。なんなら叫ぶ。自殺したくなる。

この不安と恐怖。漠然とした『生』

 

これを味わったら、一人前のニートっていっていいんじゃないか。

プロのニートだよ。

 

毎日、その実感から始まる。生まれ変るんだ。

今日の俺は俺だけなんだ。

 

※※※

 

現実的に例えるならこういうことだ。

 

朝、目が覚めると俺は俺だった。

遮光カーテンを見て、ほっとする。

本棚には三島だの太宰だの島崎だのが並んでいる。枕元にはボロボロになったカミューだ。

まったく嫌になるよ。そんなんで知的な何かが満たされるわけないのに。

 

ノックもせずに年老いた母親が入ってくる。

ぼさぼさの白髪。虚ろな目。何かをブツブツと言って、手には出刃包丁。

いいね、好きだよ出刃包丁。それでけじめをつけるんだろ?認知症が進んで気になるのはニートの息子のことか?

別に構いやしないよ。刺せよ。刺せばいいんだ。てめぇよりも長い生きしてやろうって親孝行がわからなくなったら、始末をつければいいんだ。

いい年の息子の人生すら、自分のものだという思い込みが俺をニートにしたんだ。

清々する。

激痛と血の温かさと鉄の匂いを感じながら、生きていることを実感して、俺は今日も死ぬ。

 

そして、目が覚める。

俺は俺だった。

遮光カーテンだけが俺の味方で、俺を守る。

本棚には司馬遼太郎が並んでいる。いい趣味しているよ、ホント。手に取る気もおきない。

部屋には鍵がかかっていて、そこら中にペットボトルやポリエチレンのゴミが散乱している。汚いのは好きじゃないんで、ゴミ袋にいれていく。

部屋の扉が大きな音を立てて壊される。何事かと振り返ると、また大きな音。ドアが蹴り破られて立っているのは白髪の父親。目が血走ってる。手には手頃な大きさの手斧。手斧だよ。今日日はやんねーよ。なんだよ木こりにでもなるのか?

ふり下ろされる斧の前に俺の左手が見事に砕かれ、二撃目で俺は意識を失った。楽だねこれは。さすがだよ反省する間もなかった。

 

そして、目が覚める。

俺は俺だ。また地獄が始まる。遮光カーテンがゆれる。その先に光はあるのか?

本棚がない。

部屋には散乱したマンガ本。それもドラゴンボール。なるほど、話のわかるやつだ。

あとで全巻並べて読み返そうかと思ったら、焦げ臭い匂いがする。

一家心中かな?カーテンが焼け落ちる前に窒息死して死にたいと願う。この死に方はお薦め。けど、すごく人に迷惑をかける。死んだら関係ないけどね。

 

そして目が覚める。

うんざりするんだ。目が覚めると今日も俺は俺。本当に?実感がわかない。

記憶はある。子供の頃の記憶。学校の記憶。家族の記憶。本当に俺の記憶なのかな?

遮光カーテンがある。見ると心が落ち着く。

 

今日も俺は殺される。親に、世間に、同級生に、そして自分に。

殺され続ける修羅の地獄。間断なく続く苦悩の無間地獄。

アルコールでも薬物でもいい。助けてくれ。今日までプロニートとしてがんばってきたけど、そろそろ限界だ。

どんな仕事にも引き際がある。それが今日だ。

このままだとまた殺される。殺されるのは構わない。それで終わるならな。

けど、目が覚める。目が覚めると今日も俺は俺で、その瞬間が耐えられない。

部屋に鏡がない。俺が俺なのかわからない。

 

そうだ。プロニートなんてやめよう。

 

1からやり直そう。40過ぎてもやる仕事もあるだろう。20代の若い奴に鼻で笑われながら先のない未来を生きればいい。最低賃金すら保証してもらえず、サビ残して、やっともらった給料から税金とか年金とか社会保障費とか天引きされて、カップ麺の値段を気にしながら生きればいい。

それでも、この生活よりはずっと楽だ。

 

手順は簡単。

 

遮光カーテンを開けるだけ。

遮光カーテンを開けるだけ。

遮光カーテンを開けるだけ・・・

 

それができるならプロニートなんてならねぇんだよ。ボケェ!

 

※※※

 

「あんた、さっきから騒がしいわよ」

 

突如、遮光カーテンが開かれた。

太陽の光で俺は溶けるのかと思った。

その強い日差しに照らされて、金髪ツインテールが輝いてなびいている。

 

俺は目をパチクリとして、現実と幻想のはざまの区別がつかない。

 

「ほら、さっさと顔ぐらい洗ってらっしゃいよ」

 

制服姿の彼女は細い腰に手を当てて、お決まりのポーズで俺に命令を下す。

 

・・・そうか。俺は遮光カーテンを開け、どうやらプロニートを卒業したらしい。

そして、神ニートに向けてまた一歩力強く踏み出した。

 

俺はマスターニートになったのだ。

 

(了)


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